三人の精霊と俺の契約事情
隠した過去
「僕のこと必要ないんじゃなかったの?」
アーサーの目の前に同じ顔、同じ形の人物が立っていた。
「パンドラ・・・」
「僕のこと不要って言ってたじゃないか。なぜまた僕を探すの?君は一人でもやれるって言ってたじゃないか」
「ーー違うんだ、俺には力がなかった。勘違いしてたんだ。全て君のおかげだったのに」
「僕のおかげ?」
「そうだよ。金色の瞳のおかげだったんだ。それを俺自身の力と勘違いしてた。俺には君の力が必要なんだ。頼む俺に力を貸してくれ!」
パンドラは大きくため息を吐いた。
「君は僕、僕は君。なら分かるはずだろ、本当は分かってるんだろ?なぜ、魔力に蓋をされたか?シーサーが魔力を奪った理由を」
「ーーーー」
「なぜ街の人が差別したのか?」
『バケモノ・バケモノ・バケモノ・バケモノ
化け物・化け物・化け物・化け物・化け物』
脳裏に街の人々の顔が映し出され冷ややかな目つきでアーサーを見つめている。
「違う、違う、違う、俺じゃない、俺じゃないんだ」
「君だよ。君は僕だよ。だから分かるーー魔力の暴走」
「違う」
「街を破壊し、暴れまわる君を止める為にマーリンを呼んで封印したんだ」
「違う」
「これで街の人の反応の意味がわかるだろ?」
「ちがう」
「普通に考えて魔力が無いだけで無視されたりする訳がないだろ?君は有り余る魔力をコントロール出来ず度々、街で暴れていたんだよ」
「ぢがゔ」
「残念ながらこれが真実だよ。これが君の過去。僕を作り上げて真実から目を背けたんだ。そして自分を被害者にしたてあげ引きこもった」
「違うぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」
アーサーは膝を地面に着き両手で顔を覆った。
「アーサー、もう思い出してるんだろ?分かってるんだろ?」
「俺は、俺は・・・」
「今なら分かるはずだ。もう君にはーー」
ボクは、必要ないだろ?
パンドラ君は俺にとっての・・・
☆ ☆ ☆
少年は自分の力を抑えきれず無差別に暴れまわる。感情が高ぶる度に魔力は暴走するーー。
「ゔわあああああァァァァァァ」
「やめるんだアーサー!!」
シーサーがアーサーの目の前に立ち、行く手を塞ぐ。
「ゔわあああああ!!」
凄まじい魔力のオーラに包まれたアーサーはシーサーに向けて魔法を放つ。
「くっ、魔法障壁」
障壁を貼り防ごうとするがアーサーの放つ魔法で粉々に砕け散った。
「何て、魔力量なんだ」
「グワアァァァァァァァァ」
アーサーは、見境なく魔法を放つ。
「やめろ! アーサー」
シーサーは、アーサーにしがみ付く。
「ぐわぁぁぁぁ」
アーサーはシーサーを振り払い、シーサーに至近距離から魔法を放つ。
「ーーーー!!」
「間一髪セーフね」
シーサーの目の前に透明な壁が現れアーサーの魔法を回避していた。
「マーリン、助かったよ」
シーサーはホッと胸を撫で下ろした。
「それにしてもこの子の魔力量は半端ないわね。羨ましいわ」
「ーーそれより方法は何かあるのか?」
「魔力回路に蓋をするしかないわね」
「やはりそうか・・・」
「こんな暴走が毎回と考えるならこの子には可哀想だけど魔力は諦めてもらうしかないわね」
「ーーああ、やってくれ」
「本当にいいのね?」
「俺も暴走の度にアヴァロンを離れる訳には行かないからな。マーリン、頼むやってくれ」
「分かったわ。やったらもう後には戻らないからね」
「ああ、きっといつかアーサー自身がこの問題に気付き解決するはずだ」
「ーーどうかしらね?」
☆ ☆ ☆
「「「アーサー様!!!」」」
どこから音も無く声が聞こえた。
「君を呼ぶ声だ。僕が居なくても君には君を待っている人がいる」
「パンドラ・・・」
「行きたまえ、君を待つ人のところへ。もう暴走などしないはずだ。もし感情が乱れたり心が傷んだ時はまわりを見てごらん」
「まわりを・・・」
いつだって君のまわりには君を支えてくれ人がいる。君は、一人じゃない。
パンドラありがとう。
君は僕にとって正しく『希望』だったよ。
アーサーはゆっくりと目を開けた。
その瞳を金色に染めてーー。
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