朝起きたら女の子になってた。

スライム3世

妹とG退治 part1



 莉奈さんを倒した紗香は、俺を連れて教室から出た。そのまま昇降口にまで行き、靴を履き替えて帰路に就く。
 そして今は、学校から出て7分ほど歩いたところにある川沿いの道を歩いている。家までは残り半分ほどといった地点である。

「なぁ、我が妹よ」
「なに? 私の妹よ」

(ちょーっと、聞き捨てならないワードが出てきたが、俺は優しいから聞かなかったことにしてあげよう。それに、さり気無く手を繋いでくるのも気にしないであげよう)

「莉奈さんは、その、紗香の彼女なんだろ? もっと大切に扱うべきだと思うぞ」
「違うって、さっきも言ったよね?」

全く笑っていない顔で、紗香は俺の肩をグリグリと丁度良い強さで押してくる。気持ちいい。

「俺に遠慮しなくて良いよ」
「何にも遠慮してないけど! 」
「それはない。紗香から誘ったらしいからな」
「それは、まぁ、うん」

俺はしどろもどろする紗香の様子に違う答えを導き出出してしまった。

「そうかそうか、恥ずかしいんだな。分かるぞ、好きな人のことを追求されると居心地が悪く……」

しかし、俺はその言葉を最後まで喋ることが出来なかった。
紗香にすごい剣幕で睨まれたのだから。
それに若干、目が潤んでいるのが不思議でならない。


ーーねぇ、沙雪には好きな人がいるの?


(めっちゃ答えにくいな……)

とりあえず俺は好きな人がいたか、脳内で検索をかけてみる。

そうすると、紗香のことを考え始めていた。

女の子になってから、色々と教えてくれた紗香。
女の子になって困っていた時に、何だかんだ言いながらも助けてくれた紗香。

男だった時は何も言わずに、俺のことを心配そうな目で見ていた。朝飯の時は時間が合わなかったけど、晩飯だけは一緒に食べてくれていた。

それに何よりも俺のことを見捨てたり、いない人の様に扱うことはしなかった。
そんな紗香のことを思うと俺は……

(いや、それはないな。紗香は妹なんだから)

「いないぞ」
「そ、そうなんだ」

紗香は俺に背を向けて、嬉しそうにブツブツ言いながらガッツポーズをした。

「酷いな、俺に彼女がいないことでそんなに喜ぶなんて……」
「あ、これは違うよ。腕が勝手に上下しただけだから。それより、今日はどっか寄って帰ろうよ」
「嫌です。もうスカート脱いでズボンに戻りたい。男の尊厳が家出しちゃう」
「ブラとか女物の下着身につけてる時点で、消えてると思うんだけど」
「それは言うな……」


*****


家に帰ってきた。

家に帰ってきて早々にしたことは、2階にある自分の部屋に行って、制服を脱ぎ捨てること。

(はぁ〜やっと解放された……)

Yシャツとスカートを脱ぎ捨てた後、勢いでブラとキャミソールを脱ごうとしたが、なんとか耐えた。
紗香に着けてないところを見られると、余計に酷い(可愛い)下着類を着けさせられるから。

それにどういう訳か、着けていないとバレる。
『なんか違う』と言って、俺の服を捲ってくるのだ。

(こういう話はやめておこう。メンタルも家出しちゃう……)

気を取り直して俺は、紺のジーパンとねずみ色のパーカーをタンスの奥の方から取り出して着る。

(あ、手前に置くと、ヒラヒラした服にいつの間にか変えられます。洗濯機に放り込むと、着ていない筈のヒラヒラした服が帰ってきます。着ていた服は帰ってきません。全く、こんな酷い事をしてくるやつは、よっぽど……)

ーーガチャリ

「沙雪ぃ〜〜助けて〜〜!」

犯人である紗香が、ノックもせずに俺の部屋に飛び込んできた。純白の下着姿で。

「な、なんだよ」

何故か紗香の下着姿を見てドキドキした。だが俺は今にも泣きそうな雰囲気の紗香を見ると、そんな感情は吹き飛んだ。

「わ、私の部屋にGが……」
「まさかの伏線!」
「お願い、お兄ちゃん助けて」

(俺の呼び方が定まっていないな。これはガチなやつか)

「お兄様に任せておけ」
「何でもいいから早くして!」
「あ、はい」



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