龍の子

凄い羽の虫

22話 『そんな都合の良い魔法なんてあるもんか!』

「え……と?もしかして、修羅場的な場面にお邪魔しちゃったかな?ざこくん、どうしよ!」

何者かがギルドの扉を開けた瞬間、ギルド内に充満していた重っ苦しい圧力が一瞬にして消え去っていた。

「いや、修羅場と言うより危険な目に遭わされそうになった妹を庇おうと思ったら逆に妹に助けられてしまった様に見える」

なんだ、この男。

的確だな……

「バリアフィールドを張っていたのに…。なん……で?」

倒れこむミーシャ。

「ミーシャ!!」

ミーシャはリヴロとか言う男を逃さない為、バリアフィールドを張っていたようだ。

バリアフィールドが破られた衝撃と自身の魔力の不発による反動でミーシャは気を失っている。

てか、そのバリアフィールド破られなかったらギルド内のみんな全員危険だったんじゃ……。

「は、はははっ!なんだこりゃ!とんだラッキーだぜ!ミーシャのやつ、勝手に自滅してやがる!」

リヴロの奴、調子に乗りやがって!

「あとはこのヒョロっちい奴をのしちまってそのままミーシャを連れてくぞ!俺らに楯突いたことを後悔させてやるんだ!!そして、てめぇらは何も見なかった。良いな?そう言うことにしといた方が身のためになるぞ?」

「……返り討ちにしてやんよ!」

「ぬかせ…、ヒョロ餓鬼が!お前なんぞ俺一人で十分よ。Bランクの俺に逆らってただで済むと思うなよ?」

正直、勝てる自信は無い。でもやらなきゃミーシャが危ない。

やるしか!!



ドタンッ!!

「ちょ、ちょ、ちょっとおぉぉ!!君たち君たちっ!物音がしたから何かと思って見に来たらギルド内で何やってるの!?」

「っ!?」

「なんだぁ?また乱入者か……、っ!!貴様は!Aランク『双魔』の…」

「そう!僕がAランク冒険者のベルロベッサだ!っじゃなくて!!君たち、ギルド内での暴力行為とはなんたる事か!」

「あっ!ベルちゃんだ!!おーい!」

ギルド内に居る人達が一斉に騒めき始めた。

「………ちっ、分が悪いか。お前、ラッキーだったな。行くぞ、お前ら!」

助かったのか??

この人は一体何者なんだ?

「ほぇ〜、ベルちゃんすげぇー」

「どけっ!チビが!!」

ドン

「うわっ!?とっとっと!」

あいつ!!

リヴロが先ほど乱入してきた二人組の女の子の方を突き飛ばした。

幸い女の子はもう一人の妙に的確な男に受け止められて無事ではある。

「ったく、邪魔くせぇ!」

「………おい」

「んだぁ?てめぇもBランクの俺様に楯突こうってんのか?」

「いや、そんなんじゃない。ただ、忘れ物を渡したくてね」

「……忘れ物?何か落としたか??」

自身の懐を弄るリヴロ。

「いや、やっぱり何も落としてはいな……ひっ……!?」

何だこいつ!さっきと全く雰囲気がちげぇ!

怒っていやがる!!完璧にブチ切れてるのが分かる!!

「そっかぁ、わからねぇか……。美雲、大丈夫か?」

「うん、全然大丈夫だよ!でも、ムカつくからやっちゃえ!」

背筋が凍るのを感じた。

いや、凍ると言うより、体が動かない!?

「お、俺は!Bランクだぞ!?なんなんだ!お前らは!!何だ!ランクは!お前らのランクはっ!?んだっぶぁっっっ!!!」

「ランクがどうとか、お前をぶん殴るのに関係あんのか?」

殴られた、普通に顔面を殴られた。

いつの間にか床に座っていた。

体が動かない。こんなに、痛くてこんなに怖いのに、震えてるのに!

逃げないと!逃げなきゃ殺される!!

「美雲、やっていいぞ」

「うぃ!実はさっきからやってました!」

「あぁ、道理で大人しい訳だ。じゃあ、本番を食らわしてやれ」

何の事だ!?まだ、俺を痛みつけるのか!?何なんだ!その笑顔は!!

「うーん、硬いなぁ」

そもそも、何でこんな痛いんだ!!ただ殴られただけなのにっ!!全身が痛い!!

「……ん〜、せいっ!!」

ミシッ!

なんだ?何の音だ?

ボギッ!!

バキベキボキボギボキボギギギギギッ!!

「いぎゃあぁぁぁぁぁっっ!!!?」

「あっ、ちょ。やり過ぎた!?待って待って!止まらない!!」

ガギッ!!ベギギ!!

「いはひ!!ひゃへへ!!ひゃへ!!?」

「うわ、美雲。それはやりすぎだろ……。顎まで割れてんのか??」

「いやっ!顎割ったのはざこくんだよ!!……たぶん」

ギルド内が凍り付いている。

リヴロは……気絶しているか。

見るに、全身の骨が折れ皮膚を突き破り全身から出血してやがる。これは、生き地獄だろうな。

まぁ、ザマァみろだ。

「い、いやぁ。君達、またもやらかしてくれたねぇ…」

「あっ!ベルちゃん!これは、そう!こいつが私にぶつかってきた瞬間に全身骨折しちゃって!私達は別に何もやってないよ!?」

「いや、無理あるよ美雲さん!てか!最初から見てたし!……流石はSSSランクってとこか」

「で、俺たちはどうなるんだ?」

クズだろうと、人をここまで傷つけたんだ。豚箱に入れられるくらいは覚悟しているつもりだ。

「どうもこうもむしろ感謝してるレベルだよ!」

そこいらの奴らに見られていたらまだ、逃げれる余地はあったかも知れないが、こいつに見られてるとなると逃げれるかどうか……は?

「え?えっ?お咎めなし??なんで!?日本じゃ絶対にありえない!!」

「俺に聞くな!知らんわ!!」

「…日……本?」

日本?今、日本って言ったか?

まさか、こいつらが勇者か?

「いやぁ、こいつは色々とグレーなことばっかやっててねぇ。今回、ようやく尻尾を見せた所でこっちから取っ捕まえようとしてたんだけど、君達がやらかしてくれたおかげですぐに捕まえれちゃった!ありがとね!」
 
「すこし、やり過ぎた感じもするが。良いのか?」

「いやぁ、実は骨折くらいは治してからお縄を締めたいんだけど…生憎、僕は回復魔法が得意じゃなくてねぇ……。まさか、美雲さんは使えたりしないよね?」

「いやぁ、やった事無いけどたぶん出来ないと思う…」

「うーん、困ったなぁ。このままだと死んでしまいそうだ。……そうだ!この中に回復魔法が使えるものは居るかい!出来たら協力して欲しい!!」


回復魔法か……。

使えるさ。

あの時、膨大な知識を無理やり頭の中に入れられたあの時から。

だからと言って、リヴロをになんて使ってやるものか!

そんな都合のいい魔法なんてあるものか!

奴はミーシャに手を出そうとした。そんな奴に俺が回復魔法をかけてやる義理なんてない。

絶対にだ!!

「ねぇ、君」

!?

勇者と思しき二人組の女の子の方だ。

なんで俺に話しかけてきたんだ……。

「な、何でしょうか?」

「君、なんか回復魔法使えそうじゃない?」

え…

「なんで分かったんですか!?」

はっ!!

しまった!!

つい口が!

「ほら!やっぱり!何となくだよ?君から魔法が得意そうな匂いがした。それだけ!」

んな、アホな……

「……出来ないです。こいつは、俺の妹に暴力を振るおうとしたんです。そんなこと、したくありません」

こんな奴、地獄に落ちて当然だ!

「えー、確かにこの人すっごいクズっぽそうだけど、それじゃ私たち、白昼堂々殺人者になっちゃうんだよぉ!」

男の方が寄ってきて話しかける。

「俺からも頼む。正直、お前の妹を守れなかったのはお前が弱いせいだ。だが、今回は俺らに回復魔法を使えるのが居ないのは俺らのせいでもある。つまりだ、こう言っては何だが……。俺らを助けてくれないだろうか?」

「あなた達を助ける?」

「あぁ、正直こいつの事は俺も気にくわねぇ。だけど、死ぬとあったらもっと気にくわねぇ。頼む、力を貸してくれ!」

この人達は……

「……あんたら、やっぱ日本人だ。…分かったよ。俺はこいつの事は助けない!」

「えぇ!ちょっと!普通、今の話の流れからなら助けるでしょ!」

「美雲は黙っててくれ」

随分とテンション高いなこの女の子

「…はぁ、だけどあんたらの事は助ける。これで、良いんだろ?」

「あぁ、ありがとう。それで良い」

「ど、どゆこと??……ま、意気投合してるみたいだし、良っか」

「うん!じゃあ、早速お願いしようかな?えーっと?何君かな?」

このボクっ娘は確か、Aランク冒険者のベルロさん。

「エルと言います。よろしくお願いします。「ベルロ」さん」

「あぁ、お願いする。エル君」

!?

なんだ?

なんか魔法を使った時のような違和感を感じる。でも、何だろう。悪い気はしないな。

まぁ、良いか。

回復魔法をただこいつに打つのは癪に触るからついでにミーシャにも掛けてやろう。

あ、でも回復魔法だと魔力切れは回復しないんだっけか。

同時に回復したい。

魔力切れ。

ふむふむ。

……なら、この方法しかないのか。

「……では、始めます。複合魔法!【リ・メディ】」

「え?…それは!!あなた、まさか!」

うっ!!?頭の中がキュルキュルする!!

 体の中から何かが抜けていくのが分かる。これが、魔力なのか?









フッと、辺りが静まり返る。

「ぐっあぁぐ!?……あ?何言ってんだ?俺」

「おぉ、普通に立ち上がりやがった。すげぇな回復魔法ってのは」

「いやぁ、神秘神秘ー!」

「あぁ、お願いする。エル君」

キリッとした顔で先程と同じセリフを言うベルロ。

「へ?」

「あ?」

「何言ってるの?ベルちゃん??」

「何って?回復魔法は??…ってリヴロがもう、起き上がってる!?」

そして、傍でもう一人が立ち上がる。

「……ん、う?……よくも私の事を呼び捨てに!……て、あれ?」

「おっ!ついでに、妹さんも回復したの?やっさしぃ!」

この人はいつもこんなテンションなのだろうか?

「そんな!?回復魔法で魔力切れが回復する筈が無い!エル君、一体どんな魔法を使ったんだい!?」

次第に、謎の事態に気づいたギャラリー達が騒ぎ出す。

「どんな魔法って、回復魔法もしたいし、ついでにミーシャも魔力切れの状態から戻してやりたかったから回復魔法と時間魔法を複合させたものを打ってみました!目覚めてから初めての挑戦だったので上手くいくか不安だったのですが、無事成功したみたいで良かったです!」

「目覚めてからって?……いや、それより、何だって!?」

「な、何ですか?」

「そんな…」

「そんな?」

「そんな都合の良い魔法なんてあるものかぁ!!!!」











仕事がつっらいよ。

投稿が遅れて申し訳ないです。

お仕事が忙しくて半分鬱になり掛けてました。

なんども言いますがこの作品は完結するまでは投稿停止する事はございませんので、どうかゴールまでよろしくお願い致します。

僕も足りない脳みそを雑巾絞りして少しでも早い周期で投稿出来るよう頑張ります。

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