龍の子

凄い羽の虫

4話 『おはよう』

「よっす!起きたか我が息子よ!」

この人は今世の俺の母親だ。母親と言っても本当の母親ではなく本人いわく森に落ちていた俺を拾ってついついノリで持って帰ってきてしまったらしい。

「おはよう。朝から元気だね、何かあったの?母さん」

「ぬっ!お母様と呼べと何度も言ってるだろう子供は小さい内からしっかりとしつけた方が良いと本にも書いてあるのだ!」

ふふん!と胸をはり手に持った『完璧!これであなたの子供はエリート街道まっしぐら!!』と書いてある本を自慢げに取り出している。

そう、正直俺の母親は…うざいっ!!

「はいはい、お母様…。」

「はい!は一回で良いのだっ!って本に書いてあるのだ!ところで朝ごはんは既に出来てるぞ!そして冷めると不味くなると思ったからエルの分も食べておいたのだ!」

食ったんかい!!と、思わずツッコミそうになったが恐らくまた今日も料理に失敗したのだろう。調理場から焦げた匂いが漂ってくる。

「そっか、ならおれは昨日、地上で買っておいたパンを食べるから気にしないで良いよ!母さん」

「え?パン??」

あ、やばい。

「そ、そんなに私の作る飯は嫌いか?確かにお前を子に迎え入れて早7年、一度足りともまともな料理を作れてないからな。それは嫌われるのも当然か。ハハッ、ハハハ…」

あー、めんどくせぇー。

「そ、そんな事ないよ母さん。母さんの作る『アングリーボア』の肉を使ったシチュー、俺は好きだなぁ!と、特に焦げた感じとか!」

「そ、そうかい?なら今日の晩御飯はエルの大好きなアングリーボアのシチューにしようかな!」

「なっ!?」

「ん〜…っと、あれ?アングリーボアの肉がもう無いな。」

ほっ…

「なら仕方ないね!あ、あ〜あ食べたかったなぁ…」

なんて…。

「しょうがない、狩ってくるか!ちょうど72時間過ぎた頃だろうしな。ちょっくら行ってくるわ!エル、お母様の手料理楽しみに待っててね♡」

へ??

母さんは尻尾と翼を生やし地上へと転移してしまった。

そう、先程から地上と言っているが何を隠そう俺が住んでいるこの家は『ダンジョン』の中にあるのだ。

そして母さんはダンジョンマスターである『ドラゴン』で普段は人間の姿に変身している。なんでも生贄の呪いというのにより72時間置きにしか地上に出れないらしいのだが、ちょうど今日が最後に地上にでてから72時間が経過していみたいだ。

それでもダンジョンマスターが地上に出れるのは特例中の特例らしいのだが…。

「あーあ、こりゃアングリーボアは絶滅しちゃうかもなぁ。母さん張り切ってたし」

母さんはああ見えてかなり強い。流石はダンジョンマスターといったところだ。でも、地上に出ているときはダンジョンマスターでドラゴンやってるって事を隠している。完璧に人間に溶け込んでいるんだ。人間の時は母さんは『ミアレ』と名乗っており、貴重な山菜や薬草を採ってきては、人間たちに売っては『おいしい』料理を買って暮らしていたみたいだ。俺が息子になってからはお金を節約する事を覚えたみたいで、この前そんなに金を貯めて何をするのか聞いたところ。どうやら俺が大人になったら旅に出すらしい。そして、その金は旅の費用になるという事だ。「一人立ちするまで子供の面倒を見るのは当然の事だ!」とご自慢の本を持ちながら言ってたのを覚えてる。

出来れば旅になんて出ないで地上で出稼ぎでもしてのんびり暮らしていたいなぁ。なんて思ってはいるが母さんは許してくれないだろうなぁ。

この前も「子供はいつか旅をするものだな。うんうん」と寝る前に本を読みながらプレッシャーを混ぜ込んで呟いてたしな。


そんな平凡な将来の事について不安を抱いていると…。



ズゾゾゾゾゾォォォォ!


「ん?珍しいな家の近くに魔物が湧くなんて」


地面を歪ませて骸骨が這い出てきた。


「スケルトンか、こいつなら俺でも倒せるな」

スケルトンは死んだ人間の骨に長い年月をかけて魔素「空中に漂っている魔力」が染み込んで自我を持ち動き出したものだ。まぁ、正直母さんに比べたら一ミリも強くはない。

「さて、魔法の練習台にでもなってもらうぞ!くらえ!!『ファイアジャベリン』!!」

焔で出来た投げ槍が、凄まじい熱を帯び、スケルトン目掛けて飛んでいく。


それはやがて、対象に着弾……しない。


スケルトンに直撃する直後、焔の槍は燃え尽きた様に黒い煙に変わりかき消える。

「ぬぁぁ!!また失敗だぁっ!やっぱ母さんの様にはいかないなぁ…。仕方ない、またぶん殴るか!」

俺はスケルトンに向かって思いっきりダッシュして…。

殴るっ!

バキッ!!

蹴るっ!

ボキャ!!

ボキッ!パキッ!!ペチッ!!ゴキッ……




「ふぅ…、なんとかこいつの骨を再起不能になるまでへし折る事が出来たぜ!」

俺は魔法が得意ではないが、何故か昔から一度も怪我をした事もなく、体はまさに頑丈そのもの。

おかげでスケルトンに素手で立ち向かって骨を一本ずつ叩き折るという荒技が出来る。

「ふぃ〜、ん?あの光は確か…」

俺のユニークスキル『吸魂』の効果だ。

体に暖かい光が入り込んでくる。

そして。

『レベルアップしたよ!!鑑定で確認してみてね!』

!?

なんだ!?頭に直接流れ込んでくるこの声は!

『私は通称「お告げの神」って言われてるよ!普段はうーちゃんと一緒に勇者たちを転移させるために召喚士にだらだらとお告げをするめんどくさい仕事をしてるんだけどね。あ、うーちゃんって言うのはこの世界の管理者「移し身の神」のことだよ!でね、ついでに勇者達のアフターケアとしてレベルアップした時にお知らせしてあげる役もやってるんだぁ。まぁ、初回だけだけどねw!勇者達って鑑定のスキルをあげた事を忘れちゃう人が多いから私がサポートする事にしたの。勿体ないからね!』

うわぁ、なんだこの支離滅裂なのは。移し身の神様も割と緩い感じだったけどまだ良い男友達として付き合っていけそうな感じだったぞ。

『うーちゃんは女の子だよ?あなたの前に出たからあなたの格好してただけよ?』

えぇぇぇー!俺の見た目してたから想像すると気持ち悪い。

『気持ち悪いとか言ったらうーちゃん泣いちゃうよ?君のこと結構気に入ってたからショックおっきいと思うなぁ』

あ、なんかごめんなさい。

てか、心の声聞こえてるんですね。

『まぁね!鑑定を通して話しかけてるから丸聞こえだよ!』

ひっ…!

『うわわっ!引かないでぇ!大丈夫、私は一人しか居ないから!そんなに、あなただけに集中出来ないから平気だよぉ!』

そ、そうですか。

それで鑑定ってどうやったら使えるんですか?

『うん。「鑑定」って念じれば使えると思うよ!』

な、なるほど。

鑑定!!









【名前】New『エル』

【性別】『男』

【種族】『魔族』

【年齢】『7歳』

【職業】『拳士』

【状態】『咒』

【ステータス】

『Level』 : 「3」

『STR』  :  「70」+500

『VIT』   :  「50」

『DEX』 :  「40」

『AGI』  :  「30」

『INT』  :  「110」

【ユニークスキル】

★『オリジナル:吸魂』魂を吸いとり大量の経験値に変換する。「北の大地の有名な魔族が持ってたみたいだけど死んじゃったみたいだから継承された様なものだね!」

☆『ギフト:鑑定LvMAX』「あらゆる事象を見通せる。使い所は気をつけて!」

『ノーマルスキル』

『剛拳Lv1』『闇魔法Lv0』『炎魔法Lv1』
『魔力増強Lv1』『家事Lv5』『料理Lv5 』

【加護】

『闘神のお情け』:「STR に補正がかかるよ!なんか面白そうな奴が居るからちょっとだけ力を貸してやるぜ!って感じだね!何したの?」

【呪い】

『相生の咒「授」』:「この呪いを受けた二人組は互いの受けたダメージをパートナーの防御力を使って肩代わりすることになる。呪いを受けた片方がダメージを受けて死ぬともう片方も死に至る。BADステータスを上書きできなくする』









なるほどね。もしや俺ってちょっと強い?

『異世界に転移、転生してきたなかでもぶっちぎりで弱いね!』

そ、そうですか…。

『あぁ、でもそんなに落ち込まなくて良いよ!君には「相生の咒」があるね!すごいねぇ!そんなに若いのにもう誰かと熱々にそれはもう運命的にに愛し合ってる仲なんだねぇ♡』

ムムムっ!?心当たりがありませんが!?

『またまたぁ〜、照れちゃってぇ!こんな咒を掛けられてるなんて大切にされてるんだねぇ。妬けちゃうなぁ!このこのぉ♡』

ダメージを…肩代わり…お互いの防御力で。

それってもしかして今俺が生きてるのってこれのおかげって事ですか?

昔エヴィルクロウにボロクソに突かれたことがあったそうなんです!でも、何故かその時俺は無傷で今の母親に助けられたんです!そのあと丸焦げにされそうになったらしいけど…

『うん!多分その時から君の事を愛して居たんだろうねぇ!』

…なんでさっきからLOVEに繋げようとするんですか。

『え?だってこんな護ってやるぞ!オーラ満載のおまじないなんて普通は愛がなくちゃやってけないでしょ?』

で、でも俺ってまだ子供だし。ましてや当時なんて赤ん坊だぞっ!

…も、もしかして幼児趣味…?

ゾッ…

『う〜ん、恐らくだけど君の本当のお母さんが掛けたんじゃないかな?可能性として一番ありえるでしょ?もしかしたら本当に幼児趣味かもしれないけどね!』

…本当のお母さんか。

俺の本当のお母さんって一体…。

いや、もちろん神様はこっちの世界のことを言っていたのだろうけど。もし、出会ったとしたら前世でもあった事のない人を、本当の母親という者を俺は、母親と認める事ができるのだろうか?

『何難しい事考えてるんだかねぇ。まぁ、とりあえず初心者応援サービスはここまで!また会わない事を願うよ!ばいばーい!』

ば、ばいばーい。

って心の声に手を振ってなんの意味もないか。

「何やってるのだ?エルよ」

「うひゃぁっ!!?」

突然の声に驚き後ろを振り向くと

母が居た。

「こんな程度で驚いちゃって。まったくちんちんついておるのか確かめてやろうか?」

「…い、いえ結構です。お母様…。ところで早い帰りだったね。何かあったの?」

流石に、母さんと言えどたかだか2,3時間程度で狩尽くすなんて早すぎる。

「うむ、アングリーボアは何体か狩ったのだが…ほれ」

ドサドサッ!

母さんの空間魔法にしまっていた大量のアングリーボアがなだれ落ちてくる。

「うわぁ、すごい量だね。まさか本当に狩り尽くしたとか言わないよね?」

「いや、違うのだ。エルよ、実はお前に言わなくちゃならない事があるのだ」

「どうしたのさ?かしこまっちゃって」

「じ、実はな…」

「う、うん」

ゴクリッ。

生唾飲み込む音が聞こえた。

その言葉は今世で恐らく一番大きな衝撃だっただろう。






「妹が出来ました♡」

…は?

「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!????」







作者です。

学校の課題の締め切りが迫ってると言うのに何やってるんでしょうかね私は。




そして、「今回の秋葉」です。


秋葉「最近、拳がズキズキするんだけど。ってか!これ骨折れてね!?折れてね!!!??何やってるの??エイル君っ!?てゆーか、どこにいるのよぉ〜!!!」


『レイアさん』

秋葉「クチュンッ!!…ぁあーー。風邪引いたのかなぁ?てかアタシの体って病気とか掛かるのかな?」

レイア「あら?「幼児趣味」の秋葉さん。風邪を引いたんですかw?」

秋葉「ハッッ!クチュン!!!」

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