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三人の精霊と俺の契約事情

望月まーゆノベルバ引退

語られない過去


「ああ・・・これこれ姫様なんてことを」

紫色の髪に青い瞳をした少女が壁に落書きをしている。

「ーーだってつまんないんだもん。ふんっ」

私は、お城のお姫様、少し年の離れた姉がいて年下の私を王様パパにドロドロに溺愛されて育った。

だから、欲しいものは何でも手に入ったお金もオモチャも洋服も何もかも・・・・・・。

ーーだけど、物心ついた時一つ気付いた。


十歳の時だ・・・。



「姫様、姫様ああーー」

緑豊かな庭園に女性の声が響き渡る。

クリスタル造りの虹色に輝く塔の物陰に少女は座り込んでいた。

「・・・・」

耳の形がとんがっている女性はエルフ族で姫様と先ほどから少女を捜していた女性だ。彼女は少女を見つけると何も言わず一緒に隣に座った。

庭園から眺めてる景色はとても長閑のどかだ。
湖の真ん中に建てられた国の象徴であるクリスタルの塔。その周りを色とりどりの花と緑豊かな木々が植えられている。花壇の周りには沢山の妖精や精霊が楽しそうに遊んでいる。

「ーーどうしたのです?」

少女はエルフの女性が隣に座っていたのに気付かずびっくりしたように目を丸くしたがまたすぐに遠くを見つめ難しい顔をした。

「最近パパが私に構ってくれないの。いつも変な人と難しい話ばっかしててーー」

「それは今、アストレア帝国とウチは対立していてその対策を練っているからですよ」

「本当は私のことを嫌いになったからじゃないの?」

「大丈夫ですよ。国王様が姫様を嫌いになったりするはずないですもの」

エルフの女性は笑顔で少女の顔を覗き込んだ。まるで少女の不安を消し去るように。

「うん」


この頃はいつでも、どこでも誰かが支えてくれた。優しく心を包み込んでくれた。

私は孤独になると弱い、何も出来ない。

いつも誰かに支えられ、いつも誰かに包まれて、いつも誰かに愛されて。

だけど今は違うーー誰もいない。
誰も愛してくれない。

だって、孤独だから。


☆ ☆ ☆ 

雷鳴が轟いたような爆発音が空気を振動させる。その直後に建物が瓦礫のように崩れ落ちる。

白い白煙があちらこちらで空に立ち上がる。

緑と水が溢れる魔法王国クリスタルパレスその名のとおり美しいクリスタルで創り上げられたこの国の象徴である塔は崩壊する寸前だったーー。

緑が眩しかった木々は粉々に粉砕され数えきれない数の倒木している。近くの花壇は地面ごと吹き飛ばされた跡がありその衝撃の大きさを物語っていた。

爆発音に混じり無数の悲鳴が木霊する。
美しい川と白糸の滝は赤黒く変色し濁っている。

必要に降り注ぐ魔法の閃光の雨は国中に猛威をふるった。


それは突然現れてクリスタルパレス国民を無差別に惨殺していった。

あの日何があって、何が起こったのか。
そこで何を見たのか。

その真実を誰も伝えていないーー。



ただ一言、『魔女狩りがあった』とだけ伝えられている。



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