三人の精霊と俺の契約事情
バジリスク③
「くっ、毒のブレスで迂闊に近寄れない」
「もう帰りたいです。他の人に任せて帰りましょうよ」
猛毒の邪竜バジリスクと対峙しているロビンとライラは苦戦を強いられていた。毒のブレスで身を護りながら六本の腕を振り回し鋭い爪で攻撃してくるバジリスクに対しロビンとライラは距離を取らざるを得ない状況の為、なかなか攻撃する機会を得られないでいた。唯一の反撃はライラの自動発動魔法のみであった。
オートマチックの閃光弾は段数が多いが一発、一発の威力は小さく竜の皮膚はあらゆる攻撃や魔法の耐性がある為ほぼ目眩し程度にしかならなかった。
「ロビン君、水晶が光ってるよ。帰れって知らせかも」
腕に付けている水晶から音声聴こえる。
「セントラルコントロールより第七、八部隊へ、ゲートを開ける交替だ」
「やっぱり! ああ、これで帰れる」
ライラは万遍の笑みを浮かべた。ーーしかし、
「こちらロビン、セントラルコントロール。俺とライラはこのまま継続してバジリスクを討つ」
「ええーー! ヤダよ、帰らせてよ」
「了解した!ご武運祈る」
「せ、セントラルコントロール。私は帰りますよ、セントラルコントロール?」
「悪あがきはよせ! 帰りたければオートマチックをやめて本気を出せ!」
「本気って? 私は戦いたくないのですよ」
「ーーなら、このまま無駄に永くここにいる事になるぜ。バジリスクか俺たちか先に魔力の尽きた方が負けだな」
「ううぅぅぅぅ」
「なるべくなら俺は召喚を使いたくない。ライラ君の力が必要なんだ。頼むぜ!」
「ーーめんどくさい。正直、誰が負けようと国が滅びようと誰が死のうと私には関係ないのよ。本当迷惑・・・」
「ーーーー」
ロビンは無表情でライラを見た。自分とは全く違う考えの持ち主に何と言葉を返して良いのか分からなかった。
ロビンは幼い頃からずっと魔法騎士団に憧れていた。国や国民を守る強くてカッコイイ騎士団に心惹かれいつか自分も騎士団になりたいと思っていた。
ーーライラは全くの真逆だ。
成りたくて円卓の魔道士になった訳でもなく名誉も功績も何もかもいらない。ただ平穏な日常をおくれればそれで良い。
ライラの家系は、精霊使いや得意能力者の家系であるためライラ自身生まれつき才能があった。その才能すら要らないと思っているのだ。他の人から見れば妬ましい話である。
そんなライラにロビンは、
「ーーお前に頼んだ俺が馬鹿だったよ。そこまで性根が腐っていたとは思わなかった。この現状を見れば少なからず誰でも力を貸そうとか思うと思っていたよ」
「やっと分かった?私はその程度の正義感しかないのよ。生まれつき無駄に魔力があるせいで戦え、戦えうるさいのよ。好き好んで魔力を得た訳じゃないのよ。要らないのよ魔力なんか!!」
「ーー俺は、魔力が無くても必死で戦ってきた人の話を団長から聞いた事がある。その人は魔力が欲しくて色々努力したみたいだ。魔力がないせいで虐めや罵倒もされたらしい」
「・・・だから?」
「努力しても手に入らない才能を持っているのにそれを使わないのは罪だ!ーーその人は、精霊と契約してようやく魔力を手に入れた。その力を自分だけの物にしないでみんなの為に使い世界の危機を救ってくれた。俺はその人を信頼してるしスゲーと思ってる」
「ーーーー」
「お前がそこで黙って観てるならバジリスクは俺一人でもやる!」
「ごちゃごちゃ女みたいにうるさいのよ。やれば良いんでしょ?」
「素直じゃねえな」
溜め息混じりに苦笑いを浮かべるロビン。
「アーサーさんを掛け合いに出されたらやらざるを得ないじゃない」
「なら頼むぜ、正直魔力が限界に近いんだ」
「ふーっ、誰かの為に戦うとか生まれて初めてかもしれないです」
「期待してるぜ、ライラ」
☆ ☆ ☆
バルティカ要塞ーー通称、バルティカの壁。
高さ四十数メートルは優にあり、竜や魔物の新入を防いでいる。建物の中には、待機所や軍事司令部、監視塔や鉄格子のついた扉で警備されている。また要塞内部は複雑に入り組んだ通路と何重もの鉄のバリアを通過しなければならない。あらゆる危険に対する防御がなされている。
更に壁の外壁には高密度な防御術式が何重にも彫られており決して傷付けることも破壊することも出来ない。いつ、誰がこれを刻んだのかは不明だ。最後の砦であり最強の盾がこのバルティカの壁であるのだ。
最上階の作戦司令室の通信水晶が輝くーー。
「こちら、作戦司令室ーー本当か?」
通信を受けとった兵士は表情をやわらげ、
「本部長、例の頼んでいた増援部隊が到着致しました」
「通信水晶の映像を送ってくれ」
ダグラス・クルーニーが指示を出す。
「通信水晶の映像を写します」
兵士がスクリーンに映像を転送するーー、
「なっ、この連中が増援部隊?」
「まだ子供じゃないかーー」
そこに写し出されたのはまだ十代の少年少女たち六名だった。
「ーーなんだ? 早く中に入れろよ。それとも何か?俺らの実力を疑ってんのか?」
銀髪のツンツン頭の少年が入り口の水晶を覗き込み睨みを利かす。
「ば、バッツ止しなさいよ。怒られるわよ」
「まあ、バッツのおかげで戦場に行かないなら行かないでそれはそれで良いんだけどね俺は」
「そーなったら困るわよ。せっかくの儲け話じゃない、通常のギルドミッションの数十倍の値よ。これがパーになったらどーすんのよ」
「あ? そんなん俺らのこと子供だからって実力を疑ってるに違いねーって」
「とにかくバッツは大人しくしてなさいよ」
「俺は行かないなら行かないで方が良い」
「ーーだから、儲け話なくなったらどーすんのよ」
バッツとは、反帝国軍バンディッツの副総統でレーベンハートの右腕とも呼ばれている。
銀髪のツンツン頭に頬にキズがあり、人相の悪そうなつり目をしている。年齢はこのメンバーの中では最年長の十八歳。
実力者不足、魔道士不足と深刻な状況が続くバルティカ戦線に帝国騎士団を上回るとされている実力者揃いのバンディッツに協力依頼が来たのだった。
「ーーそもそも、バッツなんかを雇ってるバンディッツを疑うわよ」
「どーゆー意味だよ、ミモザ」
ミモザと呼ばれた少女はこのメンバーの中ではまとめ役である。パッチリとした茶色瞳に身長は百四十センチくらいで栗毛色の背中にかかるくらいの髪に銀色の髪留めをしている。
「いちいちミモザの挑発に乗るなよバッツ。連絡こないなら帰ろーぜ」
「ウィリー相変わらずやる気ないな」
ウィリーと呼ばれた少年は、本名はウィリアムス。あくびばかりしていてやる気はほんとんど無い。金髪短髪の刈り上げ頭に鋭い目付きをしている。
六人がそんなやり取りをしているとバルティカの壁への扉が開いたーー。
「待たせて悪かった中へ入りたまえ」
扉の監視水晶から音声が聞こえた。その言葉に対してバッツが早速突っ込みを入れる。
「応援に来てやってんだぜ? 待たせ過ぎだろ?」
「まあまあそう言う言い方しないの」
おっとりした喋り方と気の長い性格でいつもバッツやミモザの間を取持ちメンバーのお世話係的存在は、名はリリー、ピンク色の髪をショートカットにしている。
六人は言われるがまま要塞の中に入ったーー。
☆ ☆ ☆
「ーー俺がバジリスクを引きつけるから隙をついて撃ち込め!」
「私の意思で魔法が使えるのかしら?」
ロビンはバジリスクのまわりを動きまわり注意をライラから逸らす。バジリスクの目はロビンのみに集中し動きを追っている。
「ライラ頼むぜ」
バジリスクの六本の足が不規則に動きロビンを襲うーーロビンは間一髪で持ち前の身体能力で全てを回避する。
「くっ、あぶね」
ロビンにホッとひと息つく間も与えずバジリスクは毒のブレスを至近距離から放つ。
「くそ!」
後方に一気に距離をとる。毒のブレスがロビンを追いかけるように範囲を広げ追いかけてくる。
「ライラ!! まだか?」
「ーー分かってるけどやっぱり上手く出来ないのよ」
ライラは、未だかつて自分の意思で魔法を使ったことがなかった。だからどうやったら魔法を使うのかわからなかったのだ。
「マジか! 」
バジリスクはこの間もロビンに襲いかかっていた。
「ライラ!」
「やってるわよ!」
焦りと苛立ちで魔力を上手く練れないライラ。
「ライラ!!」
ロビンはバジリスクの攻撃を必死で回避しながら叫ぶ。ーーその声に更に苛立ちを増したライラは、
「五月蝿いわね!もう知らないわよ」
魔力を寝るのを諦めてロビンに背を向けた。
その姿を見たロビンは自分の目を疑った。仮にも一緒に戦ってる仲間を見捨てて立ち去ろうとするその神経を疑った。
「まぢかよ」
ふらふらとその場から立ち去ろうとするライラは更にあくびをし眠気眼を擦り出した。
「・・・何だか眠くなって」
ライラは急激な眠気に襲われ意識が朦朧としていた。これこそライラの魔力がピークに達した状態だった。オートマチックの最強はライラが意識がなくった状態で完成するのだ。
ライラが普段知らない間に戦場にいた。知らない間に危険地帯にいたなど全てライラ自身が意識を失ってる間に起こっているのだ。ライラ自身が知らなくて当然である。
「モード移行、trance」
まるで、操り人形を誰かが糸を引いたかのように起き上がった。
ライラが円卓の魔道士に選抜された本領が今発揮されるーー。
        ーー  mode trance  ーー
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