三人の精霊と俺の契約事情
生きていた魔道士
「アーサー、リサ、エルザ、シルフィーお久しぶりね。元気にしてた?」
銀色のショートヘヤーで両サイドを三つ編みにして可愛い赤いリンボで留めている。ミニスカートのフリフリのメイド服のメーディアがアーサー達のために紅茶をもてなしてくれた。
「三人の精霊ちゃんもアーサーきゅんも見ての通り元気そのものなのだよ」
「メイザース様には聞いてません」
メーディアは無表情でナイフで切り裂いたようにばっさり言いきった。
「メイザースーー聞き辛いんだが、死んだと聞かされてたんだ」
その言葉にメイザースは真剣な面持ちをし、
「ほぼ死んでましたね。頭の中をグチャグチャにされて理性を亡くした状態で時間と時間の狭間に飛ばされたのだよ」
メイザースはゆっくりとティーカップを持って口に紅茶を含んだ。一口飲み終えるとティーカップを元に戻し、
「時の砂の魔法が解けたと同時に正気を取り戻したのだよ。だけど目覚めたのは時間と時間の狭間、今現在のこの時間に戻ってくる手段を考えるのにもの凄ーく時間がかかったのだよ」
「そっかあ、メーディア良かったね。メイザースが生きてて」
メーディアを見ると銀色のティーカップを運ぶ円形のトレーで顔を隠して、何度も何度も首を縦に振っていた。
「ああっ、メーディア泣いてるの」
エルザがふわふわと浮きながら銀色のトレーの間から顔を除いた。
メーディアにとって親以上の存在、それがメイザースで彼の身の回りの世話をすることがメーディアの生き甲斐だ。
アーサーとメイザースはそんな彼女の姿に胸を撫で下ろした。
「ーーさて、さてアーサーきゅん。なぜここへ?」
アーサーが答えようとした時、メイザースの前に茶色のふわふわ頭が現れた。
「えっとねえ、怪獣にここまで連れてこられたの」
「ほお、怪獣に!」
興味津々にエルザの話に耳を傾けるメイザース。
「そおなの、アーサー様が笛を吹いたお空から飛んできてね。私たちを勝手にここまで運んできたの」
事細かに身振り手振りを交えてメイザースに説明するエルザ。その姿を笑顔で聞いてあげてるメイザース。エルザがひと通り話終えると頭を撫でてあげ、
「よく説明出来たね。凄く状況が分かったよありがとう」
エルザは満足そうに笑みを浮かべて「褒められたあ」とリサとシルフィーに自慢していた。
「あのグリフィンはなぜここの場所を?」
アーサーが疑いに眼差しをメイザースに向ける。
「グリフィン? ん-それは知らないが恐らくアーサーきゅんが行きたいと思っている場所を心情を読み取って連れて来てくれたのかもしれないのだよ」
相変わらずうんさん臭い、いまいち信用にかけるメイザースだ。
「本題だが、ここへ来た目的は金色の瞳について」
メイザースは再び真剣な表情に変えた。アーサーはさらに、
「マーリンの時の砂の魔法が解けて以降、金色の瞳が全く使えないんだ。もう一度使えるようにしてほしい。何か方法を教えてほしい」
メイザースは目を細め、ゆっくりとティーカップを持って紅茶を飲み干した。
「ーーアーサーきゅん、君のためにはこのまま使えない方が良いと思うのだよ」
アーサーがその言葉に反応しメイザースを真っ直ぐ見つめる。
「使えないって事は人格のスイッチが出来ない。前にアーサーきゅんが話してくれたパンドラという、アーサーきゅんが創り上げた人格がいなくなったという事なのだよ。それは今現在のアーサーきゅんが充実した日々を過ごしていてパンドラを消し去ってしまったのだよ」
「ーーーー」
アーサーは期待していたものが手の中からこぼれ落ちてしまったような気分だった。この世の終わりのような表情をしているアーサーにメイザースは、
「なぜそんなに金色の瞳が必要なのです?」
「ーーなぜってそれは」
「確かに契約している精霊の魔導力を限界まで引き上げてくれる増強剤的な役割を果たしてくれかもしれないが、あくまでその程度なのです。人格をころころスイッチさせて精神を傷つけてまで行うリスクを背負うほどのことでもないのだよ」
メイザースは首を横に振った。
「落ちこぼれの人間の気持ちが、魔法が使えない人間の気持ちがメイザースには分からないんだよ。俺もコイツらも必死でここまで戦ってきたよ。前回のカタリナの時も必死で頑張って戦った。ーーけど、所詮はつい最近まで家に引きこもってた落ちこぼれの人間だよ。目の前で倒れていく人がいても何も出来ない。大切な人ですら俺は助けられなかった」
アーサーは肩を震わせながら両膝に置いていた拳を力一杯握る。
「たかが、魔導力増強剤?そのたかが俺には必要なんだよ!そのたかが俺にはとってはどれだけ必要だったか。そのチカラがあれば何人の人を救えたか。コイツらも俺もボロボロになって戦っても何も救えなかった。こんな思いをもうしたくないんだよ・・・」
アーサーの握った拳に雫が落ちた。
「アーサーきゅん・・・」
「メイザース様、方法あるのでしょ?」
メーディアがメイザースに問いかける。
「ん-、あるにはあるのですがこれはかなり危険なので言いたくなかったのだよ」
「あるんですか!」
「ええ、ただし命の危険があるのだよ。だから教えてたくなかったのだよ」
「ーー命の危険ってどんなことを?」
「アーサーきゅんが全く使えないと言われている魔力を無理矢理引っ張り出すのだよ」
「そんなこと出来るの?」
「マーリンの時の砂の魔法が解けた今、シーサーとマーリンがアーサーきゅんの魔力を封印した事は無かったことになっているのだよ。ーーよって、事は眠っている魔力を呼び起こすのだよ。その反動により金色の瞳も復活するかもしれないのだよ」
「危険を伴うってのは?」
「無理矢理引っ張り出すので体への負担がかなり大きいのだよ。下手をすれば体の内側で魔力が爆発するのだよ」
「体の内側で魔力が爆発ーー」
「まあ、少し脅しは入ってますがメイザース様がおっしゃっている事はあながち間違いではないですよ」
メーディアが話に割って入った。
「アーサーきゅんどうするんだい?それでも金色の瞳を手に入れたいのかい?」
「迷いはないよ。もう一度エンペラーアイを手に入れたい。この命と引き換えても」
アーサーの真っ直ぐな瞳から意志の堅さが伝わる。メイザースは大きくため息を吐き諦めたのか指をパチンと鳴らしメーディアに合図を送った。
「ーーじゃあ、始めましょうか。奥の部屋に移動するだよ。メーディアちゃんが先に準備してくれてるのだよ」
不安を胸に抱きながらアーサーは、メイザースの後をついて部屋を出て行った。
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