陰キャラな妹と陽キャラな幼馴染の仲が悪すぎるんだが

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第18話 転校生再来(1)

「みんな静かにしろ。今日は転校生の紹介だ」

   朝のホームルーム、いつもと変わらない日常が送れるかと思った時に転校生。
   だがまあ、俺みたいな地味野郎には目もくれないであろう……。
   って、山田と仲良くなってるじゃん!
   俺に不安を募らせながら教室に入ってきた転校生は、

「クックック……我が名は炯眼けいがんの使者ワルキューレ! 橘狐たちばなきつねとは仮の名。皆は我をワルキューレと呼んでくれ!」

   左眼は黒く、右眼はきっとカラーコンタクトで蒼くしているのだろう、色が別々だ。 
   綺麗な銀色の長髪。
   顔立ちは良く、普通の美少女だがある問題があるな。
   ……こいつ、中二病だわ。
   てか、狐ってどこかで聞いた言葉だな。
   そんなことは忘れて絶対関わらないようにしないとな、面倒事に巻き込まれたくないし。
   クラスが静まり返る中、自称ムードメーカーの志賀が口を開いた。

「ワルキューレって変わった名前だね。そこで質問なんだけど、君って中二病?」

   どう考えてもワルキューレが名前じゃなくて、橘狐だろ。

「クックック……さすが我が右腕!ちゃんと理解してるじゃないか!」

   おっ、すげーな、会ってすぐ右腕に選ばれるなんて。
   全然羨ましくないが、こんな後に学校で浮きそうなヤツとは関わらない方がいいって思わないのか?
   ……いや、あいつ友達が欲しいんだったっけか。
   これから話す相手は山田と那月をメインにしていこうか。 
   すると先生がある提案を。

「橘さんの席を作るのが面倒なので、サッとくじ引いて、パッと席替えするぞ」

   山田と離れるのは少し心もとないが、致し方なし。

「転校生と遠くなれますように」

   フラグを立てておきながらフラグに打ち勝てる所を見せてやろう──


「──くっそ……。俺運悪すぎだろ……」
「我が隣は君か! 我が名は炯眼のワルキューレ、覚えてくれ!」

   忘れろって言われても無理だろ。
   席はというと、一番後ろで左に橘さん、前に山田、左斜め前に志賀といった、仕組まれたかのような席。
   右側に廊下があったので、俺は橘さん以外知り合いしか周りには居ない。
   それだけ聞いたらいい席なんだけどなあ。
  
   ──授業妨害何回目だよ。
  
   橘さんが転校してまだ二限目、全然授業が進んでいかない。
   なぜなら、

「ここの計算式解けた人手を挙げてください」
「クックック……我が力に頼るとは先生も分かってるじゃないか! その答えは……」
「橘さん、これで何回目!? 当ててないのに立ち上がらない! そして静かにする! 分かった!?」

   二限目だけでこれが四回……。
   このクラスの学力下げる為に来たヤツじゃないだろうな?
   その後もずっと続き、昼食の時間になった。
  
「あの転校生何なんだよ、もうすぐ期末テストなのに点数下がるぞ?」
「別にうちには関係ないからいいけどね。元々頭悪いし」

   いつものように屋上四人で話し合っている。
   那月だけは橘さんの事を知らないのであまり話さないようにしよ──

「ねえ、その人って女子?」

   俺の優しさぶち壊したな。

「女子だよ。見てくれはいいけど、極度の中二病って感じのヤツだったな」
「見てくれはいい……か」

   那月が何かをボソッと呟き、それが何かを聞こうとした時、バンッと勢いよく屋上のドアが開けられた。

「おっ、やっぱしここにいたな! 我が右腕よ、共に覚醒しようではないか!」
「どういう意味かわからんが、志賀、さっさと行ってこい。俺はあいつと関わりたくない……」
「何言ってんだよ右腕! 我が右腕はあいつじゃなくて君だよ!!」

   そう言って指差しているのは俺の方だった。
   えっ、なぜ俺?

「いやいや、俺お前と関わりないし、それに志賀の事を右腕とか言ってたじゃないか」
「クックック……右腕なのに気付かなかったのか? あれは仮の姿、本当の姿で右腕に選ばれたのは君さ!」

   うわっ、嬉しくなっ!
   どうしよう、全然嬉しくないし関わりたくないんだが。
   何かきっかけを作って無難に過ごせ──

「契約を結ばないか?」

   頬を少し赤らめながら言う橘さんに俺は少し戸惑いを覚える。
   契約? それって俺と結ぶもの?
   第一に何の契約だよ。
   という俺の悩みはすぐに解決した。

「契約と言っても簡単なものだ。世にいう『付き合う』というものだ。な? どうだ?」

   どうも何もこいつは何を考えているんだ?
   何故ほぼほぼ初対面である俺に告白をしようと……、

「それって告白じゃないか!? えっ、何で俺告られてるの!? どういう事だ、モテ期か? モテ期なのか?」
「クックック……我は冗談では言っていない。契約を結ぶかどうか、今すぐ答えを……」
「ちょっと待って!」

   橘さんの話を遮るように大声を出したのは那月だった。
   久しぶりに見た那月の怒った顔。
   俺と喧嘩をした時も、叶美と口論をしている時もそんなに怒っていない那月が、何故ここまで怒るのだろうか。

「私は浩ちゃんと付き合ってるの! 変な誘惑しに来るのやめて!」

   ん? 俺と付き合ってるって何嘘ついてるの?

「クックック……そんな嘘はこの右眼にかかれば嘘くらいお見通しだ!」

   いや、なんで分かるんだよ。

「ぐぬぬ……確かに嘘だけど、それでも私はあんたみたいな人を浩ちゃんに近づけたくない!」
「勘で言ったんだが、当たっていたとは我凄し。だが、近づけたくないと言っても席は隣同士。近づいてしまったな!」

   煽るなよ。 
   これ止める役絶対俺になるんだからさ。
   呆れながらも俺が止めに入ろうとした時、橘さんが俺の方に歩み寄ってきた。

「さ、我と契約を結ぶ者、これを付け蒼眼と化しよ」

   そう言って自分の付けていた蒼いカラーコンタクトを渡してくる。
   いや、汚っ!

「要らねーよこんなの! 何で今付けていたのを外して俺に渡すの? 俺そんなに変態に見えた? 変態じゃないから要らないよ?」
「クックック……我に嘘は通じない!」

   こいつがさっき勘って言ったのが事実って証明できたな。
   だって、俺要らないし。
   どうしようか、この物分りの悪い中二病をどう対処しよう。
   目を輝かせながら俺に片眼のカラコンを渡そうとする橘さんを見ながら、俺は思う。
   ご飯食べさせてください……。
   そんな俺達の元に那月がキレながら来るかと思ったその時。

「そのカラコン、うちにくれないか!?」

   百合である山田が、橘さん以上に目を輝かせて寄ってきた。
   こいつらめんどくせー……。

  

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