三人の精霊と俺の契約事情
愛しのメーディア
メイザースの死を知ってから次の日、キルケーはメーディアが心配でならなかった。
いつものように着地に失敗しおでこを地面にぶつけたキルケー。
黒いトンガリ帽子に黒いマント、ピンク色のショートヘアーのおてんばな女の子だ。
ディンゴーンと豪華な呼び鈴が屋敷に響いた。しかし、何の反応も無い。
再び、呼び鈴を鳴らすが返答も無い。
キルケーはおかしいと思い屋敷の中に入って行く。
「お邪魔します。メーディア?メーディアいるのか?」
恐る恐る奥へと進むと美味しそうな匂いが漂ってきた。
キルケーは匂いのする方向へと歩み寄って行くとそこは食卓のある部屋だった。
テーブルには二人分の朝食が並べられていた。
「ーーーー」
言葉を失うキルケー。
キッチンに目をやるとメーディアがコーヒーを沸かしている最中だった。
「メーディア・・・」
その言葉に無反応なメーディア。
キルケーが歩み寄って肩を掴み、
「メーディア、メーディア」
「ーーあっ、キルケー。居たの?ごめん
なさい。なんかボーッとしてすぐにメイザース様にコーヒーを淹れてあなたの朝食も用意するわね」
その言葉に落胆するキルケーはすぐに、
「メーディア、しっかりしろよ。メイザースさんは・・・亡くなっただろ」
メーディアは持っていたコーヒーカップを床に落し割れた音がメーディアの心を砕いたように聞こえた。
「うっ、うっ、分かっていたんだけど、いつもの癖で。メイザース様はもういないのに」
キルケーに寄り添うメーディア。
「メーディア・・・私が出来るだけ側にいるから。メイザースさんの代わりにはなれないけど側にいるから」
涙を流しながら上目遣いにキルケーを見るメーディア。
( 可愛すぎる。ヤバい、ヤバいこんな時に不謹慎だろ!けど、けど・・・)
「ありがとうキルケー、いつも私を気遣ってくれて」
涙を拭きながら笑顔を見せてるメーディア。
( 笑顔はもっと可愛いぞ )
だんだんとキルケーのボルテージが上がって行く。
( いかん、いかん。不謹慎だ!唯一の家族のような人を亡くしたばかりなんだ)
キルケーは首を横に振り、顔をパンと自分で叩いた。
「どーしたの?」
キルケーの訳の分からない行動に首を傾げるメーディア。
「な、何でもない。ははは、メーディアが元気ならそれで良いんだ」
しどろもどろな返事を返すキルケー。
( あんまり永く居ると気持ちが破裂してしまいそうだ。そうなる前にーー)
「じゃあ、私はこれで・・・」
キルケーが帰ろうとするとーー、
「ーー待って」
キルケーの背中に抱きつくメーディア。
「め、め、め、め、め、めーでぃあ??」
混乱するキルケー、もう嬉しいやらどうして良いのか、訳がならなくなっている。
「行かないで、一人にしないで」
( せ、せ、背中にメーディアの胸が、ヤバいヤバい、ヤバい )
「だ、ダメだ。もう耐えられない!!」
キルケーは振り返りメーディアの両肩を掴んだ。
「キルケー・・・」
「メーディア・・・」
見つめ合う二人。
そっと背中に手を回し抱き寄せようとした瞬間ーー、
ガチャン!
玄関のドアが開いた。
「やあやあ、メーディアちゃん寂しかったかあい?」
「ーーえっ?」
「メイザース様あああ」
キルケーを突き飛ばしメイザースに駆け寄るメーディア。
キルケーは壁に激突した。
「そ、そんなあ」
涙目になるキルケーだった。
「あらあら、桃色エロ娘どうしたんだい?」
「さあ、どうしたのかしら?」
メーディアは両手を広げ首を傾げた。
「酷いよお、メーディアあああ」
キルケーの叫びはメーディアの心には届かないのであった。
おわり。
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