三人の精霊と俺の契約事情
変わらぬ想い
一瞬のようで長い時間を眠っていたようだった。リリスは目を覚ました。
外から真っ赤な夕日が差し込んでくる。
「酷く長い間眠っていたような気がしますわ」
重い目を擦りながら辺りを見回すがいつもと変わらないような気がする。
「アクセル・・・?」
立ち上がろうとするが足に力が入らずフラついてしまう。 無理もない一ヶ月もの間、 ルナの魔法により眠っていたのだ。
窓枠に掴まりながら何とか立ち上がり窓の外を覗き込むと外では壊れた城の修復作業などが進められている。
「この前の騒ぎは治まったのね。またアクセルが暴れたのかしら」
リリスは、アクセルの戦う姿を思い浮かべながら笑み浮かべる。
ドアの開く鈍い音が部屋に響いたーー
リリスが振り向くとそこにはリボンを付けた可愛らしい猫と淡く輝く精霊がいた。
「リリスにゃん、お目覚めでしたか」
「・・・・」
ルナは顔を顰めて下を向き何て言ったら良いのだろうと罰の悪そうな顔をしている。
「私が寝ていたのは何か理由でも? アクセルの仕業なの? アクセルは何処」
リリスは、顔を膨らませている。
メルルとルナは顔を見合わせ覚悟を決める。
「・・・リリスにゃん、一緒に来てほしい所があるにゃん」
「アクセルのところなの?」
ルナは、心が痛くてたまらなかった。
リリスは、アクセルの最期の瞬間を知らないでずっと眠らされていたのだ。
いくらアクセルが自分の最期になるかもしれない、自分の死に際を見せたくない、リリスを守る為だと言っても何も知らないで自分だけがみんなが命を懸けて戦っていたのに眠っていた事実を知るなんて、リリスが可哀想でならなかった。
そして何よりあの戦いから既にもう一週間が過ぎていたのだーー
★ ★ ★
「君たちのおかげで、 我が国は助かった例を言うぞ。 アクセル、 我が子は・・・勇敢だった儂は、 歳をとりすぎた・・・」
アクセルとその仲間たちの葬儀は国をあげて執り行われた。
国王は、お爺さんと言っても良い位のお年寄りだった。アクセルは、 第三婦人の子どもだった。アクセルの母は、いつまでもいつまでもアクセルの遺体から離れようとしなかった。
ペダランとエリシアの二人はホーエンハイムの牢に親子二人で収容された。
「娘を救っていただきありがとうございます」
牢の中に入れられたのに凄く嬉しそうなのが印象的だったーー娘も父と一緒にいられて嬉しそうだった。
そして、 アーサーと三人の精霊達はーー
「あまり力になれなくて悪かったな」
「何を言ってますにゃん、アーサーにゃんのおかげでホーエンハイムの国を守れましたのにゃん。 本当に感謝ですにゃん」
「アクセルやカスケード、他に沢山の仲間や国民が亡くなってしまった」
「それでも、その人達が守ろうとした大切な物を守ることが出来ましたにゃん。その人達の意思を受け継ぐことが出来たと思ってますにゃん」
「・・・そっか。 いろいろ世話になったな、 メルル、 ルナ」
「あれ? ルナいないよお」
「るな、いないの」
「別れが辛いのかもですにゃ。もっとゆっくりして行けば良いのに、ずっとホーエンハイムに居てくれても良いのですにゃ」
「帰る場所もあるし、心配してこいつらの事を待ってくれている人もいるんで」
「ミーナなの」
「喫茶店のウエイトレスにゃん。待っている人がいるのですにゃん。それは残念ですにゃまたいつか会いに来て下さいにゃ」
「ああ、メルル達も是非また会いに来てくれ」
馬車の定期便に乗って帰ろうとするとメルルがまた近づいて来る。
「そう言えばお礼がまだでしたにゃん」
メルルは、明後日を向きながら少し落ち着きがない感じた。
「お礼ならいっぱい馬車に貰ったわよお」
リサが普通に馬車の荷台の奥を指差して答える。
「私からのお礼ですにゃん」
そういうとアーサーの唇にキスをした。
三人の精霊達は口をワニのように大きく開けそのまま固まっていた。
メルルの顔は普段からは想像もつかない程愛らしく少女のような顔つきで頬を染めていた。
「にゃんにゃん」
そういうと背を向け手とリボンの付いた尻尾を振りながら去って行った。
アーサーは、しばらく何が起こったのか分からず呆然としていた。
その後は、三人の精霊にボコボコにされたのは言うまでもないーー。
「ルナ、本当にお別れを言わなくて良かったのですにゃん」
「うん」
「彼女たちと一緒に行っても良かったのですにゃん」
「うん。 それも考えたけど私もうパートナーとか作る気はないし、後は期限がきたら消えるだけだから。どうせ消えるならアクセル様の近くで消えたいから」
「ルナ・・・」
ルナは、遠くなって行く馬車を見つめながら彼女たちとの出会いから今日までの思い出を思い返していた。
「さよならは、言わないわよ」
「また会いたいときに会うなの」
「離れていても、友達よ」
突然、背後から声が聞こえた。
振り返ると三人の精霊が涙を浮かべながら笑顔でふわふわと浮いている。
「何で、何で? 馬車に乗って・・・」
「あんたの泣き顔最後に見ておこうと思ったのよ」
「るな、みずくさいなの」
「笑顔でお別れよ」
ルナは、今まで溜めていた感情が堰を切ったように溢れ出し三人に駆け寄り抱き付く。
「笑顔で、お別れって言ったじゃん」
「そう言うリサだって泣いてるよ」
「だって寂しいんだもん」
四人は、いつまでも別れを惜しんでいた。
★ ★ ★
川は涼しげな水音を響かせる、森の木々はそよそよと風が歌っているようだ。
「メルル何処まで行くのです? アクセルは」
リリスは、キョロキョロと周りを見渡す。
「もう少しですにゃ」
ルナはもう胸が張り裂けそうだった。
「ここですにゃ」
「ここは・・・?」
リリスは、状況が理解出来ずにいる。
「アクセルにゃんが・・・眠ってらっしゃいますにゃん」
メルルの目から涙がとめどなく溢れた。
「うそよ。何で」
リリスは、目が点になっている。
「私がアクセルに頼まれてあなたを眠らせたのよ。 眠ってから一カ月が経過してるのよ」
ルナは、リリスを真っ直ぐ見れないでいる。
「アクセル、 アクセル、あくせるぅぅぅ」
綺麗な白い墓石に剣が一本刺さっている。
リリスはその白い墓石の前に両膝を付きダムが決壊したように泣いている。
その泣き声は、森の中を響き渡っていた。
「リリス、ごめんなさい・・・私、 アクセル様の頼み断れなくて」
しばらくリリスは、泣き続けた。そんなリリスをメルルとルナは黙って見ていた。
「・・・ごめんなさいね。 いつまでも泣いていて。 大丈夫じゃないけどいつも先頭に立って戦場に行くからいつかそうゆう時が来るのは覚悟していたわ」
「リリス・・・」
「ルナ、アクセル様ってことはアクセルと契約したのね?」
リリスは、微笑みながらルナに問いかける。
「ごめんね。 アクセルとリリスの仲を壊すような形にしてしまって・・・私、 アクセル様とリリスの邪魔ばかりして」
リリスを真っ直ぐ見れないでいる。
「何を言ってるの? 私とアクセルは子供の頃からの幼馴染みよ。 アクセルは・・・あなたのことが・・・まさかアクセルから・・・」
リリスは、両手で口を押さえて目を丸くする。 そして、 また目に涙を溜める。
「ルナ・・・あなたアクセルから何も」
メルルも涙を浮かべ天を仰ぐ。
ルナは、何のことか分からず戸惑う。
「ルナ、アクセルとどうやって契約したの?」
「アクセル様から契約しろって、無理やり口づけを・・・」
少し恥ずかしそうに下を向いて顔を赤く染める。
「それからアクセルは、あなたに何て?」
リリスは、身を乗り出すようにルナに問いかける。
「えっ? あの・・・戦いが終わったら伝えたいことがあるって」
* * * * * * * * * * * * *
「アクセル・・・様・・・」
「ん? 」
「私のこと・・・すき・・ですか?」
アクセルは、思わず愛してると言いかけたが・・・
「この戦いが終わったら教えてやるよ」
ルナはぷーっと顔を膨らませた。
「これだけは言える。俺はお前とはずっとずっと一緒に居たいと思ってた」
「ルナは、その言葉だけで充分幸せです」
アクセルは、優しく自分の胸にルナを押し当てた。
「アクセル様、ルナ嬉しいです」
「こんなことしか出来なくてごめんな」
「そんなことないです。幸せです」
この戦いが終わったらちゃんと愛してるって伝えて二人でのんびり笑って過ごすんだ。
* * * * * * * * * * * * *
「あの馬鹿、結局・・・だからちゃんと言えって言ったのに」
「アクセルにゃんらしいと言えばそれまでにゃん」
ルナは、何が何だか分からないでいる。
「ルナ、よく聞いてねこれは事実で本当の話でこれが伝えられなかったアクセルの気持ちよ」
* * * * * * * * * * * * *
「メルル言うなよ絶対。だって恥ずかしいだろ」
「ルナにゃん喜びますにゃん。お気持ち伝えすれば良いのに」
「そうよ、毎日毎日あなたに会いに来てくれて本当に可愛いわ。小さい時にアクセルが私に会いに来てくれたみたいに。ふふふ」
「リリスからかうなよ。ただの幼馴染みだろ」
「ちゃんと伝えて好きなら契約してあげなさい。 あなたの為に待っていてくれてるのよ」
「んんん・・・だよな。ちゃんと言うよ」
* * * * * * * * * * * * *
「俺は、ルナを愛してるって」
「あくせるさまぁぁぁぁぁ」
やっと聞けたアクセルの本当の気持ち、こんな形でなんて・・・
とめどなく流れる涙を止めることは出来なかった。
アクセル様はズルいです。
いつも、いつも、ルナを置き去りにして。
アクセル様は頑固です。
いつも肝心なことは何も話してくれない、 自分の意見ばかりです。
アクセル様は嘘つきです。
戦いが終わったら本当の気持ちを教えてくれるって言ったのに・・・私のこと好きですか?
アクセル様は意地悪です。
最後まで自分の言葉で教えてくれなかったです。
一度でもいいからアクセル様の声で言って欲しかった。
ーー ルナ、好きだよって ーー
「ルナは、るなは、あくせるさまをあいしてます。ずっと、ずっとぉぉ」
溢れる涙を止められず泣き続けるルナをリリスがそっと抱き締める。
メルルもそっと二人に近づき寄り添う、 三人はアクセルの美しい真っ白な墓石の前でそよそよと吹き付ける優しい風を感じていた。
あなたはいつまでも私の心の中にいる。
ーー あなたと出逢えて私は幸せでしたーー
★ ★ ★
「ただいまあなの」
渇いた銀色の鈴の音が店内に響き渡る。
「エルザあ、みんなあ無事帰ってきたのね、 お帰りなさい」
ミーナは、薄っすら涙を浮かべていた。
「ただいまミーナ、 一週間位だったけど何だか何年も会ってなかった感じがするね」
アーサーが少し遅れて喫茶店の中に入る。
相変わらずほろ苦いコーヒーの香りと甘いケーキの香りが懐かしい店内。
「お帰りなさい。みんな」
その夜は、遅くまで思い出話しに花を咲かせた。 久しぶりなのかいつまでも、いつまでも話をしていたくて、 ここが自分の帰るべき場所なのかと初めて実感した。
帰りを待っている人がいてくれる喜びを改めて感じたアーサーだった。
ーー ただいま 僕の居場所 ーー
外から真っ赤な夕日が差し込んでくる。
「酷く長い間眠っていたような気がしますわ」
重い目を擦りながら辺りを見回すがいつもと変わらないような気がする。
「アクセル・・・?」
立ち上がろうとするが足に力が入らずフラついてしまう。 無理もない一ヶ月もの間、 ルナの魔法により眠っていたのだ。
窓枠に掴まりながら何とか立ち上がり窓の外を覗き込むと外では壊れた城の修復作業などが進められている。
「この前の騒ぎは治まったのね。またアクセルが暴れたのかしら」
リリスは、アクセルの戦う姿を思い浮かべながら笑み浮かべる。
ドアの開く鈍い音が部屋に響いたーー
リリスが振り向くとそこにはリボンを付けた可愛らしい猫と淡く輝く精霊がいた。
「リリスにゃん、お目覚めでしたか」
「・・・・」
ルナは顔を顰めて下を向き何て言ったら良いのだろうと罰の悪そうな顔をしている。
「私が寝ていたのは何か理由でも? アクセルの仕業なの? アクセルは何処」
リリスは、顔を膨らませている。
メルルとルナは顔を見合わせ覚悟を決める。
「・・・リリスにゃん、一緒に来てほしい所があるにゃん」
「アクセルのところなの?」
ルナは、心が痛くてたまらなかった。
リリスは、アクセルの最期の瞬間を知らないでずっと眠らされていたのだ。
いくらアクセルが自分の最期になるかもしれない、自分の死に際を見せたくない、リリスを守る為だと言っても何も知らないで自分だけがみんなが命を懸けて戦っていたのに眠っていた事実を知るなんて、リリスが可哀想でならなかった。
そして何よりあの戦いから既にもう一週間が過ぎていたのだーー
★ ★ ★
「君たちのおかげで、 我が国は助かった例を言うぞ。 アクセル、 我が子は・・・勇敢だった儂は、 歳をとりすぎた・・・」
アクセルとその仲間たちの葬儀は国をあげて執り行われた。
国王は、お爺さんと言っても良い位のお年寄りだった。アクセルは、 第三婦人の子どもだった。アクセルの母は、いつまでもいつまでもアクセルの遺体から離れようとしなかった。
ペダランとエリシアの二人はホーエンハイムの牢に親子二人で収容された。
「娘を救っていただきありがとうございます」
牢の中に入れられたのに凄く嬉しそうなのが印象的だったーー娘も父と一緒にいられて嬉しそうだった。
そして、 アーサーと三人の精霊達はーー
「あまり力になれなくて悪かったな」
「何を言ってますにゃん、アーサーにゃんのおかげでホーエンハイムの国を守れましたのにゃん。 本当に感謝ですにゃん」
「アクセルやカスケード、他に沢山の仲間や国民が亡くなってしまった」
「それでも、その人達が守ろうとした大切な物を守ることが出来ましたにゃん。その人達の意思を受け継ぐことが出来たと思ってますにゃん」
「・・・そっか。 いろいろ世話になったな、 メルル、 ルナ」
「あれ? ルナいないよお」
「るな、いないの」
「別れが辛いのかもですにゃ。もっとゆっくりして行けば良いのに、ずっとホーエンハイムに居てくれても良いのですにゃ」
「帰る場所もあるし、心配してこいつらの事を待ってくれている人もいるんで」
「ミーナなの」
「喫茶店のウエイトレスにゃん。待っている人がいるのですにゃん。それは残念ですにゃまたいつか会いに来て下さいにゃ」
「ああ、メルル達も是非また会いに来てくれ」
馬車の定期便に乗って帰ろうとするとメルルがまた近づいて来る。
「そう言えばお礼がまだでしたにゃん」
メルルは、明後日を向きながら少し落ち着きがない感じた。
「お礼ならいっぱい馬車に貰ったわよお」
リサが普通に馬車の荷台の奥を指差して答える。
「私からのお礼ですにゃん」
そういうとアーサーの唇にキスをした。
三人の精霊達は口をワニのように大きく開けそのまま固まっていた。
メルルの顔は普段からは想像もつかない程愛らしく少女のような顔つきで頬を染めていた。
「にゃんにゃん」
そういうと背を向け手とリボンの付いた尻尾を振りながら去って行った。
アーサーは、しばらく何が起こったのか分からず呆然としていた。
その後は、三人の精霊にボコボコにされたのは言うまでもないーー。
「ルナ、本当にお別れを言わなくて良かったのですにゃん」
「うん」
「彼女たちと一緒に行っても良かったのですにゃん」
「うん。 それも考えたけど私もうパートナーとか作る気はないし、後は期限がきたら消えるだけだから。どうせ消えるならアクセル様の近くで消えたいから」
「ルナ・・・」
ルナは、遠くなって行く馬車を見つめながら彼女たちとの出会いから今日までの思い出を思い返していた。
「さよならは、言わないわよ」
「また会いたいときに会うなの」
「離れていても、友達よ」
突然、背後から声が聞こえた。
振り返ると三人の精霊が涙を浮かべながら笑顔でふわふわと浮いている。
「何で、何で? 馬車に乗って・・・」
「あんたの泣き顔最後に見ておこうと思ったのよ」
「るな、みずくさいなの」
「笑顔でお別れよ」
ルナは、今まで溜めていた感情が堰を切ったように溢れ出し三人に駆け寄り抱き付く。
「笑顔で、お別れって言ったじゃん」
「そう言うリサだって泣いてるよ」
「だって寂しいんだもん」
四人は、いつまでも別れを惜しんでいた。
★ ★ ★
川は涼しげな水音を響かせる、森の木々はそよそよと風が歌っているようだ。
「メルル何処まで行くのです? アクセルは」
リリスは、キョロキョロと周りを見渡す。
「もう少しですにゃ」
ルナはもう胸が張り裂けそうだった。
「ここですにゃ」
「ここは・・・?」
リリスは、状況が理解出来ずにいる。
「アクセルにゃんが・・・眠ってらっしゃいますにゃん」
メルルの目から涙がとめどなく溢れた。
「うそよ。何で」
リリスは、目が点になっている。
「私がアクセルに頼まれてあなたを眠らせたのよ。 眠ってから一カ月が経過してるのよ」
ルナは、リリスを真っ直ぐ見れないでいる。
「アクセル、 アクセル、あくせるぅぅぅ」
綺麗な白い墓石に剣が一本刺さっている。
リリスはその白い墓石の前に両膝を付きダムが決壊したように泣いている。
その泣き声は、森の中を響き渡っていた。
「リリス、ごめんなさい・・・私、 アクセル様の頼み断れなくて」
しばらくリリスは、泣き続けた。そんなリリスをメルルとルナは黙って見ていた。
「・・・ごめんなさいね。 いつまでも泣いていて。 大丈夫じゃないけどいつも先頭に立って戦場に行くからいつかそうゆう時が来るのは覚悟していたわ」
「リリス・・・」
「ルナ、アクセル様ってことはアクセルと契約したのね?」
リリスは、微笑みながらルナに問いかける。
「ごめんね。 アクセルとリリスの仲を壊すような形にしてしまって・・・私、 アクセル様とリリスの邪魔ばかりして」
リリスを真っ直ぐ見れないでいる。
「何を言ってるの? 私とアクセルは子供の頃からの幼馴染みよ。 アクセルは・・・あなたのことが・・・まさかアクセルから・・・」
リリスは、両手で口を押さえて目を丸くする。 そして、 また目に涙を溜める。
「ルナ・・・あなたアクセルから何も」
メルルも涙を浮かべ天を仰ぐ。
ルナは、何のことか分からず戸惑う。
「ルナ、アクセルとどうやって契約したの?」
「アクセル様から契約しろって、無理やり口づけを・・・」
少し恥ずかしそうに下を向いて顔を赤く染める。
「それからアクセルは、あなたに何て?」
リリスは、身を乗り出すようにルナに問いかける。
「えっ? あの・・・戦いが終わったら伝えたいことがあるって」
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「アクセル・・・様・・・」
「ん? 」
「私のこと・・・すき・・ですか?」
アクセルは、思わず愛してると言いかけたが・・・
「この戦いが終わったら教えてやるよ」
ルナはぷーっと顔を膨らませた。
「これだけは言える。俺はお前とはずっとずっと一緒に居たいと思ってた」
「ルナは、その言葉だけで充分幸せです」
アクセルは、優しく自分の胸にルナを押し当てた。
「アクセル様、ルナ嬉しいです」
「こんなことしか出来なくてごめんな」
「そんなことないです。幸せです」
この戦いが終わったらちゃんと愛してるって伝えて二人でのんびり笑って過ごすんだ。
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「あの馬鹿、結局・・・だからちゃんと言えって言ったのに」
「アクセルにゃんらしいと言えばそれまでにゃん」
ルナは、何が何だか分からないでいる。
「ルナ、よく聞いてねこれは事実で本当の話でこれが伝えられなかったアクセルの気持ちよ」
* * * * * * * * * * * * *
「メルル言うなよ絶対。だって恥ずかしいだろ」
「ルナにゃん喜びますにゃん。お気持ち伝えすれば良いのに」
「そうよ、毎日毎日あなたに会いに来てくれて本当に可愛いわ。小さい時にアクセルが私に会いに来てくれたみたいに。ふふふ」
「リリスからかうなよ。ただの幼馴染みだろ」
「ちゃんと伝えて好きなら契約してあげなさい。 あなたの為に待っていてくれてるのよ」
「んんん・・・だよな。ちゃんと言うよ」
* * * * * * * * * * * * *
「俺は、ルナを愛してるって」
「あくせるさまぁぁぁぁぁ」
やっと聞けたアクセルの本当の気持ち、こんな形でなんて・・・
とめどなく流れる涙を止めることは出来なかった。
アクセル様はズルいです。
いつも、いつも、ルナを置き去りにして。
アクセル様は頑固です。
いつも肝心なことは何も話してくれない、 自分の意見ばかりです。
アクセル様は嘘つきです。
戦いが終わったら本当の気持ちを教えてくれるって言ったのに・・・私のこと好きですか?
アクセル様は意地悪です。
最後まで自分の言葉で教えてくれなかったです。
一度でもいいからアクセル様の声で言って欲しかった。
ーー ルナ、好きだよって ーー
「ルナは、るなは、あくせるさまをあいしてます。ずっと、ずっとぉぉ」
溢れる涙を止められず泣き続けるルナをリリスがそっと抱き締める。
メルルもそっと二人に近づき寄り添う、 三人はアクセルの美しい真っ白な墓石の前でそよそよと吹き付ける優しい風を感じていた。
あなたはいつまでも私の心の中にいる。
ーー あなたと出逢えて私は幸せでしたーー
★ ★ ★
「ただいまあなの」
渇いた銀色の鈴の音が店内に響き渡る。
「エルザあ、みんなあ無事帰ってきたのね、 お帰りなさい」
ミーナは、薄っすら涙を浮かべていた。
「ただいまミーナ、 一週間位だったけど何だか何年も会ってなかった感じがするね」
アーサーが少し遅れて喫茶店の中に入る。
相変わらずほろ苦いコーヒーの香りと甘いケーキの香りが懐かしい店内。
「お帰りなさい。みんな」
その夜は、遅くまで思い出話しに花を咲かせた。 久しぶりなのかいつまでも、いつまでも話をしていたくて、 ここが自分の帰るべき場所なのかと初めて実感した。
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