チェガン
チェガン
〜森の中〜
はっはっはっ...
「...ここまでくればもう大丈夫...だと思う...」
  結構走ったところでやっと止まった。
今日だけでどのくらい運動をしたのだろうかと余裕のない頭でそんなことを考えていた。
「...大丈夫?」
「はぁ〜...大丈夫...はっ...で...ぜぇー...です...」
「...あそこに座れそうなところあるけど...行く?」
  指さしている方には大きな木があり、根っこの方が少し飛び出していて座れそうだ。
「お...お願いします...はぁ〜...」
ストッ
「ふぅ〜...」
やっとゆっくり休めた気がする。
「...。」
「...。」
  無言な空気が続く。
  この人は一体どんな人なんだろうかと頭の中で先程の起こった出来事を思い出していた。
  先程、この男性がエレナを見てからいきなり変なことになった。一体なにが見えたのか。リヒトには考えつかないことだろう。そう考えていると屋敷に残してしまったエレナのことが心配でならなくなった。
「エレナを!!」
  ーーエレナをどうすつもり!
と、聞こうとしたら男性は体を少しビクつかせながらこちらをチラ見した。
「な...なに?」
  びっくりしたのか目を見開いてリヒトを見る。
「エレナは?!?!エレナはどうなったの?!」
「え...エレナ?あ...あぁ...さっきの女の子?」
「そうだよ!ねぇー!エレナはどうなるの?!ま...まさか殺されるとか...ていうか!さっきの男の子は何?!誰なの?!エレナはどこにっ...?!」
  リヒトが取り乱し次から次へと質問を繰り返している。当たり前だ。あんな状況を目の当たりにし、挙句大事な親友をあんな所に置いてきたのだ。
  その中で、静かで落ち着いた声が聞こえた。
「まぁ〜、とりあえず落ち着きなよ...アルカさんがいるから多分...殺しはしないよ...あの二人だけだったら...わからないけど...カルムさんもいるし...」
  目を合わせないまま淡々と言っていた。だが、口調は優しく丁寧な感じな話し方のため自然に安心出来る。
「...あの...あなたは一体何者なの?」
  リヒトが聞いたと思ったら、急にこっちに顔を向け見られた。
(な...なんだろう...)
「...君ってすごいね...」
「え?」
  質問を華麗に無視されたリヒトは素っ頓狂な声がでた。
「だって、普通あんなの見たら逃げるでしょ...僕は逃げたところで追いかけたりしないよ...逃げたかったら逃げてもいいけど...ただ、ここのことについて誰にも言わないって約束してくれたら...」
  こっちをチラっと見て言った。
「だって...私が逃げたらエレナがどんなことされるかわからない...逃げたいけど...エレナを置いてはいけないよ」
「...ふーん」
  興味無さそうにそっぽ向きながら相槌。そっちが聞いてきたのにと愚痴をこぼしそうになる。
「そういえば、さっきの質問に答えてなかったね」
  ...話しが飛びすぎる。なんの事だか一瞬分からなかった。
  それを、男性は忘れたのかというような目で言葉をつづけた。
「ほら、僕は一体何者かって...聞いてこなかったっけ?」
  リヒトが小さく頷いた。
「僕はガブ...ガブリエッラ·トリエステ...ガブって呼んでくれていいよ。みんな、そう呼んでるから...」
「ガブさん?」
ちょっと、嫌そうな顔をして首を横にふった。
「...ガブでいい...」
「...わ...わかりました。...ガブはなんでこんなところにいるの?何が見えているの?」
「...説明下手だからうまく言えないけど...」
「うん、それでもいいよ。教えてくれないかな?」
「わかった。でも、それだけじゃないんでしょ...?聞きたいこと...。後で何回も質問されるのも...面倒臭いから...今まとめて話しても...いい?」
  こっちを少し確認している。
  何となく言葉にトゲがあるような感じがしたが聞きたいのは事実なので何も言わずに頷いた。
「いいよ。気になるし...あの人たちのことも...だけど...」
「そうだね...なら...話すよ」
  少し前を見ながらガブは話してくれた。
「...僕がここにいるのは、拾われたからだよ。」
「拾われた?」
「うん...僕は捨てられたから。」
  本当にそんなことをする人がいるのかと思った。ニュースとかではよく見るがいつ見てもそれはひどいと思っていた。それが、今目の前にいる人は体験したんだと思うと何故か悲しくなった。
「僕は、産まれた時から片方の目が黒いんだ。だから学校ではいじめられたし...親も周りから変な目で見られてた。噂もされて...助けて欲しい時でも...助けてくれなかった...こんな日々が長く続いてお母さんは...病にかかっちゃったんだ。僕はその時はもう...小学五年生だったんだ。お父さんが僕を森の中に連れていったの。『きれいな星を見に行こう』ってね...たしかに、星はすごく綺麗だったよ。でも、見惚れているうちにお父さんはいなくなってた...僕は捨てられたんだ...」
「その森って...」
  嫌な予感がした。
「想像通りだと思うよ...今ここ...僕達がいるここで僕は捨てられた。」
  目を見開いた。まさか、捨てられたのがこんな山奥だとは。子供の足なら森を出るのも大変だろう。大人の足でもここに来るまでの道のりは簡単ではないはず。それも考えての〈ここ〉だったのだろうか。
「...大丈夫だったの?」
「最初は怖かったさ...当たり前だけど...すごく怖くて一人で震えていた...」
  「そうだよね」と言うとリヒトは自然と俯いてしまった。
「でも、それから何十分後ぐらいだったかな...声が聞こえたんだ。」
「声?」
「そう...声が...聞こえた。『そんなところに一人で何をしてるんだ?もう遅いから帰れ』ってね...そして、上を向いたらソフィアさんがいたんだよ。」
「ソフィアさんって、さっきの喧嘩していた一人?」
「...ふふ...」
  いきなり顔を背けたと思ったら、手で口元を抑えながら少し笑っていた。元々、そこまでこっちを見て話していた訳では無いがその動作が何となく目に付いた。、
「な!なんで笑うの?!」
「だって、ソフィアさんの覚え方が...くく...喧嘩している一人って...くく...ふっ...すごい覚え方だね」
少し笑いながらリヒトの方をみた。
  リヒトは、ここの人は笑いのツボが浅すぎではないだろうか。
「だって、それ以外覚え方がわからなかったんだもん...自己紹介もされてないし...」
 
  しょうがないと思う。と、最後につけたした。
「ごめんごめん...自己紹介されてないなら...しょうがないね」
  ガブをチラ見したあと、また下を向いた。
「それで、目の前にはソフィアさんが立っていたの。僕は怖かったから咄嗟に逃げてしまった...もちろんソフィアさんはあーいう性格だから...追いかけては来なかったけど。『その先には行かない方がいい、死にたいのか?』って忠告をしてくれた。...なんのことかわからなかったから立ち止まって...ソフィアさんの方を向いた。」
「...そして?」
「そして、僕は、『ここはどこなの?あなたは?』って聞いたら、『ここは危険だ、とりあえずこの道をまっすぐ言ったら大きな家がある。そこには人がいるはずだ。そこへ行け』って案内してくれた。意外に面倒見いいよね」
「確かに(笑)」
「だから、僕は怖かったってのもあるけど...あの人のことは信じていいってわかったから...その道の通りに行ったんだ。」
  リヒトはこのまま聞き流されるところだった言葉を何とか拾った。
  〈信じていいとわかった〉なぜそう思ったのだろうかと思い、それを聞くため口を開いた。
「ちょっと、聞いてもいいかな??」
「なに?」
  ガブはリヒトを横目で見て聞いてくれた。
「信じてもいいってなんでわかったの?」
「...んとね...」
  目を背けて少し下を向きながらガブは悲しそうな顔で言っていた。
「...。」
「あのね...僕には『人の力を見る』ことができるんだよ。」
「...力??」
「そう...まぁ〜...力って言うかみんなは...『チェガン』って呼んでるけど......それで...『チェガン』についてわかりやすい例を出すと...まぁ〜さっきの騒動が一番わかりやすいんじゃないかな」
  リヒトは表情を確認しながら言っていた。
「..『チェガン』って言うのは...なんて説明したらいいかな...」
  手を口元に置き考えている。
「...『チェガン』ってね、常人を超えた能力...みたいなものなんだよね...」
「常人を超えた?というか、チェガンって何?どういう意味??」
  まず、その言葉すら聞き覚えがない。
  何を指す意味なのだろうか...
「チェガンは才能って意味だよ...確か...違う国の言葉だって...アルカさんが言ってた...かな...」
「そうなんだ...」
  アルカって...何者??
  素直にそう思う。
「それで...さっきの話の...続きだけど...例えば、さっきソフィアさんと喧嘩していたもう一人の人いたでしょ?」
「うん」
「その人はヒュースさんっていうんだけど...なにか気づいたことは無かった?」
  横目で見ながら質問してきた。
「気づいたこと...」
  少し考えて、さっきの光景を思い出した。
「すごいスピード、力...あれは普通の人間には難しいんじゃないかな?一発で壁や床を壊すなんて...普通はできない...」
「そう...ヒュースさんのチェガンは、『強化身体能力』なんだよ」
「強化身体能力」
「うん...常人にはありえないパワーやスピード...強さで言うと結構上の方にいるんじゃないかな?」
「でも、さっきの...えっと...ソフィア...さん...?って人はヒュースさんのスピードについてきてたみたいなんだけど?」
  喧嘩しているところは早すぎて見えなかったけど、どこも怪我してないってことは全部避けてたってことなんじゃないだろうかと考えていた。
「ソフィアさんも『強化身体能力』の持ち主なの?」
「いや...ソフィアさんは違うよ...ソフィアさんのチェガンは...。戦闘系じゃないよ」
「え...?でも、じゃぁヒュースさんとあんなすごい喧嘩...出来るわけないんじゃ...」
  本当にすごいスピードだった。そこまで動体視力はいい方ではないが目で見えないほど早い動きをするは普通では無理だろう。それをチェガン?というものなしでやるなんていうのは不可能ではないだろうか。
「ソフィアさんは、すごく頭がいいんだよ」
「頭がいい?」
「うん...まぁ〜アルカさん程じゃないけど...」
  あの人が頭いい?と、失礼なことを考えながらガブの次の言葉を待った。
「だから、ヒュースさんの動きを先読んで動いてるの...あの人は動きが単調だから...ソフィアさんぐらい頭がよかったら...読みながら動けるし...そもそもの戦闘能力がずば抜けてるから」
「そう...なんだ...」
  チェガンに付いては何となくは理解出来てきたと思うが、肝心なところが分かっていない。
「チェガンのことは少しわかったけど、それが分かったとしても相手を信じていいとかは分からないんじゃないの??」
「あぁ〜...それは...その人がどんな風に自分のチェガンを使っているのかも...少しわかるんだよ...色で...」
「...色?」
「うん...チェガンがわかる時って...色も出てくるんだよね...その時に、明るい色だったら信じていい人」
  ガブのチェガンは、相手の目をみて相手のチェガンを見破る才能らしい。
  感覚的には頭の中にチェガンの特徴と色が出て来る感じ。らしいがあまりピンとは来なかった。
  とりあえず、ガブの言葉を最後まで聞こうと思考をとりあえずやめた。
「それでね...君の友達もチェガンを持っているんだよね...色は...黒色...」
「え...黒?」
  先程の説明を思い出すため、止めていた頭をまたフル活動させた。嫌な感じが心の奥底から出てくる感じた。自然と冷や汗が出る。
「黒色って...」
  なんとか出た声は何ともか細い声で震えていた。
「わかった?あの子のチェガンは...」
はっはっはっ...
「...ここまでくればもう大丈夫...だと思う...」
  結構走ったところでやっと止まった。
今日だけでどのくらい運動をしたのだろうかと余裕のない頭でそんなことを考えていた。
「...大丈夫?」
「はぁ〜...大丈夫...はっ...で...ぜぇー...です...」
「...あそこに座れそうなところあるけど...行く?」
  指さしている方には大きな木があり、根っこの方が少し飛び出していて座れそうだ。
「お...お願いします...はぁ〜...」
ストッ
「ふぅ〜...」
やっとゆっくり休めた気がする。
「...。」
「...。」
  無言な空気が続く。
  この人は一体どんな人なんだろうかと頭の中で先程の起こった出来事を思い出していた。
  先程、この男性がエレナを見てからいきなり変なことになった。一体なにが見えたのか。リヒトには考えつかないことだろう。そう考えていると屋敷に残してしまったエレナのことが心配でならなくなった。
「エレナを!!」
  ーーエレナをどうすつもり!
と、聞こうとしたら男性は体を少しビクつかせながらこちらをチラ見した。
「な...なに?」
  びっくりしたのか目を見開いてリヒトを見る。
「エレナは?!?!エレナはどうなったの?!」
「え...エレナ?あ...あぁ...さっきの女の子?」
「そうだよ!ねぇー!エレナはどうなるの?!ま...まさか殺されるとか...ていうか!さっきの男の子は何?!誰なの?!エレナはどこにっ...?!」
  リヒトが取り乱し次から次へと質問を繰り返している。当たり前だ。あんな状況を目の当たりにし、挙句大事な親友をあんな所に置いてきたのだ。
  その中で、静かで落ち着いた声が聞こえた。
「まぁ〜、とりあえず落ち着きなよ...アルカさんがいるから多分...殺しはしないよ...あの二人だけだったら...わからないけど...カルムさんもいるし...」
  目を合わせないまま淡々と言っていた。だが、口調は優しく丁寧な感じな話し方のため自然に安心出来る。
「...あの...あなたは一体何者なの?」
  リヒトが聞いたと思ったら、急にこっちに顔を向け見られた。
(な...なんだろう...)
「...君ってすごいね...」
「え?」
  質問を華麗に無視されたリヒトは素っ頓狂な声がでた。
「だって、普通あんなの見たら逃げるでしょ...僕は逃げたところで追いかけたりしないよ...逃げたかったら逃げてもいいけど...ただ、ここのことについて誰にも言わないって約束してくれたら...」
  こっちをチラっと見て言った。
「だって...私が逃げたらエレナがどんなことされるかわからない...逃げたいけど...エレナを置いてはいけないよ」
「...ふーん」
  興味無さそうにそっぽ向きながら相槌。そっちが聞いてきたのにと愚痴をこぼしそうになる。
「そういえば、さっきの質問に答えてなかったね」
  ...話しが飛びすぎる。なんの事だか一瞬分からなかった。
  それを、男性は忘れたのかというような目で言葉をつづけた。
「ほら、僕は一体何者かって...聞いてこなかったっけ?」
  リヒトが小さく頷いた。
「僕はガブ...ガブリエッラ·トリエステ...ガブって呼んでくれていいよ。みんな、そう呼んでるから...」
「ガブさん?」
ちょっと、嫌そうな顔をして首を横にふった。
「...ガブでいい...」
「...わ...わかりました。...ガブはなんでこんなところにいるの?何が見えているの?」
「...説明下手だからうまく言えないけど...」
「うん、それでもいいよ。教えてくれないかな?」
「わかった。でも、それだけじゃないんでしょ...?聞きたいこと...。後で何回も質問されるのも...面倒臭いから...今まとめて話しても...いい?」
  こっちを少し確認している。
  何となく言葉にトゲがあるような感じがしたが聞きたいのは事実なので何も言わずに頷いた。
「いいよ。気になるし...あの人たちのことも...だけど...」
「そうだね...なら...話すよ」
  少し前を見ながらガブは話してくれた。
「...僕がここにいるのは、拾われたからだよ。」
「拾われた?」
「うん...僕は捨てられたから。」
  本当にそんなことをする人がいるのかと思った。ニュースとかではよく見るがいつ見てもそれはひどいと思っていた。それが、今目の前にいる人は体験したんだと思うと何故か悲しくなった。
「僕は、産まれた時から片方の目が黒いんだ。だから学校ではいじめられたし...親も周りから変な目で見られてた。噂もされて...助けて欲しい時でも...助けてくれなかった...こんな日々が長く続いてお母さんは...病にかかっちゃったんだ。僕はその時はもう...小学五年生だったんだ。お父さんが僕を森の中に連れていったの。『きれいな星を見に行こう』ってね...たしかに、星はすごく綺麗だったよ。でも、見惚れているうちにお父さんはいなくなってた...僕は捨てられたんだ...」
「その森って...」
  嫌な予感がした。
「想像通りだと思うよ...今ここ...僕達がいるここで僕は捨てられた。」
  目を見開いた。まさか、捨てられたのがこんな山奥だとは。子供の足なら森を出るのも大変だろう。大人の足でもここに来るまでの道のりは簡単ではないはず。それも考えての〈ここ〉だったのだろうか。
「...大丈夫だったの?」
「最初は怖かったさ...当たり前だけど...すごく怖くて一人で震えていた...」
  「そうだよね」と言うとリヒトは自然と俯いてしまった。
「でも、それから何十分後ぐらいだったかな...声が聞こえたんだ。」
「声?」
「そう...声が...聞こえた。『そんなところに一人で何をしてるんだ?もう遅いから帰れ』ってね...そして、上を向いたらソフィアさんがいたんだよ。」
「ソフィアさんって、さっきの喧嘩していた一人?」
「...ふふ...」
  いきなり顔を背けたと思ったら、手で口元を抑えながら少し笑っていた。元々、そこまでこっちを見て話していた訳では無いがその動作が何となく目に付いた。、
「な!なんで笑うの?!」
「だって、ソフィアさんの覚え方が...くく...喧嘩している一人って...くく...ふっ...すごい覚え方だね」
少し笑いながらリヒトの方をみた。
  リヒトは、ここの人は笑いのツボが浅すぎではないだろうか。
「だって、それ以外覚え方がわからなかったんだもん...自己紹介もされてないし...」
 
  しょうがないと思う。と、最後につけたした。
「ごめんごめん...自己紹介されてないなら...しょうがないね」
  ガブをチラ見したあと、また下を向いた。
「それで、目の前にはソフィアさんが立っていたの。僕は怖かったから咄嗟に逃げてしまった...もちろんソフィアさんはあーいう性格だから...追いかけては来なかったけど。『その先には行かない方がいい、死にたいのか?』って忠告をしてくれた。...なんのことかわからなかったから立ち止まって...ソフィアさんの方を向いた。」
「...そして?」
「そして、僕は、『ここはどこなの?あなたは?』って聞いたら、『ここは危険だ、とりあえずこの道をまっすぐ言ったら大きな家がある。そこには人がいるはずだ。そこへ行け』って案内してくれた。意外に面倒見いいよね」
「確かに(笑)」
「だから、僕は怖かったってのもあるけど...あの人のことは信じていいってわかったから...その道の通りに行ったんだ。」
  リヒトはこのまま聞き流されるところだった言葉を何とか拾った。
  〈信じていいとわかった〉なぜそう思ったのだろうかと思い、それを聞くため口を開いた。
「ちょっと、聞いてもいいかな??」
「なに?」
  ガブはリヒトを横目で見て聞いてくれた。
「信じてもいいってなんでわかったの?」
「...んとね...」
  目を背けて少し下を向きながらガブは悲しそうな顔で言っていた。
「...。」
「あのね...僕には『人の力を見る』ことができるんだよ。」
「...力??」
「そう...まぁ〜...力って言うかみんなは...『チェガン』って呼んでるけど......それで...『チェガン』についてわかりやすい例を出すと...まぁ〜さっきの騒動が一番わかりやすいんじゃないかな」
  リヒトは表情を確認しながら言っていた。
「..『チェガン』って言うのは...なんて説明したらいいかな...」
  手を口元に置き考えている。
「...『チェガン』ってね、常人を超えた能力...みたいなものなんだよね...」
「常人を超えた?というか、チェガンって何?どういう意味??」
  まず、その言葉すら聞き覚えがない。
  何を指す意味なのだろうか...
「チェガンは才能って意味だよ...確か...違う国の言葉だって...アルカさんが言ってた...かな...」
「そうなんだ...」
  アルカって...何者??
  素直にそう思う。
「それで...さっきの話の...続きだけど...例えば、さっきソフィアさんと喧嘩していたもう一人の人いたでしょ?」
「うん」
「その人はヒュースさんっていうんだけど...なにか気づいたことは無かった?」
  横目で見ながら質問してきた。
「気づいたこと...」
  少し考えて、さっきの光景を思い出した。
「すごいスピード、力...あれは普通の人間には難しいんじゃないかな?一発で壁や床を壊すなんて...普通はできない...」
「そう...ヒュースさんのチェガンは、『強化身体能力』なんだよ」
「強化身体能力」
「うん...常人にはありえないパワーやスピード...強さで言うと結構上の方にいるんじゃないかな?」
「でも、さっきの...えっと...ソフィア...さん...?って人はヒュースさんのスピードについてきてたみたいなんだけど?」
  喧嘩しているところは早すぎて見えなかったけど、どこも怪我してないってことは全部避けてたってことなんじゃないだろうかと考えていた。
「ソフィアさんも『強化身体能力』の持ち主なの?」
「いや...ソフィアさんは違うよ...ソフィアさんのチェガンは...。戦闘系じゃないよ」
「え...?でも、じゃぁヒュースさんとあんなすごい喧嘩...出来るわけないんじゃ...」
  本当にすごいスピードだった。そこまで動体視力はいい方ではないが目で見えないほど早い動きをするは普通では無理だろう。それをチェガン?というものなしでやるなんていうのは不可能ではないだろうか。
「ソフィアさんは、すごく頭がいいんだよ」
「頭がいい?」
「うん...まぁ〜アルカさん程じゃないけど...」
  あの人が頭いい?と、失礼なことを考えながらガブの次の言葉を待った。
「だから、ヒュースさんの動きを先読んで動いてるの...あの人は動きが単調だから...ソフィアさんぐらい頭がよかったら...読みながら動けるし...そもそもの戦闘能力がずば抜けてるから」
「そう...なんだ...」
  チェガンに付いては何となくは理解出来てきたと思うが、肝心なところが分かっていない。
「チェガンのことは少しわかったけど、それが分かったとしても相手を信じていいとかは分からないんじゃないの??」
「あぁ〜...それは...その人がどんな風に自分のチェガンを使っているのかも...少しわかるんだよ...色で...」
「...色?」
「うん...チェガンがわかる時って...色も出てくるんだよね...その時に、明るい色だったら信じていい人」
  ガブのチェガンは、相手の目をみて相手のチェガンを見破る才能らしい。
  感覚的には頭の中にチェガンの特徴と色が出て来る感じ。らしいがあまりピンとは来なかった。
  とりあえず、ガブの言葉を最後まで聞こうと思考をとりあえずやめた。
「それでね...君の友達もチェガンを持っているんだよね...色は...黒色...」
「え...黒?」
  先程の説明を思い出すため、止めていた頭をまたフル活動させた。嫌な感じが心の奥底から出てくる感じた。自然と冷や汗が出る。
「黒色って...」
  なんとか出た声は何ともか細い声で震えていた。
「わかった?あの子のチェガンは...」
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