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時塚オイモ

第15話 〜謎の黒幕、アイドルの歌〜

「『トール』?それは名前?あだ名?」


「分かりません。それが名前なのかあだ名なのか。まだよく分かっていないのです。申し訳ありません。」


アーサーは申し訳ない顔で謝りながら頭を下げるので僕は慌てて、大丈夫だよと笑顔で励ます。


「トール………か。」


トール……一体何者なんだ?僕は、その人物の事を考えながら窓を見ていると信長が僕に喋りかける。


「分からない話は置いておいて、悠斗!今日も折角の休みだ!出掛けるぞ!」


信長は僕に気を遣ってくれたのだろうか。一緒に外に出ようと言ってきたので僕は、難しい話は後に考える事にしようと思い信長とアーサーと一緒に東京で有名なタワー、『モールドタワー』に向かった。


13時13分 東京都代々木 モールドタワー


「えっと……」


『モールドタワー』。日本一高く有名なショッピングモールで日本人の人に知らない人がいないほど名が知られている。それもそうだ。『モールドタワー』の高さは何と800mもあり、かなり遠くからでも見られるのだ。なので、有名な為に色んなイベントがそこで開催されるのだが、偶然なのか今日のイベントに見知っている人が出ていた。そう、瑠美だ。


「みんなー!元気ー!今日はルミのイベントに来てくれてありがとーう!」


瑠美が可愛い笑顔で手を振ると、ファンの人達が大勢で叫んでいた。


「ルミたーん!!」


「ルミちゃーん!!」


今更だけど、瑠美って国民的アイドルなんだよな。そんな子と友達になるなんて……AVOをやってなかったら絶対にありえなかったなぁ。てか、本当に瑠美って凄いなぁ。僕は彼女を見て改めて尊敬した。


「ありがとーう!じゃあ早速歌っちゃうよー!みんなー!盛り上がって行こーう!」


瑠美がそう言うとファンの人達や観客の皆が一斉に叫びだした。あまりの凄い盛り上がりに僕は圧倒されていた。


「行っくよー!『Crushing Planet』」


そう言って瑠美は、可愛い声で沢山の観客を盛り上げていく。そして僕と信長も、気づけば笑顔になっていた。信長は悔しそうな笑顔で瑠美を見ていた。すると、突然アーサーが僕を呼んだ。


「っ!?悠斗!あそこを見てください!」


アーサーは僕にも分かるように見てほしい場所を指差す。僕はその指した方向を向くと、そこには城ヶ崎姉弟の長男、城ヶ崎空がいた。そして、僕は急いで空の方へ移動しようとするが周りの人達が邪魔で、中々空の方へ行けない。すると、一瞬目を離した時空がいなくなっていた。


「何で空がここに……まさか!?瑠美を襲いに来たんじゃ!」


「いいえ。あれは……あの目は、襲いに来た目ではなかった。きっとあの子は……」


僕はもしかしてと思いアーサーに聞いた。


「瑠美の……ファン?」


アーサーは小さく頷き、空を見失ってしまったので追いかけようにも追いかけられず、諦めて信長の所に戻り瑠美のライブを見る事にした。すると、気のせいか瑠美と目が合ったような気がする。そして、瑠美は更に楽しそうな笑顔で歌を歌いきった。


「みんなー!最後まで見てくれてありがとう!みんなの笑顔は私の笑顔だよー!今から休憩に入るけどまた見に来てくれるかなー?」


瑠美は笑顔でファンや観客の人達に聞くと沢山の人達が


「いいともー!!」


元気よく言って返す。なんか……返し方が何処かで聞いた事があるような無いような……そんな事を思っていたら、瑠美はありがとうと言って一瞬僕の方を向いてウインクをした。か、可愛すぎる!!と思っていたら両側にいる信長とアーサーがイライラしていた。


「あの泥棒猫め!!」


2人の目が怖い……とにかくそれは置いといて僕はすぐに、空を見かけた事を信長に話した。


「ふむ。城ヶ崎弟が来ているのか。ならば、まずその男を倒すしかないな!」


そう言った瞬間、急に沢山の人達が消えた。


「フィールド!?」


僕とアーサーは警戒態勢をとる。すると、何処からか男の声が聞こえてきた。


「ふん。君達に気づいてないとでも思ったのか?」


上を向くと二階に空とゼウスが立っていた。


「空っ!」


「やぁ!悠斗さん。昨日は中途半端な戦いで終わってしまってごめんね。」


そう言いながら、空は上から目線で僕達を見下ろす。すると、アーサーが前に出てきてゼウスに喋りかける。


「やっと会えましたねゼウス。貴方を倒しに来ましたよ。」


「おおっ!お主はアーサー王ではないか!儂達を追ってきたという訳か。」


ゼウスは笑いながらアーサーを見下ろすので、アーサーは剣を取り出し剣をゼウスに向ける。


「空!どうして君が此処にいる?」


「ふん。決まっているだろう。今日こそ、貴方を倒してあの人の願いを……」


空が偉そうに喋っている最中にゼウスが横から


「いやいや、空よ。此処へ来たのは自分の為じゃろ?あのアイドルの早苗瑠美という子を見に……」


ゼウスが最後まで喋ろうとした時、空は顔を真っ赤にさせながら大きな咳をして話を止める。


「と、とにかく!僕は貴方を倒してあの人の願いを叶える!」


「あの人って、トールという奴の事か?」


「やっぱり知っていたんですね。そうですよ。トールの願いは必ず叶える!そう僕達は決めたんです!」


そう言って、空とゼウスは戦闘態勢をとる。やっぱり、城ヶ崎姉弟の後ろに黒幕が居たのか。僕は、出来るなら戦いたくない。けど!向こうが来るなら、只黙って殺られる訳にはいかない!


「行くよ!信長!アーサー!」


僕は、2人の名前を呼び2人は同時に返事をする。

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