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ゆーD

黒ランクの二人

 そこから数日たったある日ミューナとアストはギルドへ向かった。
 この世界にはギルドと依頼所と二つの場所があり、魔獣、素材等はギルドへ探し物、護衛等は依頼所に赴くのが通常である。

 今日この二人がギルドに向かった理由は魔獣であるオルゴーレムというオルハリコンでできたゴーレムを討伐し、その素材を利用して強力な武器を作ろうと考えているからである。

ギルドに入ると早速四人のハンターに絡まれた。
「おい嬢ちゃん危ねぇことはしねえで俺たちと遊ばねえか?はっはっは!」
「そりゃいいや!なぁ嬢ちゃんどうよ?俺たちこう見えて結構強いぜ?逆らわねえ方が身のためだ!」
 そこでアストはまたかと溜息をつく。
 それが感に触ったのか四人のハンターはこっちに詰め寄ってきてアストを掴もうとするが強力な結界をミューナがアストと自分に作っており、この四人では一生砕く事は出来ないだろう。
「なっなんだこの硬さありえねえよ!」
「おい!もう本気でやっちまえ!」
━━━━━━━━━━━━━━
「それはやめたほうがいい」
「だれだおま━━━━━」
「あ、あんたはここのギルドマスターのシャクソードか?!」
「彼女たちはこのギルドきっての精鋭でね。君たちのような魔力もまともに扱えない戦士よりも魔力を息を吸うように使いこなし、戦術面では誰も思いつかないようなものを考え出すこの子達の方がよほど価値があるんだよ。現にハンターカードもその子達は黒だからね」
「なっ!?黒だと?この国に八人しかいないと言われているあの黒カードか?!」
 この世界のギルドのランク方式は十段階に分かれており、白→ピンク→赤→青→紫→銅→白銅→銀→金→黒という順番になっている。
 その最上級の黒を持っている二人はこの国ではかなりの権力をもちかつ発言権も持っているはずなのに自分たちが黒であることを隠し密かにギルド依頼を達成してしまうそんな二人にこの支部のギルドマスターだけでなく本部のお偉いさんまでがとても良い印象を持っている。
 ギルドカードのランクの上がり方としては実技と筆記がありその点数が超えていれば認められる。
 通常実技と筆記どちらかが良くても黒にはなれないのだが、この二人は魔力操作及び魔力制御で圧倒的な力を見せつけ一方は圧倒的な知識、戦術をピアノの音色のように綺麗に完璧に埋め、それはこの世界の常識を覆すような案件だった。

 それほどまでに人との差を見せつけ、それでいてまだ本気ではないと来た。そこから導き出される可能性は未知だ。
 そのため異例中の異例として十五歳で黒カードを手にしたということである。
 ただミューナには知識があまりにもなさすぎて筆記ではほとんど無回答。そしてアストには黒になれるほどの魔力操作、制御が出来ていなかったため二人で一枚ということで発行したのである。
 元よりそのつもりだった二人はそれを受け入れ今に至るということだ。
 ギルドマスターは金だが、魔法操作、制御そして知識も戦術も一人で兼ね備えてる為バランスはいいが二人の連携を見てしまったあとだとそれが霞んで見えてしまう。
 二人は目だけである程度意思疎通をし、それでいてバランスが取れてしまう二人は天性の才能がやはりあるのだろう。
 アストの戦術は完璧すぎるがゆえに一つのミスで崩れてしまうがミューナのおかげでそれを文字通り完璧にすることができる。


 アストはこの年齢にして軍の戦術指導部から声がかかっていて最初は行く気満々であったのだがミューナと組んでからミューナが行かないなら行かないと断り続けている。
 ミューナにはなぜ声がかからないのかと言うと端的に言えばお家問題だ。
ミューナの家はこの国で三本の指に入るほど大きい家で軍よりもよっぽど権力が高いために引き抜きも上手くできずミューナから行きたいと言ってくれなければまず無理なのだ。
 そのため軍はアストに破格の条件を何個も出しているのだがそれでも行きたがらない。
 例えば給与は普通の戦略指導者は最高でも150万ほどだがアストにはその三倍である450万も提示している。
 そして入軍してすぐに個人の研究室の開設、時間の使い道の自由、アストは現在子爵家で貴族の中間の地位だが伯爵家の地位を与えると言ってもなにも興味を示さない。ましてやその両親までもが娘の自由を尊重するといって地位を捨てたのだ。
 まぁそのことにミューナは気づくはずもなかったが。


       ■
 学校が終わり、ミューナはアストと共に魔法の自主練習をしていた。
 その魔法の名は『修復術』。即死でない限り完璧な回復ができ傷一つ残らない。回復魔法だと傷が残ったり、治癒してから暫く動けないというデメリットがあるが『修復術』はそれらのことがなく、事実上最強の回復術である。

『修復術』のすごい点は人だけでなく、物も直せるというところだ。しかも物の場合ボロボロになっていたり、割れてしまっていても完全に直すことができる。
 この術が使えるのは世界でも一握りほどしかいなく使えれば将来が約束される。
 とはいっても使用魔力が大きいので何回も使える技ではないがミューナに関しては『修復術』の魔力など雀の涙程度だ。
 そしてアストが術を最低限まで簡略化し無駄を省くことでより効率的かつ容易に使えるようにしているがその過程で問題が発生している。

 最低限簡略化するためには術式を理解していなければならないが少し程度では意味がなく、完璧に理解していなければならないのだ。
 そのため今アストは全力でそちらへ神経をすり減らしているが難航しているようだ。
 ミューナはミューナで濃密な魔力を生成するために瞑想をしたり、実際に魔力を自分の範囲に最大限濃くした状態で保持したりしている。こちらはかなり上手くいっているようでもう仕上げの段階になっている。


 この術式が完成すれば本格的に自分達の相手になるものはいなくなるのではないか。そう思って先を急ぐ二人だった。

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