朝起きたら女の子になってた。

スライム3世

朝の一人戦争



目の前にとても大きなベッドがある。しかし、家にはこのような大きなベッドはない。

「夢か」

そのベッドは雲のように真っ白で柔らかそうで、それに何より寝心地が良さそうなベッドだ。私はそのベッドにダイブしてみる。

勢いを付けたにも関わらず、そのベッドは私を優しく受け止めて挟み込んでくる。更に、ベッドの一部が手の形に変化して私の背中をマッサージしてきた。

「はわぁ〜〜」

蕩けるような甘い声が漏れて、こんな声も出るのかと少し恥ずかしい思いをした。

スリスリ

ベッドに頬を擦り付けると柔らかい肌触りがして気持ちがいい。そんな極楽な気分を味わっていると、突如としてベッドが真っ二つに割れて私はその隙間に吸い込まれるように落ちてーー


**********


「むっ」

落ちた先も柔らかいベッドだった。

びっくりさせないでくれ……

また同じ事があったら困るので、ベッドにしがみつく。しかし、私はある事に気がついた。今度のベッドは全身を優しく受け止めてくれていない事に。

今度は不良品か……

まぁいいかと再び眠りに就こうとするが気になる感触があった。このベッド、ある一部分が凄く優しい手触りなのだ。

何だこれ?

ふにっ

んん? 柔らか……

ふにっ、ふにゅっ、ぎゅっ、ぁん

へ?

ふにっふにっふにっふにっ、ガシッ!

はい?

不良品のベッドのくせに私の睡眠を妨げた。その事に私は憤怒の気持ちを持ってこのベッドにーー

「制裁だぁぁぁ」
「……うるさいよ」
「ッ!?」

突如として聞こえてきた声に一瞬で眼が覚めるとガバリと起き……上がれなかった。

こ、これって……お姉ちゃんのお胸様。

私はお姉ちゃんに抱きつかれて更に大きなお胸様に顔を挟まれながら眠っていた。そして、先程ふにふにしていたのはお胸様だったようだ。

それにしても柔らかいな〜 いい匂いだし……。眠く……って、昨日も同じ事して寝ちゃったな。それに、この状態ってことはお姉ちゃんも寝ちゃったのか。というか今何時だろ?

それを確認するにはこのお胸様から解放されなければならない。

私はお姉ちゃんを起こさないようにそっと動いて、抜け出そうと……

「ん〜」
「んごっ!?」
「すぅ〜すぅ〜」

ちょっ、ちょっと待ってくれ。お姉ちゃんよ! お姉ちゃんの大きなお胸様が私の顔面にむにって! そ、それに、薄着だから感触が……。で、でも、これはこれで良いかも……。男だった時にこんな事してたら殺されてる……。まぁ、今は女の子だしせ、セーフ。この際だからもっと堪能しても良いよね。

そう思い直すと、私はお姉ちゃんのお胸様に顔を埋もれさせながら二度寝に……入れない……。

お胸様が私の呼吸を妨げているからだ。

く、苦しい……

お胸様で窒息死するのは……勘弁なので、私は顔を左右に振りながらお胸様から頭を引っこ抜く。

「ふぅ〜 助かっ……」
「えへ……」

ちょぉぉぉぉ〜〜 それはいくらなんでもダメだって!

拘束から抜け出すまでは良かったのだが、お姉ちゃんは逃すまいとまた拘束してきたのだ。それに私が抜け出した時に位置が変わってしまい色々とダメな構図になってしまった。まだ、私がお姉ちゃんのお胸様に挟まれるのはいい。だけどーー私のささやかだけど確かにあるお胸様にお姉ちゃんの顔が挟まってしまうのはダメだ。

「ちょっと、お姉ちゃん。離れて……」
「ん〜あと5分……すぅ〜すぅ〜」

ふぉぉぉぉぉぉ〜〜 呼吸されると生暖かな風が……。それになんかゾクゾクしてくる……。

これ以上は何かに目覚めてしまいそうなので力づくでお姉ちゃんを引き離しにかかる。しかし、私のへっぽこな力ではお姉ちゃんの怪力に抵抗する手段がない。このままでは逃げられない捕食される

「離れろ〜〜」
「それは私の……アイス、よこせ……」
「自分のアイスだったら寄越せなんて言わな……!?」

その時、電流が走るような感覚に陥った。私はその原因である場所に視線を向けてみる。

「な、な……なぁぁぁぁ」

紗香に部屋を改造されてしまってからは、寝巻きは着ぐるみパジャマとフリフリしてるものとかになっていた。まぁ、それで私は意外にも着やすかったネグリジェを着たのだが、それがいけなかった。そのネグリジェをずらされてちょ、直接……。

「甘い……ぺろっ」
「!!??」

二度目となると感覚は一回目よりかは収まっているが感じてしまうものは感じるのだ。というか、今度は"母性神"が現れない。このままでは身が持たない。

『家族団欒を邪魔するのは酷でしょう。それと、女性の体に慣れないと苦労します』

うお! なんか出てきた。というか、これのどこが家族団欒なんだ! それに、慣れるって何だよ! 何に慣れるんだよ!

『呼ばれたような気がしたので応じたのですが、一体どのような要件でしょうか?』

無視した!

『グチグチ言う男性は嫌われますよ。あ、女性でしたね。失礼しました』

おい、表出ろ。

『すみません。よく聞き取れませんでした』

お前はSi○iか!

『女性に尻と呼ぶのはちょっと……』

それじゃねぇよ。はぁ、もういいや……。

"母性神"の相手は疲れるので助けを求めるのは諦めた。ということはこの状況を自分で解決するしかない。

「……お姉ちゃん、ごめん」

そう小さな声で宣言すると、今出せる力を振り絞って拘束を振り解く。……が、お姉ちゃんはそれを遥かに超える力で離そうとしない。

「……そのアイスも……渡さない……」
「完全に自分の物にしてるし! ていうか、絶対起きてるでしょ〜〜」

まずい……このままでは本当にお姉ちゃんに……。

「……沙雪にも渡すんだから……」
「え……あ、しまっ……」

まさか、名前を言われるとは思っておらず、その一瞬の隙を突かれ……。もうダメかと思ったその時、そのまま上に倒れてきた。

「なんだ……」
『何を、とは言いませんが期待しましたね』

うるさい……。

しかし、心臓は早鐘を打っていてドキドキしたと告げていた。


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