三人の精霊と俺の契約事情

望月まーゆノベルバ引退

魔女狩り④


「これはどういうことなんだ?私の天才的飛行技術が必要だと聞いたのだが」

黒いトンガリ帽子に黒いマント、手には箒を持っている。

 肩くらいまでのショートヘヤーの桃色の髪で大きな瞳の可愛らしい少女。自称天才魔道士キルケーがやってきた。
ーーただし、破天荒過ぎる性格の持ち主である。

「私もまさかアーサーさんに移動手段があるとは思わなくて。無駄足だったわね、ごめんなさいね」

メーディアが顔の前で掌を合わせて謝った。

「いやいや、私も丁度メーディアに会いたいと思っていたとこだったんだよ」

素直に謝ってくるメーディアにキルケーはリアクションに困り苦笑いを浮かべた。

「それにしても、グリフィン何て初めて見たわ」

メーディアは物珍しくキョロキョロとグリフィンを観察していた。

「確かに私もグリフィンを初めて見るのだよ」

同じくキルケーもグリフィンを観察していると、

「グワァァァァァァァァ」

「ひいぃぃぃ!!何で私だけが吠えられるのだ」

キルケーだけがなぜかグリフィンに威嚇されるのだった。

「髪がピンク色だから刺激を与えているのよ」

「そーなのか、そーなのか?」

キルケーは黒いとんがり帽子を深く被り直した。メーディアの冗談を本気にするキルケーだった。

屋敷の外の騒ぎを聞きつけメイザースが外に出て来た。

「いやあ、懐かしいな。グリフィンですか」

メイザースは目を細め微笑む。

「この凶暴な生物を知っているのか?」

キルケーがグリフィンを指差しながらメイザースに問いかけた。

「知っているも何もシーサーと私はこのグリフィンに乗って旅をしてましたからね」

メイザースはグリフィンの頭を撫でてながら答えた。

「だからこの場所に来たのかな?」

メイザースは「ん?」とアーサーに聞きなおした。

「いや、このグリフィンはシーサーオヤジから譲り受けた物なんです」

「そうでしたか。グリフィンもしばらくの間誰も相手にしてもらっていなかったからさぞ嬉しいでしょうね。大事にしてあげて下さいね」

「はい」

アーサーはグリフィンを見つめて力強く返事をした。

「アーサーさんはこれからどちらに向かわれるのですか?キルケーも来たのでもう少しゆっくりなされては」

メーディアがキルケーと一緒に中に案内しようとするが、

「せっかくだけど、金色の瞳も戻ったので今はバンディッツに所属しているので一度本部に帰って報告などしてからまたゆっくり寄らせてもらうよ」

「何かあったら遠慮なく私にも声をかけて良いぞ!」

キルケーは高笑いしながら仰け反った。

「ありがとうキルケー」

「アーサーきゅん、また是非いらして下さいね」

「本当にありがとうメイザース。必ずまた来るよ」

アーサーがメイザースに頭を下げた。

「リサ、エルザ、シルフィーまた遊びに来てね」

「うん。またねメーディア」
「バイバイなの」
「お邪魔致しました。またお逢い致しましょう」

三人の精霊はメーディアに手を振った。

グリフィンに跨がったアーサーはグリフィンの首元に手を回し、グリフィンの背中をポンと軽く叩くとグリフィンは空高く飛び立った。

メイザース、メーディア、キルケーはグリフィンが見えなくなるまで空に向かって手を振っていた。




*  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *


「堕天使ルシファーか・・・またとんでもない者を召喚してくれたな」

瓦礫の山の中を歩いてまわるヴィル。
そこには何もない、地獄絵図のような光景が広がっている。

「塔があったのはこの辺りか?」

ヴィルが手を地面に翳すと瓦礫が空中に浮きその周辺の瓦礫が全て撤去される。

「ん?紫色の髪の娘・・・」

撤去した瓦礫の下から一人の少女が倒れているのが見つかった。ヴィルは、ゆっくりと少女に近づく。

「脈はある・・・」

ヴィルは少女をそのまま放置し、また辺りを散策し始めた。しばらくヴィルは地面を見つめて何かを探していた。

「ーーここか!」

一箇所明らかに他の場所とは雰囲気が違う地下への扉があった。

「地下に行くにはーー何か特殊な術式が組み込まれているようだな」

ヴィルはしばらく考え込んでいると、先ほどの少女に目をやった。ヴィルは何か思いついたように少女に近づき抱き抱えると地下への扉に少女の手を置いてみる。

地下への扉は、青白く輝いた。立体的な術式が浮かび上がりその文字をなぞるように一文字、一文字光り輝いていく。最後の一文字が輝いた時、ガチャンと鍵が開く音がした。

「やはりクリスタルパレスの姫だったのか。今回ばかりは助かった。後で人目につく場所に移動させてやる。しばらくそこで寝ていてくれ」

ヴィルは、地下へと降りて行ったーー。




「ーーこれが禁断の書物グリモワール

ヴィルが降りて行った先には、辺り一面綺麗な白い石造りの空間が広がっていた。奥には巨大な女神像がありその手には書物が握られていた。

ヴィルは女神像に歩み寄り書物を取ろうとしたがーー、

「くっ、封印術式か」

ヴィルは、間一髪術式に触れずに済んだ。もし術式に触れていたら腕ごと吹き飛んでいた可能性があった。

「女神像を腕ごと持って行くか。ーー後は、書物の周辺を障壁で囲むか」

ヴィルは、顎に手を置き考えていると、何かを思いついたようにまた地上へと引き返して行った。

「ふう、また君の出番のようだ。人目につく場所どころか保護をしてあげなきゃならんな」

ヴィルは、紫色の髪の少女を抱き抱えると再び地下へ降りて行きあの女神像の書物に少女の手を翳した。

ーーすると、

書物は輝き、術式が消えたのが分かった。

ヴィルは少女を床に寝かせ、恐る恐る書物を手に取ってみる。

「ーーーー」

ヴィルは、書物を懐にしまうと少女を抱き抱えこの地下室を後にした。



その後、少女が目を覚ましたのはクリスタルパレスから少し離れた教会の一室だった。

キツネ目の男が何も言わず少女と大金を残し去って行ったそうだった。

この少女こそ行方不明となったリリスだった。

彼女は、それからしばらくこの教会で過ごすことになる。この近くにはホーエンハイムがあり彼女は昔訪れた記憶からホーエンハイムのアクセルを頼りすることになるのだった。



その後、アーサーたちと出会うことになる。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品