ヨルニネムレバ
プロローグ2
俺が教室に戻ってきたのはみんなが始業式を終えるより先だった。
「お、終わってんじゃん。」
始業式から帰って来た涼平が先に戻ってた俺を見つけてよってくる
「…なんだ、怒られなかったんだ」
「まだなんも言ってないだろ」
死にそうな思いをしながら教育相談室で先生の事を待っていたが、終ぞ怒られることは無かった。
校長と副校長から始業式が始まる前に事情を聞かれ、必死で弁明したところ納得してくれたのか不問にしてくれた。
『でも出来ればこの土日で黒染めしてきてね、出来ればでいいから』
最後には念押しされたが、勢いよく首を縦に振り了承したところで教室待機を願われ、教室で本を読みながら待っていた。
「だって怒られたんなら目が腫れぼったくないなるしな、よく怒られなかったな?」
「マジ助かった」
「あーでも、グスグス泣いてんのもおもしろそーだけどな」
「鬼か、お前は」
終始にやにやする涼平を尻目に自分の姿が映る窓を見て髪をいじる。
「うわ、めっちゃサラサラ」
いつかの日に華鈴に髪の質の維持の難しさを語られ成り行きで触った時を思い出すような質感に驚いた。
「ほんとだ華鈴のみてー」
「……デリカシー」
「いや、でもほんとすげーもん、汗に耐えれないで流れる髪が嘘みてー」
笑いながら屠ってくる涼平をしつこいと押し退け、ある方に目をやる。そっちの方では女子数人がお淑やかな感じで喋ってる姿が見えた。
「あ、そーだ。あのニュース見たか?朝やってたやつ」
「俺今日起きたの20分だぞ?」
「また若者の記憶障害だってさ、23歳でだってさ、怖くね?」
「別にキョーミねーよ、不摂生な生活でもしてたんだよ」
最近増えてると言われてる若者の記憶障害、それまで簡単にできたことが出来なくなるとかで結構話題にされてる。奇行に走るヤツも少なくないとかなんとか。
「正直、だからなに―って感じだけどね」
「あれ委員の仕事は?」
「さっき終わった。でもあれってそんなよくわかってないんでしょ?病気じゃ無いらしいし」
どうやらさっきまで学級委員の仕事をしていたらしい華鈴が記憶障害だってというのががうんたらっていう話に入って来た。
「あれ、目が腫れぼったくない。なーんだ、つまんないのー」
「面白がろうとするんじゃねーよ」
「だって去年の見ちゃったもんだからねー」
「そりゃ期待もするわなー」
涼平と華鈴が向かい合ってこっちをいじる体制に入る。
「ほら、チャイムなったから、席に戻れ」
チャイムが鳴り即座に追い払い自分の席に戻らせる。そこから担任がこちらの方を見ることはなかったが、俺がお咎めなしだということをクラスに伝え休み時間になった。その後質問攻めにあったのは言うまでもない。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「で、どーしたよ」
「いや、お前だったらやり方知ってそうだし」
土曜日。近所の涼平の家に髪を染めてもらいに訪れた。今までそういうものに興味を持って来なかったというのもあり、髪染めと言われても分からないためやって来た。
「アイス1本な」
「サンキュー」
なんだかんだやってくれるので感謝の意を示し、染めてもらった。
…ブリーチいらないって聞いてねーよ。ちょっと高かったんだぞ。
「そういえばむっちゃんに言い訳しないでいいのか?」
涼平がニヤニヤしながら聞いてくる。
「…なんで言う必要があるんだよ」
「そりゃお前好きな子にグレたとか勘違いされるのは嫌だろ?」
「お前それ外で言ったらぶち殺すぞ」
「おー怖い怖い」
陸奥下 楓
朝1番に学校に来て教室の掃除をするような真面目な女子、真面目ではあるがノリもよく、人と関わるのがとても上手い。あだ名の「むっちゃん」は可愛くないとあまり好いてないらしい。
「まぁ、会ったら話しとけよな。飯食ってくよな?」
「はいはい、飯のことは親にもう言ってある」
その後涼平の母親に髪染めの話を聞かれてたらしく「あんな可愛かったちーちゃんがグレるなんて」と泣かれるのはまた別の話
「むっちゃんに白髪の姿見せればよかったのに」
「別にクラスにいたから見てただろうよ」
「『どう?似合う?』くらい行ってこれば良かったじゃん」
「誰がそんな恥ずいこと言うか」
結局クソほど笑う涼平の家を後にし、ふと思い立ちコンビニによることにした。
「あらら?ちーちゃんじゃん」
昨日もよく聞いたまぁ高めな声が耳に入り、そちらの方を向く。
「華鈴と…むっちゃんか」
「…むっちゃんって言われるの好きじゃないの知ってますよね」
そこには華鈴とさっきも話に出てた楓の2人の姿があった。
「あれ!?髪が黒い!」
「涼平ん家で染めてもらってきたからな」
「へ、へーこんなに綺麗に染まるものなんですね」
「凄いよな、昨日のが嘘みたいなくらい黒くなってんだよ」
華鈴からの嫌な視線を受けながらも楓たちと軽く話をして別れることにした。買い物は忘れた。
そして去り際に
「気をつけてくださいね、記憶障害のヒトの多くは髪の色が黒じゃなかったみたいですからね」
「えー、そんな関係あるかー?あれ」
「まぁマスコミとかが変に持ち上げてるだけとも思っちゃうしね。」
「とりあえず野菜多く食べとくわ」
こんな話をした。うん、こんな話をした。
6:30
普段じゃ必ず目が覚めない時間に目が覚めた。日曜日。幼稚園くらいなら戦隊もの、仮面ライダーが楽しみで早く起きてたが今じゃ12時起床なんて当たり前な筈なのに。だが早い時間に目覚めてしまった。
「……くそ」
仕方なく洗面所で顔を洗う。
「…………………は?」
鏡の向こうには髪を黒く染められた三上千綾はおらず、光を跳ね返す、銀色に輝く髪を持った三上千綾がいた。
これが始まり、これが最初の物語。
「お、終わってんじゃん。」
始業式から帰って来た涼平が先に戻ってた俺を見つけてよってくる
「…なんだ、怒られなかったんだ」
「まだなんも言ってないだろ」
死にそうな思いをしながら教育相談室で先生の事を待っていたが、終ぞ怒られることは無かった。
校長と副校長から始業式が始まる前に事情を聞かれ、必死で弁明したところ納得してくれたのか不問にしてくれた。
『でも出来ればこの土日で黒染めしてきてね、出来ればでいいから』
最後には念押しされたが、勢いよく首を縦に振り了承したところで教室待機を願われ、教室で本を読みながら待っていた。
「だって怒られたんなら目が腫れぼったくないなるしな、よく怒られなかったな?」
「マジ助かった」
「あーでも、グスグス泣いてんのもおもしろそーだけどな」
「鬼か、お前は」
終始にやにやする涼平を尻目に自分の姿が映る窓を見て髪をいじる。
「うわ、めっちゃサラサラ」
いつかの日に華鈴に髪の質の維持の難しさを語られ成り行きで触った時を思い出すような質感に驚いた。
「ほんとだ華鈴のみてー」
「……デリカシー」
「いや、でもほんとすげーもん、汗に耐えれないで流れる髪が嘘みてー」
笑いながら屠ってくる涼平をしつこいと押し退け、ある方に目をやる。そっちの方では女子数人がお淑やかな感じで喋ってる姿が見えた。
「あ、そーだ。あのニュース見たか?朝やってたやつ」
「俺今日起きたの20分だぞ?」
「また若者の記憶障害だってさ、23歳でだってさ、怖くね?」
「別にキョーミねーよ、不摂生な生活でもしてたんだよ」
最近増えてると言われてる若者の記憶障害、それまで簡単にできたことが出来なくなるとかで結構話題にされてる。奇行に走るヤツも少なくないとかなんとか。
「正直、だからなに―って感じだけどね」
「あれ委員の仕事は?」
「さっき終わった。でもあれってそんなよくわかってないんでしょ?病気じゃ無いらしいし」
どうやらさっきまで学級委員の仕事をしていたらしい華鈴が記憶障害だってというのががうんたらっていう話に入って来た。
「あれ、目が腫れぼったくない。なーんだ、つまんないのー」
「面白がろうとするんじゃねーよ」
「だって去年の見ちゃったもんだからねー」
「そりゃ期待もするわなー」
涼平と華鈴が向かい合ってこっちをいじる体制に入る。
「ほら、チャイムなったから、席に戻れ」
チャイムが鳴り即座に追い払い自分の席に戻らせる。そこから担任がこちらの方を見ることはなかったが、俺がお咎めなしだということをクラスに伝え休み時間になった。その後質問攻めにあったのは言うまでもない。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「で、どーしたよ」
「いや、お前だったらやり方知ってそうだし」
土曜日。近所の涼平の家に髪を染めてもらいに訪れた。今までそういうものに興味を持って来なかったというのもあり、髪染めと言われても分からないためやって来た。
「アイス1本な」
「サンキュー」
なんだかんだやってくれるので感謝の意を示し、染めてもらった。
…ブリーチいらないって聞いてねーよ。ちょっと高かったんだぞ。
「そういえばむっちゃんに言い訳しないでいいのか?」
涼平がニヤニヤしながら聞いてくる。
「…なんで言う必要があるんだよ」
「そりゃお前好きな子にグレたとか勘違いされるのは嫌だろ?」
「お前それ外で言ったらぶち殺すぞ」
「おー怖い怖い」
陸奥下 楓
朝1番に学校に来て教室の掃除をするような真面目な女子、真面目ではあるがノリもよく、人と関わるのがとても上手い。あだ名の「むっちゃん」は可愛くないとあまり好いてないらしい。
「まぁ、会ったら話しとけよな。飯食ってくよな?」
「はいはい、飯のことは親にもう言ってある」
その後涼平の母親に髪染めの話を聞かれてたらしく「あんな可愛かったちーちゃんがグレるなんて」と泣かれるのはまた別の話
「むっちゃんに白髪の姿見せればよかったのに」
「別にクラスにいたから見てただろうよ」
「『どう?似合う?』くらい行ってこれば良かったじゃん」
「誰がそんな恥ずいこと言うか」
結局クソほど笑う涼平の家を後にし、ふと思い立ちコンビニによることにした。
「あらら?ちーちゃんじゃん」
昨日もよく聞いたまぁ高めな声が耳に入り、そちらの方を向く。
「華鈴と…むっちゃんか」
「…むっちゃんって言われるの好きじゃないの知ってますよね」
そこには華鈴とさっきも話に出てた楓の2人の姿があった。
「あれ!?髪が黒い!」
「涼平ん家で染めてもらってきたからな」
「へ、へーこんなに綺麗に染まるものなんですね」
「凄いよな、昨日のが嘘みたいなくらい黒くなってんだよ」
華鈴からの嫌な視線を受けながらも楓たちと軽く話をして別れることにした。買い物は忘れた。
そして去り際に
「気をつけてくださいね、記憶障害のヒトの多くは髪の色が黒じゃなかったみたいですからね」
「えー、そんな関係あるかー?あれ」
「まぁマスコミとかが変に持ち上げてるだけとも思っちゃうしね。」
「とりあえず野菜多く食べとくわ」
こんな話をした。うん、こんな話をした。
6:30
普段じゃ必ず目が覚めない時間に目が覚めた。日曜日。幼稚園くらいなら戦隊もの、仮面ライダーが楽しみで早く起きてたが今じゃ12時起床なんて当たり前な筈なのに。だが早い時間に目覚めてしまった。
「……くそ」
仕方なく洗面所で顔を洗う。
「…………………は?」
鏡の向こうには髪を黒く染められた三上千綾はおらず、光を跳ね返す、銀色に輝く髪を持った三上千綾がいた。
これが始まり、これが最初の物語。
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