三つ子と三つ子

しゃどー

三つ子と三つ子 5話

    あれから、4年が過ぎた。
私たちは6年生になった。
そして、変わらず6人で学校へ行く。
…桃瑚も相変わらず…。
「紫響兄さん、この髪飾り可愛いでしょ?」
「うん…。」
紫響兄さんは興味が無さそう。
「あ、そういえば今日テストだよね?」
紅希姉さんが言った。
「えええええ!そんなん聞いてねぇしぃ!!!」
相変わらず声がでかいのは、裕緑。
「もうすぐ卒業だし?テスト頑張らないと。」
「あー、めんどくせぇなぁ。」
灰星兄さんがだるそうに呟いた。
私は今日も灰星兄さんの隣を歩く。
「あれ?姫水?」
「なに?兄さん。」
「身長、縮んだ…?」
「……は…。」
いつの間にか灰星兄さんの身長は私の身長の上にあった。
「あははは!お前縮んだとかだっせ…ぶふぉぉぇ…」
ムカついたからボディーブローをお見舞してやった。
「そりゃ男なら伸びるだろ。妹バカにしてんじゃねーよ。バカ兄さん。」
私は1人でスタスタと歩いていった。
紫響兄さんも、裕緑も大きくなっている。
なんか…悔しい…。




それから次々と日が流れ、ついに卒業式になった。

「ううぅ…。もう、みんなっ、卒業なのねぇぇ…。」
お母さんは朝から泣いている。
「お、お母さん、泣くの早いって…。」
「だっでぇ…。」
バンッと勢いよく扉が開いた。
「!?」
そこには、いつもと違う灰星兄さん、紫響兄さん、裕緑がいた。
違うのは、3人とも学ランということ。
「どぉだ!似合うだろぉ?」
灰星兄さんがドヤ顔で言った。
「かっこいいわぁ!!」
いつの間にかお母さんは泣きやみ、3人をパシャパシャ撮りまくっていた。
「はぁ、紅希姉さん、桃瑚、着替えたー?」
「お待たせー。」
なぜか、真面目な紅希姉さんはとてもセーラー服が似合っていた。
「紅希姉さん、めっちゃ制服似合うね。」
「それは褒めてるってことでいいの?」
「うん…。」
怖いわ…。

「お母さん、髪の毛結んで〜。」
「いいよっ。」
桃瑚はお母さんにツインテールにしてもらっている。
紅希姉さんは三つ編み。
私は、ボサボサ…。
「姫水、おいで、髪の毛といてあげる。」
紅希姉さんが慣れた手つきで私の髪をといていく。
「ふふ、姫水、髪伸びたね。伸ばすの?」
鏡を見ると、肩上だった髪の毛が肩にかかっていた。
そして、相変わらず悪い目付き。
「…伸ばそうかな…。」
「それがいいよ。はい出来た。」
「ありがと。」
「うん。可愛いよ。」
褒め言葉はなれていない。でも、嬉しかった。

卒業式が始まった。
クラスのみんな制服だったから大人びて見えた。
桃瑚はもう泣いている。
紅希姉さんは堪えている。
私はというと…何も感じない。
一歩大人に近づくという実感が嬉しかったのだ。
「…沖沢 姫水。」
「はい。」
私は立ち上がり、ステージへ上がった。
ずっと座りっぱなしだったから背中が少し痛んだ。
「…卒業、おめでとう。」
校長が卒業証書を差し出した。
私は練習どおりに受け取る。
「ありがとうございます。」




「ううぅ。卒業証書もらっちゃったよぉぉ!」
桃瑚が私に抱きついてきた。
「みんな貰ってるよ。てか泣きすぎ。」
「だってぇぇぇ!」
「あれ?紅希姉さんも泣いてるの?」
「やだなー。言わないでよ。堪えてたのに…。」
「みんな大げさすぎるよ、卒業しただけでしょ。」
…??
紅希姉さんと桃瑚がこちらをじっと見ている。
「ふふふ、姫水姉さんも人のこと言えないじゃん。」
「え…?」

ぽたっ…
雫が頬を伝った。
「あれ、泣くつもり無かったのに…。何で…。」
「おーおー、3人おそろいで…あれ?泣いてんの?」
灰星兄さんが覗き込んできた。
「…っ…。」
「姫水が泣くなんてめっずらしぃ。」
かぁぁっ…
「う、うるさい…。」
「兄さん、姫水姉さんいじめちゃダメっすよ!」
「虐めてねーよ。」
涙を拭いた。
「…大丈夫?」
そう言ってきたのは紫響兄さんだった。
「うん、平気。」
「そう…。」




中学校生活は、嫌な予感がする。
今はそうじゃない事を願うしかない…。

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