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時塚オイモ

第43話 〜神隠し部屋と謎の人物〜

ここは何処なんだろう……どうして、誰もいないんだろうか………


僕は辺りを見渡しながら、学校中を駆け回った。


しかし、誰もいない。人の気配さえ無い。まるで、僕だけ違う世界に飛ばされたような………そんな感じがしてしまう。


『フフフフフ』


また女の子の笑い声が聞こえた僕は、笑い声がした方を振り向いた。


タッタッタッタッタ…………


階段を下りる足音が聞こえた。


「待って!!」


僕は、急いで階段を下りていき、声の主の後を追っていく。


もしかしたら、何故こんな状態なのかを知ってるかもしれない。


学校から出ると、また見失ってしまった。


「ハァハァ……あれ?何処に行ったんだろう?」


『フフフフフ』


今度は聖祭商店街の方に黒い人影が入っていく。


「ねぇ!待って!」


声を掛けながら、黒い人影の後を追い、聖祭商店街に入ると、僕は驚いた。


何故なら何時も沢山の人がいて賑やかだった、聖祭商店街には…………誰一人いなかったからだ。


「どうなってるんだ!?こんな……こんな事って…………」


異常だ!?明らかに何かがおかしい!何時の間にか学校の教室にいた事もそうだけど、時間は止まってるし、人が誰もいない。それに、灰色の空もおかしい。一体何が起きているんだ?


僕は立ち止まり、考えていると後ろからまた女の声が聞こえた。


『ここは貴方が望んだ世界なんですよ。』


「え………………?」


後ろを振り返ると、そこに黒髪のショートヘアでニッコリと笑っている1人の女の子が立っていた。


「君は…………誰なんだ?」


『おや。自己紹介がまだでした。こんにちは!僕は『神宮寺無名』と言います。無い名前と書いて『なな』です。宜しくお願いしますね。』


神宮寺無名?一体何者なんだ?それに、同じ聖陽高校の制服だし。同学年?先輩かな?


『僕は、只の聖陽高校の生徒ですよ。』


え?何で…………僕、口に出して言ったっけ?


「えっと、僕は……………」


『知ってますよ。叶目悠斗さん。貴方が教えてくれたんですよ。』


あれ?初めて会ったと思うんだけど……僕、彼女に名前言った事あったっけ?


でも不思議だ………何故か彼女と初めて会った気がしない。やっぱり何処かで会った事があるのかな。


彼女は笑みを浮かべながら、僕をジッと見つめている。彼女の目を見ていると吸い寄せられる感じがした。まるで、暗い影のような…………


『フフフフ、どうしたんですか?まるで、謎のUMAを見つけたような顔になってますよ。』


確かに、謎の人間が目の前にいるけどね。


「えっと、そういえば神宮寺さんが……」


『無名ちゃんでいいですよ。何時もそう呼んでたじゃないですか。』


「わ、分かったよ。無名ちゃん。」


何時も……?あれ?何時も言ってたっけ?


「無名ちゃん、さっき言ってたよね?『ここは貴方が望んだ世界なんですよ』って。それはどういう意味なのかな?」


僕は色々と不思議に思いながら彼女に質問した。


『フフフフ、そうですよ。ここは貴方が想像し望んだ世界なんですよ。』


「そんな!僕はこんな世界を望んだりしてない!」


『いえいえ、今の貴方はこう思っているんじゃないですか?家族を失い、誰もいなくなってしまった。周りを見渡すと、楽しそうな家族達。見るに耐えない貴方はいっその事、誰もいなくなってしまえばいい………と。』


「僕が……そんな…………」


『まぁ、この世界は人の望み『思い』を現実にする世界なんですよ。』


彼女は移動しながら、この世界の事を説明し始めた。


『貴方は『神隠し』を知っていますか?』


「神………隠し?」


ジジッーーージーーーーーー


うっ……頭の中でノイズが……………


『フフフフ、やはり思い出せませんか。と言うより、思い出したくても思い出せないと言った方がいいですかね。』


「何で……そんな事が分かるの?そういえば、さっきも僕の思いを言い当ててたし。」


『フフフフ、何を言ってるんですか?貴方が教えてくれたんですよ。』


教えた?僕が?そう………なのかな?彼女がそう言ってるんだからそうかもしれない。


「それで、神隠しと思い出せないというのはどういう事なの?」


『それはですね。貴方は今、神隠しにあっている状態なんですよ。ここは『神隠し部屋』。この世界に来た時、貴方は一部の記憶を消されてしまったんですよ。』


彼女は笑みを浮かべながら僕の今の状態を説明した。


「一部の………記憶?それは一体何の記憶なの?」


『それは、貴方の楽しかった思い出や希望に満ちた思い出などの記憶ですね。要するに、この世界はその人の辛い思いで、望んだ事を現実にする世界なんですよ。』


そんな……それじゃあ、さっきから思い出そうとしてもノイズが入って思い出せない記憶は、全て楽しかった事や嬉しかった事の思い出だったんだ。そんな大切な事を忘れていたなんて。


「どうしたら、この神隠し部屋から出られるの?」


僕は焦りながら、彼女に1番聞きたかった質問をした。


『フフフフ、大丈夫ですよ。多分、直ぐに帰れますよ。』


「本当に!?良かった。」


僕は一安心すると、1つ気になった事があったので彼女に質問をした。


「そういえば、ここは僕が想像し望んだ世界なんだよね?」


『はい。そうですよ。』


「僕が望んだのは、人間がいない世界………なんだよね?」


『はい。そうですね。』


「それじゃあ………………無名ちゃん。『何で君が此処にいる』の?」


僕は何処かで不思議に思っていた。何を不思議に思っていたのか分からなかったけど、今分かった。


そうだ!人間がいない世界を望んだ筈なのに何故か彼女だけ存在していた。それはどう考えてもおかしい!矛盾している!ずっと感じていた違和感はこれだったんだ!


『フフフフ、何を言っているんですか?貴方が教えてくれたんですよ。』


その後、彼女は不思議な言葉を微笑みながら言った。


『僕は『人間じゃない』って。』


「え………?それはどういう…………」


僕は続きを喋ろうとした時、彼女は立ち止まり僕の方に振り向き笑顔で言ってきた。


『おや?そろそろ、お時間が来ちゃいましたね。もっと喋りたかったのですが、残念ながらここまでのようです。』


「ここまでって………どういう意味?」


『まだ貴方がこの世界に来るのは早かったようですね。大丈夫ですよ。また直ぐにお会い出来ます!その時はまた楽しいお話をしましょう。』


あれ?急に頭がクラクラする。目の前が歪んで…………


『あっ!そうそう!1つ言い忘れていました。向こうの現実世界に戻った時、貴方は此方の世界の事を何もかも忘れてしまいます。まぁでも、運が良ければ思い出すかも………しれないですけどね。』


彼女が喋っていると段々、意識が遠のいていき、彼女の声も聞こえなくなっていく。そして、最後に彼女が笑顔で発言した。


『それではまたお会いしましょう………………………』


『叶目先輩』


その言葉を最後に、僕の意識は途切れた。

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