精神の蜘蛛
今日も一日
「はぁー。つっかれた」
糸織は帰ってくるなりベットに寝転がった。
そして考えることは今日あった出来事について。
いままで嫌がらせなどはしてこなかったやつらが急にあからさまに仕掛けてきたのだ。頭の中はそのことでいっぱいだった。
「私がなにしたってのよ…」
かすれるような声で呟いた。
いままではただ孤立していただけでいうほどの問題はなかった。(2人一組でやれとかの授業は相手の態度があからさまだったのでやりずらかったが)
だが今回のは話が違う。完全に悪意をもって仕掛けてきた。頭の中で何が原因なのかと考えてみてもどうしても答えになどたどり着かない。
そのとき、ドアの向こうから急に声がした。
それは母だった。
「帰ってきたなら言いなさいよ!それと、ご飯まだだからお風呂入っちゃいなさいー?」
「…はーい」
母の言葉に適当に気の抜けた返事をする。
(とりあえずお風呂に入るか)
糸織は着替えのパジャマと下着をもって脱衣所に向かった。そしてついでに今日濡れた制服も洗濯機に入れ、そして風呂場へと向かい、髪を洗い、体を洗い、湯につかる。
そうするとどうしてもまた考えてしまった。
湯に顔をつけ目を閉じる。
そうして浮かんできたのはあの慌ただしい少年、頼倉だった。
「…なんであんなストーカーの顔がでてくんのよ」
糸織は自分でもおどろいた。
確かに感謝はしているのだがあれはない。感謝を上回るレベルで気持ち悪いと思う。毎日廊下で私を覗いてるようなやつらだ。しかたないだろう。
「とりあえず明日はいつも通り。嫌がらせには気をつけないとだけど」
気持ちを切り替え明日について考えながら立ち上がり風呂場を出た。
風呂を出た後は基本家族と一緒だったので今日のことについてはあまり考えずにすんだ。いつも通りの家族との会話にこんなに救われたことはなかった。唯一そのあと寝る前だけはどうしても考えてしまったが疲れていたのもあってすぐに寝てしまった。
小鳥が鳴き、朝を知らせる。
こんなに憂鬱な朝は滅多にないだろう。
楽しくはなかったが学校に行きたくないと考えたことは今まで無かった。が、流石に今日は行きたくない。
「ま。そーもいってられないか…着替えよ…」
重たい体を起こしベットから立ち上がる。
だるさを抱えながらもまだ少し湿った制服に着替えていく。
「糸織ー、ごはんできたわよー。」
いつもの聞き慣れた母の声が聞こえ、着替えが終わった糸織は自分の部屋のドアをあけリビングに出た。
「母さんはいっつも元気だよね」
「急になによ、元気なことはいーことじゃない~」
いつもは朝はたいした話をしないのだが、今日は気を紛らわしたいのか自分から話しかけてみたのだが急に話しかけたので母も少し動揺していたが、いつもと変わらず朝から満面の笑みで答えた。その後の朝食では会話がいつもより多かったような気がする。
「あ、そろそろ行かないと。」
糸織はいつもよりも会話が弾んでいて少し夢中になっていたが時間が迫ってきていたので突然に鞄をもって玄関に向かった。
「はーい。気をつけてね」
「うん。いってきます」
朝食を終え一息ついた糸織に優しい声で出迎えてくれる母と2、3言葉を交わして学校に向かい歩き出した。
登校中、数人の同級生に出会うのだがいつも通り、目も合わせてくれない。まぁそんなことを気にしていてもどうにもならないだろうと前だけを向いて歩いているのだが。
今日は視線を1つ、いや2つ感じた。
こっそりと視線を感じる方向に目を向けると…
「でしょうね。」
まぁ予想通り。根暗感のつよい人とやけに目立つ格好の人を見つける。
「本当、バレてないとおもってるのかしら…ま。とりあえずは放置ね。」
話しかけようかとも思ったがやめておいた。この状況で目立ちたくはない。知らないふりをして歩みを進めた。(結局無視し続けたが私が学校に入るまでずっと隠れながら私を見ていた…)
教室の前、いつもとは違う面持ちでドアに手を掛ける。
(机のうえに落書きとか、花瓶とか置かれてたらどうしよ…)
糸織は自分の席を心配しながら一気にドアを開けた。
目に入った机の姿は…いつも通りの、いつもの机だった。それを見た糸織は心の中でとてもホッとした。
だが、それを表には出さずスタスタと自分の机に向かって歩いて行く。
席に座ってまわりを見渡すと数人がこちらを見ているがすぐに視線を戻し友達との会話を再開する。
(とりあえずよかったわ。あとはこの後だけど…てか、なんでこんな面倒くさいこと考えて登校しなきゃいけないのよ)
心の中で愚痴を垂れながら糸織は本を開いて読書を開始した。
「今日の糸織さんもいつも通りの様子かな!」
ドアから頭だけをだし糸織を眺めている大貴が言った。
「そう?なんかいつもより顔が険しい感じが…しないか。いつも通りきれいだった」
今日も2人、いつものポジションでくだらない話をしている男子二人。
「てかいーよな!あの糸織様と話すなんて…抜け駆けか!?」
大貴は先日あった糸織のべしょ濡れ事件について明道に言った。
「えへへ。あのときはもうなにがなんだかよくわかんなかったけど、いままでで一番幸せだったよ」
「いーないーな!てか気持ち悪いぞそのにやけ顔!」
明道があの時を思い出して気持ち悪くにやけながらくねくねしていた。それを見た周りの視線の痛さといったらない。
「俺も話してーな…いや!俺は!糸織様をただ眺めるだけでいいんだ!うん!」
「糸織さんの声初めて聞いたけどすっごいきれいだったよ。あの容姿の想像通り!」
「…話しかけてこようかな」
「…!やめろよ!見てるだけでいいんじゃなかったの!?」
「いや!聞いてみたい!そんな声を聞いてみたい!」
「そんなことして近づいてこないでなんて言われたら立ち直れなくなるよ!?」
「…そーなったら俺生きてけるかな?」
「いやしらないけど!」
………………
というような馬鹿な会話が広がる廊下。もはや周囲の人間は避難済みだ。そして二人の後ろに仁王立ちする人影に気づいた二人は固まる。
「もう少しでチャイムもなるというのに廊下でうるさいぞ!教室にもどれ!」
先生です。
『「はっはいっ!」』
二人は猛ダッシュで自分の教室へと駆けていった。
2話目ご覧いただきありがとうございます!
これからは3000字程度でこまめに投稿していこうとおもいます!
糸織は帰ってくるなりベットに寝転がった。
そして考えることは今日あった出来事について。
いままで嫌がらせなどはしてこなかったやつらが急にあからさまに仕掛けてきたのだ。頭の中はそのことでいっぱいだった。
「私がなにしたってのよ…」
かすれるような声で呟いた。
いままではただ孤立していただけでいうほどの問題はなかった。(2人一組でやれとかの授業は相手の態度があからさまだったのでやりずらかったが)
だが今回のは話が違う。完全に悪意をもって仕掛けてきた。頭の中で何が原因なのかと考えてみてもどうしても答えになどたどり着かない。
そのとき、ドアの向こうから急に声がした。
それは母だった。
「帰ってきたなら言いなさいよ!それと、ご飯まだだからお風呂入っちゃいなさいー?」
「…はーい」
母の言葉に適当に気の抜けた返事をする。
(とりあえずお風呂に入るか)
糸織は着替えのパジャマと下着をもって脱衣所に向かった。そしてついでに今日濡れた制服も洗濯機に入れ、そして風呂場へと向かい、髪を洗い、体を洗い、湯につかる。
そうするとどうしてもまた考えてしまった。
湯に顔をつけ目を閉じる。
そうして浮かんできたのはあの慌ただしい少年、頼倉だった。
「…なんであんなストーカーの顔がでてくんのよ」
糸織は自分でもおどろいた。
確かに感謝はしているのだがあれはない。感謝を上回るレベルで気持ち悪いと思う。毎日廊下で私を覗いてるようなやつらだ。しかたないだろう。
「とりあえず明日はいつも通り。嫌がらせには気をつけないとだけど」
気持ちを切り替え明日について考えながら立ち上がり風呂場を出た。
風呂を出た後は基本家族と一緒だったので今日のことについてはあまり考えずにすんだ。いつも通りの家族との会話にこんなに救われたことはなかった。唯一そのあと寝る前だけはどうしても考えてしまったが疲れていたのもあってすぐに寝てしまった。
小鳥が鳴き、朝を知らせる。
こんなに憂鬱な朝は滅多にないだろう。
楽しくはなかったが学校に行きたくないと考えたことは今まで無かった。が、流石に今日は行きたくない。
「ま。そーもいってられないか…着替えよ…」
重たい体を起こしベットから立ち上がる。
だるさを抱えながらもまだ少し湿った制服に着替えていく。
「糸織ー、ごはんできたわよー。」
いつもの聞き慣れた母の声が聞こえ、着替えが終わった糸織は自分の部屋のドアをあけリビングに出た。
「母さんはいっつも元気だよね」
「急になによ、元気なことはいーことじゃない~」
いつもは朝はたいした話をしないのだが、今日は気を紛らわしたいのか自分から話しかけてみたのだが急に話しかけたので母も少し動揺していたが、いつもと変わらず朝から満面の笑みで答えた。その後の朝食では会話がいつもより多かったような気がする。
「あ、そろそろ行かないと。」
糸織はいつもよりも会話が弾んでいて少し夢中になっていたが時間が迫ってきていたので突然に鞄をもって玄関に向かった。
「はーい。気をつけてね」
「うん。いってきます」
朝食を終え一息ついた糸織に優しい声で出迎えてくれる母と2、3言葉を交わして学校に向かい歩き出した。
登校中、数人の同級生に出会うのだがいつも通り、目も合わせてくれない。まぁそんなことを気にしていてもどうにもならないだろうと前だけを向いて歩いているのだが。
今日は視線を1つ、いや2つ感じた。
こっそりと視線を感じる方向に目を向けると…
「でしょうね。」
まぁ予想通り。根暗感のつよい人とやけに目立つ格好の人を見つける。
「本当、バレてないとおもってるのかしら…ま。とりあえずは放置ね。」
話しかけようかとも思ったがやめておいた。この状況で目立ちたくはない。知らないふりをして歩みを進めた。(結局無視し続けたが私が学校に入るまでずっと隠れながら私を見ていた…)
教室の前、いつもとは違う面持ちでドアに手を掛ける。
(机のうえに落書きとか、花瓶とか置かれてたらどうしよ…)
糸織は自分の席を心配しながら一気にドアを開けた。
目に入った机の姿は…いつも通りの、いつもの机だった。それを見た糸織は心の中でとてもホッとした。
だが、それを表には出さずスタスタと自分の机に向かって歩いて行く。
席に座ってまわりを見渡すと数人がこちらを見ているがすぐに視線を戻し友達との会話を再開する。
(とりあえずよかったわ。あとはこの後だけど…てか、なんでこんな面倒くさいこと考えて登校しなきゃいけないのよ)
心の中で愚痴を垂れながら糸織は本を開いて読書を開始した。
「今日の糸織さんもいつも通りの様子かな!」
ドアから頭だけをだし糸織を眺めている大貴が言った。
「そう?なんかいつもより顔が険しい感じが…しないか。いつも通りきれいだった」
今日も2人、いつものポジションでくだらない話をしている男子二人。
「てかいーよな!あの糸織様と話すなんて…抜け駆けか!?」
大貴は先日あった糸織のべしょ濡れ事件について明道に言った。
「えへへ。あのときはもうなにがなんだかよくわかんなかったけど、いままでで一番幸せだったよ」
「いーないーな!てか気持ち悪いぞそのにやけ顔!」
明道があの時を思い出して気持ち悪くにやけながらくねくねしていた。それを見た周りの視線の痛さといったらない。
「俺も話してーな…いや!俺は!糸織様をただ眺めるだけでいいんだ!うん!」
「糸織さんの声初めて聞いたけどすっごいきれいだったよ。あの容姿の想像通り!」
「…話しかけてこようかな」
「…!やめろよ!見てるだけでいいんじゃなかったの!?」
「いや!聞いてみたい!そんな声を聞いてみたい!」
「そんなことして近づいてこないでなんて言われたら立ち直れなくなるよ!?」
「…そーなったら俺生きてけるかな?」
「いやしらないけど!」
………………
というような馬鹿な会話が広がる廊下。もはや周囲の人間は避難済みだ。そして二人の後ろに仁王立ちする人影に気づいた二人は固まる。
「もう少しでチャイムもなるというのに廊下でうるさいぞ!教室にもどれ!」
先生です。
『「はっはいっ!」』
二人は猛ダッシュで自分の教室へと駆けていった。
2話目ご覧いただきありがとうございます!
これからは3000字程度でこまめに投稿していこうとおもいます!
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