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時塚オイモ

第21話 〜黒幕の正体、理由〜

「悠斗。申し訳ありませんが、やはりゼウスとヘラは危険です。倒すしかありません。」


アーサーはそう言うと、剣を取り出す。すると、空と莉奈がゼウスとヘラを庇いながら涙目で頭を下げて訴える。


「嫌だよ!ゼウスがいなくなるのは嫌だ!」


「もう何も致しませんわ!約束致します。だから!ヘラを殺さないで下さい。お願い致します!」


僕は考えていた。確かにゼウスとヘラを放っておいたら、もしかしたらそのふざけたイベント、ラグナロクを再び起こすかもしれない。けれど、この2人の目は信じても良いような気がする。いや、信じたい。だから僕は…………


「分かった。」


と言って僕は頷き、2人に頭を上げるように言う。すると、信長が怒った顔で僕に言ってきた。


「悠斗!?何を言っている!いくらお前がお人好しでも今回は駄目だ!ラグナロクを起こされたりしたら、必ず沢山の犠牲者が出るのだぞ!」


必死に訴える信長を見て、僕も覚悟を決めて言う。


「それでも僕は……2人を信じるよ。」


そう言うと、信長は顔を横に向けて呆れながら小声で囁く。


「本当に……お前達はそういう所が似過ぎだ……」


「本当に良いのですね悠斗。貴方はそれを望むのですね。」


アーサーは真剣な顔で聞いてきたので、僕も真剣な顔で頷く。


「だって!殺し合うなんて間違ってるから!」


真剣な顔でそう言うと、アーサーは溜め息を吐いて剣を納めた。


「た、助けてくれるの?」


空が涙目になりながら聞いてくるので僕は頷くと、今まで我慢していた所為か急に泣き出した。


「ありがとう……ありがとうございます。」


空と莉奈は何度も感謝の言葉を言いながら泣いた。そして少し落ち着いた時、信長は城ヶ崎姉弟に質問した。


「それで!お前達の黒幕。『トール』とは一体何者なんだ?」


信長は怖い顔で言うと、2人は少し黙り覚悟を決めて空が喋ろうとした。


「実は……………」


続きを言おうとした瞬間、何処からか声が聞こえてきた。


「やっぱり……お前等じゃ倒せなかったか……」


声が聞こえた瞬間、急に地面が揺れだし皆は慌てだす。すると、地面から大きな樹が生えてきた。よく見ると大きな樹に纏われている女の子が一人と、そしてもう一人……


「悠斗……残念だよ。まさか、お前がこのゲームに参加していたなんてな。」


その声には僕が一番心当たりがあった。小さい頃から知っている何度も聞いた事のある声。僕は自分の耳と目を疑う。何故なら、樹の上に立っていたのは……………『山崎透』だったのだから。


「な、何で!?どうして……透がここに?いや、それよりもその樹の女の子は何?」


僕は動揺していると、莉奈が透の正体を明かす。


「あの人が『トール』。私達の黒幕で私達の従兄弟、山崎透兄様ですわ!」


「そう!俺が、そいつ等の黒幕でお前等を殺そうとした張本人だよ。泣けてくるよなぁ。幼馴染がまさかの敵だったなんてさぁ!なぁ悠斗?今どんな気分だ?親友だと思っていた人に裏切られた気分は!」


透は上から目線で、言うので僕はキレる。


「ふざけるな!透!今お前がしようとしているのは、沢山の人が殺し合う……そんな馬鹿げた事をしようとしているんだぞ!」


透に怒鳴りながら言うと、透は急に大きな声で笑う。


「何がそんなに可笑しいんだ?」


「だってよ!これは殺し合いのゲームだぜ?誰か1人になるまで殺し合う。そして!最後の勝者が何でも願いを叶えて貰えるんだ!」


そう言いながら、透は両手を広げて笑っている。狂っている。今の透は、まるで別人みたいだ。僕は、透の目を覚ます為に反論する。


「それでも……殺し合うなんて間違ってる!」


「綺麗事を言ってんじゃねーよ!お前に俺の何が分かるってんだよ!」


「分からないよ!でも、もし透が何かに困っているなら助けたい!」


すると、怒鳴っていた透がまた笑い出した。


「お前が……俺を助ける?ふふっ……あははは!じゃあお前は!『結衣』を助ける事が出来るって言うのかよ!」


「…………結衣?」


透の言葉に人の名前が出てきたのだが、誰の事か分からなかったので僕は聞き返すと、透は深刻な顔で語り出す。


「ああ。結衣は俺の妹だ。今は原因不明の難病でな。身体の下半身が動かない。その内、上半身も動かなくなるかもしれないんだと。さらに、医者からは回復出来るかどうかも分からないと言う始末だ。そんな時だ!このアプリと出会ったのは!そして、最後まで生き残った人が何でも願いを叶えてくれると聞いた時、嬉しかったよ!これで、結衣を助ける事が出来る……だから俺は!ラグナロクを起こし、何人何十人のプレイヤーを殺して最後まで生き残り願いを叶えるんだ!結衣の為に!」


透は強く拳を握り、覚悟をした目で僕を見つめる。透の目は本気だ。例え、親友の僕を殺してでも叶えたい願い……そんな強く思う願いは僕には無い……でも!


「確かに……僕の家族が結衣ちゃんと同じ状況だったら助けたいって思う。だけど!それで人を殺しても良いなんて間違ってる!そんな事、絶対に結衣ちゃんは望んでない!」


今まで、僕に強く思う程の覚悟は無かった。でも、今覚悟が出来た!透を……山崎透を止める!それが今の僕の願いであり、覚悟だ!


「うるさい……うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい!!俺は結衣を助けるんだ!悠斗!お前を殺してでもな!」


透は息を切らしながら僕を睨みつける。僕も透を睨みつけると、透の様子が何か変な事に気付く。さっきから透から感じるこの変な感じは何だ?


「透兄さん!目を覚まして!」


空が心配しながら透を見て叫ぶと、透は空と莉奈を見て微笑みながら冷酷な目で言う。


「あぁそうだ。空!莉奈!お前達はもう用済みだ。ここで俺の為に、結衣の為に…………死んでくれ。」


透がそう言うと、空と莉奈は悲しそうな顔をして膝をつく。僕はついに本気で怒り透に向かって名前を叫ぶ。


「透ーーーー!!」


そう言って、信長に指示を出し透のパートナーである樹の女の子に攻撃を仕掛ける。すると、透も叫びながら樹の女の子に信長を攻撃しろと指示を出し透も僕の名前を叫ぶ。


「悠斗ーーーー!!」


そして、僕と透の戦いが始まった。ラグナロクを……透を止める為の戦いが…………

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