陰キャラな妹と陽キャラな幼馴染の仲が悪すぎるんだが

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第29話 父さん再び

「──遠いよぉぉぉ!」
「まだ十分しか経ってないじゃないか。今ならまだ戻った方が早いんじゃないか? 俺一人で行くから、どうぞご自由に」
「い、行くに……決まって……ハア……るじゃんか!」

   もう息切れすぎだろ、これは早いうちに返すべきなんじゃ……?
   どうせ来ても喧嘩する、なら無理してくる必要も無い。
   この時俺はそう思っていた。

   ──三十分経過、一言で言うならとても疲れた。
   俺も那月も長いところへ移動するためのいい自転車ではなく、普通に学生が使うようなヤツ。
   運動部に入れば良かっ……、

「そういや那月ってバスケ部じゃなかったか?」
「そうだけど、最近めんどくさくて行ってなかったから、体力が落ちたぁぁぁ」

   尻すぼみに声が小さくなる那月を見て、確信した。
   こいつダメだ、絶対体力が持たないな。
   やっぱり返した方が……。

「絶対、絶対たす──」
「?」

   最後まで聞き取ることは出来なかったが、まだ行く気あるみたいだし、放置するか。
   大変そうな那月に合わせるため、ペースを落とし気味に自転車で走る。
   爽やかな風を浴びながら、軽快に走る。
   度々信号に引っかかり、俺がイライラする中那月は、休めて顔に笑が浮かんでいる。
   この間に叶美に何かあるかと思うと、この数分でも惜しく感じる。
   傍から見れば俺なんて気持ち悪いのかもしれない。
   だが、誰になんと言われても俺は叶美が好きだ。
   前にも認めたように、俺はシスコンだ。
   なら、叶美を心配する理由は充分だろう。
   信号が青になり、また走り出した。

   ──秋葉原へようやく到着した。
   着いて同時に思った。
   どこにいるんだよ。
   秋葉原はオタクの聖地と言っても過言ではない。
   それはすなわち、基本どこに行っても楽しめる場所がある……と、いうことだ。
   ……だが、秋葉原へ行ったらまず行く場所があるだろ!
   そう、アニ〇イトだ。
   きっといる、俺は叶美と何年も共に過ごしてきたじゃないか、自分を信じろ!

「浩ちゃん、行く場所決まった?」
「ああ、アニ〇イトだ!」

   那月も賛成したのか、こくりと頷いて俺の後ろを着いてきた。
   これは、絶対いるな!

「──着いた、ここだよな?」
「そうだと思うよ、名前書いてあるし」

   自転車を近くの駐輪場に止め、店の前へと立っていた。
   なんか緊張するなあ。

「行くぞ」
「うん」

   俺達は自動ドアの前に立った。
  
「何これ、動かないじゃないか。壊れてるんじゃないか?」
「どうなんだろうね……あ、見て! 営業時間10時からって書いてある!」
「な!?」

   現在の時刻は9時、つまりまだ一時間も早いのだ。
   焦って早く来たのが間違いだったのか。

   一先ず駐輪場に戻り、作戦を練り直した。

「一体どうすればいいんだ……。さっきの作戦は失敗、後一時間も待たなければならないなんて……」
「なら、一時間そこら辺で探して、また戻ってこればいいんじゃない?」
「………お前、天才かよ」

   素直に那月に感動し、拍手を送りたくなる。
   が、ただ俺が馬鹿だったような気がしてならないので、そこまではしなかった。

「よし、それで行こう!」
「うん!」

   俺達が自転車にまたがり、行こうとした矢先、ある声が聞こえた。

「浩介……何故ここにいるんだ」
「と、父さん……? と、叶美! 何でいきなりいなくなったんだよ!」

   激昂する俺を見て叶美が顔を伏せる中、父さんは堂々とした佇まいで言い放つ。

「それは、お前が男だからだ」
「はあ?」

   どういう事かわからず、素っ頓狂な声を出す俺を見てやれやれといったような感じで肩を落とす。
   ……俺の中にある考えが浮かぶ。
   だが……この考えはハズレであってほしい、親として、人として!

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