俺の妹はヤンデレでした

繭月

8話

翠が瑞樹の部屋から鍵を見つけて戻ってくるのに思ったより時間はかからなかった
翠いわく「瑞樹ちゃんが隠しものをするときどこに隠すか知ってるからね」とのことだった
兄である俺より瑞樹のことを知ってるとは・・・ちょっと悔しいな
「それじゃあさっさと開けてくれないか?縛られてるのって想像以上にきついんだよ」
身動きが取れないうえにとくに暇をつぶすための道具がないのだから暇すぎて死にそうだったがこれで自由だ
しかし翠は鍵と俺を交互に見るだけで一向に鍵を開ける気配がない
「どうかした?」
「・・・いや、葵って今身動き取れないんだよね?」
「見たらわかるだろ。まぁ右腕以外は自由に動かせるけど」
俺がそう答えると翠はなにか考える素振りを見せて
「・・・襲っても最悪抵抗されたら力では勝てないよね」
なにかをつぶやいたが声が小さくて全く聞こえない
「なにか言った?」
「ううん、なんでもないよ。それよりさ私はこれで葵を助けるわけだけどなにかないのかな?」
そう言って手にある鍵を俺に見せつけてくる
「なにかって?」
「例えば私のお願いを聞いてくれるとか」
「わかった。それでお願いってなんだ?」
「そうだね、じゃあ今度私の買い物についてきてよ」
「それくらいなら全然いいよ」
「あ、もちろん私と葵の二人でだからね」
なぜか だけ の部分を強調していた
「それって瑞樹もダメなのか?」
「うん。私と葵の二人で買い物なんてはじめてじゃない?」
まぁたしかに。今まで俺と翠が遊ぶ時は必ずと言っていいほど瑞樹も一緒にいたからな
「それじゃあこれ外してくれよ」
「わかった」
翠に手錠を外してもらってようやく自由になった
「じゃあこの手錠は瑞樹ちゃんに渡らないように私が持っとくよ」
俺が持ってても瑞樹に回収されたら同じことされる可能性だってあるからな
「わかった。いろいろありがとな」
「どういたしまして。それじゃあ買い物するときはこっちから連絡するから」
そう言って窓枠に足を掛けて
「って、おい。危ないから普通に玄関から出てけよ」
「えー、来るときだってこっちからだったし大丈夫だよ」
「それで足滑らせて怪我したらどうすんだよ。買い物行けなくなっても知らないからな」
「はいはい。わかったよ」
しぶしぶといった感じで翠は玄関から帰っていった
「はぁ、それじゃあ瑞樹とはどう話をつけるかな」
今一番頭を抱える問題にどう対処するかを考え始めるがなにもいい案が浮かばない
瑞樹を更生させるにしてもなぜこうなったのかを知らなくてはならないからな
「まあ瑞樹が帰って来るまでになんとかしないとな」




〈星原 瑞樹〉
「瑞樹、今日はお兄さんのところに行かないの?」
昼休みになったが私がいつものように教室から出ないのを見て一人の女子が声をかけてきた
えっと確か喜山 涼ちゃんだったような・・・うん。わかんないから喜山さんで決定!
「うん。今日お兄ちゃん風邪気味だったから学校は休んでるんだ」
「へー、翠ちゃんだけじゃなく瑞樹のお兄さんもなんだ。瑞樹もうつらないよう気をつけなさいよ」
そう言って喜山さんは私の前の椅子をこちらに向けて座った。どうやら今日は私と喜山さんの二人でお昼を食べるようだ
「わー!これ瑞樹ちゃんが作ったの?すごいね!」
私が弁当箱を開けると喜山さんが感嘆の声をあげた
「そうかな」
今日はお兄ちゃんがいないから簡単なものですませたつもりなんだけど喜山さんにとってはとても素晴らしいものに見えるらしい
「そうだよー。こんなのを毎日食べられるお兄さんは幸せ者だね」
「えっ!そ、そうかなぁ・・・」
お兄ちゃんが私が作ったお弁当を毎日食べてる。今まで当たり前だったけど指摘されるとなんというか・・・夫婦みたい!
「瑞樹ちゃんどうしたの?顔赤いけど大丈夫?」
「・・・へ?あ、うん大丈夫」
いつのまにか私は頬が緩んでいたようだ
「あ、そういえば瑞樹ちゃんってこれ知ってる?」
そう言って喜山さんはスマホの画面を私に向けた
「・・・なにこれ?」
「やっぱり知らないんだ〜」
喜山さんのスマホには大きな滝が写っていた
「この滝はちょっとした噂があるんだ」
「どんな噂なの?」
「その噂はね滝の上から小さな木の船に好きな人の名前を書いた小物を入れて滝から落とすの。そうしたらだいたいその小物は滝壺に沈むんだけどまれに落ちずに済む物もあるとか。そして無事に済んだらその人と恋人になれるらしいよ」
「それってどこにあるの?」
「な、なに?瑞樹ちゃんちょっと怖いんだけど・・・」
「今はいいのそんなこと。それよりその滝ってどこにあるの?」
「え、えっとね白山の奥のところだけど、一人で行くのは危ないからやめたほうがいいよ」 
白山は私たちの家から徒歩で10分程のところにある小さな山だが道は舗装されてなくとても歩きにくい地形になっている
「白山か〜。残念だなぁ」
白山にそんなところがあるとは知らなかったしその噂も白山でさえなければ行っただろうに
白山は私には嫌な思い出のある場所なのであまり訪れたくはない
まあ、お兄ちゃんとの大切な思い出の場所でもあるが一人で行くには気がすすまない
そんなたわいのない話をしていると昼休み終了のチャイムが鳴った
「もう終わりか〜。瑞樹ちゃんお兄さんが休みの日とかは一緒に食べようね」
そう言って喜山さんは自分の机に戻っていった




授業が終わると、私が一人で帰ると知ったいろんな人(ほとんどが男子)が一緒に遊ばないかと聞いてきたが私にとってはお兄ちゃん以外の人から好意を向けられても正直邪魔でしかないのですべて断って急いでお兄ちゃんの待っている家に帰った
「ただいま〜」
私が玄関から声をかけると
「おかえり。はやかったな」
リビングからお兄ちゃんが出てきた
・・・え?なんでリビングにいるの?それよりどうやって抜けだしたの?
・・・翠ちゃんの匂いがする
私は踵を返して隣の翠ちゃんの家に向かった
ピンポーン
一度のインターホンで翠ちゃんは普通に出てきた
「学校さぼってたんだ」
「あー、ごめんね。いろいろ」
いろいろにはきっとお兄ちゃんのことも含まれているのだろう
「なんでそんなに嬉しそうなの?」
翠ちゃんは扉を開けた時から私の顔を見てもなぜかにこにこしている。たいして私はきっとすごい顔をしているのだろう
家の前を通る人たちが驚いた視線をこちらへ向けて小走りで去って行く
「まあ、立ち話もなんだから入っていいよ」
「・・・お邪魔します」
そのまま私は翠ちゃんの部屋へと向かった
翠ちゃんの部屋は綺麗に整理されており翠ちゃんの好きそうなものが多く置いてあってthe女の子の部屋という感じだったのだけど私としては違和感を感じていた
「お兄ちゃんのものってないんだね」
「え?あ、うん」
たまに家の中からお兄ちゃんのものがなくなっていることがあるのだけど?と言いたかったがそれよりも今は別のことが気になる
「・・・まあいいや。それよりなんでうちの鍵を持ってないのに家に入れたの?」
すると翠ちゃんは閉めていたカーテンを開けて
「この部屋葵の部屋の向かい側にあるんだ。だから葵に鍵を開けてもらって窓から入ったってわけ」
私はそれを聞いて驚いた。なぜなら私の部屋の向かい側でよく足音を聞いており私はてっきりそこが翠ちゃんの部屋だと思っていた
「じゃあ隣の部屋ってなに?」
私がたずねると翠ちゃんの顔が強張った
なにか隠してる
私が扉の方に向かうと翠ちゃんは扉の前にまわって
「そっちはだめ!」
「なんで?」
「え、えっと両親の部屋だから」
「翠ちゃんのお母さんとお父さんの部屋は一階でしょ?」
「うっ!」
翠ちゃんは言い訳をしようとしていたが私がおれないことを悟ったようで
「ちょっと待ってて」
そう言い残し隣の部屋に入っていった


その後隣から何かを探すような音が聞こえて翠ちゃんはこちらに戻ってきた
そして
「これあげるからさ見逃してくれない?」
物で私をつろうとしてきた
もちろん、そんな物・・・につられる・・・私・・・では・・・
「わかったよ。今回は見逃してあげます」
「ありがとう」
そういって翠ちゃんが手に持っている物を私は受け取り家に帰った



「・・・なにしてるんだろ?」
部屋に戻った私はそこでふと正気に戻った
「でもでも、しかたなかったんだもん」
誰に言い訳をするでもなく独り言のように呟いて翠ちゃんからもらった物を眺める
私が翠ちゃんにもらった物は小さなアルバムだけ
しかしただのアルバムではなくこれはお兄ちゃんの小さい頃のアルバムなのだ
しかも私とお兄ちゃんが出会う前のものからある
「これはもう私のお兄ちゃんコレクションに入れないとだね」
正直翠ちゃんの隠していた部屋は気になるけど今は気にしないでもいいかな。ふふん





〈星原 葵〉
[時間は瑞樹が学校から帰る数分前に戻る]
そろそろ瑞樹帰ってくるよな
俺は未だに瑞樹をどうするか迷っていた
「一度リビングでお茶でも飲んで落ち着こう」
そう思いリビングに行きキッチンにある冷蔵庫から麦茶を取り出した
ガチャ
「ただいま〜」
やばいもう帰ってきたのか!
俺は平然を装って
「おかえり。はやかったな」
俺がリビングから出てくると瑞樹はまるで幽霊にでもあったような顔をして着替える間も無く家を出て隣の家に入っていった
「俺普通にできてたよな?」
玄関に一人呆然と俺は立っていた



それから数十分後瑞樹はとてもご機嫌な様子で帰ってきた

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