俺の妹はヤンデレでした

繭月

14話

水着売り場から出たあとお昼を食べたり、ちょっとした雑貨屋に入ったり、女子グループがナンパされたり、本屋に寄ったり、女子グループがナンパされたり、おもちゃ屋よったり、隆盛が迷子になったりしながらも楽しい時間を過ごしているといつのまにか既に日が沈んでいた。
「はぁ、よく遊んだな」
ショッピングモールの外に出て四人並んで歩く。
「俺を置いてどっか行くとか酷くないかね君たち」
「ナンパなんて始めてされました・・・」
俺の右側にいた柏木が驚いたようにつぶやく。
「へぇ、意外だな。もっとされそうなのにな」
「おーい、聞こえてるよねー?」
「普段こういう大きいお店に来る時は母と一緒なので」
なるほど。家族と一緒来てる人を普通ナンパしないもんね。
「もしもーし」
「・・・あのー、どちら様でしょうか?」
振り返りつつ後ろにいる両手に抱えきれないほどの紙袋を抱えたオタク隆盛にたずねる。
「私もこんなオタク知らないです」
若干引き気味に瑞樹が答える。
「なっ!オタクって、葵も充分オタクじゃないか!」
俺を指差して隆盛が叫ぶ。
「お兄ちゃんはいいんです。だってお兄ちゃんですから!」
謎の理屈をさも当たり前のように言われて隆盛は黙ってしまう。
「というか俺も今まではオタクの部類に入ると自覚していたんだが、今日のお前見て『あれ?俺ってそこまでオタクではないのでは?』なんて思ったんだが!」
俺らが隆盛を無視していた理由が途中で寄ったアニメなどのキャラクターショップの店頭で人様には見せられないような恍惚とした顔でフィギュア(幼女キャラ)を眺めていたのだ。それだけで?と思うかもしれないが巡回していた警官に連れていかれそうになるほどの顔だったんだ。
「あれは私でもちょっと…」
かなり引き気味に柏木が呟く。
ん?あれ、今もしかして柏木からの隆盛の好感度だだ下がり中?まぁ今回は自業自得だな!
結局隆盛が泣きそうになったので許すことにした。

「そい言えば噂の占い師がいるのってこの辺りじゃない?」
ショッピングモールから離れ駅の近くを歩いていると瑞樹がふと思い出したように口にする。
「たしかにこの辺りだったかな」
「占い師?」
「そう!クラスの間で最近有名なんだ。なんでも恋愛相談や探し物相談など100%当たるって有名なんだよ!」
「そんなのデタラメだろ?例えば運命の相手のイニシャルとかを占われたら教えられた方はそのイニシャルの人間を意識するのが普通だし、意識しなければ運命の相手が別でも占いなんて忘れるからな」
「お兄ちゃん、それは流石に夢がないよ」
瑞樹の言葉に翠と柏木が首を縦にふる。
「とは言ってもな、逆になんでそんなに女子って占いが好きなんだ?」
「だって運命の相手って響きが憧れるじゃん」
「「「「・・・」」」
隆盛が答えたことに全員が驚愕した。
「ん、どうかした?」
「なんでお前が答えんの?」
「いや、俺ってこう見えて実は女子の考えとか割と共感できる系男子ってことだよ」
なにその新しい系統・・・。
「まぁ、冗談はさておき妹が読んでた雑誌に載ってたのをたまたま見たってだけなんだけどな」
「そういや妹いたな。愛莉あいりちゃん元気にしてる?」
俺が尋ねると今までの明るさが嘘のように暗い表情になる。
「あぁ、元気だよ。に対する態度とかほんと瑞樹ちゃんの真逆だけどな」
「まぁ中学生にもなると兄妹ぎこちなくなるのは普通じゃないかな」
「いえ、私はお兄さんが大好きですよ!」
瑞樹が意を唱えるが、
「お前は普通じゃないからな。昔は仲よかったんだし思春期特有のものだから安心しろって」
「そうならいいんだけどな…」
意外とこいつはシスコンだからな。
「その悩み私が解決しましょうか?」
ふと後ろから声が聞こえてき、振り返ると20代くらいだろうか、一人の女性が立っていた。
「はじめまして私はそこのお店で占い師をしている苑理えんりです」
左側にある一軒の家を指差す。
「それにしても君は先ほどの話を聞いているとほんと占いを信じていないんでしょう。別にそれは構いませんがそれを私の前でされるのは少し許せません。ですので今回は特別にそれぞれ一人ずつ無料で占って差し上げましょう」
プライドを傷つけたのだろうか?だとしたらここで断るのは失礼だよなぁ。まぁ瑞樹達もやりたがってたしちょうどいいか。
しかし俺が答えるより瑞樹が先に答えた。
「いえ結構です!」
それまで占いをしたいと言っていた瑞樹が即決で断った。
「な、なぜです?」
まさか断られるとは思ってもいなかったのか苑理さんが狼狽している。
というか俺も驚きが隠せないんだけど。
「あなたは先程まで占いをやりたがっていたじゃありませんか。なのにどうして?」
「あなた先ほど一人ずつと申しましたよね?それは私の大好きなお兄ちゃんと二人になるってことですか?そんなことが許されるとでも思っているんですか?許されるはずないですよね?ぽっと出のくせに調子に乗らないでくれませんか?」
「・・・は、はい」
瑞樹の気迫にすっかり怯えてしまった。
「すいませんうちの妹が!瑞樹お前も謝れ」
「・・・ごめんなさい。少し、ほんのすこーしだけ言い過ぎだかもしれません」
「い、いえ。いいんです。こちらも少し気が立っていたと言いますか。謝礼も兼ねてどうですか?あ、もちろん相性占いとかもありますしそちらでしたら二人ずつですし」
「いいですね!是非お願いします」
またもや瑞樹が即答。あまりの手のひら返しに翠以外の全員が唖然とする。
「そうですか。では中へどうぞ」
案内されて中に入ると占い用の道具などはなくどちらかといえばカフェのような場所だった。
「あのここでするんですか?」
「いいえ。ここは客室です。占いは奥の部屋で占う方だけ入ってもらうようにしてるの。それじゃあ私は奥で準備があるから呼ばれたら占いたい二人で入ってきてください」
そう言って苑理さんは奥に入っていった。
「それじゃあ誰から占ってもらうんだ?」
「俺としては早く帰りたいから誰か一人占ってもらってさっさと帰ろうぜ」
「それじゃあもし当たったとしても葵、お前は信じないだろ?お前に信じさせるための占いだからお前は確定だろ後はやりたがってた女子全員と皆んながやるなら俺もってことで全員占ってもらおう」
「はぁ、仕方ないか。で、誰からやるんだ?俺は瑞樹とやるってことで決定してるとして後は一人でいいのか?早く占ってもらうためにも相性占いで二人のペアをもう一つ作ってもいいと思うんだが」
俺は瑞樹を抜かした三人に提案する。
「私も相性占いしてもらう予定だからそれでいいよ」
翠が答えるとは思ってなかったな。
「ならあまりは隆盛か」
「あまりってなんだよあまりって!そもそも翠は誰とペアを組むつもりなんだよ」
「勿論葵だけど」
「え?」(葵)
「だよなぁ」(隆盛)
「「・・・」」(瑞樹、柏木)
「いやいや、俺としては早く帰りたいからわざわざ何周もしたくないんだけど」
「え?葵は私とは嫌なの?なんで?瑞樹ちゃんはいいのに私はダメなの?どうして?ねぇどうして?」
「落ち着け落ち着け。わかったって翠とも組むって」
瑞樹ヤンデレみたいな雰囲気を出していた翠を宥めて落ち着かせる。
「準備できたから最初の人入っていいわよ」
翠が落ち着きを取り戻した頃に奥から声がかかる。
「なら俺と瑞樹、その次俺と翠そして最後に柏木と隆盛の順番でいくか」
「え、ちょっ・・・」
柏木がなにかを言おうとしたがそれよりも先に瑞樹が俺の腕を引っ張って奥に入った。

部屋の中はいかにもって雰囲気の内装で家具は机が中心に一つあるだけだった。入ってきた扉とは別に向かい側にも一つありその扉を背にして苑理さんが座っている。そして苑理さんと向かい合うように椅子が二つ並べて置いてある。
「そこに座ってください」
言われたとおりに俺と瑞樹が座ると机の上に絵が描かれているカードを並べる。
「タロットカードでしたっけ?」
「ええそうよ。占いといっても種類は多いしそれぞれ得意分野がいるの。それで私の得意なのがタロットカード。他のでもいいけどこれが一番的中率が高いのよ」
喋りながらカードを混ぜていく。
「あなた達の相性占いは家族として?それとも別のかしら?」
さっきの瑞樹の態度でうすうす気づいているのだろうが一応といった感じで尋ねる。
「勿論その他のです!」
俺が家族で、と言おうとする前に瑞樹が答える。
というかさっきから瑞樹の反射神経が格段と上がっている気がするのだが・・・。
「わかったわ。それじゃあ始めるけれど質問には素直に答えなさいね。勿論嘘は占いの結果を変えるからやめてね」
「「はい」」

タロットカード占いは2,3分程度で終わりを迎えた。
「それじゃあこれでおしまいね。今から占い結果を言っていくわね」


〈苑理〉
手に取ったカードを見ると二人の関係は良くてこのままの状態が続くらしい。
ただ良くてっていうのが、二人にとってということなのかそれともお兄さんにとってということかしら?妹さんにとってということはないでしょうし・・・。
「あの、どうかしました?」
悩んでいるのが顔に出たらしく妹さんから声がかかる。
「いえ、なんでもありまーーーひっ!」
ものすごい顔でこちらを睨んでいた。
というか目から光が消えてるんだけど!え、え、なに?私何かしたかしら?
殺気のこもった視線に耐えながらも占い結果を口にしようとして。
「私とお兄ちゃんが結ばれない結果だったら殺す」
ひぃぃぃ!
無理無理!真実を告げるなんて絶対無理だよ!というかなんでお兄さんの方が近くにいるのに気づかないの!どうやってるの!
「あの〜、まだかかりそうですか?」
(さっさと言えよ!私のお兄ちゃんをどれだけ待たせれば気がすむの?殺すよ?)
心の声が聞こえてくる・・・。
「は、はいすぐに!」
ここで占い結果を言ったら死ぬ!だけど私だってプロの占い師なんだ!だったら真実を伝えるしかない!
「えっと占いの結果は・・・相性はとても素晴らしいです!兄妹でなければ運命の相手といってもいいでしょう!」
あぁ、私の意気地なし、でも仕方ないんだよ!命あってのお仕事なんだから!
占い結果に満足したのか妹さんは上機嫌にお兄さんを連れて部屋を出ようとして、
「もし当たらなければ・・・わかっているよね?」
あ、終わった・・・。

そのあと少し客間でなにかを話す声が聞こえてまた扉が開く。
入ってきたのは女の子が一人、
「君は一人?」
「いえ、私も葵と一緒に相性占いをしてもいます」
「そう、それで葵君は?」
というか葵君って誰なの?
「少し待ってもらってます」
「待つ?どうして」
「話したいことがありまして」
ふ〜ん、なるほど本人の前では恥ずかしいってことね。
高校生らしい態度に無意識と顔がにやけてしまう。それを悟られないようにしながら話を進める。
「それで話って何かしら?」
聞いた瞬間目の前の少女の目からハイライトが消えた。
「さっき瑞樹ちゃんが占ってもらったら葵との相性が100%だったって言ってたんですけど嘘ですよね?」
葵ってさっきのお兄ちゃんのことなの!?
「だっておかしいじゃないですか?葵と結ばれるのは私ですよ?私以外の女が葵と相性100%なんて間違ってるとしか言いようがないですよ、すぐに訂正してもらえませんか?」
「て、訂正も何も相性100%とは言ってませんよ」
それを聴くと落ち着いたらしく部屋に入ってきた時と同じような雰囲気に戻った。
「では、今の言葉を瑞樹ちゃんに聞かせたいのでもう一度よろしいですか?」
口だけの笑顔を向けながらボイスレコーダーを私の前に持ってくる。
(どうしようどうしよう。言ったら妹さんに殺され言わなかったらこの子に殺される!)
どちらを選んでも死しか待っていない選択肢の中少しでも時間を稼いでいると扉が叩かれた。
「翠もういいか?」
その瞬間張り詰めていた空気が弛緩していくのを感じた。
「待たせてごめん 」
「あぁ、別にいいよ。それより話って終わったの?」
「う〜ん。一応聞きたいことは聞けたからいいかな」
「そっか。それならさっさと相性占い始めてもらおうぜ」
これはさっきと同じ状況に陥る!
私は反射的に口を動かしていた。
「少し気分が優れないので今日のところはお引き取り願えないでしょうか?」
気分が悪いってなんだよ!小学生か!なんて思いながらもこれしか道がないと迫真の演技をする。
「気分が悪いなら仕方ないですね」
葵君、なんていい子なの!
そのあと葵君から他の子を説得してもらいなんとか帰ってくれることになった。
「本当に代金はいいんですか?」
「はい。最初にわたしからタダでいいと言いましたし、結局こんな形になってしまったので」
「そうですか。それなら、ありがとうございました」
そう言って彼らは出て行った。
「また来ますね」
「・・・」
…実家に帰るか。

その後葵達が占いの館が閉店したことを知るのは少し後のことだった。

「俺の妹はヤンデレでした」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「恋愛」の人気作品

コメント

  • ノベルバユーザー232154

    始めて→初めて
    です。

    0
コメントを書く