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時塚オイモ

第38話 〜2人の本音〜

「ふはははは!こんにちは信長。そして、少年。」


声は聞こえるが、煙の所為で姿が見えない。


「この声は、明智光秀!!」


「如何にも!」


「何処にいる!姿を表せ!この卑怯者!」


信長は刀を構えて明智光秀に言うが明智光秀は笑って答える。


「ふはははは!私が出るのはまだ早い。まだその時では無いからね。おっと……」


明智光秀が喋っていると豊臣秀吉が煙全体を斬るように大振りで刀を縦に振った。


「邪魔をしないで下さいます?光秀、私は貴方の仲間になるつもりはありませんし、貴方がお姉様にした事を許した覚えはありませんわよ。」


「おおー。怖い怖い。では私はこれで消えるとしますか。おっと……言い忘れていました。」


そう言うと明智光秀は僕たちにある報告をした。


「近々、貴方がたに面白い物をお見せ致しましょう。まあ、生きていればの話ですが。それではこれで。」


「待て!光秀!!」


信長は大声で叫ぶが、完全に明智光秀の気配が消えた。すると、豊臣秀吉が僕たちの方を向いて刀を向ける。


「さて……邪魔者も消えましたし、続きをしましょう!お姉様!」


「本当にやるのか?猿。」


「ええ。私の野望はお姉様を私の物にする事ですわ。ですから………」


「分かった。」


そう言うと、信長は進化を解き持っていた刀を捨てた。


「一体………何の真似ですの?」


「私は………戦わない。」


「なっ!?」


その頃、僕は朱莉に質問をしていた。


「朱莉、本当にそれで良いのか?」


「ん?何が?」


「お前の望みは僕を殺す事なのか?」


「そうだよ!私はお兄ちゃんを殺して、私だけの物にするの!」


「…………分かった。」


僕はそう言うと、朱莉に近づいていく。


「な、何よ!何の真似!?」


朱莉は近づいてくる僕を警戒して後ろに少し下がる。


「朱莉、お前は僕を殺せない。」


「なっ!?そんな事ないわ!私はお兄ちゃんを殺せる!」


朱莉は動揺しながら、窓ガラスの破片を手に取って僕の首に突きつける。


「猿、お主に私は殺せない。」


「私がお姉様を……殺せない……ですって?何を言いだすかと思えば……いいですわ。殺してあげます!」


豊臣秀吉は自分の持っている刀で、信長の頭を斬ろうとした。


「だったら何故!」


「じゃあ何で!」


『そんな顔をしているんだ!!』


僕と信長が言うと、朱莉と豊臣秀吉の手が止まった。


僕と信長が何故そんな事を言ったのか。それは、2人を見たらすぐ分かる事だった。何故なら、朱莉と豊臣秀吉の目から………涙が出ていたのだから。


「朱莉に人殺しなんて出来ないよ。だって朱莉は、誰よりも優しい事を僕は知っているから。」


ーーーーー10年前ーーーーー


母さんと父さんがいなくなり、僕が朱莉の家に引き取られて間もない頃、辛く暗い気持ちになっていた僕を、一番に接してくれたのが朱莉だった。


『お兄ちゃん!見てー!お花さん!綺麗だねー!』


朱莉は笑顔で、僕に花を見せて接してくれた。だけど、この頃の僕は父親と母親がいる朱莉が羨ましく妬ましかった。


『何だよ……僕に関わるなよ!』


僕はそう言うと、朱莉が見せてくれた花を捨てて、その場を立ち去った。


朱莉は悲しそうな顔をしていた。僕は少し、罪悪感を感じてこっそり戻ってみると朱莉は僕が捨てた花に、泣きながら謝っていた。


『ごめんね。お花さん。私、お兄ちゃんと仲良くしたかったけど……ひっく……お花さんを傷つけちゃった……ごめんね。どうしたら、お兄ちゃんと仲良くなれるのかな………』


朱莉は花を大切にする程の、優しい女の子なんだ。そんな朱莉が…………


「花が大好きな朱莉が、人殺しなんて出来るわけないんだ!」


僕は真剣な眼差しで朱莉に訴えかける。


「猿、昔お主は私に言ったな。何があっても私の味方だと。だが、こうも言ったな。」


・・・・・・・・・・・・


『猿!もし、私が道を間違え魔王になった時、お主が私を殺すんだ。』


『なっ!?何をおっしゃいますの!お姉様!私にはそのような事は出来ませんわ!』


『頼む!私にはお主しかいないのだ!猿!』


『…………分かりましたわ。ただし、条件がありますわ!』


『条件?』


『はい。それは……………』


「私が魔王にならない時は何があっても、私の味方であり、私と共に歩んで行くと言った。そんなお主が私を殺せるはずがないんだ!」


信長は豊臣秀吉に真剣な眼差しで言う。


すると、朱莉と豊臣秀吉は本音を喋り出す。


「……じゃない………」


「え?」


「そんなの!嘘に決まってるじゃない!お兄ちゃんを殺したいなんてそんな事思うわけない!私は、もっと……お兄ちゃんと一緒にいたい!これからも、この先も!だから……」


僕は、朱莉を優しく抱きしめると朱莉は更に泣きだした。


「う……うわぁぁぁぁぁぁ………うわぁぁぁぁぁぁん…………」


すると、朱莉の中にあった黒いオーラが消えていった。


「私だって!お姉様を殺したくありませんわ!私は、お姉様とこれからも歩んで行きたい!私は………」


「もういい……もういいんだ。分かっているから。」


そう言って、信長は豊臣秀吉を抱きしめると豊臣秀吉もまた、更に泣きだした。


「う……う………うわぁぁぁぁぁぁん……ごめんなさい……ごめんなさい………」


これでまた、僕と朱莉、信長と豊臣秀吉の絆が深まった。本音をぶつけあって、初めて相手の事が分かる。それは、人間もキャラクターも同じなんだ。僕たちは今日、それを知った。


そして数分が経ち、朱莉と豊臣秀吉が泣き止み、僕と信長に謝った。


「酷いことをしてごめんなさい。お兄ちゃん。信長さん。」


「すみませんでした。お姉様。そして……その………叶目悠斗。」


「おおー!お主が、男の名前を言うとは!成長したなー!」


「言っておきますが、今回だけですからね!私は、男はみーんな!大嫌いなのですから!男の名前を言うだけでも、吐きそうなくらい!」


「分かったよ!これからも朱莉の事、宜しく頼むよ!豊臣秀吉!」


僕は笑顔で言うと、豊臣秀吉が小声で


「秀吉………」


「え?」


「ですから!貴方は男ですが、今日の事でお姉様や貴方に迷惑を掛けてしまいましたので、その……特別!特別に貴方は私の名前を言っても良い権利をあげますわ!」


豊臣秀吉は顔を真っ赤にしているが、とても偉そうな態度をしている。何だろう?誰かによく似ている気がする………まぁ、いいか。


「うん!これから宜しく!秀吉!」


僕は笑顔で和解し、学校に遅刻しそうだったので慌てて学校へ向かった。


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