能力しかないこの世界で

卯月色

鉄壁の体

「てめぇ…俺の蹴りを受けてダメージが無いだと!」
国次は明らかに動揺していた。岩をも砕く蹴りを目の前の男は片手で防いだのだ。
「お前の様な男が守様の子供だとは…笑わせてくれる。」
そう言いながら牙刀はさらに強く国次の足を握る。国次は苦悶の表情を浮かべているのを見て和斗はただただ困惑するだけだった。
(国次の父親?確か国次の両親はいないんじゃないのか?それに何故国次の父を慕っている人物が国次を襲っているんだ。)
和斗は考えれば考えるほど疑問が増えていた。ただ和斗はやらなければいけないことを思い出していた。
    国次の足を掴んでいた牙刀の横に和斗は回り込んでいた。そして
「うをおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
雄叫びと共に牙刀の横腹を思いっきり殴っていた。だが牙刀の体は鋼のように固く殴っていても無意味だった。しかしその牙刀が和斗に意識を集中していたときほんの数秒国次を掴んでいた手が緩まったのだ。そのチャンスを国次は見逃さなかった。国次はもう一つの足で思いっきり牙刀の体を蹴り上げた。遠くからもう一度体制を2人は立て直した。2人は並んだ後に最初に和斗が突進した。和斗が連撃をかましながら自分の目でゆっくりと辺りを注意していた。そしてある時急に屈むと後ろから国次が突進してきた。だが牙刀は難なくガードし国次の足を掴み振り回した。吹き飛ばされ壁に激突した国次を容赦なく追撃をする牙刀を見て和斗は思わず牙刀を叩くのではなく、国次を庇おうと手で押し出していた。そして国次が殴られる代わりに和斗が殴られた。その一撃はとても重く、和斗の様々な部分の骨を、肉を、細胞を砕いていった。
「うぐぉ…」
  和斗は鈍い音を立てながら吹き飛ばされいった。吹き飛ばされていきながら和斗は脳裏にある思い出が蘇ってきていた。

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