魔法適性ゼロの俺がおくる学園生活

櫂真

生徒会

 生徒会室に謎の静寂が走る。数秒後伯はその重たい口を開ける。
「え~と、なんで僕がいきなりこの学園を去らないといけないんですか?急すぎて、訳分からないのですけど…。てか、貴方は誰ですか?」 
 と、言うと相手の男性は眼鏡をくいっと上げつつ、答える。
 「ふーん、それは君が1番理解してんじゃないの?でもそうだね、逃げ道無くすのが1番良いかもね。」
 ゴホンと、一息つき答え始める。
 「まずは初めまして、僕は桜田 士道。ここの生徒会長をやってるよ。」
 と、軽く自己紹介を済ませる。
 「さて、早速本題だけど君にはこの学園をやめてもらいます。その理由はね、君が少し異常すぎるからだよ。君がいるとこの学園や生徒に危険な目に合わせてしまう可能性が高いからね。」
 士道は伯の目をしっかりと見つめながら言う。
  「生徒会長さん。何、言ってるんすか?俺みたいな、所詮Dクラスの平凡な人間のどこが異常なんですかね?」
 「あくまで、白を切るつもりなんだね。まあ、いいよ。放課後はまだまだ長い。しっかりと話して行こうじゃないか。」
 士道の目がギラりと光る。


 「まずは、昨日の戦いお疲れ様だったね。あんなに激しいしかったら、怪我とかしてるんじゃないのかい?」
 伯は拍子抜けした。自分の秘密―仕事や上司稲垣紗雪―について、語られるものだと思っていたのだ。
 「まあ、怪我は擦りむいたり、青タンできたり大変でしたね。結局負けてしまったのは悔しいですけどね。」
 と言って、腕まくりしたり、足を指さして怪我の箇所を見せる。その瞬間、伯はしまったと自分の行動を後悔した。生徒相手だったために気が緩んでしまったと思った。
 「そうか。そうか。今ので君は墓穴掘ったのも自覚したようだし、話を続けようか。」





 「違和感を覚えたのは昨日の決闘デュエルだったんだよ。君ほど・・・・の魔術師なら知ってると思うけど、昨日の彼の使った炎の魔法はただ炎を打ち出してる訳じゃないんだよ。炎を作り出したしてもそれだけじゃ、消えてしまうからね。炎を作り出し、それを維持、魔力で炎を包み込みそれを発射する。まぁ、皆こんな難しいこと考えずに使ってるけどね。あの炎は魔力で守られてると言っても過言ではないんだ。それをただのナイフで切れると思うかい? 」
 そこまで、言って士道は瑞を一口飲み続ける。
 「仮に、ナイフで切れたとしてもあの炎は君に少しはダメージを当て得るはずだ。魔力で維持されていたのに、維持していたものが無くなったんだ。運悪くて爆発、良くても君のナイフの刃を溶かすだろう。だけど、何も起こらず、ナイフには焦げたあともなかった。それに、君はさっき僕に怪我を見せてくれたけど、火傷後は一切なかった。君はあの、炎の円柱ファイアーガラムで負けたのに。しかもあれは、出力が制御出来てなくて全身丸焦げにでもおかしくなかった。あまりにもおかしい。」
 ふぅっと、士道は息を吐く。
 伯は以前、黙ったままだ。
 「それで、僕は君のことを調べさせて貰ったよ。入学時に出す書類があるだろうからね。勝手に見させて貰った。」
 伯は自分の身よりもここの学園の警備の方が心配になった。
 「驚く程に何もなくてびっくりしたよ。魔法適性もだいたいCだし、家庭も普通。普通すぎて怪しくなったよ。けど、一般的な書類なんて鵜呑みにするんじゃないなって思った。だから、ちょっとだけ詳しく調べたよ。君の素性は出てこなかったけど、正しい魔法適性レベルが出てきた。」
 そう言って、1枚の紙を出す。
 ____________________________________________ 氏名 綾野 伯 16歳


 魔法適性 0


 魔法操作  SSS(MAX)
 魔法出力  SSS(MAX)
 魔法属性 炎、水、氷、雷、風、土、光、闇
                  無…その他全属性
 魔力供給量及び魔力保持 FF(12)
___________________________________________
 「君はほんとに凄いよ。この歳で魔法操作や出力共にカンストしてるなんて聞いたことないよ。それに、全属性の魔法まで使用可能なんてね。学園なんて来なくても君はやって行けるよ。ただね、魔力を保持してないのは全くの矛盾なんだよ。魔力を持ってないきゃ魔法は使えないし、魔法を使えないと適性レベルをあげられない。それに、僕達のような一般の学生なら大体、B(800~1000)。まぁ僕はA(1200)あるけど。魔法使わない人でもD(400)ぐらいあるけどね。」 
 ぐっ、伯は歯を食いしばる。まさかここまで調べられるとは思ってなかった。また、1日で調べられるとは思えない機密情報がバレてることに驚いた。
 「あと君、昨日、魔法使ったでしょ。僕には分かったよ。気配を消す魔法、サイレントあれで一気に攻めに行ったよね。あの魔法は結構、魔力使うんだよ。気配や姿を紛らわすのではなく、消すんだからね。君の魔力量じゃ無理だ。では、君のそこ魔力はどこから来たのだろう?答えはカンタンだよ。あの炎だろ?」
 士道は詰めに入った。
 「君は魔力量は無いけど、人の魔法を吸収できるんじゃないのかな?あの炎の魔法を切ったのではなく、ナイフを通じて自分の魔力に変換したんじゃないのかな?だから、君は火傷は一切追わなかった。そんな所だろ。どう?あってる?」
 

 伯は、パチパチパチと拍手する。
 「さすが、生徒会長。すごいです。1日でそれだけの情報を調べ、そこに行き着くとは。お手上げものです。」
 「それはそれはありがとう。」
 「でも、それだけだと僕がこの学園を去る理由にならないですよね。」
 伯は士道の目をちらっと見る。
 「ああ、君の秘密を話しただけだからね。」
 「でしょう?なら―」
 「さっき、言ったでしょ。君のことを、少し調べたよ、って。君の素性は分からなかったけどさ、魔法適性レベルが分かったときに、君の後ろにいる存在の大きさは把握出来たんだよ。この学園は魔法を学べる学校として、かなり有名で権力があることは知ってる通り。それと同等、それ以上の何かがいるんだろ。でなきゃ、君の情報は改ざんされないからね。それは国レベルのものだろ。国一つが君に手助けしてる。だから、君は魔力適性レベルを改ざんし、入ることが出来た。君一人で国が動くんだ。怖すぎる。少なくとも僕は学園と生徒を守る身でもある。君のような存在がいるだけで誰かが危険なめに合う確率はぐっと上がる。それは分かるだろ。だから、僕は君にはここを去って貰いたいんだ。無論、君が素直に去るならこのことは誰にも言わない。君が辞めないと言うなら…ね?」

 士道は言い切った、そんな顔で伯に通達する。
 さすがに、伯は焦っていた。このままではほんとに、この学園を去らないといけなくなってしまう。顔ではそんな事を悟らせないよう、平然を装っている。ここまで相手が理解してるなら何を言っても聞きはしないだろう。何か、起死回生の一手を模索してると、

 「伯君には、この学園に居続けてもらうよ。私が呼んだのだから」 
 「なっ、学園長!?」
 
 唐突に、学園長が生徒会室に入ってきてそう告げる。
 「おじい様、それはどういう事ですか?」
 「えっ、おじい様!?」


 学園長は伯の隣に座る。
 「さっきも言った通り、伯君は私が呼んだのだよ。この学園のために。あ、ちなみに伯君、士道は私の孫なのだよ。」
 「あ~、そうなんですか。」
 「おじい様、それは本当ですか?貴方が自分の学園に危険分子を呼んだと?」
 「伯君は、危険なのではないよ。確かに色々、普通とは違う生活を送ってきた。だがむしろ、この学園、いや学園都市として彼は必要な存在なのだよ。それに、士道は生徒会長なのだろ?伯もまた守るべき生徒ではなないのかな?」

 士道ははぁ~っと息を吐く。
 「いいですよ。学園長が来た時点で彼は退学届けなんて出さないでしょうし、学園長もそれを受理しないでしょ。分かりました。伯君ごめんね。無駄な話に付き合わせて。」
 「あ、いえ、無駄という訳では…。」
 「もう、いいさ。ただこれからは僕とも仲良くして欲しいね。これからの学園生活のために。」
 士道は、ニッコリと笑顔を向ける。
 伯は、この人には逆らわない方が良いなって思った。
 「は~い。これから、よろしくお願いします。」 
 伯と士道は握手する。
 こうして、伯の退学は免れた。
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 どーも、最近ぶりです。
疲れました…。3000字を一気に1時間位で書き進めたので、頭がパンパンです…。今日はここら辺で。
 誤字脱字、意見、アドバイス、質問した等ありましたらコメントよろしくお願いします。

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