陰キャラな妹と陽キャラな幼馴染の仲が悪すぎるんだが

ウィング

第6話 脱、陰キャラ大作戦!

さっき撮ったビデオをどうしようか悩んでいると──


「高梨、お前いい加減退学にしてやろうか?放課後すぐ来いって言ったよな?」


「ちょ、え、あの、委員長の奈楠と彼氏さんが、この部屋で一線越えた関係になってまして……」


「別にいいだろそんなこと。生徒のしたいようにすればいい話だ」


この学校の先生は頭いかれてるのか…?
高校二年生が一線越えたらやばいって絶対。


「ほら、早く行くぞ。説教だけじゃ済まないからな?」


マジですか……



「あの、説教一時間でいいんですか?」


いつも三時間だった説教が、今回は一時間ですんだ。
「今日は妹さんについて聞きたいことがあってな」


「叶美ですか?」


なぜ先生が?とは、当然思ったけど、ここは流れに合わせるのがベストだろう。


「妹さんは陰キャラなのだろう。陰キャは早く卒業させんと、高校、就職とフリになるぞ」


そんなことを先生に言われなくても俺が一番わかっている。
俺も昔は陰キャラで、殆ど喋らなかったことで友達ができなかったんだから。


「俺だって陰キャラを卒業させてやりたいです。しかし、陰キャラにしたのは俺なんです。俺がどうこうするのは筋違いかと」


そう、誕生日だからといって、頑張ってパソコンを買った俺が馬鹿だったんだ。
叶美は昔、よく外で遊ぶ、友達は多いっていう感じの、要は皆に憧れる存在でいたんだ。
でも、俺はその性格を変えてしまったのだ。
あまりにも責任が大きすぎる。


「自分の責任とかを考えてるのか?これはお前の母親に言われた事だ、『自分のしたいようにしな』ってさ」


「母さん……」


ボソッそんなことを言いながら、かっこいいとも思っていた。
俺が妹のキャラをまた変えさせるのか……
俺がパソコンを買い与えたのは、心のどこかで妹に嫉妬していたからだろう。
俺とは違い明るく、友達が多い叶美に。


「先生、やっぱり俺のせいでなったのでキャラ変えさせてきます。友達の多かったあのキャラに」


うんと先生は言った。
俺は先生を後ろに、帰ることにした。



「ただいまー。叶美、ちょっと話があるんだけど」


そう言って俺は、叶美の部屋をコンコンと叩いた。
しかし、返事はなく、ゲーム音が聴こえてくる。
ゲームして俺の声聞こえないだけじゃん!
強行突破を試みることにした。


「叶美部屋に入る──」


開けながら入ろうとしたら、叶美が俺の言葉を遮りながらドアを閉じてきた。
そこまでして部屋に入れたくない?
思春期だからお兄ちゃんに照れてるとかそういう感じ?
ドア越しに叶美が話しかけてきた。


「兄さん……。どういうつもりなの?妹の部屋にいきなり入ろうとするなんて……」


「叶美、今日は訳あって来たんだ。お願いだから開けてくれないか?」


前のように入れてくれ叶美!
陰キャラの子は基本家から出ない、誰とも話さないからなかなか面倒くさい。
けど、もうそろそろ話さなければいけないことなんだ。
嫌われる覚悟で──


「兄さんは、母さんの味方なの?」


味方?一体なんの話をしているんだ?


「母さんもここ最近学校行かないならご飯をあげないって言ってくるの」


「学校行ってなかったのか!?」


衝撃の事実に絶句した。
学校には行っているものだと思っていたが、こいつは徹底した陰キャラだな。
攻略するのが難しいと思って悩んでいたその時──


ピンポーンと、下でインターホンの鳴る音がした。
家には俺と叶美しかいない。
これはチャンスだ。
叶美に行ってもらうように仕向ければ──


「兄さん、早く出て」


先手打たれました!
しぶしぶ出てみると。


「ここって、高梨さんのお宅ですか?」


そこには、叶美位の女の子が立っていた。
黒髪で前髪にヘアピンをした髪の長い可愛い子だ。
きっと中学生なんだろうけど、なんかそよそしいな……。


「そうですけど……、どちら様で?」


警戒心を解くためにも、ここは優しく声をかけるのがいいと思う。


「えと、うちは増山香美ますやまこうみっていう者です。今日は叶美さんの事で伺ったのですが……」


「叶美に?学校の友達とかか?」


「友達……それは違いますね。うちは叶美さんを……いえ、これはいいません。一つ伝えて欲しいことがあるのですが、よろしいですか?」


言葉は丁寧だし、しっかりした子だと思う。
でも、隠し事されるのは気分が良くないな。
仕方ないことなのかな、人間という生き物は、絶対に隠し事があるもんだし。
ここは俺の起点を利かしてやるか!


「伝えたいこと?それは俺に言うんではなく、直接叶美に言うんだな」


友達ではないと言っていたから、ここで友達にしてやろうではないか大作戦だ!


「そ、それは嫌です!うちは、お兄さんが帰ってるの知って来たんですから!」


「俺、家帰ったの三十分前なんですけど」


一瞬の無言。
沈黙を破ったのは香美だった。


「お兄さん!伝えてくれるんですか?伝えてくれないんですか?」


「伝えない」


「ひ、酷いです!」


伝える訳ないだろ。
俺は叶美に友達を多く作ってもらいたいと思ってるんだから。
一つ気になったことがあるんだが……


「香美ちゃんってさ、叶美のこと嫌ってる?」


「!?」


あーこの反応はそうっぽいな。
なんとなくそんな気がしたんだよ。


「言わなかったあれをいってくれないか?」


大方の予想がつきながら聞く俺って性格悪いのかな……


「叶美さんが、嫌いなんです」


やっぱりな。
分かってたことだが、敢えて口に出させるってのも大切だろ。多分。


「俺は別に妹の事を嫌いって言うやつを嫌う訳じゃないから安心して。でも、伝えたいことは直接言いなさい!」


言ってて思ったんだが、俺なんか保護者的立ち位置になってない??
ま、細かいことはどうでもいっか!


「ちょっと待っててくれるか?」


「え、あ、はい」


素直でいいやつなんだよなー。
いいヤツなんだけど……合わないかなー。
俺はもう決めた。
ここを、大波乱にしてやろうと。
その作戦にはまず、


「電話させてくれ」


そう言って電話をかけた相手は、那月だ。
叶美にやっぱ嫌われちゃうかなー。
でも、嫌われる覚悟でやるって決めたんだからしょうがないよね……
シスコンの俺にとってはなかなか傷つくんだけど……
そう考えていると、電話が繋がった。


「もしもし浩ちゃん?どうかしたの?」


「今すぐ俺の家に来てくれ」


一方的に切った。
那月だし大丈夫だろうという謎の信頼で。


「あの、人の電話に口出しは良くない気がするのですが、一方的に切るのはどうかと……」


香美は俺に優しくそう言った。
やばい、タイプかもしれない。
妹が好きな俺は多分ロリっ子好きなんだろう。
これってやばい事じゃないか?
妹の同学年を好きになるとか……


「浩ちゃん、どうかしたの?」


「お、那月来たな?なんにもねーよ」


タイミングよく那月が来てくれたので、とりあえず香美の事を好きなのを保留できるきっかけが出来て良かった。


「浩ちゃん浩ちゃん!この子誰?」


そう言って指さしていたのは香美だった。
てか、指さしてんじゃねーよ!


「この子は香美って言うんだ。後に叶美の友……あいたあああ!」


友達って言おうとした俺に、思いっきり引っぱたいてきた。


「んー、よくわかんないけど友達なのね?りょーかーい!」


俺の思ってほしい方に思ってくれたので助かった。
ものすごく那月を睨んでいる香美を除いては今の所悩み無しだな。
さて、ここからが大波乱の始まりの後に、叶美を陰キャラ卒業させてやるぜ!


「二人とも上がって?」


「わかりました」


「はーい!」


キャラの違いが凄いな……。
香美はクールな感じがするし、那月はうる…明るい感じだし。


「着いたぞ……」


叶美の部屋の前についた。
問題はここからだ。
どうやって叶美の部屋に入るか、だ。


「なんで止まってるの?」


那月さん?空気読みましょ?
どう考えても入り方に困ってるではありませんか。


「そうですよ。さっさと入りましょうよ」


香美ちゃん。貴方もですか。
君はもう少し常識をもった女の子だと思ってましたよ。


「「せーの!」」


「何をする気だ!?」


那月と香美は、息を揃えて香美の部屋を殴って壊した。
女子がそんなことしてはいけません!はしたないですよ!


「な、なな、なにごと!?」


慌てる叶美を他所に、那月と香美は満足気な顔をしていた。
俺はというと、口を開け、ポカンとしていた。
目の前で起こったことについていけずに……
大体の状況を理解して、第一声を発したのは……


「なんで貴方達が!?」


叶美だった。
叶美は二人を見ても誰?とはならず、普通に理解していた。
こういうキャラだって分かっていたからかな。


「何って浩ちゃんに言われて来てあげたんじゃない」


「一つ要件がありまして」


各自の来た理由を言った。
めっちゃ殺意向けられてるんですけど叶美に。
え、俺なんかした?してなくね?


「兄さん!なんでこの人連れてきたの!」


那月のことだった。
修羅場をおこしてやれば陰キャラ卒業すると思ったなんて言えないよな……


「この人って酷くない叶美ちゃん?私達3人はもはや家族みたいなもんでしょ?」


「何が家族よ!冗談じゃない!」


すげー、予想通り喧嘩し始めたぞ。
こいつら思い通りに動いてくれるから助かるわー。
後は陰キャラ卒業するかだけど……


「二人ともさっさと帰ってよ!邪魔なんだけど!」


「じ──」


「何言ってんの!? 浩ちゃんの誘いで来てるんですけど?叶美ちゃんの意思は聞いてませーん」


那月、性格の悪さめっちゃ出してるな。
可哀想なことに香美ちゃん話に入れてないじゃん。


「お前ら、三人で話し合えよ」


「「無理に決まってるでしょ!」」


那月と叶美に全力否定されたんだけど!
香美ちゃん可哀想だと思わないの?思わないよね。
当の香美ちゃんといえば、話に入れないからふてくされて部屋の隅っこに行っちゃったじゃん。


「香美ちゃんは会話に参加しなくていいの?」


優しく声をかけると、ちゃんと返事してくれた。


「那月とかいう人が邪魔で話せないから、話せるようになるまで見守るしかない」


あれ、叶美のこと嫌いなはずなのに、話したがってるじゃないか。
やっぱり友達になりたいんだなあ。


「用事伝えたら帰りますけど」


──友達になりたい訳じゃ無かったんだ…。
相変わらず叶美と那月は口喧嘩をしているので、俺は香美ちゃんと話をする。


「学校楽しいか?」


何でこんな親戚のおばちゃんみたいなこと口走ってんだ俺!
心の中でそんな風にツッコミながら、恥ずかしくて頬を赤くしていると。


「楽しいですよ?そんな恥ずかしがる質問でもないと思います」


そう言いながら、香美ちゃんはにこやかに笑った。
それより……俺の心悟られた!?
うっわはっず!
悟られた上で優しくされるのが一番恥ずかしい気がするんですが!


「そうか、よかったね」


精一杯の作り笑いをしながらそう言った。
経験したことない人からしたらわからないことかもしれないが、経験したらわかる、めっちゃ恥ずかしい!
少しの間恥ずかしがっていると、叶美と那月の喧嘩ももうすぐ終わりそうだ。


「帰れ帰れ帰れ!!」


「叶美ちゃんは嫉妬してるんでしょ?私と浩ちゃんの純愛カップルに」


「勝手にカップルにするなよ」


ちょっと耳を傾けると、俺と那月がカップルにされてたので思わずツッコミを入れた。
香美ちゃんには悪いが、ちょっと那月達の会話に混ざろうか。


「今日那月を呼んだのは事実だ。訳ありでな」


「どんな理由か教えてよ!」


「陰キャラをやめさせるためだ!たまたま仲の悪そうな香美ちゃん来てたし、どうせなら修羅場を作ってやろうと思って那月を呼んだんだ!」


事実を全部言ってやった。
那月にも香美ちゃんにも言ってないことを。
流石に嫌われたと思う。
けど、陰キャラを卒業してくれるなら本望です!


「修羅場を……そんなんで叶美の陰キャラが変わるわけないじゃん!出てって!」


「うちも!?」


本望が……俺の本望が!
一つ伝えごとをしたいだけの、来たかもないのに多分来させられた香美ちゃんも追い出された。
ドアは香美ちゃんと那月が壊したせいで無いので、叶美の状況は丸わかりなんだがな。


「浩ちゃん!? 私を連れてきた理由ってそういう事だったの!?」


「いや、まぁ、そう……かな?ハハハ…」


乾いた笑いをしながら、那月からの問いに応えていた。
珍しくギャーギャーいう那月とは反対に、香美ちゃんは静かにこの場がどういう状況かを把握しようとしていた。
そして、状況が分かり、ハッとしたようにこう言った。


「ちょ、一つだけ言わして!?」


慌てて、ふてくされている叶美の背中に言った。
何をしようと、ドアが壊れている以上なんでも見えてしまう。
香美ちゃんも聞いてるか聞いてないかわからないこの状況で、言おうか悩んでいる。
どうしたものか──


「何言おうとしてるの?コソっとでいいから聞かして?」


どうしようか悩んでいると、那月が香美ちゃんの相談相手になった。
那月が良い方にこの件を転がしてくれたら幸いなのだが……。


「フムフム、なるほど、『明日学校行かなければ退学』って伝えたかったのね?」


全員が聞こえるぐらいのボリュームで、香美ちゃんの伝えたかった事を言った。
そのことで叶美が肩をピクっと動かした。
しかし、那月ってデリカシー無いな──


「退学になるのか!?」


今は那月のことなんてどうでもいい。
退学問題のが大分重要である。


「はい、伝えようと思ったのにお兄さんが聞こうとしないから……」


「だ、誰がそんな事を決めたんだ!? 香美ちゃんか??」


「ちちちち、違いますよ!校長先生です」


きました校長先生。
校長先生は話取り合ってくれなさそうだなあ。
妹の為ならなんでもする心構えだ。
が、校長先生は話が別だ。
金を払って見逃してもらうわけにもいかないし、学校に通ってもらうしか──


「伝えたので帰ります」


「えぇ!? もう少し話をしていかないか?」


「お断りです。それでは──」


──バイバイとも言わずに、家から出ていった。
友達作戦失敗に終わったかー……
ふふふ、でも俺にはまだ一つ残っている。
妹の脱、陰キャラ大作戦だぁぁぁぁぁぁぁっ!!
学校に行かせれば、陰キャラも卒業してくれるだろうし。


「叶美、学校行ったほうがいいぞ。香美ちゃんも楽しいって言ってたし」


「香美?そら、そいつは楽しいに決まってるじゃない」


決まってる?どういう意味なんだ?
いつになく真剣な表情でそんな事を言うので、那月も空気を読んでか、さよならと言って帰った。
いつもKYなくせにこんな時だけ状況把握するのか……


「香美ちゃんはいいヤツだと思うぞ。これからも仲良く──」


全てを言い終わらせる前に叶美が怒り狂ったように言ってきた。


「香美と友達!? フッ、馬鹿のこと言わないでよ!そんなの無理に決まってるでしょ!」


馬鹿な事を言ったつもりは一切無いし、俺は友達になれると思って言っているんだ。
何故そこまで否定しようとするんだ……


「学校に行けば性格がわかるさ!明日は土曜授業なんだろ、多分。午前で終わるだろうし、行っておいでよ」


優しく言ったつもりだった。
いや、しすぎたのか、めっちゃ怒ってきた。


「土曜授業!? なわけないでしょ?叶美だけ呼ばれてるのよ!きっと香美の事でね!」


陰キャラ卒業してるように見えるけど、今こいつゲームしながら怒ってきてるからね?
……香美のこと?


「どういう事なんだ?」


「単刀直入に言うと、陰キャラの原因は兄さんだけが原因ではないの。半分……いや、七割が香美の学校での叶美に対する嫌がらせ、そして、叶美の友達をいなくさせようとしてきたからなの!」


要は、いじめにあっていたらしい。
いじめの内容を要約すると──

          

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