三人の精霊と俺の契約事情
兄弟
「うむーー・・・・」
「うむーー・・・なの」
「・・・」
謎の生物のような唸り声が部屋中に木霊している一つは男性でもう一つは小さな可愛らしい声だ。
「うむーー・・・」
「うむーー・・・なの」
アーサーとシルフィーは顎に手を置き何やら考え事をしている。
「エルザ真似するな」
エルザは、なの?!っと驚いたフリをして笑いながら去っていった。
「さっきから何を悩んでらっしゃるのです」
シルフィーは読書を中断し、二人のやりとりに呆れて堪らず口を挟んだ。
「兄貴に呼ばれたんだよ」
良くぞ聞いてくれたと言わんばかりにシルフィーに相談する。
「お兄様ですか・・・そう言えばあの騒動以来会ってませんね」
「ああ。かなりの重症でもあったし親父たちは未だに俺のことは認めてないしな。兄貴も俺の顔なんて見たくないと思ったから」
「呼ばれたなら行くしかないですわね。何かあれば私たちが」
シルフィーは眼鏡を人差し指で押し上げその反射で眼鏡の縁が光った。
アーサーはシルフィーに話を聞いてもらい気持ちが楽になったのか、覚悟を決めて大きなため息を吐いた。
「仕方ない。行くか」
★ ★ ★
薄暗い廊下に乾いたノックをする音が響き渡る。
「どうぞ、入りたまえ」
ゆっくりとドアを開けよそよそしくアーサーが入る。
「何かご用ですか」
アーサーが訪ねたが、沈黙がしばらく続く、この重い空気にアーサーは息苦しさを感じていた。ただですら苦手な兄貴なのにそれを目の前にして立っている。 しかも普段は絶対にあり得ない向こうからの呼び出しだ。何を言われるのかと緊張で手に汗をかいている。
「ーーこの前は・・・世話になったな」
耳を疑いたくなるような思い掛け無い言葉だった。
「・・・いいえ、 そんなこと」
何て言えば良いのだろう、言葉が見つからない。
「・・・何か望みはあるか?欲しい物でも、何でも可能な限り叶えよう」
「望み何て、そんな・・・」
「遠慮することない、正直自分の愚かさには反省している。お前が止めてくれなければ多大なる損害が出て取り返しのつかない事になっていただろう。せめてもの感謝の気持ちだ」
フレディはアーサーに頭を下げて感謝の気持ちを表した。アーサーは、戸惑うばかりだった。
「金でも宝石でも女でも何でも好きなモノを言えばいい。何が欲しい」
アーサーは、少し考えていた。
そして、閃いたようにこう言った。
「家が欲しいです。 街に小さくても構いませんので家を買って欲しいです」
フレディは、首を傾げて不思議そうな顔をしていた。
「家なら此処にあるだろ?王宮の何が不満だ」
「ここなら何不住なく暮らせます。だけど僕は自分のチカラをもっと試してみたい。自分のチカラで生きてみたい。自分の可能性を知りたい。そして、もっと世界を知りたい」
アーサーは目を輝かせてフレディを見つめていた。
「ふふ、良かろう。早速手配しておくよ」
「ありがとう。兄さん」
アーサーは、一礼してフレディに背を向け去ろうとするとーー。
「アーサー! お前は変わったよ。精霊に感謝だな」
「うん! 兄さんと同じくらいかけがえのない存在だよ」
アーサーは振り返らずにそう言い残し去っていった。照れくさくてフレディを見れなかったのかもしれない。
アーサーからの思い掛け無い言葉にフレディは今までの自分がしてきた事を思い出しながら何もない天井をぼんやりと見つめていた・・・・
その時ーー ノックが鳴ったと思ったら勢いよくドアが開く。
「アーサーを呼び出して何の相談な訳」
煌びやかな宝石を見に纏い天井のライトで眩しいくらいに輝いている。見るからに高そうなドレスを着ている。
高貴さに劣らぬ容姿も美しく他の男たちなら目を奪われてしまう。
「ミランダ姉さん」
「まさか・・・あの能無しの恥晒しを認めたりしてないわよね? たかが精霊を飼いならして魔法を使いこなしている気でいるだけなんですから」
「・・・今回の件は私に預からせて下さい。正直アーサーに助けられたのは事実なので」
うつ向いたまま声のトーンを下げて答える。
「ふーんっ。まあいいわあまり私やお父様を怒らせないことね。フレディ・・・次は無いわよ」
そういうとコツコツとハイヒールを鳴らしながら去って行った。
フレディは、その後ろ姿を見送りしばらく無言で何かを考えていたが、しばらく経つと、執事を呼びつけて至急頼みたいものがあると告げた。
ーー 城下町に家を一軒手配してくれ ーー
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