ヨルニネムレバ

ヨウカン

プロローグ1

「太陰暦」 。聞いた事はあるけど、どういうものかなんて知らない。まずこの年で興味を持つことなんてほぼないと思う。
月の満ち欠けで暦が描かれる。太陽を嫌い、闇に思いを馳せ、闇に浮かぶ輝く船に魅せられた人々が作った物。らしい。

それだったら俺も朝が嫌いだ

それは夏休み明けの日だった

7:50

ピピピピピピピピピ
「……………うるさい」ガチャ

「スゥスゥ」
       ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

遅刻は極めると起きた瞬間に寝坊を確信できるようになるらしい。決して自分の話ではない…

8:18

「…………………やっべ」

30秒。寝ぼけをさますこの時間がいつも致命的だと思う。治る気配ないけど。
俺の名前は三上 千綾みかみ ちあや名前からよく間違われるが男だ。中学三年生、勉強なんてしたくない、学校なんてなんであるんだなんだの普通の学生。準備をしながら毎回思う。

ほんとに朝なんて嫌いだ。

8:30

「行ってきます!!」

いつも通り、歩いて十五分、走って五分、全力ダッシュで三分の道のりをいつものように全力ダッシュで走ってく、春に桜が舞っていたのが懐かしい公園を横切ってく、久しぶりだからか足取りは軽い。もちろん気分は重めだ
 
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「ゼェ……ハァ……ハァ……」

「あらら、ちーちゃんはまた今日も遅刻か?」

「うるせえ、ちーちゃん言うな、ギリセーフだよ」

こいつは的場 涼平まとば りょうへい
幼稚園からの腐れ縁。ちーちゃんとか言うあだ名を広めて定着させやがったのもこいつだ。うっとうしい

「んで、その髪何?変に似合ってるし」

「は?寝癖なら珍しく着いてなかったぞ?」

「じゃなくて髪の毛、染めちゃったんじゃねーの?」

「………は?」

鏡代わりに窓を見る。空が今日も高いのがわかった。トイレの鏡を思い出し教室を出る。廊下で歩くとめっちゃ見られる。それを涼平が面白がる。そして急ぎトイレで鏡を覗きみる…

「…眩しいな」

そこには髪全体がすべて銀色(白?)になっている俺がいた。…登校中に桜が思い浮かんだのこれか。

「あとホームルームまで1分でーす。」

「いや、待って待って、まじで」

「教室戻りましょーねー」

面白がってるのが凄くわかる顔で押し出してくる涼平

「お前知ってるだろ!俺ちゃんと教師に怒られたことないんだぞ!!」

死んでも教室に行きたくないのでもちろん押しかえす。

「わー、ほんっと白いじゃん」

「あ、華鈴じゃん、こいつの頭やばくない?」

「普通学校来なくない?」

「俺だって今知ったんだよ!」

こいつは日野咲 華鈴ひのさき かりん
男女の隔たりがなくみんなから好かれている、所謂カリスマ女子。もちろん超美人、そしてもちろん告られまくってるが全て玉砕。(かわいそう)部活の関係上話す機会が多く、よく話している。…ありがてー。

「いやーちーちゃんがグレるなんて」

「いや違う、まじで違うから」

「うわー、ちーちゃんほんとに髪色きれーい」

「華鈴、今そこじゃないんだって」

「いや、でもホントすごいよ、かわいいじゃん」

髪を華鈴に遊ばれながら後悔する

「朝もうちょい余裕もってればなー」

「まぁ今までいい感じに怒られるのは避けてたしな」

「うーんそう言われるとねー、うわ、根元まで白なんだけど」

「まぁそりゃーな…」


昔から大きな音が嫌いだ。車のクラクション、バイクのエンジン音、工事音、お皿の接触音、なんならシンバル、そして特に怒鳴り声、昔から何故かとてつもなく恐い。いちばん酷いエピソードは角から飛び出してきたバイクのエンジンをふかす音に驚いて涙を流したという話だ。なんと去年の話。
ほんと恥ずかしい。

「ま、どうせ先生もどっかで見てただろうし…」

ピンポンパンポーン

『3年1組の三上千綾さん。至急1階教育相談室に来てください。 繰り返します…』

「…………」

「…頑張れちーちゃん!」

「ははは、がんばー」

すぐに見送りの言葉を出した華鈴とほんとに他人事な涼平にクソ野郎と言う気力も無く、俺は相談室に向かう。

「…ほんとにどうしよう」

もちろんここから何も無いなんてことなんて無いのはご愛嬌。とりあえず始まりはここから

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