三人の精霊と俺の契約事情

望月まーゆノベルバ引退

全てを知る権利


「戦利品は、お見事なのですが・・・」

「目立ち過ぎです」

「敵に囲まれてたんだよ。逃げ場がないって奴だよ。だから上からね」

「少しは反省して下さい」

 メーディアは、目を細めて冷ややかな口調でキルケーに反省を促す。

 メイザースの応接間に潜入捜査の報告に訪れたアーサーとキルケーだったが世界新聞社のスクープに合い、 速報の号外に見事載ってしまったのだった。

「頼まれて行ったんだぞ! ならもう頼まれてやんないかな」

 全くもって反省の色がない。何て女だ。

 やんちゃ坊主で子供ならまだ分かるが、 女の子である程度の年をした人の言葉と態度とは思えない。

「何なの! この世界新聞見たの? あなたの事が載ってるのよ」

 メーディアが新聞を広げキルケーに見せながら罵倒する。

「天才魔導士だからな。毎日新聞の話題になってもおかしくないね」

 どうだと言わんばかりに胸を張り腰に手を当てる。

「何が天才よ、バカ女め」

 わざと聞こえるように吐きすてるメーディア。

「聞こえたぞ! 飯炊き女」

 とんがり黒帽子を投げ捨て、 ムッとしてメーディアに詰め寄るキルケー。

「何ですって! もう一度言ってみなさいよ」

 目から火花を散らして視線と視線がバチバチとぶつかり合う。

 唖然あぜんと口を開けたままただボーッと立っているだけのアーサーだった。

 精霊たちも無言でふわふわと浮いている。

「お止めなさい、 お二人とも」

 メイザースが二人の間に割って入り両手を広げて制止する。

 なぜか、顔はニヤけている。

 そのニヤけた顔を見て精霊たちは寒気を感じたようだ。

「邪魔するなメイザース」

「止めないで下さい。 メイザース様」

「駄目なのだよ。アーサーきゅんや精霊ちゃん達も驚いてるのだよ」

 そう言われて、アーサーたちに目をやりしゆんと肩を落とすキルケーとメーディア。

 少しは頭を冷やしたようだった。

 やれやれとため息をついて肩を落とすメイザース。

「キルケーちゃんとアーサーきゅん達が潜入捜査してくれたおかげでゾロアスター教の秘密が少し分かった気がするのだよ。魔石を使い人々を操り、精気を吸い取る」

「吸い取った魔石を何に使おう気なんだ」

 アーサーが、メイザースに問いかける。

「邪神 アーリマンを復活させ、デーモンズゲートを開かせようとしているんだよ」

「補足しますね。邪神 アーリマンに何故魔石が必要なのかと言いますとアーリマンには結界が貼られ封印させているのです。その封印を解くには膨大な魔力が必要なのです。なので、大量の魔石をアーリマンに投入して封印を解こうとゾロアスター教はしているのです」

 メーディアが機械的な感じで早口で説明する。

「誰がアーリマンを最初に封印したの」

  アーサーのその言葉に、キルケーとメーディアも反応を示して重苦しい雰囲気にその場はなった。

「んん~、 それは追々お話ししますよ」

 アーリマンを封印し、デーモンズゲートを封鎖した人物とは・・・。

「ゾロアスター教は、そもそも誰が支配して人々を操っているんだ」

「私が思うに、悪魔と契約した人間が関わっていると思うのだよ。 デーモンズゲートが封鎖されタルタロスに帰れなくなり人間界に取り残された悪魔ーー」

  キルケーとメーディアは、顔を強張す。

「ーー ベリアルなのだよ」

「ベリアル・・・」

  アーサーは、唾を飲み込んだ。

 メイザースは、頷き遠い目をして話し始めるーー。

「ベリアルは、君たちが一度対峙したサタンに匹敵する強力で邪悪な悪魔なのだよ。君達が戦った時のサタンは本当のサタンのチカラではないのだよ。 デーモンズゲートが開き世界に闇が包まれた時に悪魔は真のチカラを発揮するのだよ」

「デーモンズゲートとアーリマンはどんな関係があるんだ?」

「そうですね・・・やはり全てをお話しする必要があるようですね。 悪魔と人間と精霊について」

 そういうとメーディアにメイザースは、指をパチンと鳴らし合図を送る。

メーディアは、一礼すると応接間を後にし消えっていった。

「メイザース、アーサーには包み隠さず話した方が良いよ。もうかなり踏み込んでしまっている。 三人の精霊と同時に契約した時点で運命の歯車は回り出しているよ」

 キルケーが両手を頭の後ろで組んで諦めたような表情を浮かべる。

「運命ねえ・・・そうかも知れないですね」

「それに、 ホーエンハイムの件で新聖教もアーサーは目をつけられているんだろ? もう私たちと一緒にいる方が良いだろ? 隠さず行動とか無理だろ」

 扉が開きメーディアがお茶の仕度をして戻って来た。

  一人一人にお茶を出しながらメーディアが口を開く。

「ソロモンの血筋を引く彼は間違いなく全てを知る必要があります。 運命を引き受けるか受けないかは彼次第です」

 メーディアは、喋りながらメイザースの目の前にティーカップを置いた。

「運命とか? 全てを受け入れるとか? 何のことだ」

「これから話すことは、今から十年前の悪魔大戦の話なのだよ。アーサーきゅんが魔力を失くした時、 精霊ちゃんのお友達がサタンに襲われた時全てが同じ時なのだよ」

  アーサーと精霊たちは目を合わせる。

「十年前に悪魔大戦? 全然そんな事世間では騒いでなかったぞ」

「謂わゆる裏の社会では表の人間には分からない所でいろんな出来事があるんだよ。それが表に出てしまえば世界中がパニックになるからね。事前に防ぎ何事も無かったようにするのが一番良い事なんだ」

 キルケーが珍しくまともな事を言う。

「全て話そう。悪魔大戦の全貌をーー」



ーー 知ることになる全てを ーー

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