三人の精霊と俺の契約事情

望月まーゆノベルバ引退

レオンとソフィア⑤


いつも通りの朝、つい最近までは湖のほとりをソフィアと散歩していたーー。

ソフィアが国王宣言した後からは一度も来ていなかった。ーーいや、正確に言えば行きたくなかった。


今日は、昨日のソフィアを無視してしまった事もあり何故なぜか無性にこの場所に来たくなったのだ。

湖は、相変わらず朝日を浴びてキラキラと輝いていた。

いつもならソフィアが大はしゃぎして駆け回っているだろう。レオンはその光景を思い浮かべて少し口元を緩めた。

ーーふと、湖の少し奥の方に金髪の少し髪の短い白のワンピースを着た女の子が一人歩いているのが目に映った。

その女の子はアーサーからは朝日が逆光になり良く分からないが綺麗な可愛らしい姿だ。

レオンは、その女の子に見惚れてぼんやりと立っていると、その女の子は徐々に近づいて来たーー。

「ーーレオン」

聞き覚えどころか何年もずっと聞いてきた声だ。

「ソフィア・・・」

あの日以来、真面まともに見れなかったソフィアの顔。思わず込み上げてきた感情を堪えきれずレオンは崩れ落ち膝を地面に付きソフィアにしがみ付き泣いた。

「レオン・・・」

ソフィアは何も言わずただレオンの頭を撫でていたーー。

朝日は二人を優しく包み込んでいた。




「あ、あのソフィア様。ーー申し訳ございませんでした」

顔を耳まで赤くして頭を下げて謝るレオン。ーー必死だ。

「いいのよ、レオン。私も寂しかったのよ。また明日も一緒にここに来たいわ。二人だけの秘密よ」

ソフィアのその姿は今までの何年も一緒に過ごしてきたあの愛らしい可愛いソフィアその者だったーー。

「そろそろ王宮に帰らないと、皆、私の姿がないと大騒ぎしてしまいますので」

そう言うと、すぐさまカタリナ城に向かった。

レオンは少し安心した。
いつものソフィアに会えたから。

そして、改めて決意した!
彼女の為に、命を懸けて守ることを!

レオンは決意を胸にソフィアの後を追った。 



カタリナ城に帰ると、大騒ぎだったーー。

ソフィアが居なかったことではなく、帝国からの最終通告が届いていた。

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返答なき場合、十日以内に武力行使に出る。

~ ハロルド三世 ~

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ソフィアの決断に異議を唱える者が出てきた。
帝国に対等に戦える武力はカタリナ公国にない。

攻めてこられたら一瞬で終わりだ。


「ーーソフィア様、何か考えがお有りですか?」

幹部らしき男が言う。

「・・一応、考えはあります」

ソフィアは少し不安そうに言う。

ソフィアは白ワンピース姿ではなく紅い鎧にマント姿の国王らしい姿に変わっていた。

「他国には援軍を頼むことは出来ないのですよ。それはお判りか?」

別の幹部が言う。

「ーーですが、私はこの国を・・」

「国と国民の命どちらが大事か?」

一人の男の言葉に全ての人が黙ったーー。

「私は、私は・・・お父様のーー」

ソフィアは言葉が出てこない。
国民の命と自分の信念を天秤にかけろと言われればそれは一択だったからだ。それでも貫きたい、譲れない思いはある。


「そうだ、そうだ! 国と国民の命どちらが大事なんだ」

容赦無い罵声が次から次へとソフィアに浴びせられる。

ソフィアは下を向き必死で堪える。
味方してくれる者は誰も一人もいない。
そう思っていた時だった。

「お前らはそれでいいのかよ!!!」

見るに耐えられないレオンが口を挟むーー
ソフィアはその声の方に顔を向ける。

「お前らは、しっかりと帝国の要求をみたのか?全て目を通したのか?何故なぜソフィア様がこの国を守りたいのか、分かろうとしたのか?」

静まり返る王宮の会議室・・・

「帝国の要求は、鉱山の採掘物資の八割譲渡、帝国への果樹の出荷義務。そして和平協定の義務だ。これを条件に配下に入れと言っているんだ!」

騒つく会議室、人々は困惑の表情を見せる。

「お前らは帝国に国を売れとソフィア様に言っていたのと同じだぞ。ソフィア様がみんなの命を大事に思ってない訳ないだろ!覚悟がなくて、国王になったと思ってるのか!」

レオンは叫んだ!その声は王宮の外にいた人々にも聞こえるほどだった。

「ーーレオン」

ソフィアはレオンを目を輝かせて見つめた。
その目には薄っすら涙が浮かんでいた。

「ーーしかし、どうやって帝国から」

「確かに我々が戦うとなっても、我々は戦う術をしらぬ」

皆一同に落胆の表情を浮かべている。
確かにこれでは何の解決にも至ってない。

 「・・・・」

レオンが言葉に詰まっていると、

「ーー剣を持って戦うだけが戦闘じゃない、武力が無くても戦えるます」

ソフィアは顔を上げ目を輝かせながら力強く答えたーー。


☆  ☆  ☆


会議室は作戦室へと変わっていた。ーーソフィアの考えは武力が無くても、頭を使い戦術と戦略、地形や土地勘を活かして戦うということだ。

「勝つために皆の知恵を借りたい。何でもいいので意見を聞かせて下さい。お願いします」

ソフィアは、自分だけで決めるんではなく、人の意見をしっかりと聞き入れそれを皆に説明し納得してもらう。国のリーダーとして大切なことを自然と持ち合わせていた。

国の人々と建てた作戦は、確かに的を得ている。しかし、本当に大丈夫なのか?ーーレオンは胸騒ぎしていた。



作戦会議後、部屋を出ようとすると白髪の老人執事にレオンは呼び止められたーー。

「反帝国軍という組織を知っているか?」

白髪の老人執事は神妙な面持ちで唐突に聞いてきた。

「ーー聞いたことはある。確か帝国クーデターに関与してた組織だと・・・」

レオンは顎に手をやり思い出しながら答える。

「国を持たぬ者同士が集まり作った組織だ。そのほとんどの者が異端児の流れ者、実力も帝国騎士団に匹敵するとさえ言われている」

白髪の老人執事は冷静に静かにレオンを説得するかのように、

「ーーそれはら反帝国軍に援軍を要請するってことですか?」

困惑したような目つきで白髪の老人紳士を見た。ーーそれは、ソフィアにほんの数分まで自分達だけで帝国と戦おうと誓ったばかりだったからだ。

白髪に老人執事はレオンに背を向け続ける。

「ーー援軍を了承してくれたお礼はカタリナ公国の鉱石採掘資源の八割を譲渡する」

レオンは驚き、空いた口も塞がらないとはこの事だったーー。

「ーーっ、それでは帝国と同じ」

「帝国と同じ条件で交渉するのだ!!無償でお願いなど出来ん、交渉する財力もない唯一ある交渉条件はこれしか無い!五割など甘過ぎる。なら帝国から提示された条件と同じ条件で交渉する。帝国に取られる位なら一層の事、反帝国軍に渡した方がマシだ!」

レオンは何も反論出来なかった・・・。確かに帝国に取られるよりはまだ反帝国軍のが話し合いなどすれば分かってもらえるかもしれない。それでもレオンは、得体の知れない他の国々の寄せ集めのような団体を本当に信用していいのか不安だったーー。

「お前からソフィア様に話しておけ。ソフィア様の了承次第すぐに反帝国軍に援軍の交渉に行け」

そう言い残すと白髪の老人執事は部屋から出て行った。

「ーーどの道、カタリナ公国はよそ者の支配下にされてしまうのか」

レオンは唇を噛んだ。ーーそれからしばらく会議室で一人ぼんやりと天井を見つめながら途方にくれるのだった。

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