チェガン
考え方
  リヒトは、アルカに自分が強くなるために真剣に聞いたが、アルカの口からは素っ気ない言葉がかえってきてた。
「さぁ〜?...じゃ!無くて!!」
    アルカの方に体ごと向けて怒鳴った。
「私は真剣に聞いてるのに!少しは考えてくれてもいいじゃない!ケチ!」
  リヒトが怒っているとアルカはいつもと変わらない口調で淡々と言った。
「そういうのは人に言われてやる事じゃねぇー、自分で考えてこれでいいのかを人に質問するのがいいんじゃねぇーのか?」
 自分で考えて...
「でも、思いつかないよ...」
  何をやってもうまくいかない...
学校のテストは赤点ギリギリ、体育は運動が得意ではないこともあり周りに迷惑をかけてしまう、友達付き合いも最近はうまくいかない...
話を聞いてしまって、勢いでこの人達の力になりたいと言ってしまったけど...正直、私が一人増えたところで逆に、みんなに迷惑をかけてしまうんじゃないだろうか...
私は...いない方がよかったんじゃないだろうか。
   頭の中で色々考えていると、いきなり隣から深い溜息と嫌味が聞こえた。
「お前は、救いようのないバカだな」
「なっ...」
  驚きと怒りで逆に言葉が出なかった。
人が、真剣に悩んでいるというのにそういうことを言う人は、多分アルカぐらいだろう。
  「考えることに意味があんだろーが」
  アルカは、目線だけをこっちに向けて言った。
いつもより、口調が柔らかい感じに思えた。
「考えることに...意味?」
「そうだ。考えても思いつかなければ聞けばいい。最初から、無理だのなんだと言ってたらいつまで経っても前には進めねぇー」
  心がこもったその言葉は、リヒトの奥深くまで届いた気がした。
確かに、無理だからとか、出来ないからと最初から諦めてたら前へは進めないかもしれない。
 お礼を言おうとリヒトが顔を上げたのと同時にアルカも、こっちに顔を向けて口を開いた。
「まぁ〜、こんなことを一人でできないんじゃ今後、やってけねぇーけどな」
  いやみったらしい顔と声色でリヒトに言い放った。
怒りが、腹の底から湧き上がった。
「〜〜〜!!上等よ!!絶対に一人で強くなってやる!覚悟しないさい」
強くなったら、絶対にアルカに土下座させてやる!!
  心の中で強く決意していた時、アルカは口元に笑みを浮かべていた。
 「呼んできたよー!」
さっき、人を呼びに行くと言ってどこかへと行ってしまったヒュースが戻ってきた。
その後ろには、大人しそうな女の人が着いてきていた。
(あの人がアーノさん?って人なのかな..)
「おら、行くぞ。ここで立ち話も疲れんだろ」
「え?あ...うん」
 先に行ってしまったアルカの後ろを着いて行った。
  みんなが移動した先には、大きなテーブルと規則正しく並べられた椅子が置いてあった。
みんなは、迷いなくそれぞれ椅子についた。
 それぞれいつもの定位置というものがあるのかもしれない。
  リヒトはどこに座ればいいのか分からないでちょっと困ってしまった。
その時、アルカが私の方を向いて手招きをしていた。
近づいていったら、隣を指さして指示した。
どうやら、アルカの右隣に座れと言っているようだ。
どこに座ればよかったのか分からなかったので、正直安心してしまった。
あまり話したことのない人の隣とかはちょっと、緊張してしまうから。
  「つーか、自己紹介とか何をいえばいいんだよ...」
一番最初に口を開けたのはソフィアだった。
「そりゃ〜、名前、年齢、好きな物、とかじゃねぇーか?」
「それが、王道ですわね」
「んじゃ、それでいこうか!」
トントン拍子に話が進んだ。
「それでは、まずはリヒトさん?お願いできますか?」
 カルムは、優しくほほんでリヒトの方へと顔を向けた。
「えっと...はい...」
  リヒトは、立ち上がり周りの人を見たあと、深呼吸した。
「私は、グラオザーム·リヒトと言います。気軽にリヒトと呼んでください。それで、年齢は15歳。好きなことはダンスを踊ることは好きです。よろしくお願いします」
  リヒトは、言い終わったあとまた席についた。
  ーー私、変な事言ってないかな
  周りに目を向けてみんなを見た。
  あまり関心がないのかみんな黙ったままだった。
  その沈黙を打ち破ったのが、アルカだった。
「つーかよ、こいつの自己紹介が終わったんならそれで良くね?無理に、俺たち全員が言わなくてもいいだろ。時間の無駄だ」
  アルカは、壁にかかっている時計を指差しそう言った。
「でも、俺たちは知ってるからいいけどよ、こいつは知らねぇーんだろ?なら、最低でも名前だけでも言った方がいいんじゃねぇーの?」
  ヒュースが肘をテーブルにつきながらアルカに向かって言った。
「こいつにはもう名前は伝えてある。再度確認する必要もねぇー。それに、あともう少しで時間だ。今回は、リリーフとソフィアに頼もうと思ってる。こんなことに時間を使うなんて非合理的だ」
「あら、もうそんな時間でしたのね」
「全然気づきませんでしたァ〜流石アルカですねぇ〜」
  みんなが時計を確認したあと、さっき呼ばれた、リリーフとソフィアが立ち上がりドアへと歩いていった。
 「場所は、前に言ってたところでいいのか?」
「間違いないよ」
「行ってきますぅ〜。」
  二人は、そのままドアを出ていってしまった。
  それからは、みんな各々が動き出した。
「解散で...いいんだよな?」
  ヒュースがアルカに問いかけた。
「好きにしろ。そもそも自己紹介とか言ったのはテメーじゃねぇーか。」
「アルカが必要ねぇーって言ったんじゃねぇーか!!」
  ヒュースが、テーブルに上半身を乗り上げる形でアルカに怒鳴った。
「本当のことだしなぁ〜」
  アルカは、手を頭の後ろで組み顔をにやつかせながら言った。
...もうその顔が普段の顔なんじゃないかと思えてくる。
  ヒュースは、不貞腐れたようにアルカを睨んでいる。
 「あ!そう言えば、こいつは結局どうするんだ?」
  ヒュースは、指をガブの隣に座っているアドルへと向けた。
「忘れられてるのかと...思ってた...」
  ガブが小さな声で呟いた。
  アドルは、顔をヒュースから背けた。
「な!なんでそっち向くんだよぉー!」
  ヒュースは、アドルの後ろへと回り込み顔を覗かせた。アドルは気に食わなかったのか、ヒュースを視界に入れないために顔だけをあっちこっちに向けていた。だが、ヒュースは諦めずにアドルの視界に入るように動く。
「邪魔だ」
  アドルが我慢出来なくなったのか手でヒュースの顔を押している。
「邪魔って酷いだろー!押すのやめろよー!」
  ヒュースは、抵抗してアドルの手首を掴んで力で押し返している。
「な!お前!昨日のスゴかったな!」
「...は?」
  アドルは意表をつかれたのか手に入れていた力が緩んだ。
「おまえ...何言ってんだ?」
  アドルはヒュースを怪訝な目で見ながら質問した。
「だってよ〜、あれだけの戦闘スキルを持ってるなんですげぇーよ!俺たち二人でも押されかけてたからなぁー!!」
「それはお前らが本気で俺を殺そうとしなかったからだろーが」
「殺すなってアルカに言われたからなぁ〜」
  ヒュースは手を引いて「ニシシ」と笑いながら言った。
  アドルはそれを聞いて機嫌が悪くなったのか眉間に皺を寄せ下を向き舌打ちをした。
「お前は俺たちの仲間になってくれるのか?」
  アドルはヒュースの方に顔を向け瞬きをした。
「確かに、本人の口から直接聞かねぇーとならねぇーな」
  二人の外からアルカは入ってた。
「お!アルカが会話に加わった!」
「何、ドラ〇エみたいな事言ってんだお前」
「おおー!いいなそれ!」
「意識してなかったのかよ...」
  アルカはヒュースの言葉に肩を落とすが、直ぐに顔をアドルに向けた。
「おまえ...」 
  アルカが話し始めたのと同時にアドルは顔をアルカから背けた。
  「このっ...」
  アルカは右の拳を握り、口元には笑みを浮かべているが目は本気で怒っていた。
「俺はお前が嫌いだ」
  アドルが目線だけをアルカの方に向け言い放った。
「同感だ。俺もお前なんか好きになるかよ。でも、お前が俺をどう思っていよーが俺たちの仲間になるなら俺の指示には従ってもらう」
  アルカはテーブルに片手をついてアドルに言った。
「何故お前の指示に俺が従わなければならない」
「従わないのあれば今すぐお前を排除するまでだ」
「出来るのか?」
「俺たちを舐めるなよ」
  二人は睨み合いながら淡々と言葉を交わす。流石に、これ以上は危ないと思いリヒトは二人の間に無理やり入った。
「け...喧嘩はダメだよ!ね!ね!」
  リヒトはそう言ったあと二人の顔を確かめたが、二人ともまだ先ほどと同じあまり変わらない顔でお互いを睨み合っていた。
(こ...怖い...)
  リヒトは怖がりつつも笑顔を絶やさないように二人に言った。
「喧嘩しても始まらないしさ!まずはアドルが仲間になってくれるかでしょ?まずそこから話し合おうよ!ね!」
  リヒトはアルカの顔を見て言った。
(お願い...うんといって...)
  リヒトは震えながら二人の返事を待った。
  アルカは数回瞬きをしたあと、急に笑い出した。
「ちょ!何笑ってんのよ!!」
  リヒトはいきなり笑い出したアルカに向かって怒った。
「だって!お...おまえ...顔!...すごく怖がってんのに...ククク...」
「だって!仕方がないじゃない!二人ともすごく怖い顔してるんだもん!!怖いよ!」
「なら...なんで割って入ってきたんだよ」
  アルカは少し落ち着いてきて手で涙を吹いた。
「だ...だって...せっかく仲間にしてくれたのに二人が喧嘩してたら...嫌だもん...」
  リヒトは目線をしたに置きながら肩を落とした。それを見ていた、アルカとアドルは少し申し訳なさいそうに目線を逸らした。
  そして、アルカはリヒトの肩に片手を置いて謝った。
「悪かった。流石に頭に血が上った。」
  リヒトは顔を上げてアルカの顔を伺った。本当に申し訳なさそうな顔をしていて少し驚いた。
「...おい...何お前驚いてんだ」
  両手を腰に当てアルカが問いかけた。
「だって...アルカにもそういうふうに思う時があるんだって思って...」
「......。」
  少し二人は無言になった。そして、アルカは静かに両手をリヒトの頭に近づけたと思った瞬間いきなりリヒトの頭に痛みが走った。
「い!!たたたたた!や!やめて!やめて!」
  アルカがリヒトの頭をグリグリし始めた。
「お!ま!え!は!俺をなんだと思ってるんだ!あぁ?!」
「ごめんなさいごめんなさい!」
  リヒトは必死に謝った。
「たくっ...」
  アルカがリヒトの頭から手を避けた。
「う〜...痛い...」
  リヒトは頭を抑えながらその場にしゃがみこむ。
(アルカって意外に力ある...見た目はそんなふうに見えないのに!)
  心の中で失礼なことを呟いていると上からアドルの声が聞こえた。
「俺は、この女が仲間になってほしいって思ってるなら仲間になってやる。そして、この女が怪我しないように全力で守る」
  リヒトはその言葉に驚き顔を上げアドルの方に目を向けた。
「だとよ。どうするんですかぁ〜?」
  軽い口調で聞かれて何となくバカにされたような感じでムカついたが、それを抑えて立ち上がりアドルの方へ体ごと向けた。
「私がじゃなくて自分の意思で決めてほしいかな。私的には仲間になってくれたらすごく心強いけどさ」
「...俺は入ってやってもいい、だがエレナにも聞いてからだ。」
  (確かにそうだ...アドルは自分のことはだいたい理解しているって感じだけど、エレナはそうじゃないんだ...)
  リヒトは一人で考えてもどうしたらいいか分からなくてアルカの方に目を向けた。
  目を向けられたアルカは少し瞬きをしてからアドルとリヒトの方に歩みを進めた。
「お前が俺にそんな目を向けるとはなぁ〜...」
「だって...私なんかよりいい案を出せると思うし...」
  リヒトは不貞腐れながら言った。
  それをアルカは楽しんでいるような顔で話を聞いていた。
「とりあえず!!あとはアルカにまかせた!」
  リヒトはアルカの肩をポンと叩き言った。
  少し悔しい気持ちもあるが仕方がないと自分に言い聞かせて。
「そうだなぁ〜。珍しい人から頼まれたから今回は俺も力を活用しますかな」
(力を...活用?)
  首をかしげながら考えているリヒトにガブは声をかけた。
「なに...首かしげてるの?」
  いきなり話しかけられたのでリヒトは驚いてガブの方をみた。
  ガブは少し眉間に皺を寄せて嫌そうな顔をしていた。
「...いちいち驚かないで...」
  そっちがいきなり声をかけてくるからでしょ!
  「それで...何に対して首を傾げてたの?」
  ガブは改めて同じ質問をリヒトに問いかけた。
「あ!そうだ!あの、アルカは今力を活用するって言ってたけど、アルカの力は常人を超えた頭の良さでしょ?だから何でかなって思って...」
「それのどこが...おかしいの?」
「だって、頭の良さが力だったら普段から力を活用してるってことでしょ?なのに、また改めてそう言ったのはなんでかなって思って...」
「あー...そういうことか...」
  ガブは興味無さそうに小さな声で呟いた。
(そんなことって言われた...)
  リヒトは少し苦笑いしながらガブの方に向き直した。
「アルカさんは普段は力を使ってないよ...」
「え...?そなの?」
「うん...アルカさん曰く...普段から使ってたら疲れるから...嫌なんだってさ」
(なるほど...アルカらしい...のか?)
  リヒトがうまく納得できていないのが分かったのかガブは説明補正をしてくれた。
「それに、アルカさんは力を使うと一瞬で相手の特技、能力が分かるし...これからベーゼがどこで現れるかも分かる...でも、その考えるまでの一瞬がアルカさんにとっての...隙が生まれる...」
(...隙?)
「つまり...無防備状態になる。情報が足りなければ足りないほど...無防備の時間が増える。だから、戦闘中には使えない...」
  リヒトはやっと少しだけ理解することが出来た。だが、もう一つ疑問が出てきた。
「だったら、普段アルカは普通の人と変わらないってこと?」
  ガブは小さく頷いた。
「でも、私は見てないからなんとも言えないんだけど、アルカは戦闘の中にいたんだよね?アドルとソフィアさんとヒュースさんと一緒に」
「そうだよ...」
「それで、アルカだけは少しのかすり傷なんて...有り得るのかな?戦いに参加してなかったとか?」
「それは...あの人に直接聞いた方が早いと思うけど...」
  ガブが指さした先にはテーブルの上で逆立ちをしていたヒュースに向けられた。
(なんで逆立ち?しかも片手だけで全体重支えてる...ある意味すごい...)
「一緒にいた人の方が...わかりやすいと思う...」
「た...確かに...でも...」
(あまり話したことないんだよなぁー!)
  リヒトがヒュースに話しかけるのを躊躇していたら、いつの間に話が終わっていたアルカが話しかけてきた。
「さっきから何話してんだ?」
  君たちは人の背後や隣に気配なく立つのがお好きなようですね。
  そう思いながら質問に答えようとしたが、それよりガブの方が少し早かった。
「早かった...ですね...」
「まぁ〜、使わなくても良かったからな」
「そう...ですか...」
「んで、さっきから何話してんだよ?」
「アルカさんの力について...」
   話の流れのまま内容を伝えた。
「俺の力?別にそんなの話し合わなくてもいいだろ?」
  少し片方のまゆをあげアルカは言った。
「リヒトが...首傾げてたから...」
「...首かしげる場面あったか?」
  アルカはリヒトの方を向いて聞いた。
「あー...えっ〜と...」
  リヒトは目線を泳がせながら言い訳を考えていた。また、そんな事で首傾げてんのかよと馬鹿にされると思ったからだ。
「お前...俺に嘘が通用すると思ってんのか?」
  「う〜...」
  確かにとリヒトは思い、素直に伝えることにした。
「なんだ、そんなことか」
  リヒトはさっきの言い終わったあとバカにされると思い顔を挙げなかったら意外にも普通の反応で少し安心した。
「だから、なんでだろう思って...」
  リヒトが顔を上げてアルカに聞こうと思ったらアルカはリヒトから顔を背けていた。肩を小刻みに揺らしていたので少し気になりアルカの後ろに回り込んだ。
(...すごく笑いをこらえてる...)
  リヒトが見たのは、手で口を抑え何とか笑わないようにしている顔だった。
「コラーー!!!!笑うなぁー!!」
  リヒトはアルカに対して怒鳴った。
(アルカって笑いのツボ浅すぎない?!)
「さぁ〜?...じゃ!無くて!!」
    アルカの方に体ごと向けて怒鳴った。
「私は真剣に聞いてるのに!少しは考えてくれてもいいじゃない!ケチ!」
  リヒトが怒っているとアルカはいつもと変わらない口調で淡々と言った。
「そういうのは人に言われてやる事じゃねぇー、自分で考えてこれでいいのかを人に質問するのがいいんじゃねぇーのか?」
 自分で考えて...
「でも、思いつかないよ...」
  何をやってもうまくいかない...
学校のテストは赤点ギリギリ、体育は運動が得意ではないこともあり周りに迷惑をかけてしまう、友達付き合いも最近はうまくいかない...
話を聞いてしまって、勢いでこの人達の力になりたいと言ってしまったけど...正直、私が一人増えたところで逆に、みんなに迷惑をかけてしまうんじゃないだろうか...
私は...いない方がよかったんじゃないだろうか。
   頭の中で色々考えていると、いきなり隣から深い溜息と嫌味が聞こえた。
「お前は、救いようのないバカだな」
「なっ...」
  驚きと怒りで逆に言葉が出なかった。
人が、真剣に悩んでいるというのにそういうことを言う人は、多分アルカぐらいだろう。
  「考えることに意味があんだろーが」
  アルカは、目線だけをこっちに向けて言った。
いつもより、口調が柔らかい感じに思えた。
「考えることに...意味?」
「そうだ。考えても思いつかなければ聞けばいい。最初から、無理だのなんだと言ってたらいつまで経っても前には進めねぇー」
  心がこもったその言葉は、リヒトの奥深くまで届いた気がした。
確かに、無理だからとか、出来ないからと最初から諦めてたら前へは進めないかもしれない。
 お礼を言おうとリヒトが顔を上げたのと同時にアルカも、こっちに顔を向けて口を開いた。
「まぁ〜、こんなことを一人でできないんじゃ今後、やってけねぇーけどな」
  いやみったらしい顔と声色でリヒトに言い放った。
怒りが、腹の底から湧き上がった。
「〜〜〜!!上等よ!!絶対に一人で強くなってやる!覚悟しないさい」
強くなったら、絶対にアルカに土下座させてやる!!
  心の中で強く決意していた時、アルカは口元に笑みを浮かべていた。
 「呼んできたよー!」
さっき、人を呼びに行くと言ってどこかへと行ってしまったヒュースが戻ってきた。
その後ろには、大人しそうな女の人が着いてきていた。
(あの人がアーノさん?って人なのかな..)
「おら、行くぞ。ここで立ち話も疲れんだろ」
「え?あ...うん」
 先に行ってしまったアルカの後ろを着いて行った。
  みんなが移動した先には、大きなテーブルと規則正しく並べられた椅子が置いてあった。
みんなは、迷いなくそれぞれ椅子についた。
 それぞれいつもの定位置というものがあるのかもしれない。
  リヒトはどこに座ればいいのか分からないでちょっと困ってしまった。
その時、アルカが私の方を向いて手招きをしていた。
近づいていったら、隣を指さして指示した。
どうやら、アルカの右隣に座れと言っているようだ。
どこに座ればよかったのか分からなかったので、正直安心してしまった。
あまり話したことのない人の隣とかはちょっと、緊張してしまうから。
  「つーか、自己紹介とか何をいえばいいんだよ...」
一番最初に口を開けたのはソフィアだった。
「そりゃ〜、名前、年齢、好きな物、とかじゃねぇーか?」
「それが、王道ですわね」
「んじゃ、それでいこうか!」
トントン拍子に話が進んだ。
「それでは、まずはリヒトさん?お願いできますか?」
 カルムは、優しくほほんでリヒトの方へと顔を向けた。
「えっと...はい...」
  リヒトは、立ち上がり周りの人を見たあと、深呼吸した。
「私は、グラオザーム·リヒトと言います。気軽にリヒトと呼んでください。それで、年齢は15歳。好きなことはダンスを踊ることは好きです。よろしくお願いします」
  リヒトは、言い終わったあとまた席についた。
  ーー私、変な事言ってないかな
  周りに目を向けてみんなを見た。
  あまり関心がないのかみんな黙ったままだった。
  その沈黙を打ち破ったのが、アルカだった。
「つーかよ、こいつの自己紹介が終わったんならそれで良くね?無理に、俺たち全員が言わなくてもいいだろ。時間の無駄だ」
  アルカは、壁にかかっている時計を指差しそう言った。
「でも、俺たちは知ってるからいいけどよ、こいつは知らねぇーんだろ?なら、最低でも名前だけでも言った方がいいんじゃねぇーの?」
  ヒュースが肘をテーブルにつきながらアルカに向かって言った。
「こいつにはもう名前は伝えてある。再度確認する必要もねぇー。それに、あともう少しで時間だ。今回は、リリーフとソフィアに頼もうと思ってる。こんなことに時間を使うなんて非合理的だ」
「あら、もうそんな時間でしたのね」
「全然気づきませんでしたァ〜流石アルカですねぇ〜」
  みんなが時計を確認したあと、さっき呼ばれた、リリーフとソフィアが立ち上がりドアへと歩いていった。
 「場所は、前に言ってたところでいいのか?」
「間違いないよ」
「行ってきますぅ〜。」
  二人は、そのままドアを出ていってしまった。
  それからは、みんな各々が動き出した。
「解散で...いいんだよな?」
  ヒュースがアルカに問いかけた。
「好きにしろ。そもそも自己紹介とか言ったのはテメーじゃねぇーか。」
「アルカが必要ねぇーって言ったんじゃねぇーか!!」
  ヒュースが、テーブルに上半身を乗り上げる形でアルカに怒鳴った。
「本当のことだしなぁ〜」
  アルカは、手を頭の後ろで組み顔をにやつかせながら言った。
...もうその顔が普段の顔なんじゃないかと思えてくる。
  ヒュースは、不貞腐れたようにアルカを睨んでいる。
 「あ!そう言えば、こいつは結局どうするんだ?」
  ヒュースは、指をガブの隣に座っているアドルへと向けた。
「忘れられてるのかと...思ってた...」
  ガブが小さな声で呟いた。
  アドルは、顔をヒュースから背けた。
「な!なんでそっち向くんだよぉー!」
  ヒュースは、アドルの後ろへと回り込み顔を覗かせた。アドルは気に食わなかったのか、ヒュースを視界に入れないために顔だけをあっちこっちに向けていた。だが、ヒュースは諦めずにアドルの視界に入るように動く。
「邪魔だ」
  アドルが我慢出来なくなったのか手でヒュースの顔を押している。
「邪魔って酷いだろー!押すのやめろよー!」
  ヒュースは、抵抗してアドルの手首を掴んで力で押し返している。
「な!お前!昨日のスゴかったな!」
「...は?」
  アドルは意表をつかれたのか手に入れていた力が緩んだ。
「おまえ...何言ってんだ?」
  アドルはヒュースを怪訝な目で見ながら質問した。
「だってよ〜、あれだけの戦闘スキルを持ってるなんですげぇーよ!俺たち二人でも押されかけてたからなぁー!!」
「それはお前らが本気で俺を殺そうとしなかったからだろーが」
「殺すなってアルカに言われたからなぁ〜」
  ヒュースは手を引いて「ニシシ」と笑いながら言った。
  アドルはそれを聞いて機嫌が悪くなったのか眉間に皺を寄せ下を向き舌打ちをした。
「お前は俺たちの仲間になってくれるのか?」
  アドルはヒュースの方に顔を向け瞬きをした。
「確かに、本人の口から直接聞かねぇーとならねぇーな」
  二人の外からアルカは入ってた。
「お!アルカが会話に加わった!」
「何、ドラ〇エみたいな事言ってんだお前」
「おおー!いいなそれ!」
「意識してなかったのかよ...」
  アルカはヒュースの言葉に肩を落とすが、直ぐに顔をアドルに向けた。
「おまえ...」 
  アルカが話し始めたのと同時にアドルは顔をアルカから背けた。
  「このっ...」
  アルカは右の拳を握り、口元には笑みを浮かべているが目は本気で怒っていた。
「俺はお前が嫌いだ」
  アドルが目線だけをアルカの方に向け言い放った。
「同感だ。俺もお前なんか好きになるかよ。でも、お前が俺をどう思っていよーが俺たちの仲間になるなら俺の指示には従ってもらう」
  アルカはテーブルに片手をついてアドルに言った。
「何故お前の指示に俺が従わなければならない」
「従わないのあれば今すぐお前を排除するまでだ」
「出来るのか?」
「俺たちを舐めるなよ」
  二人は睨み合いながら淡々と言葉を交わす。流石に、これ以上は危ないと思いリヒトは二人の間に無理やり入った。
「け...喧嘩はダメだよ!ね!ね!」
  リヒトはそう言ったあと二人の顔を確かめたが、二人ともまだ先ほどと同じあまり変わらない顔でお互いを睨み合っていた。
(こ...怖い...)
  リヒトは怖がりつつも笑顔を絶やさないように二人に言った。
「喧嘩しても始まらないしさ!まずはアドルが仲間になってくれるかでしょ?まずそこから話し合おうよ!ね!」
  リヒトはアルカの顔を見て言った。
(お願い...うんといって...)
  リヒトは震えながら二人の返事を待った。
  アルカは数回瞬きをしたあと、急に笑い出した。
「ちょ!何笑ってんのよ!!」
  リヒトはいきなり笑い出したアルカに向かって怒った。
「だって!お...おまえ...顔!...すごく怖がってんのに...ククク...」
「だって!仕方がないじゃない!二人ともすごく怖い顔してるんだもん!!怖いよ!」
「なら...なんで割って入ってきたんだよ」
  アルカは少し落ち着いてきて手で涙を吹いた。
「だ...だって...せっかく仲間にしてくれたのに二人が喧嘩してたら...嫌だもん...」
  リヒトは目線をしたに置きながら肩を落とした。それを見ていた、アルカとアドルは少し申し訳なさいそうに目線を逸らした。
  そして、アルカはリヒトの肩に片手を置いて謝った。
「悪かった。流石に頭に血が上った。」
  リヒトは顔を上げてアルカの顔を伺った。本当に申し訳なさそうな顔をしていて少し驚いた。
「...おい...何お前驚いてんだ」
  両手を腰に当てアルカが問いかけた。
「だって...アルカにもそういうふうに思う時があるんだって思って...」
「......。」
  少し二人は無言になった。そして、アルカは静かに両手をリヒトの頭に近づけたと思った瞬間いきなりリヒトの頭に痛みが走った。
「い!!たたたたた!や!やめて!やめて!」
  アルカがリヒトの頭をグリグリし始めた。
「お!ま!え!は!俺をなんだと思ってるんだ!あぁ?!」
「ごめんなさいごめんなさい!」
  リヒトは必死に謝った。
「たくっ...」
  アルカがリヒトの頭から手を避けた。
「う〜...痛い...」
  リヒトは頭を抑えながらその場にしゃがみこむ。
(アルカって意外に力ある...見た目はそんなふうに見えないのに!)
  心の中で失礼なことを呟いていると上からアドルの声が聞こえた。
「俺は、この女が仲間になってほしいって思ってるなら仲間になってやる。そして、この女が怪我しないように全力で守る」
  リヒトはその言葉に驚き顔を上げアドルの方に目を向けた。
「だとよ。どうするんですかぁ〜?」
  軽い口調で聞かれて何となくバカにされたような感じでムカついたが、それを抑えて立ち上がりアドルの方へ体ごと向けた。
「私がじゃなくて自分の意思で決めてほしいかな。私的には仲間になってくれたらすごく心強いけどさ」
「...俺は入ってやってもいい、だがエレナにも聞いてからだ。」
  (確かにそうだ...アドルは自分のことはだいたい理解しているって感じだけど、エレナはそうじゃないんだ...)
  リヒトは一人で考えてもどうしたらいいか分からなくてアルカの方に目を向けた。
  目を向けられたアルカは少し瞬きをしてからアドルとリヒトの方に歩みを進めた。
「お前が俺にそんな目を向けるとはなぁ〜...」
「だって...私なんかよりいい案を出せると思うし...」
  リヒトは不貞腐れながら言った。
  それをアルカは楽しんでいるような顔で話を聞いていた。
「とりあえず!!あとはアルカにまかせた!」
  リヒトはアルカの肩をポンと叩き言った。
  少し悔しい気持ちもあるが仕方がないと自分に言い聞かせて。
「そうだなぁ〜。珍しい人から頼まれたから今回は俺も力を活用しますかな」
(力を...活用?)
  首をかしげながら考えているリヒトにガブは声をかけた。
「なに...首かしげてるの?」
  いきなり話しかけられたのでリヒトは驚いてガブの方をみた。
  ガブは少し眉間に皺を寄せて嫌そうな顔をしていた。
「...いちいち驚かないで...」
  そっちがいきなり声をかけてくるからでしょ!
  「それで...何に対して首を傾げてたの?」
  ガブは改めて同じ質問をリヒトに問いかけた。
「あ!そうだ!あの、アルカは今力を活用するって言ってたけど、アルカの力は常人を超えた頭の良さでしょ?だから何でかなって思って...」
「それのどこが...おかしいの?」
「だって、頭の良さが力だったら普段から力を活用してるってことでしょ?なのに、また改めてそう言ったのはなんでかなって思って...」
「あー...そういうことか...」
  ガブは興味無さそうに小さな声で呟いた。
(そんなことって言われた...)
  リヒトは少し苦笑いしながらガブの方に向き直した。
「アルカさんは普段は力を使ってないよ...」
「え...?そなの?」
「うん...アルカさん曰く...普段から使ってたら疲れるから...嫌なんだってさ」
(なるほど...アルカらしい...のか?)
  リヒトがうまく納得できていないのが分かったのかガブは説明補正をしてくれた。
「それに、アルカさんは力を使うと一瞬で相手の特技、能力が分かるし...これからベーゼがどこで現れるかも分かる...でも、その考えるまでの一瞬がアルカさんにとっての...隙が生まれる...」
(...隙?)
「つまり...無防備状態になる。情報が足りなければ足りないほど...無防備の時間が増える。だから、戦闘中には使えない...」
  リヒトはやっと少しだけ理解することが出来た。だが、もう一つ疑問が出てきた。
「だったら、普段アルカは普通の人と変わらないってこと?」
  ガブは小さく頷いた。
「でも、私は見てないからなんとも言えないんだけど、アルカは戦闘の中にいたんだよね?アドルとソフィアさんとヒュースさんと一緒に」
「そうだよ...」
「それで、アルカだけは少しのかすり傷なんて...有り得るのかな?戦いに参加してなかったとか?」
「それは...あの人に直接聞いた方が早いと思うけど...」
  ガブが指さした先にはテーブルの上で逆立ちをしていたヒュースに向けられた。
(なんで逆立ち?しかも片手だけで全体重支えてる...ある意味すごい...)
「一緒にいた人の方が...わかりやすいと思う...」
「た...確かに...でも...」
(あまり話したことないんだよなぁー!)
  リヒトがヒュースに話しかけるのを躊躇していたら、いつの間に話が終わっていたアルカが話しかけてきた。
「さっきから何話してんだ?」
  君たちは人の背後や隣に気配なく立つのがお好きなようですね。
  そう思いながら質問に答えようとしたが、それよりガブの方が少し早かった。
「早かった...ですね...」
「まぁ〜、使わなくても良かったからな」
「そう...ですか...」
「んで、さっきから何話してんだよ?」
「アルカさんの力について...」
   話の流れのまま内容を伝えた。
「俺の力?別にそんなの話し合わなくてもいいだろ?」
  少し片方のまゆをあげアルカは言った。
「リヒトが...首傾げてたから...」
「...首かしげる場面あったか?」
  アルカはリヒトの方を向いて聞いた。
「あー...えっ〜と...」
  リヒトは目線を泳がせながら言い訳を考えていた。また、そんな事で首傾げてんのかよと馬鹿にされると思ったからだ。
「お前...俺に嘘が通用すると思ってんのか?」
  「う〜...」
  確かにとリヒトは思い、素直に伝えることにした。
「なんだ、そんなことか」
  リヒトはさっきの言い終わったあとバカにされると思い顔を挙げなかったら意外にも普通の反応で少し安心した。
「だから、なんでだろう思って...」
  リヒトが顔を上げてアルカに聞こうと思ったらアルカはリヒトから顔を背けていた。肩を小刻みに揺らしていたので少し気になりアルカの後ろに回り込んだ。
(...すごく笑いをこらえてる...)
  リヒトが見たのは、手で口を抑え何とか笑わないようにしている顔だった。
「コラーー!!!!笑うなぁー!!」
  リヒトはアルカに対して怒鳴った。
(アルカって笑いのツボ浅すぎない?!)
コメント