三人の精霊と俺の契約事情
始まりの書
「もぐもぐ、このケーキおいしいの」
「本当ねえ。フルーツいっぱい入ってる」
「この紅茶もとても上品な味だわ」
茶色いふわふわウェーブの垂れ目と語尾になのをつけるのが特徴のエルザ。
赤いサラサラロングストレートの髪と大きなぱっちり二重の目が特徴のリサ。
青い髪をポニーテールにして眼鏡をかけているのがシルフィー。
三人の精霊が仲睦まじく小さなケーキを美味しそうに頬張っている。
そして、そんな個性ある三人の精霊と同時に契約しているのは少し離れた一番店の奥のテーブルに座っている魔法が全く使えない青年アーサーである。
「本当に? 新作だったのよ。あんまり自信なかったけど美味しいって言ってもらえて良かったわ」
ミーナは、肩の荷が下りたように安堵の表情を浮かべた。
そんな三人の精霊とミーナのやりとりをコーヒー片手に見ていると喫茶店に銀色の音が響き渡ったーー
「いらっしゃーーっ、あっ、ようこそお出で下さいました。ミランダ様」
ハイヒールの甲高い音が近づいてくる。
「お久しぶりです、ミランダ姉さん。いつ帝国から帰られたのですか?」
「帰ったその足でここに来たのよ。伝えなきゃならないみやげ話を持ってね」
尖ったような言い回しをするミランダに、
「ーーーと、言いますとあまり良くないみやげ話ですね」
アーサーは、見え透いた愛想笑いを浮かべた。
ミランダは、相変わらずの真っ赤なドレスに高価なイヤリングやネックレスなどの金の装飾品に包まれている。彼女は、アーサーの向かいの席に座ってテーブルに両足を載せ足を組んだ。
そして、少し間を空けてゆっくりとため息をつきながら話始めた。
「帝国があなたを危険人物だと判断し動き出した」
アーサーは、その言葉に眉を寄せた。
「近いうちに必ずあなたを捕らえにくるわ。特に危険なのはヴィル・クランチェと言う男よ! 彼には黒い噂があるよ」
「・・・黒い噂?」
「新聖教クルセーダーズと繋がりがあるんじゃないかってね」
ケーキを食べていた三人の精霊たちは食べる手を止めてアーサーの顔色を伺ったーー
「新聖教・・・」
「アーサー、言っておくけど金色の瞳があってもヴィル・クランチェとーーいいえ、帝国との争いは避けるべきだわ」
「ーーーじゃあ俺たちはこれからどうしたら」
「ここに行きなさい。必ずあなたたちの力になってくれるわ」
ミランダは、アーサーに一枚の茶封筒を手渡した。
アーサーはその茶封筒の差出人の名前を見た。
ーー反帝国軍 バンディッツ総統
レーベンハートーー
「反帝国軍 バンディッツ・・・?」
「ええ、彼等は帝国の支配下ではない国々の代表が集まって出来た団体よ。ただ彼等を見つけるのが大変よ。活動拠点や構成人数から国籍から全て謎よ。あなたがバンディッツを見つけられたら力になってくれるわ」
そう言うとミランダは立ち上がりアーサーに背を向けた。
「ーー姉さん、ありがとう」
ミランダは、振り返らず右手を上げ、ハイヒールの甲高い音を残し喫茶店を後にした。
「リサ、エルザ、シルフィー話してた通りだ。いずれ俺を獲られに帝国軍が来る、そうなればこの国の人々にも迷惑がかかる。その前にこの国から出てバンディッツに合流しよう」
三人の精霊は、口をクリームだらけにしながらアーサーを見上げて頷いた。
★ ★ ★
店内に渇いた銀色の音が響いたーー
「アーサーとか言う小僧がいると聞いて来たんだがどこにいる?」
ウエイトレスの挨拶よりも先に威勢良く店内に大柄の男とその子分らしき見た目の態度も悪い客が三人押し寄せて来た。
「ーーここには居ませんよ。毎回、毎回同じような質問ばかりよね」
うんざりした表情を見せ肩を落としため息を吐いた。
「ふんっ! 居ねえんじゃこんなところさっさとおさらばするか」
店を出てて行こうとする輩に対してーー
「ちょっと、喫茶店に入ったんだからコーヒーの一杯でも頼んだらどうなのよ」
ウエイトレスのミーナは出て行こうとする男達に対して皮肉も似た言葉を言い放つーー
「あんっ? 何だ小娘、俺様に指図しようってのか?!」
「あっ、兄貴、兄貴・・・やばいよ、やばいよ」
大柄の男の服を引っ張りながら顔を怖ばせる。
「何だ?」
震える子分の男が指示す先には、喫茶店の奥の角のテーブル席に座ってる男がいた。
男は、じっと無表情で輩三人を凝視している。
「ーーーーっ、」
大柄の男にもこの異様な雰囲気と内に秘めた殺気に気付いたーー
もしもこの喫茶店で揉め事でも起こそうならば確実にあの男に殺されるだろうとーー
「・・・こ、コーヒー下さい」
「はあい、かしこまりましたあ」
店内にミーナの明るい声が響いたーー
☆ ☆ ☆
「はい、良かったらおかわりどうぞ」
店内の奥の角のテーブル席の男の前に淹れたてのコーヒーを置くミーナ。
「ああ、ありがとう。 頂くよ」
男は窓の外の景色をぼんやりと見つめていた。
「ーーせっかく買ってあげた家、残念でしたね。 みんな凄く喜んでいたのに」
「ああ、仕方ないさ。また彼奴らが戻って来たら新しい家を同じ場所に建ててやるよ」
窓から見える壊されて潰れた家を見つめながら二人は会話している。
明らかに人の手により破壊された形跡がある。
「・・・世界を救ったのに何でこんな仕打ちを、こんなのあんまりだわ」
ミーナはたまらず両手で顔を覆ったーー
「正義の名をした悪魔が吹き込んだのさ。世界の元凶はアーサー・ペンドラゴンにあると」
男は、ゆっくりとコーヒーをすすった。
「彼奴の帰る場所は俺が何としても阻止する。例え神さえ敵にしてもね」
「ありがとうございます。フレディ様」
「兄として当然の事をしているまでさ」
窓の外から溢れ出す光が眩しく感じられた。
これは、アーサーと円卓の魔導士が魔導師マーリンを倒しデーモンズゲートを封印してから少し経ってからのお話。
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