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朝起きたら女の子になってた。

スライム3世

私でいいんですか?


「あ……」

ま、まって。ど、どうして私……。よろしくお願いしますって……。そんなの告白受け入れたようなものじゃん。違う、私はそんなこと……。

そこで私は今のはノーカウントにしようと首だけ動かして花凛に視線を向ける。そして、硬直した。

泣いていたのだ。

それでいて心の底から嬉しそうに笑っていた。私はその表情から目が離せないでいた。

「嬉しい……よろしくお願いしますね。沙雪!」
「……」

優しく包み込まれていた腕に力が入り、力強く抱きしめられる。少し痛いが自分の意思とは無関係に心地良くなってしまう自分がいる。

もっとしてほしい、もっと花凛と触れていたい……。そう思うと自然と私からも花凛を求めようと腕を動かして……。

って、だめ……。そんなことしたら告白断れなくなっちゃう。

だが、そこに花凛は追い討ちを掛けるように額をくっ付けてくる。不意にも急に目の前に現れた花凛の顔にドキッとしてしまう。

そこで花凛の柔らかそうな唇が視界に入ってしまった。あと数十センチ顔を近付けるだけでキスしてしまいそうな距離だ。

「ちょっと恥ずかしいですね」
「な、なら、離れて」
「嫌です。もう言質は取りましたから」

花凛はカバンからスマホを取り出して手に持つと、ある録音を流し始める。

『私と恋人になって頂けませんか?』

声が震えていた。相当緊張しているような声色だった。

対して、その返答は……。

『……よろしくお願いします』

消え入りそうな声だったが確かにそう聞こえた。

「いつ録音した……」
「デート中ずっとです。いつ沙雪さんがデレるかわかりませんからね」

それを聞いた私は緊張していたのが嘘だったかのように心が冷え込んでいくのを感じた。

「消せ! 今すぐそれを消せ!」
「嫌です。枕元に置いて連続再生しながら寝ますから」
「やめてほしいな。間接的に恥ずかしい」
「分かりました。目覚ましにセットしておきます」
「それもダメ!」


こんなやり取りの中でも告白を断るという選択肢はいつの間にかなくなっていた。


********


花凛が私を解放すると、プリクラ機にお金を入れ始めた。

「では、折角ですのでプリクラ撮りましょうか」
「うん……」
「沙雪? 嬉しいのですが、蝉みたいにくっ付かれて後ろにいられると顔が見えないです」

結局、録音は削除してもらえず私は羞恥に悶えていた。だから、今は顔を見せたくない。

「見なくていい……というか見せたくない」
「ふふ、分かりました」

花凛がプリクラ機を高速で操作していくと撮影する時のカウントダウンが流れ始めた。

『3』

「カウントダウン始まりましたよ」
「いや、そんなに早く始まるなんて聞いてない」

『2』

「そろそろ後ろから離れて顔を見せて下さい」
「わ、分かった」

『1』

「好き」
「!?」

パシャっとシャッター音が鳴るのと同時に花凛が再び抱きしめてきた。

「恥ずかしいから言うな……」
「嫌です」

心臓が早鐘を打つがプリクラ機は待ってくれない。

『次は肩を組んでみましょう』

「してみましょう」

花凛が私の肩に腕を組んでくる……が、これは、あれだ。

親が子の肩をポンポン叩くような構図だ。

「小さくなりましたね……」
「やめて……悲しくなる」


『次は好きなポーズを取ってみましょう』

「失礼しますね」
「ちょっ……」

花凛は私の後ろに回り込むと、抱き上げてきた。これが俗に言うお姫様抱っこ。

「こういう時、男性なら『お前は俺の物だ』とか、『お前は運命の人だ』とか言うんでしょうか?」
「それは臭いぞ……」
「そうですか? では……沙雪、お前は誰にも渡さない」
「ぶふっ……うははは」
「ちょっと、失礼じゃないですか」

ぷくーっと頬を膨らませる花凛に私は何とか笑いを抑える。

「いや、だって、似合ってないし」
「なら、沙雪が言ってみてください。多少アレンジしてもいいですから」
「え〜」

なら、可愛い子ぶった方が良いのかな?

少し考えてみると意外にもアイデアが浮かんできた。

「じゃあ、やるよ?」
「はい」

私は花凛の首元に手を回して視線を合わせる。お姫様抱っこされていることもあって距離が近く、少し緊張するけどなんとか堪える。

そして……。

「私で……いいんですか?」
「結婚しましょうか」
「え……」
「今すぐにでも沙雪を独り占めしたいです。どうです?私の子守唄係にでもなりませんか?寝る時に耳元で囁いてくれれば大丈夫ですから。大丈夫、何も心配ありません。全て私に任せてくれれば……って、沙雪?」
「怖っ……」
「あ、いえ、これは当然の反応ですから。全ての女性に喧嘩を売ってるようなものですから」
「そんなことしてないよ。でも、そうしたいほど、好き……なんだよね?」

今の体勢からか上目遣いで言ってしまった。それを見てしまった花凛の鼻からは鼻血がぽたぽたと落ちてくる。

「ちょっ、鼻血出てる。また服が汚れる」
「あ、すいません。今拭きます」
「ちょぉぉ、離すなぁ」

花凛が鼻血を拭くために手を離した為、支えを失い腕の力だけで花凛にしがみ付くことになった。因みに足を下ろせば直ぐに地面に足が付くが、お姫様抱っこ状態からだと地面が見えない為、こんなに必死なのである。

私は足を花凛の腰に巻きつけて落ちないように固定する。

「はぁ……助かっ」
「沙雪が私に抱きついて……幸せです……」
「ちょっ、動くなぁ」

鼻血を瞬時に拭いた花凛は嬉しさのあまり、ぐるぐるとその場で回り始めた。目が回って気持ち悪くなってしまう。

「うぐっ……」
「沙雪、出していいですからね」
「変な言い方するな」

このままでは危険だと感じ、よろけながらも私は花凛から飛び降りると、距離を取る。

「もう終わりですか?」
「続けてたまるか」


『ーーそれでは最後に二人で愛を表現させましょう』

途中から無視していたプリクラ機からそのような音声が聞こえてきた。

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