俺と彼女

池田 智之

僕と彼女1 〜特別〜

 高校生活初日、校舎の前の道にはサクラの花びらが舞い散っていた。俺は中学と同じで高校も楽しくないと思っていた。クラスを確認して教室に入ると、教室の隅で本を読んでいる女子を見て一瞬我を忘れた。彼女はおしとやかで華があるように思えた。彼女は入学式が終わると既に女子と喋っていた。俺は外見のせいか少し怖がられることが多かった。それは自分でも理解している。中学の頃も同じだったから。俺はこのまま三年間同じだと思っていた。
 入学式から一週間が経ち、クラス内でグループができた。俺一人だった。クラスで委員・係を決めることになり、俺は図書委員になった。もう一人の図書委員は記憶にとどまらないような平凡な女の子だった。先生から図書を整理するように頼まれ、平凡な女の子は沈黙が嫌だったのか俺に喋りかけてきた。俺は普通に返事をしただけだったのに、平凡な女の子はビクついて喋りかけてこなくなった。次の日、平凡な女の子は図書室に来なかった。代わりに先生が来た。先生は俺にいきなり
「◯◯さんに何かしたのかり委員を変えて欲しいと言って来たぞ!」
と言われた。俺は
「何もしていない!ただ喋りかけられたから返事をしただけ。」
と弁明したが先生は俺を信頼してるようには見えなかった。先生は俺に
「◯◯さんの委員を変えてもいいか?」
と聞かれ俺は頷いた。
 次の日、俺を見る目が変わっていた。周りの奴らは俺を見ると避けていった。そして、俺を見てごちゃごちゃ話していた。小さな声だったけど俺には聞こえた。
「あいつ、女子を脅して泣かせたんだってよ!」
と言われていた。事実、俺は何もしていない。けれど俺の味方なんかするバカはいない。そう思っていた。けれど、教室で女子の人気者となっていた。彼女は、教壇に上がって「◉◉君のことを噂だけで判断するのは良くないんじゃないかな。だって事実はあの二人しかいないでしょ。◉◉君本当なの?」
「俺は何もしていない。ただ、お前バカなの?俺の味方なんかしても何のメリットもねぇのに。」
周りのみんなも俺自身も驚いていた。俺は涙を流していた。俺は涙を隠そうと屋上へ走った。後で聞いた話だけど俺がいなくなったクラスでは、俺の涙を見てみんな俺の噂は嘘だと信じてくれたらしい。俺は屋上で溜まっていた涙を流していると彼女が息を荒らして追いかけてきた。俺は必死に涙を止めようとした。彼女は俺に
「我慢せずに涙は流した方がいいよ。私が落ち着くまで隣にいるから。」
と言われ、俺の涙腺は崩壊した。途中チャイムが鳴ったけれど彼女は隣にいてくれた。俺は落ち着き始め、落ち着くと同時に彼女には心を開いてもいいのかもしれないと思った。俺はこの外見のせいで今まで怖がられ、友達がいなかった過去を話した。彼女は静かに俺の背中をさすってくれた。俺と彼女は一緒に教室に戻ると当然先生の説教が始まったが上手く騙して許してもらえた。その日から俺の中で彼女は特別になった。
 彼女は人気者だから俺は休み時間とかも近づきに行けなかった。彼女はたまに喋りかけてきた。内心俺と話すメリットがわからなかった。彼女にはいい印象じゃない俺と喋っていると彼女のイメージが悪くなるだけだと思っていた。俺は今、彼女の内面を見ることができたらと思った。けれどその想いはすぐに叶った。
 昼休み、俺が屋上で空を見ていると、扉が開く音がした。彼女だった。彼女は泣いていた。彼女が泣いているのは初めて見た。彼女はしっかり自分の意見を伝えられるしっかりした子だと思っていた。彼女は俺に気づき無理に笑顔を作った。俺は少し傷ついていた。俺はやっと自分の気持ちに気づいた。彼女は屋上を出て行こうとしていた。俺は急いで彼女の手を掴み引き止めた。俺は
「無理に笑うなよ!俺といるときくらい素直になれよ。」と伝えると、彼女は俺の胸にもたれて泣いた。彼女が泣き止むのを待っている間、俺は彼女との関わりについて振り返っていた。俺はしらないうちに心の声がもれていた。彼女は
「え!」
っと驚き聞き返してきた声で現実に戻った。彼女は
「私のこと好きなの?」
と聞いてきた。俺は焦った。
「わつわつわつごめん。急にキモいよね。何の思い出もない俺にこんなこと言われたら…。でも、ちゃんと言わないと俺が嫌だから伝えさせて下さい。俺と付き合ってください。」
「嫌だ。だって嘘ばっかだもん。思い出ならちゃんとあったじゃん。私にとっては◉◉君と喋った時間は思い出の一つだから。そこを訂正してくれないとやだ。」
俺は驚いていたのに顔の筋肉は緩み始めていた。
「俺と付き合ってください」
「はい。よろしくお願いします」

「俺と彼女」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「恋愛」の人気作品

コメント

  • ノベルバユーザー602339

    気持ちの変化も何から何までほんとに全部キュンキュンする!
    ドキドキしすぎて胸が苦しい。

    0
コメントを書く