朝起きたら女の子になってた。

スライム3世

旅行 part25



朝食バイキングを無事に終えて部屋に戻ってきた。俺が小さい子といた事は誰にもバレていなくて安心した。そして、今はチェックアウトをする為に荷物整理と着替えを並行して行なっている。

だが、問題が発生してしまった……

昨日、紗香から奪い返した筈のズボンがまた無くなっていた。その代わりにレースが付いている黒のミニスカが入っていた。それとご丁寧にストッキングもサービスが付いてだ。

「誰だ?俺のズボンを奪ってミニスカにしたやつは?凍えておっ死んじゃうぞ?」

俺は紗香を見ながら、そんな言葉を投げた。

「待って、今回は私じゃない」
「今回以外はやってるって認めたな」
「ぐっ……」
「どうせ、またそのバッグの中に入ってるんだろ」

紗香の隙を突いて、俺はバッグを漁る。

「さて、今度は何が……」
「ま、待って」

紗香の静止を振り切り、俺はバッグの中で掴んだ物を引っ張り出した。引っ張り出された物は、赤色のリボンが付いている純白パンツだった。

「何だ、パンツか」
「いやん、沙雪のえっち」

紗香は両手を顔に当て、恥ずかしそうに見える演技をする。

「何がえっちや……」
「そのパンツあげてもいいよ?その代わりに沙雪のパンツ貰うけど」
「いらんわ」
「じゃあ、私のパンツあげないから、沙雪のパンツ頂戴」
「何でそうなるんだ?」
「私のパンツいらないんだから、沙雪が今履いてるパンツ貰うしかないじゃん」
「割りに合わないんだが?それに余計にタチが悪くなってるぞ」
「さぁ?」
「なぜ疑問で返した?」

このままでは状況が悪くなる一方と感じたので、パンツをバッグに戻して、違う物を取り出そうとする。

「次は何が……」
「まだ、出すの?」
「何かご都合の悪い物をお持ちで?」
「な、ないよ」

(よし、怪しい)

俺は紗香のバッグを漁るのを再開して、掴んだ物を引っ張り出した。

「紗香さん」
「何?」

俺はその引っ張り出した物〝ブラ〟を持って紗香の前に垂らす。

「このお品物は、何でしょうか?」
「水色のブラ」
「うん。それは、分かっているのよ。困るのよね、こんな事されると」
「しょうがない。ついつい、手が勝手に動いてしまったんだから」
「ついついで許されると思ってるの?うちは迷惑してんのよ」

どこかの万引きを受けた店の店員さんの様に、俺は話の真相を追求していく。

「で?本当のところは?」
「水色のブラ」
「うん。確かにそうだな。でも、他に言うことあるんじゃないの?」
「Aカップの人が身に付ける水色のブラ」
「ご丁寧にどうもありがとう」

(誰かのサイズばらしやがったな?まぁ、その誰かさんは俺なんだけどさ)

「それ以外に何か言うことないのか?」
「そのブラ返すから、今沙雪が履いてるパンツと交換しよ?」
「元から俺のだわ!」

(紗香に構ってると何も進まないな。それに紗香のバッグに俺のズボンは入ってなさそうな感じだし誰が持ってるんだ?)

とりあえず、ブラをバッグの中にしまって姉貴と母さんの方を見る。

俺の視線に反応したのは、母さんだった。

「母さん、ちょっと良いか」
「何の用?」
「俺のズボン取ってないよな?」
「それは、どうかしら?」

(過剰な反応はなしか……)

「確認するから」

俺が母さんのバッグを開けようとした時に、母さんは呟いた。

「沙雪のズボンを取ったのは私よ」
「あぁ、そうか……って、は!」

(思わず、スルーするところだったぞ……)

気を取り直して、母さんに質問をする。

「どうして、盗ったんだ?」
「盗ってないわ、交換したのよ」
「まぁ、その言い分は置いといて、動機は何だったんだ?」

母さんは黄昏た表情を浮かべながら言った。

「……羨ましかったのよ」
「羨ましい?」
「えぇ、そうよ!そんな綺麗な足を持っているのに、どうしてズボンで隠すのよ!勿体ないのよ!」
「えっと……」
「年を取ればその分、シミが増えて汚くなるのよ!」
「わ、分かった、もういい」

(母さんの闇を見た様な気がしてならない……)

「……なら、スカート履いてくれるのね」

母さんは、今にも襲って来そうな雰囲気を醸し出す。

「履きます、履きますよ、履くから、その獲物を見つけた目で見ないでくれ」

(はぁ……この旅行で下着以外の着替え持ってきた意味あるのか?)

しかし、今頃そんな事を考えても遅いのである。そして、沙雪はズボンを返して貰うのを忘れて、そのままそのズボンは何者かに奪われるのであった。

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