桜雲学園の正体不明《アンノウン》
09話 図書棟の管理者
放課後、俺は先生に言われたとおりに図書棟へ向かっていた。
その途中でふと、先ほどの会話を思い出した。
1時間程前
「川井さん、ちょっと質問いいかな?」
「んっ? どうしたの?」
「タレントってさ、具体的にはどんな感じのやつなのかなって」
「そうねぇ、なんだろ、魔法が使えるようになる感じっていうのかな。とにかく、初めて使ったときはとても興奮したものよ」
「そうなんだ。川井さんのタレントってどんなものなの?」
「私はね、色を変えるタレントなの。例えば······これとかをね」
そういって、彼女はピンク色の可愛らしいシャーペンを取り出した。
そして、カードを手にして......
「タレント!」
そういうと、手に持っていたシャーペンの色がピンクから水色へと変わった。
まるでマジックでも見ているかのようだ。
「こんなものね。私は色を変えるだけだけど、他の人だと結構すごいのを持っていたりするのよ。例えば、演劇部の部長は目からビームが出るらしいし、人それぞれね」
目からビームってまじかよ....
「まっ、どんなものが出るかはわからないんだし気楽にいけば。百聞は一見にしかずっていうでしょ」
(百聞は一見にしかず、ね)
実際そのとおりなのだろう。ならば覚悟を決めていくしかない。
そう思い、俺は図書棟の扉を開いた。
「ぉー、すごいな」
中に入ると目につくのは本、本、本、本、本と、とにかく本で溢れていた。
そこらの図書館よりもあるのではないかと思わせる量の本が目の前に広がっている。
「お主が石崎景か?」
「んっ?」
誰かに呼ばれた気がした。だが辺りを見回しても誰もいない。とても静かで、読書をするには最適な場所であることがわかる。
「おーい、聞こえておるのか?」
また呼ばれた気がした。でも、辺りを見回しても誰もいない。
「下じゃ、下じゃ」
言われたとおりに下を向くと、そこには小さな女の子が爪先を立て、精一杯自分の存在をアピールしていた。
とても可愛らしい。
「ねぇ、君、ご両親はどこかな? はぐれちゃったの?」
恐らく迷子になってしまったのだと思って、親の居場所を聞き出そうとしたら......
「何を訳のわからんことをいっているのだ。お主は迷子と勘違いしたのかもしれぬが、わしはここの管理者じゃよ」
「えっ? 嘘でしょ?」
「ほら、早くこっちへこい。お主にはタレントを渡さなくてはならぬのじゃ」
やっぱり信じられない。この子は学園長の娘さんか何かなのかな? ここは一旦話に付き合って上げて後で先生にでも·····
「石崎景」
「んっ? 何かな?」
「お主、まだわしを子供扱いしておるだろ?」
「いや、そんなことないって」
きっとこの子は大人振りたい年頃なのだろう。だからさっきから自分を子供扱いするなと······
「くたばれ」
ひどく冷たい、氷のような声が響いた。
「うっ!?」
俺は思わず苦悶の声をあげた。体がひどく重い、息をすることさえ厳しい。
 これはまるで重力が強くなっているかのような感覚だ。
あまりにも強い重力に俺は膝をつき、何もできずにいると......
「ふぅ」
女の子が一息つき、まるで嘘だったかのように重力から解放された。
「今のは一体·····」 
「石崎景、これは警告じゃ。今度わしを子供扱いしてみろ、次はこの程度ではすまないぞ? このような姿じゃがこれでもわしはかなり強いぞ? お主一人など簡単に葬り去れるくらいにはな」
この子はなんてことを口走っているのだろうか? でも、さっきの現象......あれは普通ではなかった。なら、とりあえずこの子の言うことを信じてみよう。
「それで、俺はどうすればいいんですか?」
「ふっ、ものわかりのよい奴は好きじゃぞ。ついてこい」
そういうと図書棟の奥の方へ、すたすたと歩いていく。
そういえばまだ名前を聞いていなかった。
「管理者さん、名前、何て言うんですか?」
「わしの名前か······まだ名乗っていなかったのう。わしの名前はラプルじゃ」
そういったラプルさんの顔が一瞬悲しそうに見えたのは気のせいだろうか?
その途中でふと、先ほどの会話を思い出した。
1時間程前
「川井さん、ちょっと質問いいかな?」
「んっ? どうしたの?」
「タレントってさ、具体的にはどんな感じのやつなのかなって」
「そうねぇ、なんだろ、魔法が使えるようになる感じっていうのかな。とにかく、初めて使ったときはとても興奮したものよ」
「そうなんだ。川井さんのタレントってどんなものなの?」
「私はね、色を変えるタレントなの。例えば······これとかをね」
そういって、彼女はピンク色の可愛らしいシャーペンを取り出した。
そして、カードを手にして......
「タレント!」
そういうと、手に持っていたシャーペンの色がピンクから水色へと変わった。
まるでマジックでも見ているかのようだ。
「こんなものね。私は色を変えるだけだけど、他の人だと結構すごいのを持っていたりするのよ。例えば、演劇部の部長は目からビームが出るらしいし、人それぞれね」
目からビームってまじかよ....
「まっ、どんなものが出るかはわからないんだし気楽にいけば。百聞は一見にしかずっていうでしょ」
(百聞は一見にしかず、ね)
実際そのとおりなのだろう。ならば覚悟を決めていくしかない。
そう思い、俺は図書棟の扉を開いた。
「ぉー、すごいな」
中に入ると目につくのは本、本、本、本、本と、とにかく本で溢れていた。
そこらの図書館よりもあるのではないかと思わせる量の本が目の前に広がっている。
「お主が石崎景か?」
「んっ?」
誰かに呼ばれた気がした。だが辺りを見回しても誰もいない。とても静かで、読書をするには最適な場所であることがわかる。
「おーい、聞こえておるのか?」
また呼ばれた気がした。でも、辺りを見回しても誰もいない。
「下じゃ、下じゃ」
言われたとおりに下を向くと、そこには小さな女の子が爪先を立て、精一杯自分の存在をアピールしていた。
とても可愛らしい。
「ねぇ、君、ご両親はどこかな? はぐれちゃったの?」
恐らく迷子になってしまったのだと思って、親の居場所を聞き出そうとしたら......
「何を訳のわからんことをいっているのだ。お主は迷子と勘違いしたのかもしれぬが、わしはここの管理者じゃよ」
「えっ? 嘘でしょ?」
「ほら、早くこっちへこい。お主にはタレントを渡さなくてはならぬのじゃ」
やっぱり信じられない。この子は学園長の娘さんか何かなのかな? ここは一旦話に付き合って上げて後で先生にでも·····
「石崎景」
「んっ? 何かな?」
「お主、まだわしを子供扱いしておるだろ?」
「いや、そんなことないって」
きっとこの子は大人振りたい年頃なのだろう。だからさっきから自分を子供扱いするなと······
「くたばれ」
ひどく冷たい、氷のような声が響いた。
「うっ!?」
俺は思わず苦悶の声をあげた。体がひどく重い、息をすることさえ厳しい。
 これはまるで重力が強くなっているかのような感覚だ。
あまりにも強い重力に俺は膝をつき、何もできずにいると......
「ふぅ」
女の子が一息つき、まるで嘘だったかのように重力から解放された。
「今のは一体·····」 
「石崎景、これは警告じゃ。今度わしを子供扱いしてみろ、次はこの程度ではすまないぞ? このような姿じゃがこれでもわしはかなり強いぞ? お主一人など簡単に葬り去れるくらいにはな」
この子はなんてことを口走っているのだろうか? でも、さっきの現象......あれは普通ではなかった。なら、とりあえずこの子の言うことを信じてみよう。
「それで、俺はどうすればいいんですか?」
「ふっ、ものわかりのよい奴は好きじゃぞ。ついてこい」
そういうと図書棟の奥の方へ、すたすたと歩いていく。
そういえばまだ名前を聞いていなかった。
「管理者さん、名前、何て言うんですか?」
「わしの名前か······まだ名乗っていなかったのう。わしの名前はラプルじゃ」
そういったラプルさんの顔が一瞬悲しそうに見えたのは気のせいだろうか?
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