魔法が使えるのはそんなにもおかしいことだろうか。

満月ノ林檎

11話 鉄壁。そして絶望

「グウオオオオオオ!!!!」 

俺達は今。街から遠く離れたダンジョンに挑んでいる。そして数々の死闘を乗り越えついにボスの部屋にたどり着いた。

「まずは俺から行くっ!喰らえっ剣技!【フラガ】!」

ゴーレムへ素早く近づき剣による対撃。

雑魚を相手に熟練度をひたすら上げた結果。通常のものより微々たるものではあるが強くなった剣技のフラガを放つ。

……しかし、その剣技はいともあっけなく弾かれた。

ガキン!……と弾かれた音が部屋に鳴り響く。

「な…嘘だろ…!?」

弾かれた反動で思わず尻をついてしまう。

「グウオオオオ!!!」

巨大な腕が俺に迫る。

「晴夜!避けてっ!!」

前回にも同じことがあった。そう。ちょうど昨日の出来事である。故にそのことをまだはっきりと覚えている。
【経験敵性】(オールバランス)

それが彼に隠されたスキル。一度起こった経験などを常人より遥かに素早く学習し、それを行動に活かす力。彼自身は気づいていないため、いともたやすくその鋼の拳を避ける。

素早く起き上がりその攻撃をかわして後ろへ後退する。

「おい!どうなってんだアル!!」

「あれはあのゴーレムの耐性効果よ!あいつ…物理耐性が半端なく高い!!」

だから俺のスキルも弾かれたのか…と頭の中で納得してしまう。

「ならば!私の魔法でっ!!」

と、レフィが魔法発動に出る。

〜浮かべしは灼熱の炎。今その力を糧に錬成せし剣!〜

解き放てっ!!灼熱魔法剣【ボルケイン】!!

業火をまとった剣がゴーレムへと飛んでいく。

しかし…ゴーレムはそれにも対応する。

その巨体が黒い光を放つ。そして、あの青白かった巨体は真っ黒に染まる。

途端。魔法が直撃。いくら物理耐性が高いとはいえ魔法は効くはずだ。

そう思った矢先。煙の中からその巨体が現れる。そしてその体に傷はない。

「そんな…なんで…」

レフィがつぶやく。

「……そうかっ!あいつ!魔法が来たら即座に耐性を変えるんだ!!通常が物理耐性。黒が魔法耐性持ちだ!」

攻撃によって体制を変える敵。実際適応能力の高さは異常だ。

「くそっ!こんなのありかよ!大抵お約束ならあいつを凍らせたり痺れさせたりするのが基本だ。それかよくある防御を超える攻撃〜とか!」

「ねぇ晴夜。さっきからあんたの世界の知識をひたすら口にするのやめてくれない?ゲーマー臭がプンップンッするわ!あ〜汚らわしい!」

しまった。つい口に出してしまった。と、心の中で後悔するがこちらも反撃に出る。

「はぁ〜っ!?ふざけんなよおまえっ!お前がこっちに連れてきたんだろうが!だいたいまだ俺の力覚醒してねーしっ!」

「それはあんたの器の問題よっ!!これだから男は汚らわしい!」

そんな口喧嘩を続けていると…

「おいっ!二人とも危ないっ!!」

そして、地面を砕く音と巨大な拳。

間一髪でよけれたもののこんなことをしていても埒が明かない。

「くそっ!どうすれば…」

すると、

「おい、晴夜!私の切り札を使えばまだ勝ち目はある。」

切り札とは…ちょっと前新しくはいったパーティメンバーを信用していないわけではない。ただ、その攻撃でどうにかなるのかが疑わしいところだ。

「切り札……?ま、まぁそれに頼るしかない!じゃあアリアは特攻だ!」

「了解っ!!てやあああああああ!!」

「…はっ!そうか!レフィ!魔法詠唱を!でかいやつ頼む!アルは俺達の強化と、それと、やってもらいたいことがある。」

「えっ!?わ、分かりました!」

「んっ!?まぁいいけど…」

秘策が浮かんだだけのこと。だが秘策と呼べるものではない。

「では行くぞっ!我の第二の武器!ビッグメイス!」

光がほとばしり、彼女の手に出てきたものは長い棒の先に四角い塊が取り付けられた見事なハンマーであった。
それを右手に持ち槍を左手に持ってゴーレムに飛びかかる。

「はあああぁぁぁぁ!!!」

その左手で槍を投げる。するとやりは飛ばずに中に浮かぶ。そして大きなハンマーで振りかぶり槍の尾に強く叩く。

「魔法戦技!ライトニング・スマッシュ!」

光属性の一連撃技。

当然それに対応してゴーレムは青白く物理耐性モードに移行。だが、彼女のその槍は俺。いや俺達の想像を絶するものであった。

その槍はゴーレムの右肩に命中。弾かれると思ったその槍はどんどんとゴーレムへめり込んでいき、恐ろしい音を立てその巨大な右腕を吹っ飛ばした。

「「「な、な、何ぃぃぃぃぃぃぃ!!!???」」」

「と、とりあえずナイスだ!よし!レフィ今だ!」

「はいっ!灼熱魔法!ボルケイン!!」

再び業火が舞い、ゴーレムへと飛ぶ。

当然ゴーレムはよろめきながらも魔法耐性に変形。

「よしっ!今だ!閃光武装【エンチャント・ライトニング】!」

俺の周りに光がまとう。

「はぁァァァァ!!!!」

走り出す。その速度は通常の何倍にも上がり、その炎にも追いついた。

「よし!炎よ!俺に力を!」

先程はなったレフィの魔法を自分の剣に掲げる。

すると、その炎は剣に付着し、俺のものとなる。

「行くぞっ!ゴーレム!!フラガッ!!」

剣技スキル先程は通りもしなかったその刀身は、今や切りつけたその鋼に深く刺さりこみ、切り払う。

「「「えっ!?」」」

先程は通りもしなかった斬撃に一同は驚く。
簡単な事だったのだ。魔法を放てば耐性がそれに適応するが、その切り替え能力は決して高いものとは言えなかった。
そして、これが通用するのは1コンボのみ。だが、
世にも珍しい
「自身の魔法で自身を強化しての物理攻撃を主とする」戦い方は、その場にうってつけのスタイルであった。

これは要するに「魔法属性の物理攻撃」。そしてそれの継続を完成させているのは本人による魔法であるからだ。

恐るべき速度でゴーレムを斬りつける。

「行くぜっ!剣技スキル秘技!【フラガ・ラック】!」

手にしていた剣に巨大なオーラが宿る。

「貫けえええええええぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

そのオーラがゴーレムの胴体へと刺さりその力を増幅させ貫通する。
その瞬間。ゴーレムの体の素材であった鉱石が、砕け散り消滅する。

「やっ…やっ」

「「「「やっっったーーー!!!!!」」」」

俺達のパーティはボスの攻略に歓喜した。
ひたすら喜び、そのままその塔を後にする。


「にしても、今回もなかなかなものでしたね〜晴夜さん!」

「まぁ、この私の従者であるからにしては上出来ねぇ〜」

「最後はかっこよかったぞ!」

などとみんなで話し合いながら帰る。

そして歩いて30分

「あっ街が見えてきたわよ!」

ようやく街が見えた。
………しかし。

「えっ…あれは?」

その時、俺は愕然とした。

いや、俺だけではない。俺達4人が同じ光景を目にした。

始まりの街の近くにほとばしる闇のオーラ。

それは天を貫く槍の如くして、空へと伸びる。

「おいっ!みんな急ぐぞ!」

そして、それが何なのかを確認するため、走り出す。

新たな旅の始まりへと。

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