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朝起きたら女の子になってた。

スライム3世

デートしよ!


「ねぇ、沙雪?」
「は、はい」

腕の中でビシッと背筋を伸ばす沙雪が可愛くて、つい力を入れて抱きしめてしまう。沙雪と密着している今の状態はとても至福でどうしようもなく沙雪が好きなのだと実感してしまう。

「私ね、沙雪のことが好きなの」
「はい!」
「そんな沙雪にも好きな人ができたのは知ってる」
「はい……え……?」
「宣戦布告されたの。その人からね。だからこのままじゃ駄目だって気付かされた」
「どうしてそんなこと……」
「そんなの私が知るわけないじゃん」
「ごめんなさい!」

沙雪は私の心情を知ってか知らずかビクビクと震えている。さっきまでの余裕そうな態度から一転しているので新鮮である。

「許して欲しかったら一つ聞いてくれる?」
「出来る範囲でなら……」

その返答に私は満足すると沙雪から離れてその場で立ち上がる。

「明日ーーデートしよ!」


********


翌日

雲のない青空の下で待ち合わせ場所である遊園地の入場口付近で沙雪は立っていた。それを入場口に並んでいる何十人かの好奇な視線が捉えている。そこに偶然を装って話し掛けようとしている人もいたが、沙雪の小学生並みの身長と周囲の目線も相俟って話し掛けられずにいた。なにより、警備員が目を光らせている。

そういう私は遊園地に到着後、沙雪を見つけ声を掛けようとして……死角になるところで項垂れた……。

いやいや、今のは見間違い……。

私は決心を決めてもう一度、沙雪に視線を向けて……再度項垂れた。

な、なんなのあの可愛い物体は?
私より遥かに女の子歴が短いのにオシャレ慣れしている格好は? 泣くよ?

そう、沙雪の外見はどこからどう見てもオシャレ好きな女子小学……中学生だった。あんなにスカートは嫌だと言っていたのに丈が長いチュールスカートを身に付け、肩出しのレースシャツを着てる。その上、一丁前に日傘をさしてる。

まじまじと遠くから観察していると、何かに気付きごそごそとカバンを漁り始めた。手に取ったのは日焼け止めクリーム。日焼けに関しての配慮は……なるほど、もう女の子だ。

私は考えるのを止めて、トボトボと沙雪のもとに向かった。

「おまたせ、沙雪……」
「あ、紗香。って、どうしたんだ?」
「何が?」
「いや、凄い顔が引きつってるから」
「……例えてみるなら、1、2回行った友人の家全体の配置を完全に覚えてる人を見た気持ちかな」
「怖っ……それで何かあったの?」

両手を後ろに持っていき、こてんと首を傾げて上目遣いで見てくる沙雪は完全に可愛らしい女の子の動きで敗北感を味わった。そして、私は吹っ切れた。

「もぉぉ! こんなに可愛くなって! 私に対する嫌味か! そんな可愛い子にはちくちく攻撃だ!」

そう言って、私は人差し指を無防備になっていたお腹に突っついていく。

「ちょっ、地味に痛い」
「少しはその可愛さホルモンを私に分けろ」
「紗香だって可愛いよ」
「そんな軽く言われても全然嬉しくない」
「とっても可愛い……」
「え……?」

まさか、そんな甘ったるい声で言い返されるとは思っておらず、攻撃を止めてしまう。

「私のためにお洒落してくれて嬉しいと思ってる。でも、それよりも、紗香に好きって言われた時、なんて言うか恥ずかしかった……」
「っ!?」

私は思わず沙雪から視線を外す。

待て待て待て待て。
頬を真っ赤に染めて恥ずかしそうにしちゃダメだって。ただでさえ可愛いのにもっと可愛くなっちゃダメだって! あぁ……刺激が強すぎる。私にはまだ受け止められそうにない。今日のデートは失敗したかもしれない……。

「……だから」
「ふゅっ……」

いきなり手を握ってくるから、なんか変な声出ちゃったよ!

「今日は楽しもうね」

光ってる……。沙雪の笑顔が光ってる……。
後ろに神々しさすら覚える女神が佇んでおられる……。

サラサラサラサラ……。

私はその光を前にしてチリとなって飛ばされていった。


********


人混みの多い中、何とか遊園地の中に入場すると私は近場にあるベンチに紗香を座らせた。

入場口に並んでる最中、顔色が悪かったから終盤とはいえ、この夏の暑さにやられたのだろう。私は日傘の中に紗香を入れてあげた。
今日、日傘を持ってきた理由は、昨日の花凛とのデートで少し日焼けしてしまったからだ。だから、持ってきておいて良かった。

「紗香、大丈夫か?」
「無理……お兄ちゃん・・・・・ギュってするね」
「うぇ?」
「ぎゅー……」
「さ、紗香!?」

紗香は小学生低学年・・・・・・の時の様な態度で腰に腕を回して、お腹に頭を擦り付けてくる。擦り付けてくるごとに紗香から甘い香りが漂ってきてなんだかむず痒くなる。だが、何かに気付いたらしくばっと頭を離した。

「お、お兄ちゃんじゃない!? ご、ごめんなさい。いきなり抱きついてしまって!」
「だ、大丈夫だけど……」

って、なにこの状況!
紗香どうしちゃったの!
と言える訳もなく、私は紗香を観察していると辺りを見渡し始めた。

「お兄ちゃんどこ……」

ズキューン

昔、かくれんぼをしていた時に何度もその表情を見た。その表情に何度、心を撃ち抜かれた事か。
私を見つけられそうにない時、泣きそうになった時に涙目になって言うのだ。だから、私はその可愛さに負けてかくれんぼで紗香に勝ったことがない。

「ねぇ、紗香?」
「なに? お姉さん・・・・?」
「っ!?」

何故だか紗香は私のことを忘れているみたいだ。
それにお兄ちゃんは『樹』の時の私だ。紗香が私のことを覚えていない事に胸がジンジンと痛む。
私は気を紛らわせて紗香に話し掛けた。

「もし良かったら、私と一緒にお兄さん探そっか」
「いいの……?」
「うん。私、一人・・で遊びに来てたから一緒に行こ?」
「う、うん! ありがとう、お姉さん」

紗香はベンチから立ち上がると、私の手を掴んだ。

こうして私と紗香の絶対に見つけられない人探しというデート?が始まった。


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