三人の精霊と俺の契約事情
禁断の書物の代償
「ねえ、ヴィル。ぐりもわーるって何なのさ」
「どーしたんだ急に?」
「ただの魔導書ではないよね。魔力を増幅させる物でもないし、新しい魔法が使える訳でもない。ーーでも、みんなが欲しがり捜している」
ヴィルは、遠い目をし、
「グリモワールはね・・・兵器だよ。それも最強の生物兵器を創り出すトリガーだよ」
「生物・・・兵器・・・」
ミリアの表情が暗くなる。ヴィルがポンと頭の上に手を置いた。
「グリモワールは、その魔力が強力だ。だから使い手までもが魔力に食い尽くされてしまう。ーーその性質を上手く利用したのがサーガの後に最後の闘いと言われている邪竜アポカリプスを封印した方法だよ」
「どんな方法なの?」
「それは、邪竜アポカリプスにあえて、グリモワールを持たせたんだ」
「グリモワールを持ったら相手は強くなるんじゃないの?」
「グリモワールはね、人を選ぶ。自分の魔力とグリモワールの魔力が合致すれば強力な生物兵器へと生まれ変わるが、大抵の場合はグリモワールに魔力を吸いとられ、枯れ果てる事になる」
「邪竜アポカリプスはグリモワールを持ったせいで魔力が枯れ果てたの?」
「その通りだよ。未だ嘗てそんな使い方をした人がいなかった為、ある意味賭けではあったんだと思う。邪竜アポカリプスは魔力をほとんど失ったその形の果ての姿が先ほど僕とミリアが見た白竜の女性だよ」
「ーーーー!!!」
「今から丁度、百年前の話さ。サーガがなぜ表舞台から姿を消したのか・・・」
不敵な笑みを浮かべるヴィル。
「あの女の人が邪竜アポカリプスだったなんて、全く分からなかった」
「無理もないさ。きっと本人も分かっていないよ。・・・それに教えてもらって無いんじゃないかな?」
「・・・どーゆう意味?」
「サーガは今でも生きていて最期の行く末を一番近くで見守っているのさ」
「百年も前の話なのに人間は生きているの?サーガは長生きのおじいちゃんなのね」
「ははは。違いないな!」
ヴィルは珍しく声に出して笑った。
「ヴィル笑ったあ」
ミリアは嬉しそうにヴィルに抱きついた。
「バルティカ戦線、一番哀れなのは・・・かつての英雄なのかもしれないな」
ヴィルは誰にも聞こえない小さな声で呟くとミリアと、バルティカ戦線を後にするのだったーー。
*  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *
ーーこれが真実の話ーー
「これで一安心ね。サーガのおかげで邪竜アポカリプスを封印出来た」
「本当にトドメを刺さなくて良かったのかよ?」
「ーーまた、動き出すんじゃないのか?」
「仮に目覚めても抵抗する程の魔力をだせない筈だ」
「サーガが言うなら間違いとは思うが・・・」
一同顔を見合わせるが、
「分かった。念のためもう一度僕が確認して来る。みんなは先に行ってくれ、時期に戻る」
☆
サーガが邪竜アポカリプスを封印した場所にはまさかの光景があった。
邪竜アポカリプスの姿は無くーー、珍しい白竜が倒れている。
サーガがゆっくりと近付くと白竜と目が合った。先ほどまで戦っていたのだ。顔を見れば敵だと分かる筈だが・・・。
白竜は、サーガを見ても何の反応も見せない。
サーガは更に近寄り、
「君、怪我をしているのか?だからここから動けない訳か?」
「ーーだから何だ人間、去れ!去らぬなら噛み殺すぞ!!」
「随分と乱暴だな」
そこには、世にも珍しい白い神秘的な竜が傷付き横たわっていた。
邪竜アポカリプスとの戦いで、巻き込まれたのだろうか。白い竜の傷は痛々しくとても立ち上がれる様子ではない。
青年は、白い竜に近づき傷の具合を確認するーーしかし、
「貴様ーー!何のつもりだ」
「おいおい、こっちはお前の傷を治せるか見ていただけだろ?」
「何だと貴様、正気か?先ほどまで意味憎みあっていた相手の傷を癒すだと、どーゆー魂胆だ」
「・・・別に魂胆なんてないさ。傷付き倒れている人を見たら手を貸すのが本物の男さ」
そう言うと、ゆっくりと白い竜に近づき手を翳した。
青年は目を閉じまるで診察するかのように、ぶつぶつと独り言を言いながら納得した様な表情を浮かべた。
「貴様、何を勝手にーー」
「黙って見てろよ!」
白い竜に翳した手の平が、ぼんやりと輝きを放つ。ーーそれは、白い竜を優しく包み込むように傷を癒して行く。
「・・・どういうつもりだ?」
巨体を横にし光に包まれながら、目の前にいる青年を目を丸くし見つめる白い竜。
「治癒の揺り籠っていう光の魔法だが?」
答えになってない答えを返事をし、その場をはぐらかそうとする青年。
「この傷が癒えたら、貴様を噛み殺すかもしれないのだぞ?」
「まあ、そん時はそん時で対処するよ。俺も一応、人間界では最強のギルドの一員だからさ、簡単には殺られない自信はあるけどね」
白竜は、その言葉と青年の表情にイラついていた。何故なら青年は、自身に満ち溢れた表情を浮かべていた。まるで、今回の大戦は人間が勝って当たり前のように聞こえたからだ。
「・・・・・・」
白竜は、静かに怒りを収めた。
今のこの身体では、この青年を噛み殺す前に自分自身が殺られてしまうのは目に見えていた。
白竜は、地面に顔を伏せ青年に身を預けた。今は、この青年に傷を癒してもらうのが最善であると悟ったからだ。
この傷が癒たら今度こそは人間をーー
☆
「おーい、どこだあ?居るなら返事しろよ」
サーガが余りにも戻って来ないので心配になり仲間が捜しにやって来たのだ。
静かな洞窟に木霊する人間の声ーー、白竜は自分が寝てしまっていた事に今気付いた。
慌てて身を起こすーー!!?
「・・・傷が癒てる」
「当たり前だろ?俺が治してやるって言っただろ?」
白竜は、目を丸くし青年を見下ろしていた。
「ーーさて、仲間も迎えに来たから俺は行くとするよ。じゃあな」
白竜に背を向け去って行く青年。
白竜は、思わず、
「待って!!」
青年がその声に振り返るとそこには、先ほどの大きな白竜の姿は無く、真っ白な透き通るような白い肌と腰までの長い髪をした女性が立っていた。
「・・・・・・」
余りの美しさに言葉を失う青年。
「せめてお名前を・・・」
「え?君はさっきの白竜?」
「はい、エキドナと申します」
「僕の名前は・・・サーガ」
サーガは心の中で全てを理解した。
確実にあの時、アポカリプスの魔力をグリモワールが食い尽くしたのは目撃し地面に倒れ動かなくなったのは確認したのだ。
その同じ場所にこの白竜が居た・・・。
魔力が少ない不安定な時はエキドナの姿をしていて、感情が高ぶり魔力が高い時はアポカリプスの姿になる。
サーガは思った。
もう二度とアポカリプスの姿にならないように自分が見守っていよう。
これは、僕にとっての責任だ。
あと何年生きれるか分からないが、命尽きるまで責任を全うしよう。
グリモワールを使うとその使った人間には、呪いがかかると言われている。
サーガに降りかかった呪いそれは・・・。
*  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *
「ねえ、父さん・・・サーガが邪竜アポカリプスを封印したのって百年前だよね」
「そーだったかな?」
「母さんと出逢ったのってその時って・・・お父さんは何歳なの?母さんは竜だから長生きなのは分かるけど、お父さんはーー」
ーー グリモワールの呪い・・・ ーー
「人間でも百歳くらい生きてる人はたくさんいるだろ?何ら不思議な話じゃないだろ?」
ーー 不死の呪い・・・ ーー
「そっかあ。僕は良く分からないけど、長生きしてね」
「ああ、長生きするよ・・・」
ーー 禁断の書物を使った代償は重い ーー
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