三人の精霊と俺の契約事情
リンスレット
城下町の外れにいても聞こえる程の大歓声が聞こえてくるーー
街には人影がほとんどなく店にも店員も居ない、皆コロッセオに集まっている。
その目的はただ一つーー
「さあ、出て来ましたあ! 今大会の主役、
リンスレット・ローエングラム」
大歓声とともにゆっくりと小さな鎧を身にまとった少女が現れたーー
栗毛色の腰までの長い髪、水色の大きな瞳、銀の星が描かれた青いマントと銀色の鎧。
魔法騎士団の団長のみが付けられることが出来る腕章を腕に付けている。
リンスレットが観客にお辞儀し手を振って声援に応えている。
「さあ、間も無く試合開始です! Nグループ予選もちろん注目はリンスレット選手だ。解説のメイザースさんNグループの予想はどうでしょうか? 」
「普通に考えれば一瞬で終わりますね。 リンちゃんの強さ、凄さは昨年から一際目立ってるのだよ。 円卓の魔導士の中でも彼女と対等に戦える人は少ないと思うのだよ」
メイザースはリンスレットをイヤらしい目つきで見つめてニヤニヤしている。
「それでは試合開始!!」
威勢よくドラの音が響き渡ったがそれ以上の大歓声で聞き取れない程だーー
「それでは行きます! 手加減はしませんよ」
リンスレットの顔が引き締まるーー
重心を低く落とし、腰に取り付けてある武器を握って構えている。
鞘に収めたまま力を高めているリンスレット。
他の選手が攻めてきた瞬間ーー選手と選手の間を風が通り抜けたーー
鞘から取り出したのは刀だったーーリンスレットの武器は珍しい東洋の武器だった。
小さな彼女の腕は細く他の武器では扱えきれない為、捜しに捜してやっと見つけた自分の武器ーーそれが刀。
名刀ーー花鳥風月。
リンスレットの相棒だ。
次々に倒れていく選手たち、リンスレットの小柄で小回りの利く動きとスピードに他の選手は翻弄され倒されて行く。
「リンスレット選手さすがの動きだ! 次々に倒していく。 リンスレット選手を止めることは出来る選手はいるのか? 」
リンスレットは戦いながらある一人の選手の動きに目を光らせていたーー
古びたローブを頭から被り顔は見えず他の選手には気づかれないように気配を完全に消している。
まるで空間に溶け込んで景色の一部になっているかのような雰囲気だ。
リンスレットは研ぎ澄まされた感性と感覚が備わっているので気付くことが出来るが他の選手は全く気付いていない。
「今のところ動く気配はないみたいね。 それなら残りを片付けてからーー」
残り十人余りの選手たちは身構えている。
「攻めてくる気が無いならまとめて一気にーー」
リンスレットは刀を逆手に持ち返るとそのまま後ろに手を引くようにして重心を低くして力を溜めてるーー
刀は輝き出すーー花鳥風月、魔力を帯びた妖刀。
「花鳥風月ーー風の段、木枯し!!」
その場で刀を振り抜くーーその太刀筋は木の枝から舞い落ちる一枚の葉を真っ二つに切るように鋭く、無形の太刀筋となって他の選手たちを斬撃が襲ったーー
Nグループの十人余りの選手たち見えない斬撃を受け場外に吹き飛んでいった。
ただ一人の選手を除いてーー
「勝負あり! Nグループ予選勝者はーー」
「嫌まだなのだよ」
「はい?」
会場の観客も全員が試合終了だと思い拍手と歓声をリンスレットに送っていたーー
リンスレットすぐ体勢を立て直しボロボロのローブを纏った人物に斬りかかるーー
観客はリンスレットが何をしているのか分からなかったが斬りつけた瞬間にその人物の存在に気付いた。
リンスレットの斬撃をヒラリと回避してみせるボロボロローブを纏った人物ーー
会場内からどよめきと困惑の声が上がったーー
「ーーええ大変失礼しました。もう一人選手がいました。武道会登録リストによるとベイル選手です」
更に踏み込み斬りかかるリンスレット。
ベイルはまたもギリギリの所で斬撃を回避するーー
「あなた何者ーーオーラからして邪悪なモノを感じます」
リンスレットが一定の距離を置いて刀を構えているーー
「実に素晴らしい動きだ! 人間にしてはなかなかのモノだよ」
「人間にしては・・・」
「ここに大量の魔力が集まるのを知っていて是非欲しいと思ったのと、単純に何パーセント位実力が回復したかを調べたかったんだよ」
ベイルは首をポキポキ鳴らしがら体を動かしているーー
「メーディア、シーサーとマーリンに連絡した方がいい。 それと国中の護衛等の確認して」
キルケーは顔をしかめているーー
「分かったーーまさかこの異様な魔力とオーラは」
メーディアも困惑な表情を浮かべている。
「ーー悪魔族ね」
リリスが顔を青くしながらベイルを見ていた。
★ ★ ★
アヴァロンの国中には結界が貼られていて決して悪魔族などは進入出来ないようになっている。
しかしーー 今自体は深刻な状況におかれていた。
「シーサー様、大変でございます」
執事が大慌てでコロッセオの中二階に現れたーー
「分かってるよ。 想定内の範囲だ」
「想定内? 悪魔族がコロッセオを包囲しておられるのですよ」
「マーリンにわざと結界を緩めておいてもらったんだよ」
「何ですとーー何故そのようなことを」
困惑する執事ーー
「円卓の魔導士を集めたのも試合に出場させたのも全てはデーモンズゲート封鎖のためよ。円卓の魔導士の魔力をエサに悪魔族を呼び寄せたのよ」
「あいつらがどうやってこの危機を乗り越えるかも見てみたいからな」
「あら? 助けてあげないの」
「俺の時代も終わろうとしてるよ。 次の世代にバトンを渡さないとな」
「ずいぶん寂しいこと言うのね。 シーサーらしくもない」
「俺も歳をとったからな・・・」
目を細くしてコロッセオのステージを見つめているシーサーをマーリンが優しく見つめていた。
「来賓の方々をアヴァロン城へ避難させてくれ城は結界が貼られているので安心だ」
「かしこまりました」
執事は早速事態が混乱しないように慎重に対応し始めた。
「ーーさて、お手並み拝見といこうか。 俺のかわいい魔導士たち」
★ ★ ★
コロッセオの会場の人々はまだ悪魔族に包囲されている状況に気づいていないーー
「今もしこの状況を会場の人々がしってしまったらパニックになる。 それは避けたいな」
キルケーが厳しい表情を浮かべた。
「ランスロットに伝えて包囲している悪魔族の討伐を依頼しましょうか」
メーディアがキルケーに尋ねる。
「コロッセオには結界が貼られてないの? なぜ悪魔族の進入をこんなに簡単にーー」
リリスが疑問を浮かべた。
「会場にいる人たちの安全が大事だ。 コロッセオの周辺の結界やコロッセオの会場に入ってきてるのかなど調べてみよう」
アーサーが投げかけるとみんな頷いたーー
幸いにもリンスレットの試合のため会場の観客は見逃せないと席を立つ人がほぼいない。
そのためまだこの非常事態に気付いていない。
実際、まだアーサーもどんな状況かこの目で見てはいないのだ。
選手控え室から外に出ると窓の外を眺めているライラとミランダがいた。
二人とも険しい顔をしているーー
「姉さん、状況はーー」
「アーサー、一応結界が効いていて下級の悪魔族は進入出来ないみたいよ。 だけど、チカラを持った魔力の高い悪魔族は既に進入していると考えて良さそうねーーこの結界を貼っているのはマーリンなのよ・・・」
「恐ろしいことなのです・・・こわいよお」
ライラは震えていたーー
ライラはおどおどしていて常にもじもじナヨナヨしている女の子だ。
ショートの茶色の髪で大きな木製の杖を持っている。魔法使いの割にはその辺の女の子と変わらない普通の格好をしている。
予選を勝ち抜けた事と円卓の魔導士に選ばれた理由はその一瞬の魔力の爆発力だ。
一瞬の爆発力だけなら円卓の魔導士の中でも一番でシーサー以上とも言われている。
そして彼女は自動発動魔法と呼ばれる特異体質の持ち主だ。
「マーリン程の魔導士が簡単に悪魔族に進入を許す結界を貼るなんておかしいわ。 何か理由があると思うわ」
ミランダが厳しい表情を浮かべていた。
「何でもいいから早く逃げようよ」
しゃがみ込んで怯えているライラーーとても円卓の魔導士とは思えない姿だ。
ヴァニラがふわふわと宙に浮きながらこちらにやって来たーー
「どうしたモノかなーー魔法騎士団に任せて退散する? 」
この非常事態にも関わらず笑みを浮かべてまるで関係ないような素振りを見せる。
「相変わらずのマイペースねヴァニラ。 あなたのことだからひと通り状況を把握してるんじゃないの? 」
「まあねえ。 けど面倒くさいことに巻き込まれたくないわーーだって疲れちゃうもん」
笑みを浮かべて舌を出した。
円卓の魔導士とはこうも変わり者揃いなのか。
ヴァニラは自分は関係ないと言わんばかりに控え室に入って行ったーー
「円卓の魔導士だよね? 観客を助けたいとか思わないの」
リサは眉間にシワを寄せてヴァニラの入って行った控え室のドアを睨んでいたーー
「円卓の魔導士って言っても所詮は他人の寄せ集めなのです。 魔法騎士団のように国民を守る義務はないですし円卓のリーダー的存在のシーサーに従う義理もないです」
リリス、キルケーは少し罰の悪そうな顔をしていたーー
「ーーなら、円卓の魔導士って何のための集まりなんです」
リサが鋭い一言を突きつけた。
「それはーー」
メーディアが言いかけたとき、廊下の奥からゆっくりと足音が近づいて来たーー
「それは、悪魔対策。 悪魔大戦への備えよ」
紫の髪の毛、青い瞳、猫耳ローブーー
ーー マーリン現る ーー
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