三人の精霊と俺の契約事情

望月まーゆノベルバ引退

アーサーと精霊対ベリアル②


ステージ中央で睨み合いお互いの動きを見ているベリアルとアーサー・・・

「いつでも行けるわよ、アーサー様」

「なの」

ルナとエルザは演唱準備に入っている。

「凄い魔力です! これまで戦ったどの悪魔族よりも桁違いです」

シルフィーが冷静に分析するーー

「アーサー様、私たちがいつでも一緒です」

リサが笑顔をアーサーに見せた。

その笑顔がアーサーの心の迷いを消し去ったーー

自分一人で戦うつもりでいた。

いつもどこかで人に頼る事を忘れてしまう。

今まで頼る事を拒んでいたーー人に接することがほとんどなかったから分からなかった。

精霊に出会い変われたと思っていたのに・・・

「俺はいつも助けられてばかりだな」

「それでいいと思う。 お互い助け合って支え合う、それがパートナーだよ」

「完璧な人なんていないの。 一人では生きていけないの。どこかで自分の弱い部分を知らずに補ってもらってるの」

「私たちは、いつでも繋がってる。決して契約だからじゃなく心と心の絆だよ」

「ああ! みんなの言葉、心に響いたよ。ありがとう」

アーサーは精霊たちに心から感謝した。

それと同時に今まで心に支えていたモノが取れたように心が楽になったーー

アーサー達が喋って気を取られている隙を突こうとベリアルが奇襲攻撃を仕掛けてきた。

「お喋りもそこまでだよ!」

無数の闇の波動がアーサー達を襲うーー

「エルザ頼む」

「準備してあるの」

エルザはアーサーが頼むとほぼ同時に障壁を貼り回避する。

「ルナ、リサーー」

「任せて」

「リサいくわよ」

ルナとリサは魔力を高めてくーー


「天に輝く光の化身よ、 我にチカラを与えたまえ・・・我が名はルナ、 月の精霊の名の元にーー朽ち果てろ! シャイニング レイ!」


「聖なる炎の不死鳥よ 我にチカラをーー フレイム フュージョン」

リサ、ルナの二人同時に放った魔法がベリアルを襲うーー

凄まじい衝撃が会場全体に響き渡る。

「やったかーー」

「いいえ、ベリアルの魔力は落ちていませんわ」

シルフィーが険しい顔で言った。

巻き上がる砂ぼこりの向こう側に立ち尽くすベリアルの影が見える。

「そんなものでこの俺を倒せるとでも」

ベリアルは手を天に翳すーー

会場にいる人間の精気を再び集め出す。

「やめろ!ベリアル」

アーサーが叫ぶ

膨れ上がるベリアルの魔力

「なんて魔力なの・・・」

「このまま会場中の人間の魔力を集められたら手がつけれなくなるわよ」

観客席で避難誘導しているミランダを睨みつけるアーサー。

「そんなに睨まなくてもわかってるわよ」

その視線の意味を察知し観客を会場外に誘導している。

「たとえどんな相手だろうと立ち向かう」

アーサーが一歩前に出てベリアルに厳し視線を送った。

視線を合わせたベリアルは笑みを浮かべたーー余裕の表情だ。

「アーサー様、私たちはいつでもいけます」

「アーサー様の強い気持ち伝わってくるの」


リサとエルザは魔力を高めながら表情を引き締めている。

「アーサー様もっと私たちを頼って下さい、一人じゃないんですよ」

シルフィーが微笑みながらアーサーを気遣った。

「その通りだよ。 この天才もいるのを忘れないでほしいね」

「円卓だけなく騎士団も勿論一緒に戦う」

アーサーが振り返るとキルケー、メーディアだけではなくランスロット率いる金色の夜明け団、銀の星団も集まっていた。

「みんな・・・」

声を詰まらせるアーサー。

「アーサーさん、指示をーー」

リンスレットが微笑んだ。

アーサーは頬を掻きながら少し戸惑いの表情を見せて周りを見渡した。

一同皆アーサーにじっと視線を送っていた。

「俺が・・・俺なんかがーー」

胸が締め付けられる感覚が生まれた。




 人に頼られたことがなかったーー

誰かに期待された事なんか一度もない。

いつだって誰も自分を見てくれる人なんて一人もいなかった。

自分で自分の可能性を諦めてた。

心のどこかで、兄や姉には敵わないと決めつけてた。

だから、全てを投げ出して努力することや夢を持つこと、希望を抱くことすらなかった。

誰かの為にーー自分のことも何も出来ない自分が人の世話をやくなんてありえない。

ずっと、これからもその先も自分はいらない存在ーー空気や石ころのようなモノ。




何で、オレはいるのだろう・・・

 
せめて普通の家庭に生まれたかった。

比べられて馬鹿にされて、誰かと顔を合わせる度に笑われてーー


このまま家を飛び出して誰も知らないところに行こうと決心した。


そしてーー俺は出逢った。


運命を変える精霊たちに。




「これ以上ヤツの好き勝手にはさせない!俺について来てくれ」

アーサーが皆に背を向けた。
 
ベリアルと対峙している自分が一番奴の強さを実感している。

まずは、自分が先頭に立って周りにその強さを感じとってもらうと考えている。

その考えが伝わったのか一歩引いたところに円卓の魔導士たちが身構えていた。

そして更にもう一歩後ろに魔法騎士団が控えていた。

四人の精霊たちはその光景を目にして嬉しいそうだった。

「アーサー様はやはり素晴らしい人なのです。人を惹きつける何かを持っている。みんなを導くチカラを持っている」

くるくるとアーサーのまわりを飛びながらリサが笑みを浮かべていた。

「出逢った時からこの人はやる方だと思ってましたわ」

シルフィーがアーサーに投げキッスをして見せた。

「一緒に成長出来てる実感があるの。アーサーさまの頑張りがそのまま私たちの強さになるの」

エルザが力こぶを作って見せたが小さく細い彼女の腕には何も浮き出なかった。

そんな中ーー会場はようやく落ち着きを取り戻しつつあった。

観客は皆、外へと脱出しコロッセオには魔法騎士団と円卓の魔導士とアーサー達それとベリアルのみとなった。

ベリアルは溢れ出る魔力を抑えきれず暴走気味に暴れまわっていた。

「魔力を制御しきれないでいるんだろう」

ランスロットが剣を構えながら騎士団を引率している。

「私たちも全ての魔力を全力で常に出し続けていたらコントロールなんて出来ませんからね。蛇口から水を出すのと同じですね。少しの水ならコップにしっかりと自分の好きな分量だけ入れられますが一気に蛇口を開いたら自分の好きな分量だけ入れるのは難しいですよね」

ルナがベリアルの哀れな姿を見ながら肩を落とした。

「ーーましてや自分が持ったこともない程の巨大な魔力をいきなり手に入れた事により体が拒絶反応を起こしてしまっているのかもしれないですわ。自分が持ってる魔力の容量を超えているのでしょうね」

シルフィーは眼鏡を押し上げて、これまた哀れな姿を晒しているベリアルを同情していた。

「何にせよ、今が奴を倒すチャンスだ行くぞ!!」

アーサーの掛け声と共に精霊たちはベリアルに立ち向かって行ったーー



ーー ベリアルとの死闘に決着をつけるーー

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