三人の精霊と俺の契約事情
カタリナ公国
緑豊かな森と湖に囲まれた小さなお城。岩山に囲まれ他国の進入の妨げになり戦争とは無縁の国。
国民はみんな穏やかで平和主義、武器を手にしたことなどほとんどない。
ここは帝国領土から遠く離れた南方の小さな国カタリナ公国。
この国の魅力は南方の温暖を活かして栽培している果物と鉱山から発掘される美しい鉱石だ。
女性は果物栽培に、男性は鉱山に毎日忙しく過ごしている。
「ふう、 やっと着いたなカタリナ。どこかキャメロットに近い雰囲気だな」
高い岩山から小さな国を一望に見渡すアーサー。標高二千メートルは優にある場所に立っている。
「凄く綺麗な湖なの」
「これだけ高く険しい岩山や湖に囲まれていらば帝国もなかなか攻めて来れませんわね」
「ああ、だと良いが・・・、レーベンハートさんによると近い内にカタリナに帝国軍が攻めて来るかもしれないと言われているからな。そのために今回俺たちは潜伏して帝国軍が攻めて来る前にバンディッツに連絡を取るのと来るまでの時間稼ぎにこの国に来たんだ」
「この国にどのくらい居るの? もうキャメロットには戻れないの? ミーナに会えないの?」
リサは少し寂しそうにアーサーを見上げた。
このカタリナの雰囲気が余りに慣れ親しんだキャメロットに似て居るせいかもしれない。
「近い内に必ず帰れるさ。 バンディッツに協力要請をお願いしたんだ。何も心配要らないよ」
リサの頭にポンと手を置いた。
「カタリナは、なぜ帝国の要請を断ったのでしょうか?」
「詳しくは分からないがあのレオンって子と何か関係があるのかもしれない」
レオンが反帝国軍にいるのと関係があるとアーサーは確信していた。多分、自分の国を帝国から守るためにバンディッツに加入したんだと。
「ーー後は、山を下りレーベンハートさんに言われた場所に行って住む場所に案内してもらおう」
アーサーは再び歩き出した。
「本当に綺麗な湖なの」
湖は、陽の光を浴び星屑を散りばめたようにキラキラと輝いていた。
★ ★ ★
「もう駄目だーー歩けねーよ」
ふらふらと後退りし地面に尻落ちをついて女座りをして塞ぎこんでいる。そんなアーサーを見てリサは、「情けない」と言葉には出さないものの大きくため息を吐いた。
「エルザお腹すいたのーっ!」
だだっ子のようにアーサーの袖を引っ張り無理矢理起こそうとする。
「辞めなさいエルザ! アーサー様はずっと歩きっぱなしで疲れてるよ」
「ううぅぅぅッ、だってえーーなの」
今にも泣き出しそうな悲しい表情で訴えるエルザ。そんな見え透いた芝居を無視しアーサーの元に寄り添い、
「ーー後、もう少しで麓ですよ。 今のペースでも十分夕暮れまでには辿り着けると思いますわ。 ゆっくり休んだらまた頑張りましょうね」
シルフィーは、心の中ではアーサー様のポイントゲットォ!!っと思っていた。
それを見透かしたかの様に目を細めてジッとシルフィーを睨み付けるリサ。ーー視線の合う二人。
「な、何よリサ。 何か文句でも・・・」
「ーー別にぃ、シルフィーちゃんは優しいなあと思って」
リサもゆっくりとアーサーの元に寄り添い、
「はい、アーサー様お水を飲んで」
重い水筒を力いっぱい持ち上げるリサ。
「あっ、ありがとうリサ。 重かっただろ?」
アーサーは水筒を受け取り、水をがぶがぶと飲んだ。
再びシルフィーと目が合うリサ。ーーリサはドヤ顔を決める。シルフィーはギリギリと歯ぎしりを立てた。
そんな二人を余所にエルザは再びアーサーの頬の横に飛んで行き、
「あーさーさま、えるざお腹すいちゃったの」
その見え透いた甘え声に反応し素早くリサとシルフィーはエルザの方に顔を向ける。
「ごめんなエルザ、ヨシ! もう少し頑張るから街に着いたら一緒に美味しいもの食べような」
「うんなの」
アーサーは立ち上がりエルザの頭をポンポンと二度優しく手を置いた。
リサとシルフィーの視線を感じたエルザはニヤリと憎たらしい笑みを二人に見せるのだったーー
☆
空がオレンジから紺色に変わりかけた時、
お城と呼ぶには小さく、大きなお屋敷のような場所に着いた。ここがカタリナ公国の中心部、カタリナ城である。
「よくお出で下さいました、アーサー様。あの岩山の山脈地帯を抜けて来るのはさぞ大変でしたでしょう」
「ええ、見ての通りですよ。 もう脚が棒のようで限界です」
白髪の老人執事は、城の中にアーサーを招いてくれた。
「ーーレーベンハートさんとレオンの使いでここに来ました。レオンが貴方に話せば大体の事は伝わるだろうと」
老人執事は遠い目をして、
「ーーでは、あの子は反帝国軍バンディッツの協力をお願い出来たのですね」
「はい。 だから俺がここに来ました」
老人執事は、胸を撫で下ろし何度も頷いていた。
「今日は、もう遅いので明日お住まいの方を案内させていただきます。それと、いくつか聞いてもらいたいお話もあるのでーー今からお食事も準備させます」
「あっ、あのーー出来れば少し多めに」
「はい?」
アーサーの体が光ったと思うと中から三人の精霊が飛び出した。それを見た老人執事は、「なるほど」と、納得したように頷き部屋を出て行った。
その後、運び込まれた料理はとても上品で美味しかった。ほとんどの食材はカタリナで採れた物ばかりだそうだ。
三人の精霊たちも美味しそうに料理を食べていた。
「三人の精霊と契約している人間なぞ聞いたこともないです」
「バンディッツである事も三人の精霊の事も他の人には伏せていてほしいです」
「もちろんです。どこから漏れるか分かりませんからね」
「ーーそれで、執事さんの聞いてほしい話って言うのは?」
老人執事の顔により一層シワが増えたように見えゆっくりと口を開いた。
ーー 今から数ヶ月前の出来事を ーー
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