脇役転生の筈だった

紗砂

14


……帰ってきてから思い出したのだが……。
私はクッキーを作った本来の目的を忘れていたようだ。

私とした事がそんな大切な事を忘れるだなんて……。
……不覚っ!

…というかよくよく考えたら相手の人が誰か知らないや。
メールで聞いてみるか。


『 こんばんは。
夜分遅くに申し訳ありません。
お名前を伺いたいのですがよろしいでしょうか?
お礼をお渡ししたいのですが空いている時間帯はありますでしょうか?
                                                          咲夜』


と、これでいいかな?
…送信っと。

すると、丁度開いていたのか数分で返信がくる。


『恐れ多いです!
私達の役目は天使様をお守りし、お助けすることです!
今回の件は私共の落ち度です。
お礼なんて滅相もございません』


その文面から理解した。
……理解してしまった。
この人達は兄の同類だと。
ならば上手い言い方はこうだろう。


『…どうしても、駄目ですか?
私のお礼は受け取れませんか?
折角用意いたしましたのでお渡ししたいのですが……。

…いえ、申し訳ありません。
ご迷惑をお掛けしてしまいました。
私のお礼はお受け取りしていただけない程駄目なのですね……』


そう送るとすぐ様返信が返ってきた。


『そんな事ありません!
天……咲夜様は悪くありません!
悪いのは咲夜様を陥れようとした悪魔です!』


いや、悪魔って……。
一部の人達からそう言われてるのは知ってたけどさ……(主に兄のせいで)
あと、天使って打とうとしたよね?
兄の影響がこの人にまで……。



『ならば受け取っていただけるのですね。
ありがとうございます。
では、明後日の放課後に図書室でお待ちしておりますね。
おやすみなさいませ。
                                咲夜』


……これでいいかな?

私は送信すると疲れたように机に突っ伏した。
そしてどうやらそのまま眠ってしまったらしく気づいた時には朝日が登っていた。


「……ぅ…ん……」


私の肩には毛布が掛けられていて誰か入ってきたのだろうという事が分かる。
……PCの電源は切ってあるようで安心した。
多分掛けてくれたのは兄だろうと予測し、兄を訪れると私はお礼を告げた。


「おはようございます、お兄様。
毛布を掛けていただいたようでありがとうございます」

「おはよう、咲夜。
今度からはちゃんとベットで寝るようにね?」

「はい。
お兄様とのお出掛けで少々はしゃいでしまったようです……。
申し訳ありません…」


久しぶりだからといって遊びつかれた子供みたいな……。
うぅ…恥ずかしい……。


「それは良かった。
じゃあ、また今度どこか行こうか」

「はい!
今度はお兄様が行きたい場所がいいです!」


…って…これじゃあ子供扱いされる原因になるんじゃ……!!
兄を見るとふふっと楽しそうに笑っていた。

……楽しそうだからいいか。
明日の事は兄には言わないようにしないと相手が危ないなぁ……。
というか、本当に誰なんだろう?やっぱり同級生かな?
うーん……何組だろう?
ま、明日になれば分かるか。


そんなこんなで後日、放課後。
私は愛音や奏橙に断りをいれて図書館へとやってきた。


「……まだ来ていないようですね。
お礼をするのに遅れてしまったら失礼ですもの…。
早めについて良かったですわ…」


どうせなら相手が来るまで本でもみるか。
久しぶりに借りるのも良いかもしれないな。


「はぁっはあっ……。
間に、あっ…た……?」


息を切らせ走ってきたのは中等部の少年だった。
中等部の子がここになんの用だろうか?
中等部の少年は私を見ると呆然とした。


「あっ…。
てん……咲夜先輩……」


何故か顔を赤らめているがきっと走ってきたからだろう。
…私の名前を知っているということはこの少年がファンクラブの人だろうか?
だとしたらあのファンクラブの会長は私の後輩が立ち上げたのか……。
同級生では無かったのか…。
折角同い年の友人が出来るかも、とか思ってたんだけどな。


「初めまして。
私は高等部、1年3組の海野咲夜と申します。
…あなたがファンクラブの会長さんでしょうか?」

「は、はいっ…!
僕は中等部2年1組の宮本勇瑠といいます!
咲夜さ…先輩にお会いできて光栄です!!」


天使と言いそうになったり様で呼びそうになったり……。
本当に会長さんのようだ。
そして、本質が兄に似ている。


「よろしくお願いしますわ、宮本さん」

「た、勇瑠で結構です!」


…そう言うのなら遠慮なく。


「では、勇瑠君と呼ばせていただきますね」


私が微笑みかけると勇瑠君は再び顔を赤くしてしまった。
うーん……何故だろうか?
走ってきたせいなのかな?


「そうでした…。
先日はありがとうございました。
お礼としてクッキーを焼いたので貰ってください」


私は鞄からラッピングされたクッキーを取り出し勇瑠君に渡した。

 
「あ、ありがとうございます…!!」


嬉しそうにはにかむ勇瑠君を見ていると弟が出来たようにも感じて可愛い。


「あ…すいません…。
明日、テストがあるので勉強しなければいけないんです……」


申し訳なさそうに言いつつもどこか名残なさそうにしている勇瑠君を見て私も何か手伝えるかなぁ……と思ってしまう。
兄にも遅れると言ってあるし、光隆会の仕事があるだろうから問題無いだろう。


「私で宜しければお手伝いします。
……これでもそれなりに成績はいい方なんですよ?」

「入学以来ずっと首席だったと聞いています」


あれ?
知ってたんだ。
でも人の口から聞くとなんか照れるね。
後輩に知られていたとは思わなかったし。


「えぇ。
そんな私で宜しければお教えしますよ?」

「…いいのですか?」


変なところで遠慮するなぁ。
私の方は別にテストとかないからいいのに。
それに、家に帰ってから兄に頼めば教えてもらえるし。
……元大学生だし。


「勿論です。
いつもこの時間帯は空いていますから問題ありません」


兄を待ってる間って大抵天也達といるんだよね。
そうすると兄の機嫌が悪くなるってオマケ付きだけど。


「咲夜先輩、ありがとうございます!」

「さぁ、始めましょう?」


テストは数学だったらしく公式の部分で手間取っているようだった。
様子から見るに丁寧にやりすぎて時間がなくなるのだろう。
一通り私の出した問題を解き終わり私を伺うように見てくる。


「ど、どうでしょうか?」

「…全問出来ていますよ。
勇瑠君の場合だと式をたてるのに時間がかかっているような気がします。
それと…こちらの問題のない場合は省略出来るのでそちらを使ってやるのもいいかもしれませんよ」


要点だけを絞り込みその部分のみを詳しく教え、問題を解かせていく。
最初は手間取っていたのだが、暫くすると慣れてきたのかスラスラと解き始めるようになった。


「ここら辺は大丈夫そうですね。
…応用の問題をやってみましょうか」


ここまでは基礎。
これが出来ないと応用は出来ないからね。
……私の場合テストでは応用よりも基礎の方が間違える事多いけど。
そのせいで天也や奏橙にも変って言われたなぁ。


「…あれ?
咲夜先輩、この問題ってどちらの式を使えばいいのですか?」


あぁ…そこは私もつまづいた覚えがある。
分からなくなるんだよね。


「その問題はこの公式ですね。
この公式を使ってから………」

「分かりました!
ありがとうございます!」


1つ教えるごとに嬉しそうな表情をする勇瑠君は本当、弟みたいだ。
なんとなく兄の気持ちが分かった気がした瞬間だった。

一生懸命取り組む勇瑠君を見ていると昔の、前世の頃を思い出す。
高校受験の前に先輩によく教えてもらったのだ。
だが、その時とは逆の立場に寂しく感じた。


「咲夜先輩!
ありがとうございました!
咲夜先輩のおかげで今回のテストは大丈夫そうです!」

「それなら良かったです。
私の連絡先です。
もし、また何か教えて欲しい事があれば遠慮なく連絡してくださいね?」


私はそう言って連絡先を書いた紙を渡した。
すると、勇瑠君は嬉しそうにお礼告げ、出ていった。

ちなみに、私が教室に戻ると天也が不機嫌そうに座っていた。


「遅い!
全く……何してたんだ?
また面倒な事に巻き込まれてるんじゃないだろうな?」


こういう所は誰に似たんだろうね?
というか、天也は私をなんだと思っているんだろうか?
……前に聞いたら『咲夜は咲夜だろう?』なんて返ってきたからなぁ。


「失礼ですね……。
可愛い後輩に勉強を教えていただけですのに…」

「……後輩?
男か?」

「そうですが……それが何か?」

「…何でもないっ!」


いや、顔を真っ赤にして言われても……。
追求しないであげるけどさ。
もう……全く何なの?
兄と同類?
いや、それだと失礼か。
兄と違って天也は友人が心配なだけだからね。


「全く……天也のあぁいう子供らしい所も治ればいいのですが……」


そんな事を呟いた私に対し愛音は信じられないとでも言うような呆れた表情をした。


「咲夜……鈍感にも程があります…」

「まさか咲夜がこんなにも鈍感だとは思って無かったよ……」


2人して鈍感鈍感って……。
私はそんな鈍感じゃないのに!!
というか、何であれで鈍感って言われなきゃいけないんだろう?


「意味が分かりませんわ。
何故私が鈍感と言われなければなりませんの……」

「…本当、何で気付かないんだろうね?」


奏橙が不思議そうに言っているがやはりわからないまございままだった。
…一体何だというのだろうか?


「天也は意味が分かりますか?」


そう天也を見ると天也は顔を赤くしていた。
熱でもあるのだろうかと私は天也のおでこに自分のおでこを当てた。


「なっ…なっ!?
さ、ささ咲夜!?
何して……」

「……熱は、ないようですね。
…顔が赤いのは何故でしょう?」


全く天也の慌てようはなんなんだ。
ただ熱があるかどうかを確かめただけだと言うのに。


「~っ!!
お前のせいだ!!」

「……意味が分かりません。
今日の天也は変ですよ?」


何故私のせいになる。
本当に意味が分からない。
それに、天也だけじゃなくて愛音や奏橙も変だ。
どうしたのだろうか?


「まぁ、確かに今日の天也は変かもしれないね。
主に咲夜のせいでだけど」


だから何故私が出てくる?
私が何かしたのだろうか?


「確かに今のは咲夜が悪かったと思います」


愛音まで……。
何なんだろう?
私だけハブられた感じがするのだが。
それに鈍いって……。


「本当に分からないのだけど……。
私、何かしたかしら?」

「「した(と思います)」」


えぇぇぇぇ!?
何故!?
一体何をしたんだ!?


「咲夜、迎えにきたよ。
さぁ、一緒に帰ろうか」

「あ、はい!
それでは失礼します」


私は挨拶をすると兄と共に家に帰った。
ただし、その間ずっと奏橙や愛音の言った事について考えていた。

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