三人の精霊と俺の契約事情
メイザースの狙い
海の寝息のように心地良い波の音が単調に反復を繰り返す。
海を肌で初めて感じたアーサーは、この静かな波の音を楽しんでいた。
「海って本当に大きいんだな。やっぱり俺は知らないことだらけで世界は何処までも広がっているんだな」
キラキラ輝く海にアーサーの瞳も輝き、新しい感動に胸を躍らせていた。
「それは、相当ここは何処でしょうか?
海の真ん中にポツンとある小さな小島にこのお屋敷が建っているような雰囲気ですわ」
シルフィーがフワリと浮かび空から散策しながら報告する。
「この島何もないの、つまんないの」
エルザが口を尖らせながら不満を吐く。
「メイザースさんの事だから何か此処へ来た理由があるはずよね」
リサが難しい顔をし腕を組みながら海を見つめていた。
★ ★ ★
「この島へ来た理由を知りたいのかい?」
一同ジーッとメイザースを見つめている。
メーディアは、全てを悟っているかのように興味無さそうに直立不動で立っている。
「理由ねえ・・・特にないのだよ。あの場から移動したらたまたまこの場所に来たのだよ」
メイザースは、お腹を抱えて笑っている。
あっけに取られたアーサーと精霊たちはポカンと口を開けたままだ。
そんな状況を溜め息ついて呆れて見ていられないと感じたのかメーディアがそっとアーサー達の前に歩み寄り肩をすくめて見せた。
「補足すると、メイザース様の空間移動魔法は高度なうえ莫大な魔力を消費する為、物体を移動するだけで精一杯なのです。よって移動先の指定は不可能な為今に至ります」
機械のように早口で説明するメーディア。
「その通りなのだよ。瞬間移動出来るだけで凄いことなのだよ、褒めてくれても良いのだよ」
世の中いろんな人を見てきたがこの人ほど適当と言う言葉がぴったりな人は居ないだろうと思った。
ただ、魔導士としては一流なのだけは分かったーー あの空間移動魔法はメイザースでなければ操れないだろう。
「メイザース様は、褒めても良いことは何もないので逆に貶します」
メーディアは、ツンっと口を尖らせた。
「メーディアちゃんのそう言うところが私は好きなのだよ」
貶されて喜ぶメイザース、ゾクゾクしたような何とも例えようのない表情を浮かべた。
「メイザース様は、どうしようもないブタ野郎なのですよ。ごめんなさいね」
「良いよ、良いよメーディアちゃん」
この二人のやり取りについて行けないアーサーと三人の精霊たちは凍りつくような冷たい視線をおくって立ち尽くしていた。
「メイザース様、アーサーさん達が引いてますよ。死んで詫びて下さい」
「メーディアちゃあああん」
もう良く分からない・・・。
「ねえ、ところで此処はどこなのよお! 呼ばれて来たけど泊まりでなんて聞いてなかったし何か襲われるしもう帰りたいんだけどお」
謎のやり取りに余程、我慢出来なかったのかリサがこちらの思いを代弁して切り出した。
こういう時のリサのはっきりした性格は非常に頼りになる。言わなきゃ気がすまない性格だ。
「んん~難しい質問なのだよ。まず私の空間移動魔法は場所を指定出来ないので元の場所に戻るのは不可能なのだよ。次にゾロアスター教は何処にいても必ず探し出し私から禁呪の情報を聞き出そうとするのだよ」
メイザースは、難しい表情を浮かべお手上げだよといった感じに手を上げた。
「簡単な話ですわ。あなたをゾロアスター教に差し出して私達はサッサと帰らせてもらいますわ。そもそも何故私達があなたの為に命を狙われなきゃいけないのです?」
その通りなのだと全員が頷いた。
「それもそうよね。あなた達にはこの件については関係ないものね。だけどいずれ必ずあなた達は、遅かれ早かれまたアルファに来ることになるわよ」
メーディアは、冷静に訴えかけるようにアーサー達を見ながら語りかける。
「アルファとゾロアスター教の紛争と私達に何の関係があるのよ!」
リサがメーディアに睨みをきかさて突っかかる。
「ソロモンの血筋が関係してるのか? ペンドラゴン家とは何なんだ?」
アーサーが二人の会話に割って入る。
「ペンドラゴン家とはーー」
「メーディアちゃん!!!」
「ーーーー!」
メイザースの珍しい大きな声が屋敷に響いたーー その一瞬の事だが魔力が開放され屋敷が揺れるほどだった。
メーディアはビックリし目が点になって固まっていた。
「滅多な事を言うものではないのだよ」
感情を押し殺し不敵な笑みを浮かべてメーディアに言った。
「も・・・申し訳ございませんメイザース様」
慌てて謝るメーディア明らかに戸惑っているようだった。
「メイザース、何か隠してるな」
「アーサーきゅん、知りたければこのまま私達と行動することなのだよ。帰りたければ泳いででも帰れば良いのだよ」
「メイザース・・・初めから・・・クソ」
アーサーは、吐き捨てた。
「アーサーさま、どおゆうことなの」
「メイザースは、初めから俺たちをここに閉じ込めて帰らせるつもりは無かったんだよ」
「そうなのですか? メイザース様・・・まさか空間移動魔法は本当は場所指定出来たのですか?」
メーディアは、目を点にして動揺している。
「当然なのだよ。私ほどの天才が場所指定出来ない訳ないのだよ」
「酷いよお! 騙すなんて」
「なの」
「そこまでして私達を返させない理由は何なのですか」
「当然、金色の瞳(エンペラーアイ)なのだよ」
「やはりですか・・・」
メーディアは、覚悟していたかのように納得の表情を浮かべた。
「この瞳じゃなきゃダメな理由は?」
微妙な間が空きメイザースは立ち上がり自分の書斎の椅子に向かって歩き出す。
「今は、まだその事については話せないが
一言だけ言わせほしい事があるのだよ」
書斎の椅子に座り背を向けた。
「騙すつもりは、無かったのだよ。全ては、アーリマンの復活を阻止したい、その為に君達に協力してほしかっただけなのだよ」
メイザースの背中は先ほどよりも寂しく小さく感じた。
「メイザース様っ・・・私からもお願いします、どうか私達に協力して下さい」
メーディアは、アーサー達の前に出てこちらを向き深々と丁寧に頭を下げた。
その光景を目にして精霊たちから熱い想いが伝わってくる。
それを感じ精霊たちに目をやると精霊たちはジッとアーサーを見つめていた。
アーサーは、頭を掻きながらやれやれと肩をつくめてる。
「泳いで帰れる訳もないしな。協力するよ、 ただし、戦力にはならないと思うけどね」
「ありがとう、感謝します」
メーディアは、再び丁寧に深々と頭を下げた。
「アーサーきゅん、ありがとう。しかし、 覚悟しておくのだよ」
椅子から立ち上がりこちらを振り向いたメイザースは、真剣な眼差しをこちらに向けていた。
アーサーは、忘れていた姉ミランダの忠告を・・・
ーー 覚悟とは・・・ ーー
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