三人の精霊と俺の契約事情
レオンとソフィア④
国王が亡くなってからすぐにカタリナ王国にも帝国からの条例案の提示が届いた。
未だ国王が決まらず、国王の葬儀もあり帝国の条例案どころではなかった。
「ーーどうするのじゃ!次の国王は?」
「まだそれどころでは・・ーー」
「帝国から条例案はどうするのだ?」
「葬儀の後の茶会の件は?」
「先に帝国のーー」
「イヤイヤ、先に葬儀のーー」
騒ぎ立てるばかりで話がまとまらない王国議会。
元々、カタリナ公国の王位は一つの名家の血筋を引く者が代々国王を継いできたのだ。
政治的な役割も全て国王が行い、争いの少ないカタリナ国民は何一つ反発もせず納得してきた。
しかし、先代の国王にはソフィア以外の子供はいなかった。
王位は、男系で長男が継ぐ。これはカタリナ公国誕生以来ずっと守られてきた事なのだ。
話が平行線のまま、まとまらず困り果てる使用人とレオン。
国王が不在となった今、国中がパニックになっていたーー
「どうするのじゃ!どうするのじゃ!」
「帝国から条例案をーー」
「イヤイヤ、次の国王を先にーー」
「だから!葬儀のだなーー」
もう議会の出席者たちも不安と焦りで限界だった。次第に苛立ちに変わっていった。
「ちょっーー落ち着いて下さい」
たまらずレオンが割って入る。
「もう限界だ!お前らだと話にならん!」
「何だと!!」
「静かにしろ!ここを何処だと思ってる」
遂に、不満が爆発したーー
レオンは、どうして良いか分からずその不安はどんどん風船のように膨らんでいきもう破裂寸前だった。
ガチャン!
勢いよくドアが開く音と共に金髪ショートカットの髪型をし、鎧を着た女の子が会議中の部屋に入ってきた。
さっきまでの騒ぎは嘘のように急にしんと静まり返るーー。
レオンもその女の子に見惚れていた。
少し遅れて白髪の老人執事は微笑みながら入ってきた。
「ーー今日から私が国王だ!!」
急な少女の言葉に何が起きているのか、その場にいる全員が分からなかった。ーーそれはレオンも一緒だった。
「皆良く聞いてほしい。父亡き今、この国を守っていくには私のチカラだけでは無理だ!皆も私にチカラを貸してくれ!今日からこの国は新しく生まれ変わる!」
「ソフィア?」
レオンは自分の目を疑ったーー何度も目を擦りその度に目をよく凝らすがやはりそこに居るのはあのか弱いイメージの彼女ではなく悠々しく逞ましい別人が立っていた。
「ーーソフィア様」
「まさか・・・ソフィア様か」
腰までの長い髪の毛をバッサリと切り、いつもは綺麗な可愛らしいドレスを着ていたのにそれが鎧に変わっていた。お淑やかな口調も厳しい強い口調に変わっていた。
「良いか皆!カタリナ公国は父の形見だ、母の家だ。カタリナ公国を帝国に渡さない。立ち上がれ!!」
ソフィアは皆の心に叫んだ!!
議会の全ての人々が立ち上がり雄叫びを上げた!!
「ソフィア・・・どうしたんだ?」
未だ何が起こっているのか理解出来ず一人取り残されたような気分でいるレオン。
この日カタリナ公国にソフィア国王が誕生した。
☆ ☆ ☆
ソフィア国王の誕生は小さな王国である為、全ての国民に知れ渡った。
そして、美しくそれでいて勇ましい口調に皆酔いしれた。
「良いか、カタリナ公国は帝国の支配下にはならない。カタリナ公国は皆の家だ!」
喝采が湧く!国中が一つになる。
国民全員がソフィアの虜になった。
しかしーーレオンだけは違った。
一人おいてけぼりを喰ったような気持ちになっていた。
「何だろ。国が一つになって良い方向に進んでいるのに。僕は何でこんな気持ちなんだ?」
塞ぎ込んだ気持ちに憂鬱になり仕事も何もかも手につかなくなっていた。
ソフィアが王宮のエントランスから国民に向け演説をしているにもかかわらず、レオンは城の中に消えて行ったーー。
そんなレオンの姿を白髪の老人執事は物陰からそっと見つめていた。
それからレオンは、ソフィアから少し距離を置くようになった。
「僕は、ソフィアには必要ない存在だったんだ。ソフィアはあんなに強いじゃないか。僕が側にいる必要なんかないじゃないか」
レオンは、自分に言い聞かせることで現実から逃げようとしていた。ーー今までだって自分じゃなくてもソフィアの隣にいるのは誰でも良かったのかも知らない。
黙々と王宮内の雑用の仕事をこなすレオン。
ーーすると昔とは違い、紅い鎧とマントを羽織ったレオナがこちらへと歩いてくる。
「ーーレオン」
ニコリと微笑んだソフィア。
愛らしい笑顔だけはいつもと変わらずそのままだ。
しかし、レオンはそのまますれ違い忙しそうに立ち去ったーー。
「僕は、何でこんな態度を取ってしまったんだ?」
ソフィアは一体どんな顔で僕を見送ったんだろうか?ーーもう何が何だか分からず苛立ちだけが膨らんで行く。
「僕は、一体何がしたいんだろう・・・」
レオンは王宮の廊下の壁を思いっきり殴ったーー苛立ちが爆発した。
壁は無傷だったがレオンの右手拳の皮は破れ血が出た。
「あーーいてぇ・・・けどソフィアのココロはもっと痛かったんだろーーな」
レオンは泣いていた・・・人目憚らず。
他の使用人は、何があったと驚いていたがレオンは気にすることなく泣いていた。
ーー僕は、馬鹿だーー
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