三人の精霊と俺の契約事情
angel of eyes
「ーー早くトドメを刺せ!サーガ何を戸惑ってるんだ」
倒れた竜の顔の目の前に剣を突き立て、立ち尽くしている。
竜は既に虫の息で、立ち上がり反撃する余力すら残っていない。口から血を流し、体中あちらこちらに傷があり激戦だった事を物語っている。
「サーガ、トドメを刺して」
仲間達からサーガに檄が飛ぶ。しかしーー、
「何で躊躇する必要があるんだ?俺たちの目的は邪竜を倒すことだろ?ここまで来るのに何人の人々が死んだと思ってるんだ。その人たちの意志を無駄にするつもりか!!」
「そーよ、サーガ。あなたは間違ってないわ邪竜を倒して」
「ーーーー」
バルティカ共和国から程近いエドナ山脈に異次元へと続くと言われている洞窟がある。
それは、言い伝えで実際は、竜が住みついている。
バルティカ共和国の国境との境界線での竜魔族との戦争をバルティカ戦線と人々は呼ぶ。
いつまでも終わらない戦争に世界政府は、最後の希望に掛けた。
生きる伝説と言われる世界でただ一人だけに与えられた称号【勇騎士】サーガに。
☆
数々の伝説を残した勇騎士サーガ。
それを支えたのは、パーティー【天使の瞳】と呼ばれる八人の少人数精鋭である。
勇騎士サーガ自身も飛び抜けたチカラを持っていたが、それに劣らず他の七人もズバ抜けた能力を持っていた。そのサポートがあったからこそサーガは伝説の存在になったのだ。飛び抜けたパーティーの名は全世界に轟き、この時代はまさに他国の争いはなく平穏な時代だった。それを実現させたのは言うまでもなくサーガの存在だった。若干、十六歳の少年が世界の中心を担っていたのだ。
有名になり過ぎたパーティーは、拠点を決める事なく世界各地を転々と旅する事となる。
サーガは言う。
「僕たちは、余り表舞台に出ない方がみんなの為になる。人々は、僕たちを見れば何とかしてくれると甘えてしまい、自分たちで可決する努力をしなくなってしまう。それは国を弱くし人々の結束も弱くする。いずれ世界が危機になった時、滅びを招くことになる」
その言葉を残しサーガは、邪竜アポカリプス討伐でパーティーを解散すると決め最後の戦いに挑んだのだったーー。
☆
邪竜アポカリプスとの戦いは、長期戦となった。
その原因となったのは、神竜と呼ばれるアポカリプスを慕う竜たちだ。
世界最強パーティーであっても神竜を数匹相手にしていては、さすがに厳しかった。
「サーガ、これ以上長引くとヤバイぞ」
「私たちも魔力が底をついてしまうわ」
サーガは、周りを見渡しながら状況を把握し天を見上げた。
「一瞬で良いからアポカリプスと他の竜を引き離してくれ」
「どーするつもりだ?何か策はあるのか?」
「・・・グリモワールを使う」
「ーーーー!!」
サーガは一歩前に進み、前を向いたままーー
「このまま長引けばこちらの敗北が確定する。
「ーーけど、グリモワールはリスクが大き過ぎるわ」
「リスクは承知の上だ。アポカリプスとやり合っても良いが魔力、体力ともにこちらが圧倒的に不利だ。リスクはあるが一撃で短時間に倒すならグリモワールを使うしかない」
「ーーーー」
「ーーそれならサーガがグリモワールを使わなくても・・・俺が使うぜ」
サーガは横に首を振り、
「分かってるだろ?グリモワールは人を選ぶ。一歩間違えれば命はない。俺ならグリモワールを操れる」
「・・・けど、万が一サーガに何かあったら」
サーガは振り返り魔道士の女の子の頭にポンと手を置いた。
「今まで俺がみんなを裏切った事あるか?」
魔道士の女の子は首を横に振った。他のメンバーも合わせるように無言で首を横に振った。それを見たサーガは口元を緩め、
「ーーなら、俺に任せてくれ!必ずこの戦いを終わらせる」
*  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *
「神竜か・・・所詮は生き物だな。チンケなおもちゃ程度にしかならないですね」
ローゼンクロイツはアジ・ダ・ハーカの頭の上に乗りながら溜め息をついた。
「貴様か?私の仲間を弄んでくれたのは」
ニーズヘッグはアジ・ダ・ハーカの頭の上にいる魔道士を睨め付ける。
「そんなに睨まないで下さいよ。ただのお遊びじゃないですか」
ニタニタと憎たらしい笑みを浮かべるローゼンクロイツ。
「あそび・・・だと」
「ええ、遊びですよ。んんーー正確には退屈凌ぎにもなりませんでしたかね」
「貴様ああああぁぁぁぁ!!」
ニーズヘッグは高らかに咆哮をあげた。
「おお、コワっ。そんな叫ばないで下さいよ」
ニーズヘッグの鋭い爪がローゼンクロイツ目掛けて襲いかかる。
「そんなくだらない攻撃当たる訳ないでしょ」
無情にもニーズヘッグの爪は、ローゼンクロイツまで届かない。
「ぐっーーーー!!!!!」
見えない壁に阻まれるニーズヘッグの爪。
それを見て腹を抱えて笑い転げるローゼンクロイツ。
更に、ニーズヘッグを馬鹿にするように指を指しながら、
「竜が神に近い存在と勘違いしてません?人間なんていつだって滅ぼせるとか思ってません?」
「ーーーー」
目と目が合うローゼンクロイツとニーズヘッグ。
「それメチャメチャ勘違いですから。逆に生かせてやってるのまだ気づきませんかね?百年前ですかねー、サーガがなぜアポカリプスにトドメを刺さなかった分かります?」
「ーーーー」
目を逸らさない両者ーー。
ローゼンクロイツはニヤリと憎しみを込めながら、
「情けですよ。人間はいつでも竜を滅ぼせるから、絶滅しないように生かしてあげてるんですよ。トドメを刺せなかったんじゃなく、刺さなかったんですよ。逆ですよ、逆!」
ケラケラと目の前で腹を抱えて笑うローゼンクロイツ。
「に、に、人間の如きがああああ!!」
再び鋭い爪をローゼンクロイツ目掛けて降り下ろす。
「能が無いなあ。低知能生物はこれが限界かあ」
ニーズヘッグが捕らえたと思った瞬間、ローゼンクロイツの姿がその場から消えアジ・ダ・ハーカの三本の首の一本をへし折ってしまった。
アジ・ダ・ハーカの苦しみの叫び声がバルティカの戦場に木霊する。
その一部始終を見ていたアルカナ・ナイツのメンバー達にもそのローゼンクロイツの姿と声は届いていた。
「バッツこれは一体どーゆー事だ?」
「俺にも分かんねーよ。ただ・・・」
「ただ?」
「俺らが思っている事と真実は異なるかもしれねえーな」
「元凶は、あの魔道士ーー」
「・・・分かんねーけどな」
アルカナ・ナイツのメンバーは一斉に魔道士に視線をおくる。
ケラケラと憎たらしい笑い声をあげる魔道士ーー薄っすらとあの日の情景が思い出させる。
ーーこの笑い声、あの日も聞いた ーー
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