現代社会に冒険者という職業が出来るそうですよ?

Motoki

No.11 血盟《アストライア》結成

 日曜。
 朝起きると凜々花からチャットが来ていた。

『おはようなのです。今日はパーティーの皆で血盟について相談したいのです。優人は集まれそうなのです?』

 血盟について決めておきたいらしい。
 俺は月曜でもよかった気がしたが、確かに平日は忙しいか。

『集まれる。時間を教えてくれ。』

 簡潔に返事をする。
 すると一瞬で返事が返ってきた。早すぎる。

『わかったのです!今日の1時に寮の男女共用休憩スペースに集合なのです。剣心と勇気もそこに来るのです』

 男女共用休憩スペース、か。確かにあったな。入居者が少ないからか、普段はガランとしている。
 今は朝10時。攻略の疲れからか、かなり寝ていたようだ。

 とりあえず朝の支度を終わらせるか。

 ◇

 朝のアレやコレやをしているとあっという間に12時を過ぎていた。
 約束の集合時間までもう1時間もない。

 「そろそろ行くか」

 俺は財布とスマホ(ギルド端末)を持って部屋から出た。

 ◇

 休憩スペースにはもう既に皆集まっていた。

 「みんなはやいな」

 まだ集合時間の15分前だ。

 「なんだか待ち切れなくて…」

 なずなが恥ずかしそうに言う。可愛いなおい。
 女子は3人とも私服で、制服の時とは雰囲気が全然違う。
 なんだかんだで私服を見るのは初めてなので、少しドキッとした。

 「待ちきれなかったのは皆同じだと思うぜ」

 勇気がなずな達に向かって笑う。確かに俺も楽しみにしていた。

 「そうだな。それじゃあ血盟について決めよう」

 俺が話を本題へと移す。
 血盟を作るにあたって色々と決めなくちゃ行けないのだ。

 「血盟結成の為の書類は貰ってたよ」

 莉奈がそう言い、数枚のプリントを渡してくる。
 そこには血盟名や血盟員・アジトについて等、書く欄が何個もあった。
 だがまあ、最初に決めるのは血盟名だろう。

 「血盟名、どうする?」

 俺が聞くとすぐに皆から返事が返ってきた。
 チャットで予め血盟名を考えてくるよう、各自に伝えてあったからだ。

 「ブレイブナイツ!」「闘拳団!」「一刀両断」と物理火力勢が言い放つ。
 自信満々なところ悪いが、それは却下だ。
 理由?察してくれ。

 「却下だ。確かに好きな名前とは言ったけどさ…」

 「ではでは、《優人と愉快な仲間たち》なんてのはどうでしょう!」

 「何言ってんのかな?却下だ。」

 「そんなぁ…」

 なずなが意味不明な名前を提案してきたが、そんなものは当然却下だ。
 ふざけた訳じゃ無いらしく、少し残念そうだ。

 「じゃあ、《Student Adventure》はどうなのです?」

 凜々花がドキドキした様子で聞いてくる。
 直訳すると学生冒険者か。今までよりはマシだが、何というかそのまんまだな。

 「今までのよりはいいセンスだな。だけど、少しそのまま過ぎるな。」

 「難しいのです…」

 これで全ての意見がで終わった。
 え?俺の意見?
 さっきチャットで提案したら皆から猛反対をくらった。
 「そんなの恥ずかしすぎます!」「これが中ニ病ってやつなのか…」「お腹が…痛すぎるのです…!ぷっ!」
 と、なかなかに強烈なコメントが俺の精神を喰らい尽くした。

 「う〜ん、何かいい案はないのか?」

 俺が再度聞くが、皆首を横に振っている。
 血盟名決定が、まさかこんなに苦戦するものだったとは。

 「俺たち、石の力使ったら光るじゃん? だから何か光ってる名前がいいと思うぜ」

 「光ってる名前って何だよ。まあ言いたい事はわかる。」

 ようするに光ってるものを名前にしたらどうか、という事だ。

 「なら星じゃないか?俺の中で光っているものと言えば星になるのだが。」

 背筋を伸ばした良い姿勢の剣心が提案する。
 星か。確かに人工物じゃない光るものなら、俺も星が1番に浮かんで来る。

 「凜々も星に関する名前が良いのです」

 凜々花がそう言うとみんなが頷いた。
 星に関する名前で決定だな。

 「じゃあ無難に星の名前にするか?」

 俺がそう言うと皆が困った顔をする。

 「星の名前なんてしらないな〜」

 莉奈がお手上げのポーズをとって言う。みんなも同様に知らないようで、困っている。

 さて、どうしたものか。

 「あれ?坂本くん達じゃ無いですか。どうかしたんですか?」

 ナイスタイミングだ。
 俺はそう思いながら声をかけてきた人の方を見る。

 「こんにちは、伊藤先生。実は血盟名を何しようか迷っていて。何かいい案ありませんか?」

 そう、声を掛けてきたのは俺達の担任、伊藤萌奈先生だ。

 「血盟をつくるんですか!1年生では1番乗りですね!それにしても血盟名ですか〜。何か方向性は決まっていますか?」

 少し首を傾げて、上目遣い(背が低いので自然とそうなる)で聞いてくる。
 …隣で勇気が変な声を上げている。

 「星に関する名前にしようと思っています」

 「星ですか、う〜ん…」

 伊藤先生は腕を組んで考え始めた。
 やはり簡単には思いつかないのか…?

 「あ、そうだ!アストライア何てどうでしょう?」

 アストライア?
 初めて聞く単語だ。

 「アストライアというのはギリシア神話に登場する正義の女神で、「星のごとく輝く者」という意味があるんです!」

 「星のごとく輝く者…」

 なずなが伊藤先生の言葉を繰り返す。

 「私、アストライアにしたいです!」

 なずなは気に入ったようで目を耀かせている。

 「俺もそれがいいと思う。反対意見がある人はいるか?」

 俺がそう聞くと皆は首を大きく横に振った。
 これで血盟名は決定だな。

 「伊藤先生、ありがとうございました。俺達の血盟名はアストライアにします」

 「はい。血盟攻略頑張ってくださいね!」

 そう言うと伊藤先生は「ギルドに用事があるので」と、立ち去って言った。

 「よし、血盟名は決定だな」

 俺は机に置いてあった書類の血盟名の所に《アストライア》と記入した。

 次いで血盟員の所に各自の名前を書いていく。
 血盟主はパーティーリーダーの俺がそのままやる事になっている。

 それから色々と必要事項を記入していき、血盟のエンブレムをかく欄にたどり着いた。

 「エンブレムは私が描いてもいい?」
  
 「あぁ、任せる。難しいかもしれないが《アストライア》にぴったりなものを描いてくれ」

 莉奈はその言葉を聞き終わるとペンを走らせ始めた。

 エンブレムはその血盟を象徴するマークで、制服の胸の部分や武器に描かれる。

 莉奈はスラスラっとエンブレムを書き上げていく。
 あまりの早さに適当にやっているのではないかと疑いそうになるが、出来上がっていくものはとても綺麗だ。

 「ほい!できた!」

 莉奈はそう言うと皆の前にエンブレムの案を見やすいように置いた。

 それは光る星の絵だった。中央に星を思わせる球体があり、それを覆うように光が描かれている。
 背景は宇宙のようで、とても綺麗だ。

 「すごいな。エンブレムはこれでいいと思う、いやこれがいい」

 剣心が力強く言う。
 他のみんなも同じようで、誰も反対しない。

 「よし、エンブレムもこれで決定だな。あとはアジトだな」

 「アジトはやっぱり自分達が住みやすい方がいいですよね」

 なずながカタログを見ながらつぶやく。

 アジトはカタログに載っている10種類の建物から選べる。
 もしくは自分達である程度設計したものをギルドに渡す事で世界に一つのアジトを建てることが出来る。ただ、この場合は冒険者学校の生徒でもお金を払う必要があり、割引されても60万はかかる。
 60万なんて高校生に支払える額ではないと思うけどな。

 「…やっぱり自分達で建てたいのです」

 凜々花がカタログを閉じてそう言う。
 カタログに載っているのは全て普通より少し下の家だ。
 無償で住めるのだから当然なのかもしれないが、設備が普通以下なのはこれから先が辛い。

 「俺は父に頼めば貸してもらえる。そうここに来る時に約束してある。」

 その手があったか。
 自分達では今すぐにそんな大金は用意出来ないが、親に頼めば貸してもらえるかもしれない。

 「みんな、今から各自の親に確認を取ってみてくれ」

 俺がそう言うと皆は端末を取り出して各々の家に電話をかけ始めた。


 ◇


 「それで、どうしてこうなったんだ」

 俺達は電話を終え、各々が借りられた額を確認していた。
 いや、正確には“電話の途中で皆で決めた額を借りられた”かを確認していた。

 俺達が借りられたのは全員で600万。1人100万だ。
 建てるのに必要なお金は60万。その10倍だ。

 「こ、これならすごいアジトが建てられそうですね」

 なずながそう言う。
 アジトはより良い設備にしたり、規模を大きくしたりすると価格が上がっていく。

 確か、3年生で既にアジトを建てた人達は200万程使ったらしいが、俺達はその3倍を使える。
 もちろん貯金という手もあるが、俺達は冒険者の収入が安定しているし学費や家賃等は学校持ちだ。

 「600万全部使おーぜ。これから住む家な訳だし、冒険者大学へあがるとしたらこれから何年も住むんだ」

 勇気がみんなに言う。
 住むなら出来るだけいい家の方がいいに決まってるしな。

 「みんな、それでいいか?   よし、じゃあ自慢になるようなアジトをつくろう!」

 俺の声に皆が頷く。

 専用の書類に欲しい設備や部屋数等を書いていき、どんどんアジトが明確になっていく。
 だいたいの完成イメージが出来、俺達は手を止めた。

 「じゃあ皆で血盟結成申請とアジト申請に行こう」

 「楽しみだな!」「やっとなのです!」

 俺達はギルドへ足を進めた。


 ◇


 「はい、これにて手続きは終了です。お疲れ様でした」

 受付の人が優しく笑う。
 俺達はあのあと、ギルドにて血盟結成をしてアジトの詳細を専門の人と話し合った。
 それに意外と時間がかかったが、良い家の設計が出来たと思う。

 「アジトの完成にはしばらく時間がかかりますが、普通の家よりは全然早く完成するので少しの期間お待ちくださいね」

 「はい。ありがとうございました」




 こうして
 後に最強の血盟と謳われることとなる、俺達の血盟《アストライア》が結成された。

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