テトラポット

てら

日常A

入学式からずっと、友達を作る事もなく、アルバイト先である下宿から近いレンタルCD店と家と大学を行ったり来たりするなんでもないような生活を送って一年が過ぎた。単位を落とすような事は無かったが特別高成績でもない、何をやってもありきたりな自身な平凡さに頭を悩ましながら、やはり奮起することもなく人生を浪費したのだった。
特に高校での出来事を思い出すことも無くなったが傷が癒えてピンピンと生きられる程では無く、当時のショックが足枷となって、遠くへ逃げて姿が見えなくとも鎖で繋がれているような不快な気持ちが自分の中で存在し続けていた。

「一生こんな感じなんだろな」

ボソっと六畳の床に横になって、何処から入って来たのか一匹の蛾が天井にぶら下がる灯りに一心不乱に激突を繰り返すのを眺めながら呟いたが、無論聞いてくれる人間などいるはずもなく孤独に押し潰されそうになった。
いつも蛾ははたくか窓から出て行ってもらうかするのだがなんとなくそのままにしておいた。

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