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三人の精霊と俺の契約事情

望月まーゆノベルバ引退

受け継がれる血筋


「あなたは、ソロモンの血を引く者よ。 そう思えば全てつじつまが合うわ。三人の精霊と契約している事もね」

「ソロモン・・・」

 聞いたことのない名前だったアーサーは首を傾げた。

「ソロモンは、精霊と悪魔の両方を同時に操り更に72人と契約していたとされている伝説の魔術師よ」

「72人ーーーーッ」

「ソロモンの血を引いているなら三人なんて驚くことでもないじゃない。それに精霊と悪魔に関して何か過去に出来事や思い当たる節はないかしら」

「過去に悪魔・・・ 待てよ、 確か兄貴が精霊を呼び出そうとしたのに何故かサタンが召喚されたのは」

「普通に考えてあなたの兄、フレディが間違えて悪魔を召喚するとは考えにくい話ね。なら、精霊と悪魔を両方を召喚出来ると初めから分かっていたなら不自然な話では無いわよね。ソロモンの血を引く家系と考えるなら人間なのに魔法が使えて悪魔と精霊を複数契約出来る。何ら不思議でもない」

「確かに」

「今後の展開によるけど、あなたのそのソロモンのチカラが必要になるわ。72人と迄はいかないにしろ、精霊を複数契約出来るならこれは間違いなく武器になるわ」

「勘弁してくれよ・・・三人でも厄介なんだぞ」

「厄介とは? アーサーさまぁ」

「酷い言いがかりですわ」

「なの」

 三人揃ってムッと顔を膨らませてアーサーに詰め寄る。

「いやいや、ものの例えだよ」

 アーサーは誤魔化すのに必死だ。その必死さが逆に嘘っぽさを際立たせていることに本人は気付いていない。

「他の精霊とも上手くすれば契約出来るかも知れない。ハッキリ言わせてもらうなら、 もう少し優秀な精霊と契約することを奨める」

「ーーーー!」

 三人は、言葉の方に向かい歯をくいしばる。

「本来なら諦める所を新たに契約出来るならするべきだ。 満足に魔法も操れない精霊など精霊と言わない」

 何も言い返せない三人はただただ唇を震わせて拳を強く握りしめるしか出来ないでいた。

しかしーーーー、

「俺のパートナーを舐めてもらっては困る! 伊達に試練は乗り越えてない訳じゃない。
一人、 一人は大したことないかもしれない。俺自身もそうだ! だからこそコイツらの事を分かってあげられる。 コイツらの全てのチカラを出し切ることが出来る! 俺は未完成なコイツらの可能性を信じてる」

 アーサーの迫力にメーディアは圧倒される。
 今までもそうだったように、本人は気づいてないが、自分のパートナーや仲間が馬鹿にされたり貶されたりすると魔力が上昇する傾向がある。 

「ふん。まあ、あなたがそれで良いなら良いんじゃないの? 別にあなたのアドバイスがしたくてした訳じゃないんだから。私アルファの為に言ったんだからね」

 つんつんしながら言う。

「メーディアちゃんお話はこれくらいで、アーサーきゅんの複数契約の事情はお判りかな? では、こちらからの本題なのだよ」

メイザースが話に割って入ってきて話題をすり替えた。

「私たちは日夜、魔法や魔術、召還、錬金術などこの世のありとあらゆる異能力の研究をしているのだよ。それを良く思わない組織があってねえ、困っているのだよ」

 メイザースは、肩を落とし遠くを見つめている。

「正確に的確にいい直しますと、アルファは敵対する組織ゾロアスター教が研究している黒魔術の謎をゾロアスター教よりも先に解明してしまったのです。それによりゾロアスター教にメイザース様はその解明した謎を教えろと狙われているのです」

 メーディアは、まるでロボットにような早口な棒読みで説明してくれた。

「そのとおりなのだよ。黒魔術の術式を解明したのが始まりだったのさ。ただ、この術式は世に発表してしまえば最悪を招くモノなのでゾロアスター教などの手に渡ればたちまち世界の終わりを招くことになってしまうのだよ」

「世界の終わり・・・」

「それほど危険な術式なのだよ。邪神 アーリマンを復活させる術式なのだよ」

「邪神 アーリマンは、悪魔族の神とされてきてその昔にデーモンズゲートと一緒に封印されたの」

「デーモンズゲート?」

「この世とタルタロスを結ぶ境界線とでも言っておきましょうかねえ」

「悪魔族がこちら側に来る場合は必ずそのゲートをくぐらなければならないの。しかし、ゾロアスター教がそのゲートの結界を徐々に緩くしてきているの。その為最近頻繁に悪魔族が出入り出来るようになっているのよ」

「ゾロアスター教は、何の為に」

「表向きは宗教や神の遣いを語っているが実際は違うのだよ。ゾロアスター教の本当の姿はーー」

  屋敷の外で地震でも起きたかのような振動とけたたましい爆発音がした。

「何だーー!?」

「ゾロアスター教ですかね。結界を貼っておいたのですが相当の手練れがいるみたいなのだよ」

  やれやれと肩をすぼめて、気怠げにメーディアに合図を送る。

「かしこまりました。メイザース様」

 そういうといそいそと何かを取りに部屋を飛び出した。

「今から時空移動の転送魔法を行うのだよ」

「時空移動?」

 聞き慣れない言葉だった。

「いわする瞬間移動なのだよ。ゾロアスター教にこの屋敷の場所がバレてしまったようなので引越しなのでぇす」

メイザースは、下をペロッと出し悪戯に笑う。

「メイザース様お持ちしました」

  メーディアは、メイザースに杖を持って来るように頼まれたようだ。

「ありがとうメーディアちゃん。この杖は魔力を増大させる効果があるのだよ。ケリュケイオンの杖なのだよ」

 再び、凄まじい爆発音と地響きがし屋敷が揺れる。

「メイザース様、急ぎましょう。転送する際に敵も一緒に移動してしまう可能性がありまので」

「そうだよねえ。では始めますか」

★  ★  ★


 メイザースの顔が真剣になるーー 出会ってから真顔を見たのは初めてかも知れない。

「少し離れていて下さいねえ、行きますよ」

 メイザースが魔力を高めた瞬間、昼と夜が入れ替わったかのように辺りは真っ暗になりメイザースの周りだけが輝いている。

「何だ? 何だ? 」

 書斎全体が別の空間にでもなったかのように見た事ない文字や時間軸が立体的に浮かび上がって反時計回りにゆっくりと回っている。

「立体魔法陣よ。これが世界でただ一人の使い手メイザース様の空間魔法よ」

 メーディアは、自分のことのように自慢げに話す。

「時間を司る神 クロノスよ、我は時の旅人今此処にチカラを分け与えよーー 瞬間移動魔法(エスケープ)」


 一瞬だったーー 地震でも起きたかのような振動がして立体魔方陣が物凄い速さで回転したかと思ったら既に別の場所に移動していた。

 書斎自体は何も変わっていないのでよく分からなかったが爆発音などは何もしなくなった。

 適当でいい加減なオッさんだが、このメイザースは、魔法使いとしては超一流という事だけは分かった。

「ふう、いやいや空間魔法は莫大な魔力を消費しますねえ。少し休憩します、何時までも居てくれかまいませんのでメーディアちゃーん、お部屋を案内してあげて下さい」

    (  ん? どういう事だ? 部屋? )

「かしこまりました。お部屋にご案内しますので此方にどうぞ」

 とにかく、メイザースの屋敷は広い。 見た目はさほど広く感じないが中はアーサーの家の屋敷と変わらない位の広さだ。

 エントランスから二階に移動し、メーディアに言われるがまま部屋に案内された。

「あの・・・日帰りで帰る予定だったんだけど」

 誤解さていてほしいと思い、恐る恐るメーディアに問いかけてみた。

「ーー 今日のところは申し訳ないけど泊まってもらうしかないわね。 それと、 場所を移動した事をあなたは忘れているわよ。ここはあなたが思っているような場所ではないのよ。明日メイザース様とお話して今後のことを話しなさい」

メーディアは、そう言い残すと忙しなく去って行ったーー

メーディアにあの様に言われたので、アーサーは、 何処に居るんだろうと試しに窓の外を覗いて見た。 

「ーーーー」

きっと何かの間違いだと見なかった事にした・・・

波の音だけが聞こえるーー



ーー 大変な事に巻き込まれたようです ーー

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